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スローライフよ永遠に!編
第109話 マッサージチェアとパートのお姉さん
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羅刹侯爵との対決に備えねばならない!
そのためには何が必要か!
英気を養うことである。
「マッサージチェアが完成したぞ。ここでみんなリラックスしよう」
残影伯の玉座をゲットして生まれたレシピだが、すっかり作るのを忘れていた。
大忙しだったからな。
完成した黒くふかふかな椅子は、背もたれの辺りがウィンウィン言いながら蠢いている。
どーれ、と俺が座ってみることにした。
『どうですかな?』
「おっ、おっ、これは。首筋や肩や背中をもみほぐされていく……。はあー、こりゃ堪らんなあ。なにっ、フットレストが!? 足裏もいけるのか! うおおおお」
『タマル様が溶けましたな』
「そんなに気持ちいいの? 私もやる!」
ポタルがぎゅうぎゅうと俺の横に入り込んできた。
うわーっ狭い狭い。
「なあにこれ。わっ! きゃははははは! くすぐったいー!」
ポタルは体の凝りとは無縁らしいな、羨ましい。
一通りケタケタ笑うと、ポタルは満足したようで立ち上がった。
「こちょこちょマシーンじゃない。こう言うのが気持ちいいの? わかんないなあ」
『はっはっは、若者には分からぬでしょうな。どれ、我もやってみましょう』
ラムザーが俺に続いて腰掛け、そして『ふおおおお』とか言いながら溶けた。
「お前も凝り仲間だったか」
『そのようですな! いやあ、これは凄まじい効果ですぞ』
「なにそれー! 分かんないよー!」
ポタルがぷりぷりと怒った。
自分だけ仲間外れにされた気分なのだろう。
『カタカタ』
「えっ、骨次郎もやってみたい? いかんいかん。お前は骨だけなんだからバラバラになっちゃう」
『ピピー』
「ポルポルはちっちゃすぎて揉むところまで背が届かないだろ」
『ミーもチャレンジでーす!』
「フランクリンはスーツ脱がなきゃ無理だろ」
『オーノー! メルティでーす!』
ということは、うちのメンバーで試せるのはキャロルだけとなった。
キャロルがちょっとドヤ顔でマッサージチェアに腰掛けると、溶けた。
『ああ~。なにこれ~。あたしの思考が曖昧になる~』
「キャロルまでずーるーいー!」
ポタルが怒っている!
「自分の若さで怒るというのは珍しい」
『元気ということだからいいのではないのですかな?』
「それでもずるいの!!」
乙女心は複雑である。
『どれどれ、じゃあ僕もやってみるんだなもし』
「来たなヌキチータ。お前絶対にめちゃくちゃ効くからな。立ち上がれなくなるぞ」
『はっはっは、タマルさんは大げさなんだなもし。どれどれ……ふおおおお~』
ほら溶けた。
マッサージチェアは神をも夢中にさせる凄いアイテムであることが明らかになった。
こりゃあ凄い。
タマル村に新たなアクティビティが生まれた瞬間である。
平原にぽつんとマッサージチェアが置かれているわけなのだが。
『これ、わたしもやってみていいですか? 人間たちがこういうの使っているのを見ていたのですけれども、あちらだとわたしの姿を見たらみんな正気じゃなくなってしまいますので……』
「どうぞどうぞ」
『ありがとうございます!』
妙齢のお姉さまが現れて、笑顔とともにマッサージチェアに腰掛けた。
あれ?
誰だっけこの人。
ヘルズテーブルで見た女性陣の中で、一番お姉さまっぽい雰囲気を漂わせた、ウェーブヘアの人である。
ああいや、ウェーブヘアじゃなくて髪が波打つ無数の触手なのだ。
『ああ~』
溶けた溶けた。
「もしかして、タコさんの紹介で来た人?」
『そうです~。わたしはハイドラと言います。よろしくお願いしますね~ああ~』
立ち上がれなくなっている。
『は、早く変わって欲しいんだなもし! 僕ももうちょっと日頃の疲れを癒やされたいんだなもしー!』
ハイドラが新しい仕事のパートナーだということも忘れて、ヌキチータはマッサージチェアに夢中だ!
