ピコーン!と技を閃く無双の旅!〜クラス転移したけど、システム的に俺だけハブられてます〜

あけちともあき

文字の大きさ
上 下
158 / 181
第五部:伝説編

158・俺、冥神と顔を合わせる

しおりを挟む
 冥界の馬車にでも乗るのかと思ったら、俺達の前に真っ黒な布が敷かれたのだ。
 それはするすると伸びて、冥府に向かって一直線。

 レッドカーペットの自動的に伸びるやつ?

「どれどれ」

「どうでしょうねえ」

「わんわん」

 犬に戻ったフタマタと、カリナと一緒にカーペットに乗ってみる。

「あっ、オクノ不用意に乗ると」

 そこでラムハの声が途切れた。
 周囲の風景が一気に流れていく。

 気がつくと、俺は建物の中にいた。

「お……? おおおー」

『よくぞ来られた、英雄殿』

 落ち着いた感じの男の声が聞こえる。

「わんわふん」

「えっ、正面見ろって? ほうほう……うおー、ガイコツ!」

 そこにいたのは、白黒の法衣を身にまとった巨大なガイコツだった。
 これが冥神ザップ……?

『いかにも。余が冥神ザップなり。歓迎しますぞ、英雄オクノと仲間達』

 見た目はモンスターみたいだけど、人間ができたガイコツだ。

「困ってるっていう話だったんで、助ける仕事を引き受けましたからね。手伝いますよ」

『ありがたい。カオスディーラーめが倒され、奴の独り占めしていた魂が解放されたまでは良かった。だが、それが一気に冥界に押し寄せてな。ご覧の順番待ちだよ。だが、これは時間をかければ捌ける。現在、神界と地上界に招集をかけ、神々を集めてこれの審判を急ピッチで進めている。問題は、カオスディーラーが飲み込んでいた凶暴な魂よ。ここに来るまで、英雄オクノも遭遇したでありましょう』

「ああ、なんか凶暴な魂がいた。倒したけど」

『うむ。冥界のできごとは、余の目にはよく見えておりましてな。あれはまだ弱い者です。もっと強大な魂が暴れまわっておる。これは余の臣下を割く余裕が無い以上、どうにも手を付けられませんでな』

「なるほど、それの回収が俺達の仕事と? あ、これ回収した凶暴な魂」

 俺はアイテムボックスから、魂をザラザラーっと出した。
 倒した後の魂は、人魂みたいな形になって小さくなるのな。

 すると、冥府の役人らしき人々がわーっと集まってきて、ほうきとチリトリで魂を集めていく。

『ありがたい。こやつらは罪人ゆえ、きっちりと罰を与えねばなりませんからな。逃げた分だけ罪も重くなる。ということで、引き続き仕事をお願いしたい』

「分かった、任せてくれ」

 冥神ザップは俺の返事を聞くと、カタカタ頭を揺らした。

「ほえー。あれは笑ってるんでしょうか」

「わんわん」

 フタマタが、笑ってますよ、と教えてくれた。
 ここは冥神の部屋なのだそうだ。
 仲間達が到着するまでしばらく待たせてもらうことになった。

 俺とカリナ用の座席。
 それとフタマタ用のラグを用意してもらった。

 フタマタがラグの上でくつろいでいる。

「そう言えばフタマタ、どうして人になったりもとに戻ったりするんだ?」

「わん、わふん」

「あ、人化すると頭の中もお子様になっちゃうのか」

「わんわん」

「未知の状況で俺をサポートする時は犬モード、その必要がない時は訓練のためにお子様双子モードと。考えてるんだなあ」

「フタマタ、かしこいです」

 うんうん、とカリナが頷く。
 なにせ、ルリアの三倍のかしこさがあるからな。
 待てよ、ということは双子に分かれても、ルリアの150%のかしこさがあるのでは……?

 ルリア……!
 地上世界でうちの母親から色々吸収して、かしこさをあげておくのだぞ……!
 頑張れ新米ママ……!

 や、俺も他人事じゃないか。
 だが俺の場合、忙しすぎて子育てに割ける時間は少なかろう。
 物理的に無理というやつだ。

 リザードマン達をベビーシッターとして雇ってもいいな。
 そうだ、そうしよう。

「オクノさん何をいろんな表情して考え込んでるんですか?」

「ああ。赤ちゃんのこれからについて……」

「ふむむ。やっぱり赤ちゃんができるとなると、特別になるんですね。わたしも早く、オクノさんと赤ちゃんをつくらなくちゃ……」

「カリナはまず成人しようね」

「むむむーっ、何かというと成人成人って! むむーっ!! あと、あと二年もあるのに……」

 悔しがっている。

「俺は逃げないので、カリナはゆっくり大人になればいいのだ。焦るもんでもないし。それに子どもの頃って今しか無いんだから。カリナが大人になってしまったら、フタマタが双子になった時、年の近いお姉ちゃんがいなくなってしまうだろう」

