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第五部:伝説編
153・俺、メンバーを選定する
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「えーん! あたしが戦力外はひどいよー!? なんでー!」
「お腹に赤ちゃんがいるからです」
「うっ」
俺の発した一言で、ぐうの音も出ないくらいやり込められたルリア。
すごすごと引き下がっていく。
あの戦力を活かせなくなるのは残念だが、お腹に赤ちゃんがいるからな。
「意外な原因で前線を退いたりするものだ」
「あなたが無責任に子どもを作るからでしょ!」
「あいた! お尻をつねるのはどうなのかラムハさん! 確かにあの時、俺の自制心は久々にお休みをいただいていた……。そもそも親がそういうの避けるアイテムを置いておかなかったのは、まさかこういう事態を見越して……!?」
オクタマ戦団は割と激しい仕事ばかりするので、大事を取って子どもが生まれるまで、ルリアは船員扱いになったのだった。
今度は自由にひなたぼっこをしていい船員である。
リザードマンと同格だ。
「おかしい……! あたし、扱いが悪くなっているのでは……!?」
「ルリア出戻りご苦労ー。あたしがまた、みっちりと船員としての仕事を教えてやるかんね。つーか、妊娠して後衛に来るとかなに? リア充? リア充なわけ? キーッ!! あたしがリザードマンのみんなとしこしこ船底を磨いたり修理している間に、そんな楽しいことをー!」
「ひえー! ゆずりがキレたー!」
向こうでは楽しそうなことになっている。
『はい、というわけでえー』
月の女神が生えてきた。
どこから出てきたんだ。
『こういうことが今後もあると、お兄様との戦いに差し支えます。多分、あと十ヶ月待ってくれないですよあの人……っていうかあの神』
「確かに」
俺は頷いた。
産後もいきなり戦えるわけないもんな。
うちの母曰く、「まあ二年くらいはゆっくりしないとねー」とか。
『わたくしは月の女神です。月の満ち欠けと夜空を司るものです。わたくしが狂気に陥り、封印されている間、実は月を管理されていたのはわたくしたち神の盟主ワシカータ様でした』
「誰だっけそれ」
『わたくし、ラムハの中にいたので同じものを見聞きしているのですが、あなたがた会っているでしょう? あの怪しい吟遊詩人ですわよ』
「怪しい……? おお! あーあーあー!」
「あ、確かに二回くらい会った吟遊詩人がいた……」
俺とラムハで、ポンと手のひらを打つ。
「あれ、キョードウじゃなかったの? 創造神の」
『キョードウは世界の礎になった神なのですから、もう死んでいますわよ! この大地がキョードウの肉体だからキョーダリアスと呼ばれているのです。そしてあの吟遊詩人はワシカータ様です。あの方が、ルーチンワークのシステムを組んで月を動かしていたのです』
「ほうほう……。システムを組むとかうちの世界のSEみたいだな」
『遠回りしましたけど、話をもとに戻しますよ? わたくしは月の女神なので、解放された今、ようやく月が正常な満ち欠けをするようになりました。そして月が他に何を司っているかご存知? そう! 海の満ち引きと人の体の営みですわね!』
「質問する前に答えたぞこの女神」
『というわけで、わたくし、特定期間は子ができないようにするか、確実にできるようにするかをコントロールできます』
この話を聞いて、アミラがシュババババッと走ってきた。
「ほ、本当ですかハームラ様!!」
『ハウ、女神嘘つかない』
インデ◯アン嘘つかない、みたいなノリで言われたな。
「じゃあハームラ様! 私に、確実にオクノくんの赤ちゃんができるようにですね……!」
『ダメですお兄様を倒してからです』
「ガーン」
アミラがショックを受ける。
隣でラムハも呆然とした顔をしているが、まさか同じことを考えていた……?
戦えないのがあと二人増えるのは勘弁して欲しい……!!
