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スローライフから逃げられると思うな編

第62話 武装が必要だな!

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 ミスリルで強化された飛空艇を、ドラゴンにぶつけたりして確認してきたぞ。
 かなり頑丈だ。
 だがブレスでちょっと溶ける。

「苦渋の選択だが、飛空艇を武装せねばなるまい……」

『おっ、今更苦渋の感情を覚えたのですかな? 始終我らはフル武装ですが』

「あっ、今、苦渋と始終で韻を踏んだ?」

『ハハハ踏んでませんぞー』

「またタマルとラムザーがイチャイチャしてる」

『この二人いつもこうなの?』

「いっつもこうなんだよ」

 ポタルがキャロルとやり取りしてて、ちょっと嬉しそうである。
 愚痴を共有できる女子仲間を得たな。
 良かったな。

 俺とラムザーで、暖かな眼差しでポタルを見た後、本格的にどうするかを相談する。

「素材が欲しいんだよな。DIYは基本的に武器が出てこないんだ。平和なスローライフだからな」

『タマル様の認識はそれでいいと思いますぞ』

「おうおう。でな、それっぽいものを見立てで武装っぽくするんだけどな。どういう素材がいいか、どこで素材を手に入れたらいいかを考えてるんだ」

『そうですなあ。デッドランドマウンテンか、あるいは海底か。そう言えば退廃帝の城跡が完全に湖になってましたな』

「そうだ! そこに潜水艇で潜ってみるか!」

 そういうことになった。

『え? 空をとぶために水底に潜るの? なんでなの? あたしそういう意味の分からないことしないわよ?』

「水底にはごちそうの素材が」

『行くわ』

 キャロル、今までの仲間で一番分かりやすいかもしれない!

「キャロル、ごちそうの材料の釣り方教えたげる」

『ほんと!? 教えて!!』

 ポタルにすごい勢いで食いつくキャロル。
 かくして二人は、釣り竿を担いで湖に行ってしまった。
 仲良しだなあ。

『湖は我らだけで潜ってもいいですな。フランクリンはどうですかな』

「おーいフランクリン!」

『オー……。ミーはここで日向ぼっこしまーす。サンシャインをオールボディにシャワーしても溶けない快感……!』

『退廃的な喜びに身を浸していますな。退廃帝を憎んでいた雪だるまが退廃に興じるとは』

「そう言うことがあってもいいだろう。俺たち二人で行くか!」

『ピピー』

「おっ、ポルポルも行くか」

 そう言う事になったようだ。

『カタカタ』

「馬車から展開するんだから、骨次郎もいたよな。よーし、出発だ!」

 久々の潜水艇展開である。
 湖に、どぼんとでかい潜水艇が出現した。

 遠くで釣りをしていたポタルとキャロルが、これを指さしてきゃあきゃあ騒いでいる。
 おおかた、騒ぐと魚が逃げるとか言ってるんだろう。

 すっかり水没した退廃帝の城跡は、建物の凹凸が多いためか魚がたくさん住み着いている。
 魚礁になってるんだな。

「よーし、出航ー」

『いいですぞー』

『ピピー』

 窓からは水の中が見えてくる。
 退廃帝の城の周囲には幾つかの建物があって、それぞれの中に多分、様々な素材があったりするのだろう。
 だがあの時、俺はワカサギ釣りに全てを賭けていて、素材採集をしていなかった。

 今回はワカサギではない。
 素材採集そのものが目的である。

「何がでかかったり尖ってたものが欲しいな。後はキャロルのために食材も欲しい」

『あのマンイーターの娘は本当に食べるのが大好きですなあ』

「何百年も根っこからしか養分を取ってなかっただろうからな。なのに、どうやら人間っぽい姿の彼女は味覚があったようだ。不幸としか言いようがないだろう」

『タマル様と出会ってしまったがために、味の付いた食事の旨さを知ってしまったのですな。もうこれ、食人に戻れませんな』

「戻れないだろうねえ……」

『カタカタ!』

 ラムザーとお喋りしていたら、骨次郎が何やら報告してきた。
 どうやら素材っぽいものが見つかったようだ。

 ほう、槍っぽいものがたくさん!
 アザラシの獣人みたいな魔人がいたのだが、彼らの武器だろう。

「よーし、では回収に行こう!」

『スイムスーツは久々ですなあ』

 二人でスイムスーツに着替える。
 ポルポルはそのまんまいけるらしい。

『ピピー』

 ラムザーの背中にぴょこんと乗り込んできた。
 あとはモータースクリューを持って、転がっている槍に向かっていく。

「回収、回収っと」

『我のアイテムボックスにも仕舞っておきましょう』

「おお、助かる」

『ピピー』

「えっ!? ポルポルもアイテムボックス持ってたのか! ああ、住民だもんなあ。そりゃあ持ってるか」

 これは心強いぞ。
 俺がアイテムボックスの空きが35ほど、ラムザーが15、ポルポルが15ある。
 槍はやはり30本までは一つのアイコンで管理できるから……。
 ゲットしたり90本!

『新しいレシピが生まれた!』

▶DIYレシピ
 ※でっかい槍
 素材:槍×25

「あ、微妙にあと10本足りない……! 仕方ない。アイテムボックス欄をもうちょっと埋めていくか」

 結局、あるだけの槍を回収することになってしまった。
 ついでに、湖底にへばりついていた大きな魚をタモ網でゲットする。

『新しいレシピが生まれた!』

▶DIYお料理レシピ
 ※キングイトウのソテー
 素材:キングイトウ
 ※キングイトウのアラ汁
 素材:キングイトウ

「お料理もゲットじゃないか。順調順調」

 この他、退廃帝が所有していたのであろう絵画とか、美術品なども回収したのだった。
 これらは後々、魔人商店で売れるだろう。

 そして頭上でひらひらしているのは、ポタルとキャロルが垂らしている釣り針ではあるまいか。
 ちょっとサービスをしてやろう。

 俺はニョロニョロと泳いできた、ウナギのような魚を二人の釣り竿に引っ掛けてやるのである。
 上でバタバタと騒がしくなった。
 二人がきゃあきゃあ言いながら釣り上げているのではないか。

 知らん顔して後で聞いてやろう。


▶DIYレシピ
 でっかい槍

 DIYお料理レシピ
 キングイトウのソテー
 キングイトウのアラ汁
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