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スローライフよ永遠に!編
第88話 流血男爵の亡霊だと!?
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夢幻の欠片を取りに、流血男爵領……今はタマル領の飛び地になっているここまでやって来た。
朝方出発したので、道を半ばまで突っ走っているところで、ようやくキャロルが目覚めたようだ。
上の部屋からのそのそと這い出してくる。
『お腹すいた~』
「そう言うと思って昨日の鹿焼きは多めに作っておいたんだ」
『いただくわっ!!』
カッと目を見開いて飛びついてくるキャロル。
寝起きだというのに肉をガツガツ食っている。
「なんという健啖」
「私も朝からお肉いけるよ? だけど毎日朝からたくさん食べるお陰で、タマルと一緒に行くようになってからあんまり飛ばなくなったの。ちょっとお肉が付いて来たんだよねー」
「なんですって」
「ほらほら」
「ほう、腰回りから太ももに……? ははー。これは素晴らしい」
俺は目の保養をさせてもらった。
ポタル的には、飛行速度が半分になるくらい太ったのだそうだが。それくらい肉がついている方が良いのだ。
俺の好みの問題である。
『タマル様が優しい目になりましたな。魔人である我にはよく分からぬ感情のはずですが、タマル様が素晴らしい笑顔になっているのでいいことだと分かりますぞ』
「分かりますか」
『付き合いが割りと長いですからな!』
わっはっは、と笑い合いながらラムザーと互いの肩を叩く。
そんな事をしていたら、流血男爵城が見えてきたではないか。
ちょっと寂れているが、俺たちが攻略した頃とあまり変わっていない。
ヘルズテーブルのことだから、打ちこわしや略奪があってもいいだろうに。
「随分きれいだな。まさか流血男爵の怨念みたいなものを怖がって、誰も城に入ってないとかじゃないだろうな」
この地域には俺が解放した人間たちが住んでおり、彼らはなんか、俺の領民みたいな扱いになるのだそうだ。
こっちからはこのところ、何一つ接触も連絡もしてないし、そもそも何人住んでるのか、どういう顔ぶれなのかもさっぱりわからないのだが。
『オー、ゴースト!? タマルさんは流血バロンを滅ぼしたのですねー』
「捕まえて売っぱらっただけで、あとは知らないぞ」
『ワッツ? ではゴーストにならないのでは?』
「そう言えばそうだなあ。フランクリンの冷静なツッコミで気付いたぞ」
これを聞いて、ラムザーがハッとした。
『雪だるまだけに冷製ツッコミ……』
「コラー」
『わっはっはっはっは』
俺に脇腹を小突かれて、笑うラムザー。
それを見て、やーねーと囁きあうポタルとキャロルなのだ。
なお、魔人にもハーピーにもマンイーターにも、幽霊的なものの概念が存在しないのだそうだ。
彼らは割と、唯物論的な考えなのである。
「でもほんと、人間はわかんないよねえ。死んじゃったのなんか何も怖くないじゃないねー」
『死ぬって枯れることでしょ? そんなの、仲間の栄養になって終わりだわ。むしろありがたいわねー』
ねー、と分かり合う女子たち。
うーん、異種族の価値観!
ファンタジーな世界なら、幽霊とかゾンビとかいそうじゃない?
「なあ骨次郎」
『カタカタ』
「あっ!! 骨次郎いるじゃん!! まんまスカルガイストっていうスケルトンで幽霊な存在じゃん!」
『うむ、そういうのは普通におりますし、個々の戦闘力は高くないので別に怖くないのですぞ』
「あー、唯物論~」
ヘルズテーブル、その辺りの感覚もサバサバしてるのな。
そういうことで、ちょっと離れたところに住み着いている人間たちにインタビューしてみた。
「お城から幽霊出てきたりする?」
「あっ、スローライフ王タマル様!! ははーっ!! おっしゃる通り、近くにいると夜な夜なうめき声がして、城跡を漁ろうとした者が一夜にして白髪になって戻ってきたりしてすぐに死んでしまったりしました」
「やっぱ何かいるんだな」
夢幻の欠片集めに暗雲!
