ピコーン!と技を閃く無双の旅!〜クラス転移したけど、システム的に俺だけハブられてます〜

あけちともあき

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第五部:伝説編

179・崩壊の地下神殿。そしてこれからのこと

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 邪神……いや、闘神メイオーは倒れた。
 今、異世界キョーダリアスに新たな時代がやって来たのだ。

 ──なんてしんみりしている暇はなかった。
 
 ゴゴゴゴゴゴゴ……なんて音が聞こえてくる。

「これは何かな?」

「何かな? ではないぞオクノ!」

 シーマが焦った顔をしている。

「よく考えてみい! わしらがどれだけ、この地下世界で大暴れしたと思っているんじゃ! 国が二つ三つ滅びるくらいの大暴れじゃぞ!」

「確かに」

「そんなことを地下でやったらどうなると思うのじゃ。お主、遺跡を他に二つぶっ壊しとるじゃろう」

「そう言えば……」

「オクノーっ!」

「オクノくーん!」

「オクノさーん!」

 おおっ、ラムハとアミラとカリナが抱きついてきた!
 はっはっは、モテる男は辛いなあ!

「なあーにがモテる男が辛いなあじゃ!」

 シーマが俺の頭をジャンプして叩いた。

「痛い! 心を読んだなお前!?」

「ソレどころじゃないじゃろーっ!! 地下遺跡の天井が抜けるんじゃぞ!! 砂漠がまるごと、ここに落ちてくる! ああ、こらロマ!! おぬしまでどさくさに紛れてオクノに抱きつくでない!!」

 シーマが吠えながら、俺にひっついてきたロマを引っこ抜いた。

「お? なんだなんだ。そういう遊びか? うちも混ぜろよ!」

「ミッタクまで! や、やめろー」

 このでかい娘は、俺ごと女子達全員を抱えあげてしまった。
 ここで俺、ピンと来る。

「よしミッタク。このまま俺達をホリデー号へ運ぶんだ。みんなー! ホリデー号に避難だ!!」

 俺は叫ぶ。
 あちこちから、めいめい返事がある。
 そしてみんな、のんびりと船に帰り始めた。

「このままだと、もうすぐ天井が崩れるからな。イシーマ砂漠がまるごと落ちてくるぞ」

 みんな猛ダッシュになった。
 メイオー戦を終えたばかりとは思えない、必死の形相のダッシュである。

「冗談じゃない! 最終決戦を終えて死んだらシャレにならないじゃないか! 俺は……マナミと添い遂げる!」

「シュウスケ! んーっ、すきすきっ!」

 リア充カップル、足並み揃えてすごい速度で走りつつ、ラブラブしてやがる。
 あれはあれで芸の域だな。

 タカフミは絶対に逃げ遅れる速度だったが、そこは大丈夫だ。

「幻獣術! フタマタ、また頼めるか!」

「わおん!」

 俺の中からフタマタが飛び出してきた。
 途端に、なんか体から力が抜ける感覚。

 うおー、ミッタクに運んでもらってて助かったわ。
 俺はメイオーとの戦いで、かなりパワーを使い果たしていたらしい。

 俺がしおしおっとなったので、くっついてたラムハとアミラが慌てて回復呪法を使い出した。
 うーん。
 これはこう、生命力的な物を消費してるから、ダメージ回復じゃないんだよなあ……。

 そんな事を思いながら、俺の意識は遠ざかるのだった。




 次に目覚めた時。
 そこは船室のベッドだった。
 なんか腹のあたりが重いなーと思ったら、ラムハがそこに突っ伏して眠っている。

 これは、ずっと看病してくれていたというやつではないだろうか。
 グッと来るなあ。
 ラムハ大好き。

 手を伸ばして、彼女の髪を撫でた。
 おや?
 俺の腕のサイズが高校生モードと同じくらいになっている。

 なんか縮んだようだ。

「ん……」

 ラムハが目覚める。
 薄目で俺を見た彼女。
 すぐに、大きく目を見開いた。

「オクノ! 目が覚めたのね!!」

 叫ぶなり、俺に全力でしがみついてきた。
 うおーっ!
 でかい時はそこまで意識しなかったが、高校生モードで抱きつかれるとラムハは凄いボリュームだなあ!

