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スリッピー帝国編
第57話 いきなりの迷宮は侮ってくる将校から
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「そなたたちがワンザブロー帝国より来たという使者たちね。異世界召喚者の力を使い、シクスゼクスの異世界召喚者を打ち倒したと聞いている」
謁見の間は、ファンタジー的な見た目ではなかった。
ぱっと見、でかい応接間のような……。
皇帝は、大仰な冠もローブも纏っていない。
機械仕掛けっぽい額冠と、仕立てがめちゃくちゃ良さそうなスーツを着ていた。
妙齢のお姉さんだ。
「いかにもいかにも。だけど今回は、俺のやらなきゃならんことだったから始末したというのもありますけどね」
俺のちょいちょいぞんざいな物言いに、皇帝の護衛らしき女性将校たちが剣呑な空気に包まれた。
それを手で制する皇帝。
「やらなくてはいけないこと?」
「あいつは女性を無条件でたぶらかす能力を持ってましてね。俺の仲間はご覧の通り世界一の美少女なので、絶対にヤツの魔手が掛かる前に仕留めねばと思って、仕留めました」
俺は肩をすくめた。
皇帝がちょっと真顔になり、護衛の将校たちの表情がこわばる。
「彼は有言実行ですよ」
教授が笑いながら、俺の肩を叩いてみせた。
将校たちのこわばりがひどくなる。
おいおい、リラックスしてないぞ。
「皇帝さんは、マナビさんを侮ってないですね」
ルミイの目は確かだ。
これまで散々、俺をバカにした連中を見てきたからなあ。
この国は魔法だけに頼らないだけあって、相手が魔力を持っていなくても、大きな事を成し遂げたやつはリスペクトするようだ。
「軍からの報告は上がっている。大混乱だったようだ。それほどの状況をたった一人でもたらす怪物を打ち倒し、しかも無傷。そなたが凄まじい力を持つ異世界召喚者であることは分かった。では、その功績をもって余に何を望む?」
「自動運転装置を。あと、食料と水。以上だ」
俺は即答した。
皇帝も将校たちも、ポカンとしている。
皇配はこの状況が面白いらしく、俺と皇帝の顔を交互に見ていた。
「それだけで良いのか? そなたは我が夫も救った。ならば、スリッピー帝国における地位を与えることもできるのだぞ?」
「いや、こっちには住まないんで。俺はルミイを実家に送り届けるという大きな任務があるからな」
「ルミイとは、そのハーフエルフ……?」
「陛下、危険です。強大な魔力を感じます」
「カオルンもいるのだ!」
「陛下、危険です! 強大な魔力を感じます!」
「カオルン、座って座って」
「陛下、その男からはやっぱり何も感じません。本当のことを言っているのですか? いつもの詐欺師では?」
おい。
俺だけ疑われていないか?
