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スローライフが攻めてきたぞーっ編

第25話 潜入、逢魔卿さんちの宝物庫

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 俺、ふと気付く。

「実は虫取り網を構えてゆっくり歩くと、よほど強い相手以外は俺に気付かなくなるのだが」

『なんですかいその謎の技は』

「まあ見てろ」

 リセンボンが疑問を口にするので、実践してみせることにした。
 俺が殺戮の虫取り網を構え、忍び足になると……。

『あっ、本当に気配がめちゃくちゃ薄くなった!!』

『俺っちたちはタマルさんがいるって分かってるから見えてるけど、それでも一瞬気を抜いたらすぐにわからなくなる!』

『不思議!』

 リセンボンたちがざわつく。
 俺もこの技が不思議だったのだが、どうやらこれは、ゆっくり忍び寄って虫を捕まえられるというスローライフゲームのアクションが再現されている能力らしい。
 これが全ての対象に適用されるわけである。

 そして分析したんだが、相手が強いほど、近づくことで察知されやすくなる。
 なので、一瞬察知されたら動きを止めるのだ。

 リセンボンから宝物庫の位置を聞いて、実践してみようではないか。

『タマル様一人の決死行ですな。戻ってこないと我もポタルも死ぬので死なないようにして欲しいですぞ』

「タマルがんばれー」

 囁き声で応援するうちの一味。
 俺は手を振って応えると、そろりそろりと歩き出した。

 リセンボンがたくさんいるので、その合間を縫うように……。
 おっとぶつかった。

『!? 侵入者……』

 ピョインッ!と虫取り網で捕獲する。
 そしてまた忍び足だ。
 危ない危ない、ぶつかったらバレちゃう。

 さらに向こうから、強そうなのが来た。
 3mくらいある巨体に、バカでかい斧を担いだフグ頭の魔人で……。

 あれっ、こいつ勝手口から出入りできないサイズじゃない?
 ずっと城の中にいるの?
 それとも、逢魔卿みたいに空を飛べたりするんだろうか。

 やつは俺の近くまで来ると、ピタリと立ち止まって警戒を始めた。
 俺も立ち止まる。

 1mくらいの距離にいるので、にらみ合いみたいな状態になる。

『おかしいな……。誰かの気配がしたんだが……。気配が完全に消えている。気の所為かなあ……』

 奴が背を向けた瞬間である。
 俺の虫取り網が唸りを上げる!!
 ピョインッという音とともに、フグ頭はアイコンになった。

 どれほど強かろうと、不意を討てば一撃なのだ。
 それが虫取りの法則……。

 フグ頭が消えた跡に、武器と鍵が落ちていた。
 武器はアイテムボックスに収納して、鍵を拾い上げる。

 宝物庫の鍵だったりするかなー。
 まさか、そんなうまい話が……なんて思ってたら。

 ガチャッと音を立てて、城の奥にある宝物庫の扉は開いたのだった。

「話が早いなあ!」

 スーッと宝物庫に入り込んだ。
 色々な武器とか鎧とか宝箱が収められている。

 ふんふん、レアなアイテムなんだろうが、そこまで興味は惹かれないな。
 なぜならそんなもの、スローライフには不要だからである。

 もっと生活に密着したものが……。
 あった。
 ちょっといい感じのティーセットである。

「これこれ! こういうのでいいんだよ」

 俺は微笑みながら、そそくさとティーセットをアイテムボックスに移した。

『逢魔のティーセットをゲット!』

 美味いお茶が飲めそうだ。
 茶葉とお茶のレシピが必要だな。

「おっと忘れてた。浮遊石浮遊石。その名の通り、頭上にあったりして」

 笑いながら見上げたら、天井に引っかかっているプカプカ浮かぶ岩があった。

「あった!! 固定とかしてないのかよ! しかし天井が高いな……。壺のおっさんは置いてきてしまったし……。ここは何かDIYしてあの岩を手に入れたいな……。これでいいか」

