召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

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ワンザブロー帝国編

第10話 分からず屋とは滑稽な

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「異世界召喚で呼ばれた戦士? そんな馬鹿な! 魔力なし、闘気なし、体格はひょろひょろ……。こんな戦士がいるわけがない」

 レジスタンスだと名乗る人々に、早速ボディチェックされた俺だ。
 特に何も持っていなかったので、されるがままに任せたら、この言い様。

 だが俺は心が広い。
 笑って許してあげよう。

「こっちの彼女凄いわよ! ハーフエルフで、しかもハイエルフの血筋だわ! それに高位精霊の加護が掛かってる!」

「なんだと!」

 あっ、ルミイが話題になってしまった。

「ママは確かに凄いエルフかもしれないですね。あらゆる攻撃を一度だけ防ぐ加護がわたしに掛かってます。あと、パパから習った護身術で、あらゆる攻撃を一度だけ防ぐ技を身につけてて」

 凄いなルミイ!
 無条件で二回攻撃を無効化できるんじゃないか!

 こんなヒロイン見たこと無い。
 対して俺は、傍から絶対にわからないヘルプ機能とチュートリアルモードが能力だ。
 それなしだと、ひ弱な現代人に過ぎない。

 すぐに俺は無視されて、ルミイがめちゃくちゃに持ち上げられる事態となった。

「君はレジスタンスに必要だ! ぜひ残ってくれ!」

「これは凄い戦力が加わったわ! 見てなさい、ワンザブロー帝国!」

 おっと、いかん方向に場の空気が変わってきたぞ。
 ルミイもおっとりしているので、状況が急変してきてもすぐに反応しない。

 愛想笑いをニコニコしているわけだが、ちょっとずつ笑みが引きつってきていた。
 あれは内心でも、あれ? あれ、まずいぞこれ? と思っているに違いない。

 俺だって困る。

「まあ待つんだみんな」

 俺はレジスタンスたちの間にヌルリと入り込もうとした。

「邪魔だ無能力者!」

「ウグワー」

 ぼいーんと跳ね返されてしまった。

「マ、マナビさーん!」

「素の身体能力ではこんなもんだ。では上が駄目なら下から行こう」

 俺は仰向けに寝そべった。
 そして、尻移動を開始する。
 俺が持つ唯一の特技にして、唯一無二の技だ。

 まさか役立つ時が来るとはな。

 レジスタンスの股間を抜けて、「うおーっ、なんか通過していった!!」高速でルミイまで到達した。
 そして起き上がる。

「待て待て。ルミイは実家に帰るんだ。俺はそれを手助けするつもりでな。悪いがお前たちの好き勝手にはさせない」

「こ、こいついつの間に!」

「私たちが悪役みたいに言われてるわ!」

「能力が無いくせに生意気な!」

 わあわあと言い募るレジスタンスだ。
 なんと血の気の多い連中だろう。
 だが、血の気が多いからこそレジスタンスなどやっていられるのだ。

「よし、じゃあ俺と誰かが決闘して、俺が勝ったらルミイは連れていく、でどうだろう」

 俺は妥協案を口にした。
 親切心のつもりである。

 というのも、滅びの塔を破壊したのは俺たちだ。
 そんな俺たちを、ワンザブロー帝国が放っておくわけもない。

 召喚されたヤツが気に入らないからと、公開処刑施設に転送して、死に様を楽しむような連中だぞ。
 その処刑を全て突破した上に、施設まで壊してヤツらのメンツを潰した俺が、放って置かれるわけがない。

 ルミイともども、俺を殺しにスッゴイのが送り込まれてくるに違いないだろう。
 それにレジスタンスを巻き込むのもなあ……という、俺なりの気遣いだった。

 だが、心というものはなかなか伝わらないものだ。
 レジスタンスたちは一瞬キョトンとした後、爆笑した。

「お前と決闘!? どうして?」

「結果が分かりきってることじゃない!」

「お前に勝ったとして、俺たちにメリットがない! それに、当然勝つし、どちらにしたって彼女はレジスタンスの新しいメンバーになるんだからな!」

 これは民度が低い。
 俺が彼らのアッパラパーさにポカーンと口を開けて感心していたら、ルミイが心配そうに俺の袖を引っ張るのだ。

「わ、わたし、レジスタンスとか興味ないんですけど……」

「だよなー。実家に帰りたいもんな」

「そうですそうです。帰りましょう帰りましょう!」

「帰ろう帰ろう。ということで、一泊だけさせてくれたらいいから。あ、食べ物ちょうだい」

 俺とルミイがそんな事を口にしたら、レジスタンスたち……いや、レジスタンスどもの表情が怒りに変わってきた。

「七大魔法帝国に抗い、彼らの支配を終わらせる事がこの時代に生きる俺たちの使命だぞ! なぜそれが分からん!」

「崇高な使命に共感できないなんてどうかしてるわ!!」

「才能を持っているのに、それをレジスタンス活動に活かさないなんて……! はっ、ま、まさか!」

 レジスタンスの一人が良からぬことを考えたようだ。

「こいつら、ワンザブロー帝国に寝返るつもりだ!!」

「な、なんだってー!!」

 おいおい。
 俺は呆れ半分、感心半分で口を半開きにしてしまった。

 滅びの塔を破壊した俺たちが、どうしてあっちにつくんだ。
 そもそも、俺たちを追放したのは帝国だろうが。

 だが、レジスタンスどもは、自分たちが納得できるストーリーを勝手に作り上げて盛り上がっている。
 これは駄目だ。
 もう言葉は通じない。

「人里かと思ったら、滅びの塔と同じ攻略イベントだったとはな」

「帝国の人たちもおかしいですけど、レジスタンスもおかしいですね!」

 ルミイも覚悟を決めたらしい。
 そうだ。
 この状況を、チュートリアルで突破していくことになるぞ。

 レジスタンス連中は、完全にイっちゃった目をして俺たちを睨む。

「裏切り者!」

「裏切り者に死を!」

「このままだと、こいつらは内通者になる!」

「俺たちの情報をバラされる前に殺せ!」

 何も知らないのに、バラすなんて不可能だろうが。
 だがそういう状況になっている。

 レジスタンスどもが、武器や魔法の杖みたいなのを取り出した。
 集団で襲いかかってくるぞ。

 さて、スケルトンの時は規則性があったが、今回は人間だ。
 どう対処していくか……。
 今後、同じケースがあった時の練習台にさせてもらう。

「チュートリアルモード!」

 VSレジスタンス戦、スタートだ。
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