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スローライフから逃げられると思うな編
第60話 君の名は……みんなで考えよう
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「マンイーターさんのお名前は?」
『無いわよ』
「なんですって」
「ないの!?」
『あたしたちは個体を互いに認識できるもの。名前がないと認識できないあんたたちとは違うわ』
『文化の違いですなー』
『多様性ですねー』
『ピピー』
ここは、馬車の中。
マンイーターの沼からはちょっと離れたところにいる。
「だが、呼び名が決まってないと不便だな。君が言う通り、俺たちは名前がないと認識できないのだ。ということで……みんなで君の名前を考えよう」
『いいですな! 考えましょう!』
「ねえねえ、せっかくだからタマル村に戻ってゆっくり考えようよ!」
『……ということは……飛空艇で村に戻るのですな!』
「そうなるな!」
そういうことになった。
馬車が飛空艇と置き換わる。
これを、マンイーター娘が目を見開いて眺めていた。
『とんでもないことが起きてるんだけど。なにこれ。あんたたち何者!?』
『スローライフキングのタマル様ですぞ。我々はその一味。割と、部下とかそう言う感じじゃなく仲間みたいなゆるーい関係ですな』
『不思議な関係……。それにこの大きいものも不思議。なにこれ』
「乗り込んだら空が飛べる船だよ! ほらほら、乗った乗った!」
ポタルに背中を押されて、マンイーター娘が飛空艇に乗り込んできた。
そして舞い上がる飛空艇。
『きゃああああああっ! しょ、植物が空を飛ぶなんてありえない、ありえないーっ!!』
下半身を根っこに変えて、甲板にへばりつこうとするマンイーター娘。
「怖くない怖くない!」
『怖いわよーっ!! 動き回ること自体がそもそもありえないんだからーっ!!』
ポタルに言われて、むきーっと返すマンイーター娘だ。
二人ともキャラが違ってて楽しいなあ。
わあわあきゃあきゃあと騒ぎながら、デッドランドマウンテンから降りていく飛空艇。
ドラゴンたちも、山から離れた対象を追いかけるつもりはないらしい。
時速一二〇キロの速度で、飛空艇が空を駆ける。
あっという間に見知った土地を超え、タマル村までやって来た。
速いなー。
馬車の十倍以上の速度だもんな。
しかも障害物も何も関係ない。
二時間半ほどの飛行で、デッドランドマウンテンからタマル村まで行けるのね。
村に住む外なる神々が出てきて、手を振っている。
俺も振り返した。
『どうですかタマルさん!!』
「館長! こちらがお約束のマンイーターです」
『ありがとう、ありがとう』
館長と固い握手を交わす。
そして、館長のふくろうヘッドがじーっとマンイーター娘を見つめる。
『こちらは……? 我が博物館に寄付を……?』
「しないよ! 新しい住人だ」
『そうか、残念。だがいつでも気が変わったら言ってください』
博物館展示物拡張の情熱が凄いな。
『あたし今、あの目で見られてぞーっとした』
「ああ見えてあの人は神だからなあ」
わいわいと降りてきたところで、俺たちみんなで車座になるのだ。
「はい、ではそういうわけでね、新しく住民が増えました。マンイーター娘さんです! はいみんな拍手!」
わーっと拍手が巻き起こる。
『なにこの茶番』
「仲間になったことはめでたいんですけどね、なんと彼女、お名前がないということで、これでは呼びにくい。ということで、皆さんのお知恵を拝借し、名前を決めていこうということになりました。みんな名前を思いついたら発言して下さい」
「はーい!」
「はいポタルさん早かった」
「ポタポタ!」
「君ポルポルもだけど、自分の名前関係を使うの好きね? じゃあ候補1と」
『正気!?』
『では我が!』
「はい、次はラムザーどうぞ!」
『ガルガン!』
「強そう! でもイメージと違うねー」
マンイーター娘の姿を、確認してみよう。
活動的な印象のポタルと違って、ちょっと深層の令嬢っぽい外見だ。
基本的に服は着ていないので、今は危ないところに蔦を巻き付けた感じである。
体型はポタルよりもグラマーですな。
植物出身なので、動きは鈍い。
『オーケー、ミーの渾身のネーミングでーす!』
「はいフランクリン! 何気に真打ちだぞお前。期待してるからな」
『キャロライン!!』
「凄いドヤ顔だあ」
『もうどうにでもして』
マンイーター娘が疲れ切った顔である。
「じゃあみんなの意見をまとめた感じで、キャロルでどうだろう」
「いいと思う!」
『異議なし!』
『ブラボー!』
『ピピー』
意見を発していないポルポルも満足のようだ。
では、満場一致でマンイーター娘の名前はキャロルということに決まった。
「改めてようこそ、マンイーターのキャロル! これは野菜であるキャロットもイメージした名前なので、植物みもちょっとあるのだ」
『こだわりですな』
「へえー!」
『タマルさんもやりますねー』
『はいはい』
本人が一番興味なさそうだぞ!