 具体的には胸元とか。
 俺を抱きしめた彼女が、わんわんと泣いている。

 とてもキュンキュン来たので、彼女の背中を撫でてやった。

 俺が目覚めたという話は船中に聞こえたらしく、船室にどやどやとみんなが詰めかけてくる。

「オクノ氏、僕は君が無事だと信じていたよ」

「多摩川くん、君のお陰で世界は救われたぞ!」

「うんうん。あたしもダーリンも超感謝してるんだから」

「オクノが目覚めたのであるか?」

「ちょうどよかった。オクノさーん! 彼女に何か言って下さいよ! 人魚の女性って凄く情熱的で体が持ちませんよー!」

「オクノくーん!! やっぱりあたしとの子供を抱くために帰ってきてくれたんだねえ!」

「ルリアいかに赤ちゃんができてるとは言え厚かましいのでは? ここは最終決戦で生死をともにしたわたしの方が重要にですね」

「はいはい、お子ちゃま二人は後ろでね。ここはお姉さんが感動の再会を……」

「おーいオクノ! 目覚めたならバトルしようぜー!」

「はっはっは、皆から愛されているようだなオクノ。余も会いに来たぞ」

『ウワーッ! 押サナイデクダサイーイ! どらむ缶ぼでぃガ凹ミマスーッ! ウオオオー! おくのサーン! ワタシダーッ! だみあんデスゾーッ!』

「げっ、多摩川の人望高すぎ……!? あたしが船底でしこしこ病人食作ってるうちに! ええい、ここを通せええー!! 多摩川の飯だぞおおおお!!」

「はっはっは、凄い賑わいようじゃなあ。おや? 一箇所に人が集まりすぎて船が傾いとりはせんか?」

「おいこらおめえら! 一気に集まるんじゃねえ!! 船が転覆するぞ!! グルムルが必死に堪えてるんだろうがよ!」

 大変な騒ぎだ。

 青筋立てたオルカがみんなを追い出した。

「ふう……。邪神をぶっ倒したってのに、ここで船がひっくり返って死んだなんて言ったら笑い話にもならねえ」

「ありがとうオルカ。あいつら一度にしゃべるから何が何だか分からなかったぜ……!」

「それもお前さんの人望ってやつだな。全く、こうしてしぼんじまうとどこにでもいるようなガキなのに、正真正銘の英雄様だってんだからなあ。世の中は分からないぜ」

 オルカは笑いながら、床に座り込んだ。
 ラムハがジト目で彼を睨む。
 これは二人きりにして欲しいやつだな?

 だが、あえてオルカは空気を読まない。

「ラムハ。今のこいつはみんなの英雄なんだぜ? 独り占めはあとからいくらでもできるからよ。あ、他にもライバルがいたんだっけ?」

 扉の影から、ロマとコールとシーマが覗いている。
 あ、ハームラまでいるぞ。女神が出歯亀とかどうなんだ。

「世界は、英雄を欲してる。少なくとも、誰が世界を救ったかを知らしめなきゃならねえ。人を救うのは人でも英雄でもない。そうやって語り伝えられる物語なんだよ」

「物語か……。なんか、オルカがいい事いうなあ」

「年の功ってやつだよ。それに、海の男ってのはな。現実だけじゃとてもやってけねえ。まあまあ辛い世界なんだよ。だからこそ、自分を奮いたたせる物語が必要になる。つまり、どんな時代だろうと物語があれば、人間はまあまあやって行けるもんなんだ。次のお前さんの仕事はな。自分がやったことを物語にして、世界に広めることだぜ。恐るべき邪神は倒された。異界から飛来した神も倒された。全ては、人間であった一人の英雄が成したことだ……ってな」

「はあ。だが、そいつは俺だけがやったことじゃないだろ」

「そうだ。だがしかし、だ。お前さんだ。英雄オクノが最初の一歩を踏み出さなかったら、何も始まらなかったんだよ。お前は間違いなく、この偉業の全てを始めた男なんだぜ?」

 おお……!
 ちょっと……いやかなりジーンと来た。
 俺は少ししてから、オルカに言葉を返そうと口を開いた。

「オクノ、見舞いに来たぞ。もう元気そうだな」

 空気を読まないイクサが……!!
 アリシアと二人でやって来た。

 物陰から、今度はフロントと日向が申し訳無さそうに見ている。

 オルカはげらげら笑った。
 そして立ち上がると、俺の肩をポンポンと叩く。

「ってわけだ、英雄様よ。まだまだ忙しいぜ。ここで一休み、だが、また走り出さなきゃならん。追い風が必要になった頃に、声を掛けてくれ」

 そう言って、海賊は去っていった。

 これからの事か。
 そうだな。世界はまだまだ続いていくのだ。
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