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スローライフの夜明け編

第133話 乾いた海底都市にてこんにゃくを食べる

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「よし、こんにゃく料理ができたぞ」

『素敵! 抱いて!』

「だめーっ!」

『なによー!』

 キャロルとポタルがもちゃもちゃと揉み合っているぞ。

『ピピー! ピポポ!?』

 ポルポルがこんにゃくを砲塔でつつき、その弾力に驚いたようだ。

「うむ、食べ物なのだ。だが基本的にカロリーがない。お通じが良くなる」

『不思議な食べ物ですな』

『オー! カロリーナッシング!? アメイジングフード!』

『神もこれには驚愕』

『アイヤー! なんで存在しているよー!? 意味わからないよー!』

 シェフもこんにゃくの存在意義が分からんらしいな。
 俺も分からない。
 まあ、なんか味噌とかつけて食うとさっぱりしていて美味い。

 みんなでこんにゃく料理を、うまいうまいと食べたのである。
 北極の塔はでかいから、無くなる心配はしなくてよさそうだな。

 今回は、さしみこんにゃくと味噌田楽。
 おでんは他の食材が見つかったら合成していこう。

『ワターシにもレシピが流れ込んできたよー。再現できるねー! 前菜として作ってみるよー』

「そう言うやり方もありかも知れん」

 うんうん頷く俺。
 それはそうと……。
 俺たちは今、砂漠の底に存在していた、朽ち果てた都市にいる。

 都市の探索をする前に、真っ先にこんにゃくを食っているのである。
 だって閃いたレシピは作ってみなければ気が済まないじゃないか。

『お腹がふくれた気がしないんだけど』

『焼きそば作るねー』

『素敵!!』

 キャロルは飯を作ってもらえるとすぐなびく。

「さて、ではぶらぶらと都市を巡ろう」

『ですな。だが広大ですぞ』

「どこかに地図があるだろう。都市ってのはそんなもんだ」

『そうなんですなあ。我はヘルズテーブルしか知らないので、人工物がこれほど連なっているのは初めてですぞ』

「なるほど、ファンタジー世界にいきなりSF都市みたいなもんだもんな。じゃあ俺が案内するぞ。こういうのはでかいビルに向かうといいんだ」

 仲間たちを率いて歩いて行く。
 高いビルに到着したが、そいつは上の方でポッキリへし折れている。
 構造材も朽ちていて、見ていても大変危ないのが分かる。

『オー、これにインするのはブレイブがいりますねー』

『アヒーッ! 突っ込まされたら神は二度死ぬ』

「入ったらその衝撃で崩れちゃうだろうな。砂漠になる前は海中に沈んでただろうし、色々劣化してるだろう」

『ではどうするのですかな?』

「そりゃあもちろん、こうだろう!」

 俺は斧を取り出して、ビルの外壁をガツンと殴りつけた。
 するとその辺りがバキンと割れて、崩れてくる。
 これを拾い上げて回収だ。

「ふむふむ、朽ちた構造材……」

『あまり使えそうにありませんな?』

「ああ、これはこれでいいんだ。壊したビルの部品がアイテムになるかどうかを確認していた。俺の目当ては……こいつだ!」

 ビルの前にある、半壊したオブジェ。
 薄い板があちこち欠けているように見える。
 フジツボとか海藻が乾いたのがびっしりついている。

 こいつを斧でぶん殴って、壊れたのを回収……。

「よしっ! やっぱりか! 地図版の欠片になった!」

『新しいレシピが生まれた!』

▶DIYレシピ
 ※タブレット端末
 素材:地図版の欠片+朽ちた構造材+星の欠片+夢幻の欠片

「どれどれ……?」

 トンカントンカンと作ってみたら、なるほど真っ黒なタブレットになった。
 謎のパワーで動くようで、画面をツンツンしたら地図が表示された。
 おお、GPS機能もついているな。

 これは、ゴッドモジュールのミニミニサイズみたいなもので、機能は制限されているがそれなりに色々やれるようだ。
 具体的には、馬車にしまってある素材をここから取り出せる。

 馬車アイコンをツンツンすると、それが展開した。
 馬車のアイテムボックスとつながっていますなあ。

 手持ちのこんにゃく料理をドラッグし、タブレットに放り込む。
 馬車からは、タブレットを通じて焼きそばを取り出し……。

「うまーい」

『タマル様、それは料理を取り寄せる道具なのですかな?』

「あ、すまんすまん。遊んでいた」

 ということで、アイテムの入れ替えと地図の確認ができるアイテムということだ。
 後はヌキチータからのメール受信もできるが、インカムさえあればハイドラが直接メッセージを送ってくれるからなあ。

 遅れてきた便利アイテムという感じである。

「えーと、検索。惑星の欠片……と」

 すると、地図がスーッと移動していき、俺たちからちょっと離れた地図の位置にピンが立った。
 ここか。

「なあに? どこここ?」

「多分、北極の塔の台座があった場所だな」

 横合いからポタルが覗き込んでくる。
 そして指を伸ばし、タブレットをツンツン。

「あー」

 どうでもいいところにピンが移動してしまった!
 ……なに?
 ラーメン屋?

 ここはこの世界における北極だったはずだ。
 だが、北極の塔を建て、その下にこんな都市を作っていたのだな。
 地球よりも進んでいたのかも知れない。

「よし、じゃあまずはラーメン屋跡まで移動しよう。新しいレシピが手に入るかも知れない。近くに惑星の欠片もあるようだし」

『ラーメン屋!? それ食べ物があるところよね!?』

「知らぬ単語のはずなのに勘が鋭い……!」

『行くわよ! 早く行くわよ! 新しい食べ物をあたしに食べさせて!』

「キャロル! タマルの手を引っ張るのだめよ! 私がやるんだから!」

「うおー! 両手を引っ張るなー! タブレットが見れないー!」

 そんな俺のところに、ポルポルが降りてきた。
 タブレットを受け取ると、そのまま浮上する。

『ピピー』

 ポルポルが砲塔をフリフリ、ラーメン屋の方角を指し示した。

「あ、ポルポルがナビゲートしてくれるのか。ありがとう……!」

 こうして俺たちは、朽ちた都市を移動していくのだった。


※DIYレシピ
 タブレット端末
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