いや、何かいるなら捕獲すればいいんだけどな。
この虫取り網、普通に幽霊とかも捕獲するだろ。
すると、俺に幽霊の証言をしてくれた人の娘とみられるお嬢さんが補足してきた。
「お父さん! それはボケちゃった隣のおじいさんでしょ! 最初から白髪だったし、戻ってきた時に転んで頭打って死んだんじゃない!」
「そうとも言うなあ……。ついつい、タマル様にリップサービスをしてしまった」
「そういうの紛らわしいからやめてね!?」
ちょっとこのお父さんにお説教をした。
だが、そのボケていたおじいちゃんは、城で確かに何かと出会ったらしい。
そして、「恐ろしい恐ろしい……あわわわわ」と言いながら死んだのだとか。
そんな恐ろしいものが……。
まあ虫取り網でいけるいける。
「よしみんな、ゴーだ。ゴー」
『行きましょうぞ! なんだかんだでタマル様も怖がってませんな』
「今まで色々経験してきて、それよりもとんでもないのが城にいるとは思えないからな。まあ出てきたら捕獲して売り払えばいいし、何も出てこなかったら夢幻の欠片をゲットするだけではないか」
『うむうむ、単純明快! そのとおりですなあ』
『ノーフィアー! ノーフューチャーでーす!』
「ノーフューチャーはだめでしょ」
こうして、流血男爵の城へ乗り込んだ俺たち。
昼なお暗い城内で、どれどれ、スポットライトでもつけてやるかと構えた時だ。
目の前を、スウーっと通過するやつがいた。
白くて透き通っていて、まるでシーツに包まれたおばけのような……。
「うおーっ!?」
『あひぇーっ!?』
俺とおばけが同時に叫び声を上げた。
おばけも……?
『お、お、お、お、お助けェーっ!! あわわわわーっ! 恐ろしい恐ろしいーっ!!』
おばけはそう叫ぶと、その場にぶっ倒れてしまったのだった。
なんだなんだ!?
朝方出発したので、道を半ばまで突っ走っているところで、ようやくキャロルが目覚めたようだ。
上の部屋からのそのそと這い出してくる。
『お腹すいた~』
「そう言うと思って昨日の鹿焼きは多めに作っておいたんだ」
『いただくわっ!!』
カッと目を見開いて飛びついてくるキャロル。
寝起きだというのに肉をガツガツ食っている。
「なんという健啖」
「私も朝からお肉いけるよ? だけど毎日朝からたくさん食べるお陰で、タマルと一緒に行くようになってからあんまり飛ばなくなったの。ちょっとお肉が付いて来たんだよねー」
「なんですって」
「ほらほら」
「ほう、腰回りから太ももに……? ははー。これは素晴らしい」
俺は目の保養をさせてもらった。
ポタル的には、飛行速度が半分になるくらい太ったのだそうだが。それくらい肉がついている方が良いのだ。
俺の好みの問題である。
『タマル様が優しい目になりましたな。魔人である我にはよく分からぬ感情のはずですが、タマル様が素晴らしい笑顔になっているのでいいことだと分かりますぞ』
「分かりますか」
『付き合いが割りと長いですからな!』
わっはっは、と笑い合いながらラムザーと互いの肩を叩く。
そんな事をしていたら、流血男爵城が見えてきたではないか。
ちょっと寂れているが、俺たちが攻略した頃とあまり変わっていない。
ヘルズテーブルのことだから、打ちこわしや略奪があってもいいだろうに。
「随分きれいだな。まさか流血男爵の怨念みたいなものを怖がって、誰も城に入ってないとかじゃないだろうな」
この地域には俺が解放した人間たちが住んでおり、彼らはなんか、俺の領民みたいな扱いになるのだそうだ。
こっちからはこのところ、何一つ接触も連絡もしてないし、そもそも何人住んでるのか、どういう顔ぶれなのかもさっぱりわからないのだが。
『オー、ゴースト!? タマルさんは流血バロンを滅ぼしたのですねー』
「捕まえて売っぱらっただけで、あとは知らないぞ」
『ワッツ? ではゴーストにならないのでは?』
「そう言えばそうだなあ。フランクリンの冷静なツッコミで気付いたぞ」
これを聞いて、ラムザーがハッとした。
『雪だるまだけに冷製ツッコミ……』
「コラー」
『わっはっはっはっは』
俺に脇腹を小突かれて、笑うラムザー。
それを見て、やーねーと囁きあうポタルとキャロルなのだ。
なお、魔人にもハーピーにもマンイーターにも、幽霊的なものの概念が存在しないのだそうだ。
彼らは割と、唯物論的な考えなのである。
「でもほんと、人間はわかんないよねえ。死んじゃったのなんか何も怖くないじゃないねー」
『死ぬって枯れることでしょ? そんなの、仲間の栄養になって終わりだわ。むしろありがたいわねー』
ねー、と分かり合う女子たち。
うーん、異種族の価値観!