 我ながら変な理屈だが、これにはカリナも納得したらしい。

「なるほどです! わたし、フマちゃんとタタちゃんのお姉ちゃんをやらなくちゃいけないですもんね! がんばります!」

「わんわん」

 フタマタもありがとうと言っております。



 しばらくしたら、仲間達も到着した。

「オクノ!」

「オクノくん!」

 ラムハとアミラが同時に駆け寄ろうとして、ぶつかった。
 しばらく無言で、じーっと見つめ合う。

「アミラ。あなたは冥府に亡くなったご主人がいるでしょう? 挨拶してきたらどうなの?」

「カールには会ってくるけど、それはそれ。今の私はオクノくんの妻なんだから」

「私は何千年もかけてやっと解放されて、青春を謳歌してるんだから」

「愛に時間は関係なくない? 私の愛の重さだってラムハには負けてないんだけど」

 おおーっ!!
 火花が散っている!

「いやー、びっくりしたよ! なんだこりゃ? おお、オクノが椅子に座ってら!」

 空気を読まないミッタクが、ラムハとアミラの間をずどーんと突っ切っていった。
 鍛え抜かれたミッタクのヒップが、女子二名をぽぽぽーんと吹っ飛ばす。

「ひゃー」

「ひえー」

 いいぞミッタク!!

 俺も立ち上がり、ミッタクを軽くハグしてねぎらった。

「ナイスアクション?」

「ん? お、おう」

「それから二人共、喧嘩はやめるのだ……! 二人が喧嘩しても、ルリアが一番のりで割と色々全部持っていった事実は変わらない……!」

 ハッとするラムハとアミラ。

「ううっ、私達、現実逃避しようとしていたのかもしれないわ」

「うん。ごめんねラムハ」

「こちらことごめんなさい、アミラ」

 よし、仲直りだ。
 俺、にっこり。

「なんじゃこの茶番」

 シーマが心底呆れた風に言った。




『おや? その肉体は、冥府にいる娘のものではないのか?』

 ずっと玉座から動かなかったザップが、シーマを見て再び動いた。

「おお、こちらが冥神ザップ様か。お初にお目にかかります。戦神メイオーの使い魔の一人、シーマと申します」

 シーマはザップに、うやうやしく礼をした。
 相手が神様なので、ちゃんと礼儀正しく接するのだ。
 ザップは満足げに、カタカタ首を鳴らした。

「そしてこの肉体ですが、確かに西府アオイという娘のものを再利用しているのですじゃ。あの娘の魂はすぐに冥府に落ちましたでな」

『うむ、間違いなく、西府アオイの魂は肉体とのリンクを失っている。その体に戻ることはもはやできまい』

 さらっととんでもない話がされている。

「ザップ様、ちょっといいですか?」

『なんですかな、英雄オクノ』

 ザップ、俺に対する時は敬意を払ってくれるんだな。

「俺のクラスメイトの連中もこっちに?」

『死んだものは全てこちらにおりますな。英雄オクノの元には二人、帝国には三人残っており、これが生き残りの全てになる』

 ははあ、帝国に回収された奴の中で生き残りがいたか。
 どういう生活してるんだろうな。

 というか、二十五人転移してきて俺を入れて六人しか生き残ってないかー。
 いやいや、六人も生き残っているとも言えるな。

「それじゃあ、七勇者と五花もこっちに?」

『カオスディーラーと深く繋がった魂は汚染され、肉体の滅びと同時に破壊される。もう存在しておりませんな。だからこそ、あれが存在して魂を独占することは問題だったのです』

「あちゃー」

 五花含めた七人は完全消滅というわけだ。
 あれ?
 明良川まずくね?

「うちの船にいる生き残りに、混沌の裁定者の力を受けてパワーアップしたのがいるんだけど、あれも死んだら魂が消えるやつ?」

『そこです。英雄オクノは、あの娘に聖なる張り手を食らわせたと聞いています』

「闘魂注入か」

『あれがカオスディーラーとの接続を断ち切る力を持っていたのですな。あの娘の魂は、我が冥府の帳簿に刻まれております。この世界で死ねば、冥府へやって来ることでしょう』

「ほうほう。俺もマア、死ねばここのお世話になるもんなあ」

『ははは』

 いきなりザップが笑った。

「何を笑ってるの」

『英雄オクノ。あなたは英雄コール同様、人として成し遂げられる限界を遥かに超越した偉業を行っている。そのような者は魂の容量が大きすぎ、冥府では受け入れられぬ。だからこそ、古来よりそれらは』

 ザップが頭上を指差した。

『神となるのだ』

 ええっ、俺、神様になるの!?
しおりを挟む
感想 92

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

処理中です...