ピコーン!と技を閃く無双の旅!〜クラス転移したけど、システム的に俺だけハブられてます〜

あけちともあき

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第四部:送還編

151・俺、混沌の裁定者を倒す

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「エスプレイド・ゼフィロスッ!!」

「千手観音!」

『エスプレイド観音』

『ウグワーッ!!』

 倒したかと思ったら、スズメバチっぽいのが復活した!
 と思ったらまた倒された。

「行くぜ、集中射撃!!」

「ミヅチです!」

「ファイナルレター!」

「無双三段!」

「わんわん!」

『集中ミヅイナル無双わんわん』

『ウグワーッ!?』

 不思議な名前の技でこっちも、復活したばかりのヘラクレスオオカブトが倒された。


 幹部クラスが再生するとはビックリだが、もう蘇ってくる気配はない。
 ついに、混沌の裁定者は丸裸である。
 奴の手勢は全部倒しきった。

『なにか勘違いをしていないかい? 僕の手駒はいくらでもいる。人類が存在する限り、彼らの争いや混沌とした意志は変わらない。その混沌に僕が根ざす限り、我が力は永久不滅なのさ……!』

 五花の顔と声を使ってそういうことを言う。
 五花だけにムカつくな。

「闘魂注入……」

『ヒエッ』

 混沌の裁定者が本気で避けた。
 フリだったのだが、めちゃくちゃに警戒されているぞ。

「お前の闘魂注入を決められない限り、カオスディーラーは実質不死身だ。つまりオクノ。お前が一発びんたをかませば、奴の不死性が失われる。倒せるぞ」

「俺の闘魂注入が切り札だったか……! よし、みんな! 包囲ー!」

 俺の号令を聞いて、仲間達が駆けつけた。
 防御に長けたメンバーを中心として、三方向から混沌の裁定者を囲む。

「直接攻撃は通じないそうだ。だが、投げや関節技は通じる。間接的ないやがらせをする技や呪法で攻撃!」

「おう!」

「分かったわ!」

 口々に応答があり、こちらの攻撃が始まる。

 アミラの鞭が絡みつこうとし、ラムハの闇の束縛呪法が飛び、カリナの影縫いが影を縫い止めようとし、ロマの幻の呪法が混沌の裁定者の周りで躍る。
 この辺、女性陣の方がそういう搦め手の技に長けているな。

「よっしゃ、俺達もだ! 風の呪法で援護するぜ!!」

「任せろ!」

 オルカと、エスプレイダーになったフロントが強烈な風を吹かせる。
 これが、混沌の裁定者の動きをちょっと邪魔する。

『うぬぬぬぬ!! 全くダメージはないのに、ちまちまと嫌がらせをしてくる……!! だが、そんなことをしても無駄だ!』

 混沌の裁定者が吠えた。
 そう。
 直接攻撃の手段が無い以上、俺達の行為は決定打にならない。
 奴は俺の闘魂注入にだけ注意していればいいのだ。

 ──と思うだろう?

 混沌の裁定者の後ろに、ルリアがトットコ走り寄ってきた。
 槍を振りかぶる。

『ふん、無駄なことを……』

「足払い!」

『は!?』

 すてーんっと、見事に混沌の裁定者がこけた。
 俺、速攻で駆け寄る。
 そうなんだよなー。

 初期の頃は、ダメージも与えれないで相手を転倒させるだけだし、この技は何なんだろうと思ってたんだ。
 だが、攻撃そのものが反射される相手に対しては、ただ転倒させてその動きを止める足払いって、なかなか有用じゃないか。

「闘魂注入! おらあっ!」

 バシーンっとぶっ叩くと、混沌の裁定者が纏っていた七色の不透明な光が消えた。

『ウグワーッ!!』

 のたうち回る混沌の裁定者。

「おいおい、なんだ今のは。カオスディーラーの足場は無数の力場で作られているから、それをまとめて払うなんざほぼ不可能みたいなもんだぞ」

 メイオーが目を丸くする。

「うちの女の一人にそういうのの専門家がいてな。そらメイオー、チャンスだぞ!」

「がはははは!! お前、面白い奴らを連れてるなあ!! 仲間ってのもいいもんだな! さてさて、何千年ぶりかの決着と行こうぜ、カオスディーラーよ!」

 おっ、メイオーが行った!

 混沌の裁定者は素早く体勢を立て直すが、既にその身を守る攻撃反射能力は無い。

「メイオー・ソード!!」

『ウグワーッ!!』

 ソードって言うけど、チョップね。

「メイオー・ハンマー!」

『ウグワーッ!!』

 両腕を組み合わせて振り下ろす、スレッジハンマーという技ね。
 あの邪神、普通の技にもそれぞれオリジナルな名前をつけてるのか。
 それとも、あれも全部閃いた技なんだろうか。