ということで。
ラムハ、アミラ、あとは何故か、ミッタクとロマが並べられて、間違いが起きないようにハームラが呪法を掛けたのである。
しくしくと泣くラムハとアミラ。
「あたいがオクノと? ないない」
ロマがけらけら笑う。
「何これ? なんでうちが呼ばれたわけ? 意味がわからない」
相変わらず全く理解してないミッタクなのだった。
その後、俺達は王国の復興を尻目に、港町でまったりと休むことになった。
復興作業に手を貸している余裕など無いからな。
それはそれで、王国の人々に頑張ってもらうしかない。
トノス王子が陣頭指揮を取り、王国は猛烈な速度で再建されていく。
破壊された建物はすぐには無理だが、掘っ立て小屋がたくさんできあがり、瓦礫は取り除かれ、跡地には屋台が無数に立つ。
王国の経済活動が、あっという間に再開したのだ。
これは確かに、トノス王子の采配が見事と言う他ない。
金が巡ってれば、間違いなく死ぬ人間は減るもんな。
仕事が生まれるし、金が世の中を回るし、物が王国に入ってくるようになる。
そして、王国再建の際には、イクサが手を貸していた。
トノスとの間も良くなったようだ。
アリシアを娶るとなったら、辺境伯の跡取り確定だもんな。
「オクノ。俺は冥府に行くことはできん」
ここで、イクサから衝撃的なお話があった。
「そりゃあまたなんで」
「アリシアから教えてもらったのだが、帝国が攻めてくるかもしれないのだ。詳しい話はアリシアに任せる」
イクサ、難しい話は嫁に一任するという技を覚えたか。
「アリシア、説明をお願いしても?」
「はい! 王国が弱体化しますと、野心を持っている帝国がきっと攻めて参りますわ。わたくし、こう見えてお父様から軍略を多少学んでおりますの。今の弱った王国では、帝国に抗うことは難しいでしょう。ですから、オクタマ戦団の戦力の半分を、王国の守りとして置いてほしいのです」
「あー、確かに」
俺は納得した。
「じゃあ、冥府行きは最少人数でやった方がいいかもだな。冥神を手伝うっても、そんな数はいらんだろ。どうも戦えばいいだけっぽいし」
「はい。ご負担をお掛けしますが、そうしていただけるとありがたいです」
アリシアとのやり取りを終え、俺はイーサワを呼んだ。
彼はいそいそやってくると、既に用意されていた契約書を広げてくる。
「団長、王国から正式な依頼が来ました。満額の報酬は出世払いとなりますが、王国自体に貸しを作れるのは大きいですね。我が戦団の戦力から考えると、七名から八名をこちらに振り分けるのがいいかと思います」
「ふむふむ」
俺、イーサワ、アリシアが角を突き合わせて、人選を考え出す。
「地上はイクサと、それから陣形を考えると日向は必須だな。あとは船を残していくから、オルカにグルムル。ダミアンGがいれば機動力が上がるから、こいつもか。広範囲攻撃ならロマだから、こっちも残して……。よし、決めた!」
ここで、オクタマ戦団は二つに分かれ、王国防衛組と冥界下り組になるのだ。
王国防衛組。
イクサ、日向、オルカ、グルムル、ダミアンG、ロマ、ルリア(リザーバー)、明良川(一応)
冥界下り組。
俺、ラムハ、アミラ、カリナ、ミッタク、シーマ、フタマタ、ジェーダイ。
……俺とジェーダイ以外女子じゃないか。
「フロントはどっちに来ても行けると思うから、本人に選ばせるか。おーい、フロントー」
「なんだ?」
向こうで日向と並んで海を見ていたフロント。
イチャイチャしてやがる。
「地上に残って王国防衛か、冥界に下って仕事するかどっちかのルートを選ぶんだ」
「死者に会えるのか?」
「会えるんじゃないかな」
「では俺は冥界下りをしよう」
これを聞いて、日向がショックを受けた顔になった。
そこにそそくさと月の女神が近づいていって、日向のお腹にビームを当てる。
「熱い!?」
『セーフですね。……というか全く行為の形跡が無いので、おふたりとも全然進展していませんね? まだ手を繋ぐくらいですねこれは』
「ひ、人のプライバシーを侵害しないでくださいっ!!」
日向、真っ赤になって怒る。
そしてすぐに、なんとも言えない顔になった。
「フロントくん、冥界に行っちゃうの……?」
