召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

文字の大きさ
上 下
117 / 196
セブンセンス法国編

第117話 休息・プレゼン・女子部屋探訪

しおりを挟む
 一日の濃度が高かったせいで気付かなかったが、よく考えたらセブンセンス到着二日目なのである。
 すっかり日も暮れて、仕事どころではなくなった。

 夜こそ行動しやすいという説もあるが、俺は生身の人間なので、適切な休息を取らねばならない。
 知識神の神殿の休息所を貸してくれるという話があったので、ありがたくその好意を受け取ることにする。

 個人的には、慈愛神教団が運営する歓楽街で、えっちなお店に行ってみたかったが。
 今やると、アカネルに絶対押し倒される。
 俺は流される自信があるぞ!!

「はい、部屋は男女別々でーす」

「なんでですかー!!」

 アカネル、怒りの跳躍である。
 飛び跳ねて抗議する彼女を、色々察したナルカが途中でキャッチした。

「はーなーしーてー!」

「あと二人と一緒じゃないと色々まずいんだろ? あんただって抜け駆けしたら、後々人間関係気まずくなるよ?」

「うっ、冷静になって考えてみれば確かにそうです。仕方ありません。ここはルミイとカオルンのために我慢します」

「ナルカのファインプレーだ。大人だなあ……」

「あたいもまあ、教団の聖女だし。みんなの仲を仲裁したりとかしょっちゅうだからねえ」

 若いのに苦労人だった。
 こうして、安心できるところにアカネルを預け、俺とガガンで男部屋である。

 ベッドが二つ並んでいるだけの簡素な部屋で、小さい窓が二つ開いている。
 ランプを借りてきたので、これを明かりとして寝る前に今後について話し合うこととする。

『俺様も参加しよう。明日からの行動だな』

 オクタゴンが実体化し、ベッドに腰掛けた。
 ガガンは床に直接座っている。
 小さいベッドだと寝心地がよくないから、床に寝るんだそうだ。

「知識神の協力は得たが、戦神や技巧神はどうだ?」

『いかんな。連中は頭が硬い。向こうに神殿を設置したから、俺様が直接交渉できるようになったわけだが……。神殿を取り除け、お前も排除してやる、の一本やりだ。現状を理解していないな』

「なるほど、そいつは頭が痛いなあ」

「何を悩んでるんだ。相手が同意する気が無いんなら、ぶちのめして話を聞く気にしてやればいいんだ」

「それが一番簡単なんだが、そうするとほら、連中は意固地になりそうでな」

 戦神に技巧神、ここまでルサルカ教団と戦い続けて来ているし、手を結ぶ気は無いということなのか。
 それとも……。
 考えていても始まらないな。

 明日は彼らの様子を探ることにしよう。

「あいつら、ダラダラしてたらバルク王が攻めてきて滅ぼされるのに、よくやってるぜ」

 ガガンは理解できない、とばかりに肩をすくめた。

「それに、魔法帝国を狙っているのは凍土の王国ばかりじゃない。オレたちみたいなバーバリアンの集まりは、それこそどこにでもあるんだ。セブンセンスから海を隔てたところには、バイキングと呼ばれるバーバリアンが暮らしているし、ワンザブロー帝国の近くにはブッシュマンと言うバーバリアンがいる」

「世界中バーバリアンだらけじゃん。ヘルプ機能。魔法帝国の人口とバーバリアンの人口どっちが多い?」

『魔法帝国の人口は合計で125万人、バーバリアンの人口は1093万人です』

「桁が一つ多いじゃん」

 それはもう、魔法が消えちゃったら数の力で押しつぶされるのよ。
 この現実をプレゼンするしかないな。
 そしてその前に、戦神や技巧神が話を聞く態勢に持っていかねばならない。

「カチコミという名のプレゼンだな。正面から強く当たって、後は流れで進めて戦神そのものを呼び出そう」

『話が早いな。そうしよう。俺様もまだるっこしいのは苦手だ』

「いいないいな! やっぱ力押しだよ!」

 男たちの意見はまとまったのである。
 このあたりを伝えるため、女子部屋をノックする。

 そうすると、ほぼすっぽんぽんのナルカが出てきた。

「なんだい」

「ヒャアー」

 突然のことで、衝撃に飛び跳ねる俺。

「ナルカいけません! マスターには刺激が強すぎます! あー、おっきしてしまいました」

「大丈夫、俺は前かがみでも理性を保てる……。ナルカさんはあれかな? 裸で寝るタイプかな?」

「そうだよ? この方がぐっすり眠れるだろう? それで、何か用事かい? 夜這いだって言うならぶっ飛ばすよ!」

「明日からの活動についてお話を……」

「そうなのかい。じゃあお入りよ」

「ナルカさん、何か羽織ってもらえないかね……。俺の理性が削られていく……」

「仕方ない男だねえ……」

 雑にタオルケットみたいなのを体に巻きつけるナルカ。
 本当に雑に巻いてるんで、チラッチラ見える。
 うおお、気が散る。

「マスター! 当機能が目隠ししますから冷静に話して下さい!」

「そうするとアカネルのおっぱいが背中にめっちゃ当たるんだが」

「これはいいんです」

 いいのか。
 ともかく、戦神と技巧神に真っ向から勝負を仕掛けて、力を見せて話を聞いてもらうモードにするという案。
 これは分かりやすかったようで、ナルカも頷いていた。

「なるほどねえ。だけど、どうして最初からやらなかったんだい?」

「話し合いや裏から手を回して解決できるなら、そっちの方が楽だろ。それに知識神を懐柔できたから、背中を衝かれる心配がなくなった」

「なるほどだねえ……。あんた、頭も回るんだね」

「マスターはもともと、戦術や策謀を巡らせるタイプです! たまたま、自分が矢面に立たないと威力を発揮しない能力を得たから、自分で戦ってるだけで」

 アカネル、俺のことをよく理解してらっしゃる。
 そう、理想としては、責任を負わない軍師タイプでありたい俺なのである。

 だが、残念ながら正面切って戦い、あらゆる責任を負って各地のトップと正面切って渡り合う将軍タイプをやらざるをえない状況なのだ!
 今回もそうだろうな。
 オクタゴンを前面に出したらこの土地がアビサルワンズまみれになるし。

「よし! そうと決まれば話は早いね!」

 ナルカがパンっと手を叩いた。

「早く寝て、明日に備えようじゃないか! あんた、やるねえ。見直したよ。ま、アンデッドのことを大切に考えてくれてる時点で、並の男じゃないってあたいは思ってたけどね」

「むっ、ナルカから強い好意を感じます!」

「やめな! あたいの内心を勝手に代弁しないでおくれアカネル!」

 おお、ナルカが慌てて立ち上がった。
 そしてはらりと落ちるタオルケット。
 目の前に全裸。

「ウグワーッ!!」

「あっ、指の隙間からマスターがナルカの裸を凝視していました!!」

しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

うどん五段
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。 ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。 ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。 時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。 だから――。 「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」 異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ! ============ 小説家になろうにも上げています。 一気に更新させて頂きました。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

処理中です...