神々を虜にするマッサージ椅子。
結局その日は、みんながかわりばんこに座って終わった。
恐ろしいアイテムだ。
今まで、これほどまでに村の中枢へ食い込むアイテムがあっただろうか?
夜になると、館長がマッサージチェアに座っていた。
朝には、彩色洋品店のイチが座っている。
座ってないメンバは即ち、マッサージの効果が無いか、体格的に利用できない者ばかりである。
俺も使おうと思ったら、ラムザーとキャロルがやって来てチェアの前でじゃんけんをし始めた。
こりゃあいかん。
後にしよう。
あるいは新たな玉座を手に入れて、マッサージチェアに改造しないとな。
そういうことを考えつつ、今後の行動を話し合うべくヌキチータ事務所へ……。
「うおっ!? 事務所がでかくなってる! 掘っ立て小屋じゃない!」
掘っ立て小屋から、プレハブの事務所に進化しているではないか!!
扉をくぐると、ヌキチータとハイドラが忙しそうに仕事をしていた。
「やって来たぞ」
『やあやあ、ようこそなんだなもしタマルさん。昨日のマッサージのお陰で、僕の調子も数百年ぶりにいいんだなもし。ああ、昨日会ってると思うけど、こちらは今日から働いてくれるパートのハイドラさんなんだなもし』
『ハイドラと申します。よろしくお願いしますね。昨夜はマッサージのお陰でぐっすり眠れちゃいました。夫にも紹介してあげたいです』
人妻だ!
しかし本当に、しれっと村のメンバーに加わったよな。
コミュ力が高いのかもしれない。
『それで、ですね。ヌキチータさんからお願いされてデータを集めていたのですけれども、羅刹侯爵の地区は間違いなく、創造神の手を離れて完全に彼の支配下になっていますね』
「やっぱり。というか事前に情報分かるの初めてじゃない? 有能」
『僕一人だと手が足りなかったんだなもし! 本当に助かるんだなもしー』
『侵略のサポートはこれからわたしが担当しますね。こちらはハンディカムです。侵略時に装着してもらうことで、わたしがオペレーションをお伝えできます』
「急にハイテクになった!」
かくして、羅刹侯爵との対決へ、事態は動いていくのである。
そのためには何が必要か!
英気を養うことである。
「マッサージチェアが完成したぞ。ここでみんなリラックスしよう」
残影伯の玉座をゲットして生まれたレシピだが、すっかり作るのを忘れていた。
大忙しだったからな。
完成した黒くふかふかな椅子は、背もたれの辺りがウィンウィン言いながら蠢いている。
どーれ、と俺が座ってみることにした。
『どうですかな?』
「おっ、おっ、これは。首筋や肩や背中をもみほぐされていく……。はあー、こりゃ堪らんなあ。なにっ、フットレストが!? 足裏もいけるのか! うおおおお」
『タマル様が溶けましたな』
「そんなに気持ちいいの? 私もやる!」
ポタルがぎゅうぎゅうと俺の横に入り込んできた。
うわーっ狭い狭い。
「なあにこれ。わっ! きゃははははは! くすぐったいー!」
ポタルは体の凝りとは無縁らしいな、羨ましい。
一通りケタケタ笑うと、ポタルは満足したようで立ち上がった。
「こちょこちょマシーンじゃない。こう言うのが気持ちいいの? わかんないなあ」
『はっはっは、若者には分からぬでしょうな。どれ、我もやってみましょう』
ラムザーが俺に続いて腰掛け、そして『ふおおおお』とか言いながら溶けた。
「お前も凝り仲間だったか」
『そのようですな! いやあ、これは凄まじい効果ですぞ』
「なにそれー! 分かんないよー!」
ポタルがぷりぷりと怒った。
自分だけ仲間外れにされた気分なのだろう。
『カタカタ』
「えっ、骨次郎もやってみたい? いかんいかん。お前は骨だけなんだからバラバラになっちゃう」
『ピピー』
「ポルポルはちっちゃすぎて揉むところまで背が届かないだろ」
『ミーもチャレンジでーす!』
「フランクリンはスーツ脱がなきゃ無理だろ」
『オーノー! メルティでーす!』
ということは、うちのメンバーで試せるのはキャロルだけとなった。
キャロルがちょっとドヤ顔でマッサージチェアに腰掛けると、溶けた。
『ああ~。なにこれ~。あたしの思考が曖昧になる~』
「キャロルまでずーるーいー!」
ポタルが怒っている!