「ああ。済まないなマキ。だが、俺には会わねばならぬ者達が冥府にいるのだ」
そっか、こいつ古代人だもんな。
ちなみに、ダミアンGも冥界に行きたがった。
『ワタシ! ワタシモ行キターイ! カツテノ部下達トカト再会シターイ!』
悪の組織の首領だったもんなーお前。
月の女神の力でパワーアップしたこいつを見て、俺は色々確信したぞ。
「だがダメだ。ホリデー号を飛ばせるのはダミアンGだけだろう? お仕事をしなさい」
『ガーン!』
さあ、人選完了だ。
準備が整い次第、冥界下りを始めるぞ。
「お腹に赤ちゃんがいるからです」
「うっ」
俺の発した一言で、ぐうの音も出ないくらいやり込められたルリア。
すごすごと引き下がっていく。
あの戦力を活かせなくなるのは残念だが、お腹に赤ちゃんがいるからな。
「意外な原因で前線を退いたりするものだ」
「あなたが無責任に子どもを作るからでしょ!」
「あいた! お尻をつねるのはどうなのかラムハさん! 確かにあの時、俺の自制心は久々にお休みをいただいていた……。そもそも親がそういうの避けるアイテムを置いておかなかったのは、まさかこういう事態を見越して……!?」
オクタマ戦団は割と激しい仕事ばかりするので、大事を取って子どもが生まれるまで、ルリアは船員扱いになったのだった。
今度は自由にひなたぼっこをしていい船員である。
リザードマンと同格だ。
「おかしい……! あたし、扱いが悪くなっているのでは……!?」
「ルリア出戻りご苦労ー。あたしがまた、みっちりと船員としての仕事を教えてやるかんね。つーか、妊娠して後衛に来るとかなに? リア充? リア充なわけ? キーッ!! あたしがリザードマンのみんなとしこしこ船底を磨いたり修理している間に、そんな楽しいことをー!」
「ひえー! ゆずりがキレたー!」
向こうでは楽しそうなことになっている。
『はい、というわけでえー』
月の女神が生えてきた。
どこから出てきたんだ。
『こういうことが今後もあると、お兄様との戦いに差し支えます。多分、あと十ヶ月待ってくれないですよあの人……っていうかあの神』
「確かに」
俺は頷いた。
産後もいきなり戦えるわけないもんな。
うちの母曰く、「まあ二年くらいはゆっくりしないとねー」とか。
『わたくしは月の女神です。月の満ち欠けと夜空を司るものです。わたくしが狂気に陥り、封印されている間、実は月を管理されていたのはわたくしたち神の盟主ワシカータ様でした』
「誰だっけそれ」
『わたくし、ラムハの中にいたので同じものを見聞きしているのですが、あなたがた会っているでしょう? あの怪しい吟遊詩人ですわよ』
「怪しい……? おお! あーあーあー!」
「あ、確かに二回くらい会った吟遊詩人がいた……」
俺とラムハで、ポンと手のひらを打つ。
「あれ、キョードウじゃなかったの? 創造神の」
『キョードウは世界の礎になった神なのですから、もう死んでいますわよ! この大地がキョードウの肉体だからキョーダリアスと呼ばれているのです。そしてあの吟遊詩人はワシカータ様です。あの方が、ルーチンワークのシステムを組んで月を動かしていたのです』
「ほうほう……。システムを組むとかうちの世界のSEみたいだな」
『遠回りしましたけど、話をもとに戻しますよ? わたくしは月の女神なので、解放された今、ようやく月が正常な満ち欠けをするようになりました。そして月が他に何を司っているかご存知? そう! 海の満ち引きと人の体の営みですわね!』
「質問する前に答えたぞこの女神」
『というわけで、わたくし、特定期間は子ができないようにするか、確実にできるようにするかをコントロールできます』
この話を聞いて、アミラがシュババババッと走ってきた。
「ほ、本当ですかハームラ様!!」
『ハウ、女神嘘つかない』
インデ◯アン嘘つかない、みたいなノリで言われたな。
「じゃあハームラ様! 私に、確実にオクノくんの赤ちゃんができるようにですね……!」
『ダメですお兄様を倒してからです』
「ガーン」
アミラがショックを受ける。
隣でラムハも呆然とした顔をしているが、まさか同じことを考えていた……?
戦えないのがあと二人増えるのは勘弁して欲しい……!!