将校たちは、この世界の規範と同じように魔力の有無で相手の強さを測るタイプではあるということか。
結局、俺の要求は全て通ることになった。
本日は一泊させてくれるということで、部屋と素晴らしいお風呂を用意してくれるそうだ。
分かってるじゃないか。
俺はお風呂という単語を聞くと、知能指数がスーッと下がるぞ。
だが、部屋に案内される途中、女子たちは女子部屋、俺が一人部屋だったので、おや? おかしいなーとちょっと思った。
俺は冷静になってきたぞ。
なお、女子たちは、風呂と美味しいご飯と広い部屋で、やっぱり知能指数がスーッと下がっていたので気付かなかった。
「陛下は人が良すぎる。故に、貴様のような詐欺師が近づいてくる事が多いのだ」
俺を先導する女性将校が、振り返らずに呟く。
「おや?」
俺はすぐさまチュートリアルモードを起動した。
だが、ちょっと遅かった。
足元が無くなっていたのだ。
ああいや、この状況ならチュートリアルモードはバッチリだ。
無事に底まで降りることができるだろう。
奈落へ向かって落ちていく俺。
そこへ、女性将校が言葉を放った。
「宮殿の地下は深き迷宮だ。何の力も持たないお前が抜けられるものではない。そこで己の罪を悔いて死んでいけ」
冷たい目を俺に向けていたわけだ。
あー、こりゃあいかんな。
俺は腹が立ったぞ。
落下しながら、俺は女性将校に向かって……ダブルピースをした。
「今日中に戻るわ!」
「なっ!?」
彼女が絶句したところで、落とし穴が閉じた。
さて、チュートリアルで落下の状況をチェックだ。
意外とあちこちにでっぱりがある。
ヘルプ機能をやったり、ストップをかけたりしながら細かくチェックしていく。
よし、こんな感じか。
何度かやり直して、感覚を掴んだ。
俺はゲイルハンマーを振り回した。
風で落下速度を落とし、方向制御をし、出っ張りを蹴りながらゆったりと降りていく。
そして、無事に着地だ。
宮殿までの距離は……。
『上に向かって300mです』
「でかいなあ。あと、暗いな。明かり付けられる?」
『付けられます。古代遺跡の照明装置が存在します』
「はいはい。じゃあそれを起動するパスワードは?」
『こちらです』
表示されたパスワードを読み上げた。
すると、地の底の迷宮……いや、古代遺跡と言ったな? これがパッと点灯した。
ふむふむ、壁が赤かったり黒かったりするな。
金属製の腕や足みたいなのがあちこちから突き出している。
通路はあちこちに枝分かれしており、なるほど迷宮か。
で、ひどい臭いだ。
スリーズシティのあれに近いな。
……ってことは。
「ヘルプ機能。これ、魔法工学で作られた遺跡だったりする?」
『魔法と魔法工学の区別が存在しなかった時代に作られた遺跡です』
「なるほど。じゃあ色々ありそうだな。よし、行こう。ルミイのお風呂タイムまでにはクリアして戻るぞ。それからあの将校はダメだな。戻ってぶっ飛ばそう。で、ヘルプ機能。迷宮の地図出して」
『表示します』
謁見の間は、ファンタジー的な見た目ではなかった。
ぱっと見、でかい応接間のような……。
皇帝は、大仰な冠もローブも纏っていない。
機械仕掛けっぽい額冠と、仕立てがめちゃくちゃ良さそうなスーツを着ていた。
妙齢のお姉さんだ。
「いかにもいかにも。だけど今回は、俺のやらなきゃならんことだったから始末したというのもありますけどね」
俺のちょいちょいぞんざいな物言いに、皇帝の護衛らしき女性将校たちが剣呑な空気に包まれた。
それを手で制する皇帝。
「やらなくてはいけないこと?」
「あいつは女性を無条件でたぶらかす能力を持ってましてね。俺の仲間はご覧の通り世界一の美少女なので、絶対にヤツの魔手が掛かる前に仕留めねばと思って、仕留めました」
俺は肩をすくめた。
皇帝がちょっと真顔になり、護衛の将校たちの表情がこわばる。
「彼は有言実行ですよ」
教授が笑いながら、俺の肩を叩いてみせた。
将校たちのこわばりがひどくなる。
おいおい、リラックスしてないぞ。
「皇帝さんは、マナビさんを侮ってないですね」
ルミイの目は確かだ。
これまで散々、俺をバカにした連中を見てきたからなあ。
この国は魔法だけに頼らないだけあって、相手が魔力を持っていなくても、大きな事を成し遂げたやつはリスペクトするようだ。
「軍からの報告は上がっている。大混乱だったようだ。それほどの状況をたった一人でもたらす怪物を打ち倒し、しかも無傷。そなたが凄まじい力を持つ異世界召喚者であることは分かった。では、その功績をもって余に何を望む?」
「自動運転装置を。あと、食料と水。以上だ」
俺は即答した。
皇帝も将校たちも、ポカンとしている。
皇配はこの状況が面白いらしく、俺と皇帝の顔を交互に見ていた。
「それだけで良いのか? そなたは我が夫も救った。ならば、スリッピー帝国における地位を与えることもできるのだぞ?」
「いや、こっちには住まないんで。俺はルミイを実家に送り届けるという大きな任務があるからな」
「ルミイとは、そのハーフエルフ……?」
「陛下、危険です。強大な魔力を感じます」
「カオルンもいるのだ!」
「陛下、危険です! 強大な魔力を感じます!」
「カオルン、座って座って」
「陛下、その男からはやっぱり何も感じません。本当のことを言っているのですか? いつもの詐欺師では?」
おい。
俺だけ疑われていないか?