「自分の若さで怒るというのは珍しい」
『元気ということだからいいのではないのですかな?』
「それでもずるいの!!」
乙女心は複雑である。
『どれどれ、じゃあ僕もやってみるんだなもし』
「来たなヌキチータ。お前絶対にめちゃくちゃ効くからな。立ち上がれなくなるぞ」
『はっはっは、タマルさんは大げさなんだなもし。どれどれ……ふおおおお~』
ほら溶けた。
マッサージチェアは神をも夢中にさせる凄いアイテムであることが明らかになった。
こりゃあ凄い。
タマル村に新たなアクティビティが生まれた瞬間である。
平原にぽつんとマッサージチェアが置かれているわけなのだが。
『これ、わたしもやってみていいですか? 人間たちがこういうの使っているのを見ていたのですけれども、あちらだとわたしの姿を見たらみんな正気じゃなくなってしまいますので……』
「どうぞどうぞ」
『ありがとうございます!』
妙齢のお姉さまが現れて、笑顔とともにマッサージチェアに腰掛けた。
あれ?
誰だっけこの人。
ヘルズテーブルで見た女性陣の中で、一番お姉さまっぽい雰囲気を漂わせた、ウェーブヘアの人である。
ああいや、ウェーブヘアじゃなくて髪が波打つ無数の触手なのだ。
『ああ~』
溶けた溶けた。
「もしかして、タコさんの紹介で来た人?」
『そうです~。わたしはハイドラと言います。よろしくお願いしますね~ああ~』
立ち上がれなくなっている。
『は、早く変わって欲しいんだなもし! 僕ももうちょっと日頃の疲れを癒やされたいんだなもしー!』
ハイドラが新しい仕事のパートナーだということも忘れて、ヌキチータはマッサージチェアに夢中だ!
神々を虜にするマッサージ椅子。
結局その日は、みんながかわりばんこに座って終わった。
恐ろしいアイテムだ。
今まで、これほどまでに村の中枢へ食い込むアイテムがあっただろうか?
夜になると、館長がマッサージチェアに座っていた。
朝には、彩色洋品店のイチが座っている。
座ってないメンバは即ち、マッサージの効果が無いか、体格的に利用できない者ばかりである。
俺も使おうと思ったら、ラムザーとキャロルがやって来てチェアの前でじゃんけんをし始めた。
こりゃあいかん。
後にしよう。
あるいは新たな玉座を手に入れて、マッサージチェアに改造しないとな。
そういうことを考えつつ、今後の行動を話し合うべくヌキチータ事務所へ……。
「うおっ!? 事務所がでかくなってる! 掘っ立て小屋じゃない!」
掘っ立て小屋から、プレハブの事務所に進化しているではないか!!
扉をくぐると、ヌキチータとハイドラが忙しそうに仕事をしていた。
「やって来たぞ」
『やあやあ、ようこそなんだなもしタマルさん。昨日のマッサージのお陰で、僕の調子も数百年ぶりにいいんだなもし。ああ、昨日会ってると思うけど、こちらは今日から働いてくれるパートのハイドラさんなんだなもし』
『ハイドラと申します。よろしくお願いしますね。昨夜はマッサージのお陰でぐっすり眠れちゃいました。夫にも紹介してあげたいです』
人妻だ!
しかし本当に、しれっと村のメンバーに加わったよな。
コミュ力が高いのかもしれない。
『それで、ですね。ヌキチータさんからお願いされてデータを集めていたのですけれども、羅刹侯爵の地区は間違いなく、創造神の手を離れて完全に彼の支配下になっていますね』
「やっぱり。というか事前に情報分かるの初めてじゃない? 有能」
『僕一人だと手が足りなかったんだなもし! 本当に助かるんだなもしー』
『侵略のサポートはこれからわたしが担当しますね。こちらはハンディカムです。侵略時に装着してもらうことで、わたしがオペレーションをお伝えできます』
「急にハイテクになった!」
かくして、羅刹侯爵との対決へ、事態は動いていくのである。
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