ピコーン!と技を閃く無双の旅!〜クラス転移したけど、システム的に俺だけハブられてます〜

あけちともあき

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第五部:伝説編

168・俺、閃く

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『わしをクジラだと思ったか。あれはわしの眷属なので、よくこの辺を泳いでいるから勘違いされやすいのだぞ』

 クラーケンの六欲天、イー・ズグラックが親切に教えてくれた。
 そう、こいつはクラーケンだったのだ。

 あまりにでかすぎるために、全身が見えない。
 触手を世界中に広げて、キョーダリアスから出ていこうとする者を見張る、世界の番人だ。

 この世界の外に何かあるのかな?

「あ、ごめんネ、オクノ氏。僕のタクティカルアイは俯瞰で見るだけだから、僕の主観が入ってたよー。まさかクジラよりも遥かにでかいとは」

「おう、閃けそうでいいじゃないか」

 俺はやる気十分。
 人は誰しも間違うものだし、サクッと間違いを認めて先に進むのが一番いいのだ。

「俺も行こう。実は新しい技が生まれそうなんだ」

 イクサが何やら凄いことを言う。

「乱れ雪月花があるのに?」

「あるのにだ」

 ということで。

 俺とイクサが前に出る。
 久々に肩を並べるぞ。
 と思ったら、対抗心を燃やしたフロントが変身して横に並んできた。

「負けないぞ……」

「勝負じゃないが」

「なに楽しそうなことしてんだよ! うちもやるー」

 ぎゅっぎゅっと俺達の間に入ってくるミッタク。
 うわあ、やめろやめろ、狭いー!

 舳先の狭い空間にぎゅうぎゅう詰まったので、俺達は自分の勢いに押し出されるようにして、ざぶーんと海に落ちたのだった。

『なーにしとるんじゃお主ら』

 イー・ズグラックが呆れている。
 すみませんねえ、ノリで生きてるもんで。

『さあ、では掛かってくるがいい、英雄達よ。わしは手加減などせぬぞ。死ぬなよ?』

「おうよ!」

 水の中で、俺達は身構える。
 すると、ロマがすいすいーっと泳いできた。
 そして、俺にむぎゅっとキスをする。

 うおー!
 なにをするんだー!

「ほい、これで水中で呼吸できるだろ? はい、次はイクサ」

「ごぼぼ」

 イクサも抵抗しようとしたが、むぎゅっとキスをされた。

「くっ……アリシアに申し訳が立たん……」

「今のは呪法を使っただけだからノーカンだって!」

 ロマがけらけら笑いながらイクサの背中をバンバン叩いた。
 そして、フロント。

「エスプレイダースーツは水中でも呼吸できるから大丈夫だ」

「へえ、便利だねえ。じゃあミッタク」

「ごぼぼ」

 ミッタクは男らしく、両手を広げてロマを迎え入れる。
 うわあ、抱きしめあっての濃厚なキスになったぞお。

「へえ、本当に息ができるし喋れるじゃん! ってか男どもだらしねえなあ。こんなのなんでもないだろ?」

 あっ、あいつキスっていうのをよく知らないレベルなんじゃないか?
 まあ、ここはそれでいいか!

「よーし、じゃあ、水中での戦い方を教えるぞ」

 俺達四人でスクラムを組む。
 この四名が、オクタマ戦団の戦闘力トップなのである。

「水中では自在に動くことができなくなる。つまり、俺達がレベルダウンしたのと同じだ。この状況だと、イー・ズグラックの触手は恐るべき敵になる。だからこそ訓練になるんだ。俺は技を閃きまくる。みんなは独自の技を持ってるレベルだから、それを使いまくれば新しい技が派生する可能性がある。それを狙ってくれ!」

「うむ」

「了解!」

「わかった!」

 てなわけで、戦闘開始なのだ。

『準備はできたようだな。では行くぞ! それえ、タイダルウェイブ!!』

 六欲天が吠えると、なんと水の中だというのに高波が出現した。
 これは多分、水の圧力を強めて攻撃技に転用したやつだろう!

「うおお、ワイドカバー!!」

 仲間達をカバーリングしつつ、攻撃を一手に引き受ける。
 数々の戦いで強化された俺のタフネスは、これくらいじゃびくともしないぞ。

 その時だ。

 ピコーン!
『ディフレクトカウンター』

 いきなり閃きが来たぞ!