ということで。
ラムハ、アミラ、あとは何故か、ミッタクとロマが並べられて、間違いが起きないようにハームラが呪法を掛けたのである。
しくしくと泣くラムハとアミラ。
「あたいがオクノと? ないない」
ロマがけらけら笑う。
「何これ? なんでうちが呼ばれたわけ? 意味がわからない」
相変わらず全く理解してないミッタクなのだった。
その後、俺達は王国の復興を尻目に、港町でまったりと休むことになった。
復興作業に手を貸している余裕など無いからな。
それはそれで、王国の人々に頑張ってもらうしかない。
トノス王子が陣頭指揮を取り、王国は猛烈な速度で再建されていく。
破壊された建物はすぐには無理だが、掘っ立て小屋がたくさんできあがり、瓦礫は取り除かれ、跡地には屋台が無数に立つ。
王国の経済活動が、あっという間に再開したのだ。
これは確かに、トノス王子の采配が見事と言う他ない。
金が巡ってれば、間違いなく死ぬ人間は減るもんな。
仕事が生まれるし、金が世の中を回るし、物が王国に入ってくるようになる。
そして、王国再建の際には、イクサが手を貸していた。
トノスとの間も良くなったようだ。
アリシアを娶るとなったら、辺境伯の跡取り確定だもんな。
「オクノ。俺は冥府に行くことはできん」
ここで、イクサから衝撃的なお話があった。
「そりゃあまたなんで」
「アリシアから教えてもらったのだが、帝国が攻めてくるかもしれないのだ。詳しい話はアリシアに任せる」
イクサ、難しい話は嫁に一任するという技を覚えたか。
「アリシア、説明をお願いしても?」
「はい! 王国が弱体化しますと、野心を持っている帝国がきっと攻めて参りますわ。わたくし、こう見えてお父様から軍略を多少学んでおりますの。今の弱った王国では、帝国に抗うことは難しいでしょう。ですから、オクタマ戦団の戦力の半分を、王国の守りとして置いてほしいのです」
「あー、確かに」
俺は納得した。
「じゃあ、冥府行きは最少人数でやった方がいいかもだな。冥神を手伝うっても、そんな数はいらんだろ。どうも戦えばいいだけっぽいし」
「はい。ご負担をお掛けしますが、そうしていただけるとありがたいです」
アリシアとのやり取りを終え、俺はイーサワを呼んだ。
彼はいそいそやってくると、既に用意されていた契約書を広げてくる。
「団長、王国から正式な依頼が来ました。満額の報酬は出世払いとなりますが、王国自体に貸しを作れるのは大きいですね。我が戦団の戦力から考えると、七名から八名をこちらに振り分けるのがいいかと思います」
「ふむふむ」
俺、イーサワ、アリシアが角を突き合わせて、人選を考え出す。
「地上はイクサと、それから陣形を考えると日向は必須だな。あとは船を残していくから、オルカにグルムル。ダミアンGがいれば機動力が上がるから、こいつもか。広範囲攻撃ならロマだから、こっちも残して……。よし、決めた!」
ここで、オクタマ戦団は二つに分かれ、王国防衛組と冥界下り組になるのだ。
王国防衛組。
イクサ、日向、オルカ、グルムル、ダミアンG、ロマ、ルリア(リザーバー)、明良川(一応)
冥界下り組。
俺、ラムハ、アミラ、カリナ、ミッタク、シーマ、フタマタ、ジェーダイ。
……俺とジェーダイ以外女子じゃないか。
「フロントはどっちに来ても行けると思うから、本人に選ばせるか。おーい、フロントー」
「なんだ?」
向こうで日向と並んで海を見ていたフロント。
イチャイチャしてやがる。
「地上に残って王国防衛か、冥界に下って仕事するかどっちかのルートを選ぶんだ」
「死者に会えるのか?」
「会えるんじゃないかな」
「では俺は冥界下りをしよう」
これを聞いて、日向がショックを受けた顔になった。
そこにそそくさと月の女神が近づいていって、日向のお腹にビームを当てる。
「熱い!?」
『セーフですね。……というか全く行為の形跡が無いので、おふたりとも全然進展していませんね? まだ手を繋ぐくらいですねこれは』
「ひ、人のプライバシーを侵害しないでくださいっ!!」
日向、真っ赤になって怒る。
そしてすぐに、なんとも言えない顔になった。
「フロントくん、冥界に行っちゃうの……?」
「ああ。済まないなマキ。だが、俺には会わねばならぬ者達が冥府にいるのだ」
そっか、こいつ古代人だもんな。
ちなみに、ダミアンGも冥界に行きたがった。
『ワタシ! ワタシモ行キターイ! カツテノ部下達トカト再会シターイ!』
悪の組織の首領だったもんなーお前。
月の女神の力でパワーアップしたこいつを見て、俺は色々確信したぞ。
「だがダメだ。ホリデー号を飛ばせるのはダミアンGだけだろう? お仕事をしなさい」
『ガーン!』
さあ、人選完了だ。
準備が整い次第、冥界下りを始めるぞ。
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