ファンタジーな世界なら、幽霊とかゾンビとかいそうじゃない?
「なあ骨次郎」
『カタカタ』
「あっ!! 骨次郎いるじゃん!! まんまスカルガイストっていうスケルトンで幽霊な存在じゃん!」
『うむ、そういうのは普通におりますし、個々の戦闘力は高くないので別に怖くないのですぞ』
「あー、唯物論~」
ヘルズテーブル、その辺りの感覚もサバサバしてるのな。
そういうことで、ちょっと離れたところに住み着いている人間たちにインタビューしてみた。
「お城から幽霊出てきたりする?」
「あっ、スローライフ王タマル様!! ははーっ!! おっしゃる通り、近くにいると夜な夜なうめき声がして、城跡を漁ろうとした者が一夜にして白髪になって戻ってきたりしてすぐに死んでしまったりしました」
「やっぱ何かいるんだな」
夢幻の欠片集めに暗雲!
いや、何かいるなら捕獲すればいいんだけどな。
この虫取り網、普通に幽霊とかも捕獲するだろ。
すると、俺に幽霊の証言をしてくれた人の娘とみられるお嬢さんが補足してきた。
「お父さん! それはボケちゃった隣のおじいさんでしょ! 最初から白髪だったし、戻ってきた時に転んで頭打って死んだんじゃない!」
「そうとも言うなあ……。ついつい、タマル様にリップサービスをしてしまった」
「そういうの紛らわしいからやめてね!?」
ちょっとこのお父さんにお説教をした。
だが、そのボケていたおじいちゃんは、城で確かに何かと出会ったらしい。
そして、「恐ろしい恐ろしい……あわわわわ」と言いながら死んだのだとか。
そんな恐ろしいものが……。
まあ虫取り網でいけるいける。
「よしみんな、ゴーだ。ゴー」
『行きましょうぞ! なんだかんだでタマル様も怖がってませんな』
「今まで色々経験してきて、それよりもとんでもないのが城にいるとは思えないからな。まあ出てきたら捕獲して売り払えばいいし、何も出てこなかったら夢幻の欠片をゲットするだけではないか」
『うむうむ、単純明快! そのとおりですなあ』
『ノーフィアー! ノーフューチャーでーす!』
「ノーフューチャーはだめでしょ」
こうして、流血男爵の城へ乗り込んだ俺たち。
昼なお暗い城内で、どれどれ、スポットライトでもつけてやるかと構えた時だ。
目の前を、スウーっと通過するやつがいた。
白くて透き通っていて、まるでシーツに包まれたおばけのような……。
「うおーっ!?」
『あひぇーっ!?』
俺とおばけが同時に叫び声を上げた。
おばけも……?
『お、お、お、お、お助けェーっ!! あわわわわーっ! 恐ろしい恐ろしいーっ!!』
おばけはそう叫ぶと、その場にぶっ倒れてしまったのだった。
なんだなんだ!?
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