「ディフレクトカウンター!」

 俺の腰からカールの剣が引き抜かれ、ワイドカバーと同時に剣撃が走る。

『ぬおう!』

 触手の表面を切り裂いた。
 これは、どうやらカバーリング技と同時使用できるタイプのカウンターみたいだな。

 剣必須、と。

「感謝! 行くぞ!!」

 エスプレイダーが水中で翼を広げ、突っ込んでいく。

「レイダァァァァァッインパクトッッッ!!」

 水中で反転しながらの、いわゆるライダーキックだ。
 これが、質量さをひっくり返すほどの威力を秘めていたらしい。

『ヌグオオオオーッ!!』

 巨大な触手が水上に跳ね上がった。

「おっしゃあ、行くぜ!! 旋風斬っ!!」

 斧を手に、ガンガン回転を始めるミッタク。
 彼女の周囲の水流が巻き込まれ、渦潮のようになる。

「よし、利用させてもらう」

 渦潮に飛び込むイクサ!
 反射神経だけで物を考えている男だが、こいつの勘はかなりアテになる。

「よし、俺も!」

 ミッタクの渦潮に飛び込む。
 そして、渦はどんどんと六欲天へ近づいていった。

『なんだこれは!!』

 イー・ズグラックは真上から渦潮を叩き潰そうと、触手を振り下ろしてくる。
 だが、これをも巻き込み、ミッタクの旋風斬はずたずたに切り裂く。

「ミッタク、技が進化してないか!?」

「えっ!? ほ、ほんとだ! なんだ、トルネードスピンって!?」

 旋風斬が進化したな。
 そしてこの螺旋の中から弾き出されるようにしてイクサが跳ぶ。

「十六夜……!!」

 トルネードスピンの中で溜めを終えていたな!
 イクサの強烈無比な斬撃が、触手を叩き切る。

 中程から、巨大な触手が切断されて水中を舞った。

『なんのお! ドレインタッチ!!』

 触手から、さらに小さな触手が溢れ出す。
 それが、ミッタクやイクサ、エスプレイダーに触れると怪しく輝いた。

「ぐぬう!」

「くっ……」

「うへえ、力が抜ける……!」

 HPを吸い上げてやがるな。
 そいつは俺にも触れてきた。 
 そして俺のHPを吸収しようとするのだが……。

 その前に、こちらも反撃だ!
 俺は既に、弓矢を取り出して装備している。

 遠距離近距離至近距離、全てにおいて俺に死角はないのだ。

「迎撃だ!! 影矢……」

 ピコーン!!
『水晶のピラミッド』

 なんだそれ!?
 俺の体が自然に動く。

 放たれた五本の矢が、触手を跳ね飛ばしながら突き進む。
 それは大触手の上、そして四方を包むような位置に留まり、そこから呪力の光を放つ。
 なるほど、ピラミッドだ!

『な、なんだこれはーっ!?』

 ドレインをしてくる触手のことごとくが、呪力の光が作り上げたピラミッドに断ち切られた。

『ああ、理解したぞ! なるほど、お前が一番危険な相手だ! つまり、お前がメイオーに対する切り札なのだな!! ならば、わしの攻撃はお前に集中することとしよう!!』

「おう、来い!」

 次の瞬間、触手が再生し、一気に俺めがけて殺到する。
 俺はこいつに向かって真っ向から突き進む。

「ブロッキング!」

 攻撃を正面から受け止めつつ、無理やり正面から突撃する!

「オクノ、後ろからぶっ飛ばすよっ!!」

「頼むぜミッタク!」

 背後にミッタクがやって来て、斧を振りかぶり、全力で俺の背中に叩きつける。
 ブロッキングでこれを受け止めれば、推進力に変わる!

 ミッタクと俺が両方向にぶっ飛ばされる。
 俺の眼前に、みるみる近づく大触手。

 迎え撃とうと襲いかかる小さな触手は、抜き放った槍を振り回して跳ね飛ばす。

「風車だ! そしてっ!」

 ピコーン!
『活殺獣神衝』

 俺の槍が吠えた!
 ただの数打ちの槍だったものが、いつの間にか異様な輝きを帯びている。
 カールの剣同様に進化したか!

 そして、槍が纏うのは呪力の輝き。
 それが獣の形になり、触手へと食らいつく!

『ぐおおおお!』

「まだ行くぜ! お次は剣だ!」

 振りかぶれば、またあの音が響き渡る。

 ピコーン!
『不動剣!!』

 カールの剣が煌めく。
 一見して無造作に、一撃は振り下ろされた。
 だが、その剣戟は俺が放ったあらゆる技の中で最も速い!

 振った、と思った瞬間、海が裂けた。
 な、なんだあこの威力は!

 触手が、真っ向から二つに絶たれている。
 水中でこの威力ってことは、地上だと……。

「いいぞ、オクノ。俺も新たな技が……見えた!」

 水中をイクサが走っている!

 いや、あいつが走っているのは水底だ。
 剣が地面を削り、火花を放つ。

「これが俺の新たな技……地擦り……残月!!」

 地面を削る動きと同時に、跳ね上がって切り上げる強烈無比な逆袈裟。
 避けるとか、守るとかそんな動作では回避できないような圧倒的一撃が、大触手を真横から切断する!

『ウグワーッ!!』

 イー・ズグラックの叫びが響き渡った。
 ここで、割れた水中に俺達が飛び出す。

「一発行くぜ、連携を!」

「あいよ!」

「分かった!」

「了解! ブラストォォォォォォキィィィィックッ!!」

 螺旋を描きながら、強烈無比なキックを叩き込むエスプレイダー。
 そこから光の線がミッタクへと続いた。

「トルネードスピン!!」

 風と水を纏う巨大な螺旋が触手を巻き上げる。

「不動剣!」

 俺の最速の斬撃が叩き込まれる。

「地擦り残月!」

『ブラストトルネード不動残月』

 連携の名前が表示された瞬間、海が十文字に割れた。
 はるか遠くにいる、イー・ズグラックの本体まで攻撃は届いたらしい。

『ウグワーッ!! こ、これはーっ!? 凄まじい一撃ーっ!! 触手を切除せねばわしもやられるっ!! 切除ーっ!!』

 六欲天のそんな声が聞こえてきて、その気配が消えた。

 目の前には、ばらばらになった触手が浮かんでいる。

「いやあ……。とんでもないね、あんた達。マーメイドだって、そこまで戦えるやつなんていないよ……」

 ロマが半笑い、呆れ半分で言った。
 割られた海が、ゆっくり元に戻っていく。

「いやいや、これくらいしないとメイオー相手には厳しいだろ」

 俺のつぶやきに、イクサもミッタクもエスプレイダーも頷くのだった。
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