将校たちは、この世界の規範と同じように魔力の有無で相手の強さを測るタイプではあるということか。
結局、俺の要求は全て通ることになった。
本日は一泊させてくれるということで、部屋と素晴らしいお風呂を用意してくれるそうだ。
分かってるじゃないか。
俺はお風呂という単語を聞くと、知能指数がスーッと下がるぞ。
だが、部屋に案内される途中、女子たちは女子部屋、俺が一人部屋だったので、おや? おかしいなーとちょっと思った。
俺は冷静になってきたぞ。
なお、女子たちは、風呂と美味しいご飯と広い部屋で、やっぱり知能指数がスーッと下がっていたので気付かなかった。
「陛下は人が良すぎる。故に、貴様のような詐欺師が近づいてくる事が多いのだ」
俺を先導する女性将校が、振り返らずに呟く。
「おや?」
俺はすぐさまチュートリアルモードを起動した。
だが、ちょっと遅かった。
足元が無くなっていたのだ。
ああいや、この状況ならチュートリアルモードはバッチリだ。
無事に底まで降りることができるだろう。
奈落へ向かって落ちていく俺。
そこへ、女性将校が言葉を放った。
「宮殿の地下は深き迷宮だ。何の力も持たないお前が抜けられるものではない。そこで己の罪を悔いて死んでいけ」
冷たい目を俺に向けていたわけだ。
あー、こりゃあいかんな。
俺は腹が立ったぞ。
落下しながら、俺は女性将校に向かって……ダブルピースをした。
「今日中に戻るわ!」
「なっ!?」
彼女が絶句したところで、落とし穴が閉じた。
さて、チュートリアルで落下の状況をチェックだ。
意外とあちこちにでっぱりがある。
ヘルプ機能をやったり、ストップをかけたりしながら細かくチェックしていく。
よし、こんな感じか。
何度かやり直して、感覚を掴んだ。
俺はゲイルハンマーを振り回した。
風で落下速度を落とし、方向制御をし、出っ張りを蹴りながらゆったりと降りていく。
そして、無事に着地だ。
宮殿までの距離は……。
『上に向かって300mです』
「でかいなあ。あと、暗いな。明かり付けられる?」
『付けられます。古代遺跡の照明装置が存在します』
「はいはい。じゃあそれを起動するパスワードは?」
『こちらです』
表示されたパスワードを読み上げた。
すると、地の底の迷宮……いや、古代遺跡と言ったな? これがパッと点灯した。
ふむふむ、壁が赤かったり黒かったりするな。
金属製の腕や足みたいなのがあちこちから突き出している。
通路はあちこちに枝分かれしており、なるほど迷宮か。
で、ひどい臭いだ。
スリーズシティのあれに近いな。
……ってことは。
「ヘルプ機能。これ、魔法工学で作られた遺跡だったりする?」
『魔法と魔法工学の区別が存在しなかった時代に作られた遺跡です』
「なるほど。じゃあ色々ありそうだな。よし、行こう。ルミイのお風呂タイムまでにはクリアして戻るぞ。それからあの将校はダメだな。戻ってぶっ飛ばそう。で、ヘルプ機能。迷宮の地図出して」
『表示します』
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