キャロルは植物系なので、基本的にクールではあるのだ。
「ではキャロルの住民加入をお祝いして、俺が今までのレシピから選り抜きでごちそうを」
『ごちそう!?』
ぐわーっと食いついてくるキャロル。
『ねえつまりそれってさっきの食べ物よりもずっと種類があって数が多くてもっともっと美味しかったりするのほんとそれあたしのために作ってくれるってこと!?』
「落ち着け、落ち着け……色々当たって気持ちいい……」
「はーなーれーてー!」
間にぎゅうぎゅうとポタルが入ってきたのだった。
▶住民
マンイーターのキャロル
『無いわよ』
「なんですって」
「ないの!?」
『あたしたちは個体を互いに認識できるもの。名前がないと認識できないあんたたちとは違うわ』
『文化の違いですなー』
『多様性ですねー』
『ピピー』
ここは、馬車の中。
マンイーターの沼からはちょっと離れたところにいる。
「だが、呼び名が決まってないと不便だな。君が言う通り、俺たちは名前がないと認識できないのだ。ということで……みんなで君の名前を考えよう」
『いいですな! 考えましょう!』
「ねえねえ、せっかくだからタマル村に戻ってゆっくり考えようよ!」
『……ということは……飛空艇で村に戻るのですな!』
「そうなるな!」
そういうことになった。
馬車が飛空艇と置き換わる。
これを、マンイーター娘が目を見開いて眺めていた。
『とんでもないことが起きてるんだけど。なにこれ。あんたたち何者!?』
『スローライフキングのタマル様ですぞ。我々はその一味。割と、部下とかそう言う感じじゃなく仲間みたいなゆるーい関係ですな』
『不思議な関係……。それにこの大きいものも不思議。なにこれ』
「乗り込んだら空が飛べる船だよ! ほらほら、乗った乗った!」
ポタルに背中を押されて、マンイーター娘が飛空艇に乗り込んできた。
そして舞い上がる飛空艇。
『きゃああああああっ! しょ、植物が空を飛ぶなんてありえない、ありえないーっ!!』
下半身を根っこに変えて、甲板にへばりつこうとするマンイーター娘。
「怖くない怖くない!」
『怖いわよーっ!! 動き回ること自体がそもそもありえないんだからーっ!!』
ポタルに言われて、むきーっと返すマンイーター娘だ。
二人ともキャラが違ってて楽しいなあ。
わあわあきゃあきゃあと騒ぎながら、デッドランドマウンテンから降りていく飛空艇。
ドラゴンたちも、山から離れた対象を追いかけるつもりはないらしい。
時速一二〇キロの速度で、飛空艇が空を駆ける。
あっという間に見知った土地を超え、タマル村までやって来た。
速いなー。
馬車の十倍以上の速度だもんな。
しかも障害物も何も関係ない。
二時間半ほどの飛行で、デッドランドマウンテンからタマル村まで行けるのね。
村に住む外なる神々が出てきて、手を振っている。
俺も振り返した。
『どうですかタマルさん!!』
「館長! こちらがお約束のマンイーターです」
『ありがとう、ありがとう』
館長と固い握手を交わす。
そして、館長のふくろうヘッドがじーっとマンイーター娘を見つめる。
『こちらは……? 我が博物館に寄付を……?』
「しないよ! 新しい住人だ」
『そうか、残念。だがいつでも気が変わったら言ってください』
博物館展示物拡張の情熱が凄いな。
『あたし今、あの目で見られてぞーっとした』
「ああ見えてあの人は神だからなあ」
わいわいと降りてきたところで、俺たちみんなで車座になるのだ。
「はい、ではそういうわけでね、新しく住民が増えました。マンイーター娘さんです! はいみんな拍手!」
わーっと拍手が巻き起こる。
『なにこの茶番』
「仲間になったことはめでたいんですけどね、なんと彼女、お名前がないということで、これでは呼びにくい。ということで、皆さんのお知恵を拝借し、名前を決めていこうということになりました。みんな名前を思いついたら発言して下さい」
「はーい!」
「はいポタルさん早かった」
「ポタポタ!」
「君ポルポルもだけど、自分の名前関係を使うの好きね? じゃあ候補1と」
『正気!?』
『では我が!』
「はい、次はラムザーどうぞ!」
『ガルガン!』
「強そう! でもイメージと違うねー」
マンイーター娘の姿を、確認してみよう。
活動的な印象のポタルと違って、ちょっと深層の令嬢っぽい外見だ。
基本的に服は着ていないので、今は危ないところに蔦を巻き付けた感じである。
体型はポタルよりもグラマーですな。
植物出身なので、動きは鈍い。
『オーケー、ミーの渾身のネーミングでーす!』
「はいフランクリン! 何気に真打ちだぞお前。期待してるからな」
『キャロライン!!』
「凄いドヤ顔だあ」
『もうどうにでもして』
マンイーター娘が疲れ切った顔である。
「じゃあみんなの意見をまとめた感じで、キャロルでどうだろう」
「いいと思う!」
『異議なし!』
『ブラボー!』
『ピピー』
意見を発していないポルポルも満足のようだ。
では、満場一致でマンイーター娘の名前はキャロルということに決まった。
「改めてようこそ、マンイーターのキャロル! これは野菜であるキャロットもイメージした名前なので、植物みもちょっとあるのだ」
『こだわりですな』
「へえー!」
『タマルさんもやりますねー』
『はいはい』
本人が一番興味なさそうだぞ!
キャロルは植物系なので、基本的にクールではあるのだ。
「ではキャロルの住民加入をお祝いして、俺が今までのレシピから選り抜きでごちそうを」
『ごちそう!?』
ぐわーっと食いついてくるキャロル。
『ねえつまりそれってさっきの食べ物よりもずっと種類があって数が多くてもっともっと美味しかったりするのほんとそれあたしのために作ってくれるってこと!?』
「落ち着け、落ち着け……色々当たって気持ちいい……」
「はーなーれーてー!」
間にぎゅうぎゅうとポタルが入ってきたのだった。
▶住民
マンイーターのキャロル
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