 なんかおどろおどろしい槍と、明らかに魔法が掛かっているガントレットみたいなのを手にする。

「このレシピが代用できるかな……? お、いけそういけそう」

▶DIYレシピ
 ※魔法のマジックハンド
 素材:棒+手袋

 トンカントンカン!と作業を開始する。
 あっという間に、槍とガントレットはマジックハンドになった。

 魔法の輝きを放つ、高級そうなマジックハンドだ。
 これをスーッと天井まで伸ばし……。
 岩をむぎゅっと掴む。

 いけた。

「俺はUFOキャッチャーとか得意だからな」

 マジックハンドをするすると縮めて、岩をアイテムボックスに回収である。
 これで浮遊石をゲット。
 後は戻るだけだ……。

 と思ったら。
 宝物庫の外が騒がしくなっていた。

『侵入者だー!!』

「うわ、ラムザーとポタルが見つかったか! こりゃあ俺がどうにかするしかないぞ!」

 俺は外へと躍り出る。
 そして、『侵入者を捕まえろー!』とか叫んでるやつの尻をマジックハンドでつねった。

『ウグワーッ! し、尻がー!!』

「がはははは、侵入者はここだぞーっ」

 俺が高らかに笑うと、集まってきていたリセンボンたちがギョッとした。
 だって俺、宝物庫から出てきたもんな。

『宝物庫が破られてるー!!』

『逢魔卿が超怒るぞ!』

『なんだあいつーっ!!』

 よしよし、ラムザーとポタルへの注目をそらすことができたようだ。
 宝物庫から俺がひょっこり出てきて、魔人の尻をマジックハンドでつねった事の方が重大だもんな。

 問題は俺がどうやってこの場を切り抜けるかだが……。
 それも全て、DIYレシピで解決する。

 これだけは作りたくなかったが……やむをえまい。

 俺は宝物庫に駆け戻ると、DIY作業台を再び取り出した。
 そして鎧の胴体部分とか武器の飾り台とかを集めてくる。

 DIYレシピは代用できると分かったからな。

『侵入者覚悟しろー!!』

 宝物庫にリセンボンたちがどんどん駆け込んでくる。
 狙い目は奴らの頭上である。
 宝物庫の天井は、浮遊石があった関係で高い。扉も背が高いものが使われていたのだ。

 あの上の空間を狙う!
 よし、完成である。

▶DIYレシピ
 ※人間砲台
 素材:筒+台座+かやく

 火薬は、なんか爆発するっぽい魔法の石が保存されてたので、これを使ったよ!
 正直、威力は未知数である。
 だが仕方ない。

 完成した砲台に俺は滑り込む。

『な、なんだあれはー!!』

『ひるむな! こけおどしだー!!』

 リセンボンたちがワーッと群がってくる。

「虚仮威しなものかよ! 行くぜ! 俺、発射!!」

 俺の宣言とともに、俺が撃ち出された。

「ウグワーッ!?」

 流石に大砲で射出される衝撃はすごいぜ!!
 そしてフグ頭が扉からひょっこり顔を出したところだったのだが、そこに俺が吶喊してぶっ飛ばした。

『ウグワーッ!?』

 俺はどんどん突き進み、放物線状に落下していく。
 リセンボンたちが唖然としながら、俺の姿を見送った。

 落下先に、ラムザーが走ってくる。

『うおおおーっ、タマル様ここですぞー!!』

「よっしゃー! マジックハンドー!!」

 伸ばしたマジックハンドをラムザーがいいタイミングでキャッチ。
 飛んできたポタルが、俺の背中を掴んでぶっ飛ぶ速度にブレーキを掛ける。

「タマル飛べたの!? でもタマルのおかげで逃げられそう!」

 ラムザーとポタルを捕まえようとしていた連中は、ド派手に出現した俺に意識を向けていたらしい。
 ここで合流したから、こぞって追いかけてくるだろうな。

「撤収!!」

 俺は宣言した。

『ウグワーッ! 浮遊石を手に入れました! 500ptゲット!』

▶DIYレシピ
 魔法のマジックハンド
 人間砲台

 UGWポイント
 8640pt
 
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