「オクノ、やっちゃえ!!」

「オクノくんも負けないで!」

「応援してるわ!」

「今です、オクノさん!」

「うちが先に行くわ!」

「あ!? なんか女性陣が応援してくれてると思ったらミッタクお前抜け駆けをー!!」

 このバイキング娘の行動力が強い。
 さっさとメイオーに並んで、斧で混沌の裁定者をボッコボコにし始めた。
 気がついたらイクサも俺に並走している。

「技が通じるんだな?」

「おう、そうだ」

「仕掛けるぞ。とどめは任せる」

「おう!」

 イクサが俺を連携に誘うか!
 ちょっと楽しくなってきた。

「三度、封印が解けた。行くぞ……! 前を空けろ!」

 イクサが疾風となって、メイオーとミッタクを跳ね除けながら突き進む。

「乱れ雪月花!!」

 呪法的な現象すら引き起こす、最強の三連撃がメイオーに叩き込まれる。

『ウグワーッ!? ぼ、僕の蓄えてきた命が! 何万、何億の命が破壊されていくーっ!!』

 命を蓄えるというのはよく分からないが、大方、うちのクラスメイト達みたいに手勢にした連中の命をちょろまかして、自分のものにしていたんだろう。

 その証拠に、メイオーの攻撃を食らっても、ミッタクにやられても、そしてイクサの乱れ雪月花を真っ向から受けても、混沌の裁定者は倒れない。

 馬鹿げているくらいのタフネス。
 ダメージを軽減しているんじゃない。
 あいつはこれまで存在してきた中で、食い物にしてきた人々の数だけ命を蓄えているのだ。

 それがどれだけの数になることか。

「分かっちゃいたが、殴れるようになって、こいつの厄介さが明らかになったな」

 メイオーがややうんざりしたように告げる。

「呪法でまとめて命をすりつぶすには、こいつの呪法への抵抗力は高い。打撃で潰すには命が多すぎる。さて、どうする? どうするよ、オクノ」

 邪神がニヤリと笑いながら、俺に問いかける。

 メイオーでは、こいつに対して相性はいいところが互角。
 千日手で決着がつかず、倒すところまでいかないわけだ。

 だからこそ、異次元デスマッチでこいつをこの時空へと閉じ込めた。

 なら、俺はどうだ?
 俺はメイオーと同じなのか?

 いや、俺はメイオーとは違う。
 俺は俺だ。

「行くぞ……! カムイッ……!」

 HPを燃やして技の威力を押し上げる、俺のとっておき。
 その名を叫ぶと、全身が燃えるように熱くなった。

 まだ、乱れ雪月花から伸びた連携のタイミングは消えていない。
 さっきまでのは一瞬の思考。

 俺は思考を巡らせる。
 すると、目の前に懐かしいものが出現した。

1・術技でなるべく多くの命を巻き込んで攻撃する!
2・なんかピコーン!と閃くだろ!あとはその場の勢いに合わせていい感じでやる!!

「2だろ!!」

 そして俺は考えるのを止めた!!

 ピコーン!

 来たァッ!!

『毒霧』

 は!?!?!?

 俺の手が、空を掴む。
 それは、世界に満ちた呪力を集める動作だった。
 呪力が俺の中に流れ込んでくる。

 具体的には、俺が手を当てた口の中に流れ込む。

 これは、幻の呪法と、時の呪法を組み合わせた極めて高位の呪法技だ……!
 でも毒霧……!!

「ブーッ!」

 俺が口に含んだ毒霧を吹き付けると、それは緑の噴霧になって混沌の裁定者の全身を包み込んだ。

『ウッ、ウグワーッ!? 目が、目がァーっ!! 馬鹿な、僕の持つ全ての命に等しく毒霧がかかっただとっ……!?』

 そうか……!
 広範囲をまとめて攻撃するには呪法!
 呪法に対する抵抗力をぶち抜くには物理!

 呪法技で選択は間違ってない。
 つまり、この至近距離から、広範囲攻撃ができる呪法技を直接ぶっかけるのが正解だったのだ!

「そんな正解、普通は分からんよな」

 メイオーが妙に冷静に呟いた。

 ここで、イクサとの連携が完成する。

『乱れ雪月毒霧』

 ?
 まあいいか。

 乱れ雪月花で体勢が崩れていたところへ、俺が浴びせた毒霧がもろにヒットした。
 連携に乗った技は、後のものほど威力が大きくなる。
 つまり、俺の毒霧は凄まじい効果を発揮したということだ!

『ウグワワーッ!!』

 のたうち回る混沌の裁定者。
 そいつの全身から、光がこぼれ落ちていくではないか。

『吸い取られた命達が、冥府へと還っていっているのです!』

 女神ハームラがこの現象を説明してくれる。

『きっと今頃、冥府の神ザップはてんてこまいでしょうね! 後で手伝いに行かないと』

 あれ?
 もしかしてこの女神、俺達をとんでもないところに連れて行こうとしてないかな?

 そんなことを考えながら、俺は混沌の裁定者に止めをさすべく、踏み込む。

「つまりこれは……こいつの中にある命を、全て外に吐き出させればいいのでは? その答えは、これだーっ!!」

 混沌の裁定者の足……? というかなんか脚部みたいなのを掴み、持ち上げ……!

「カムイ・ジャイアントスイング!!」

 振り回す、俺!

『ウーグーワーァァァァァァッ!!』

 遠心分離され、あちこちに放り出されていく命達。
 十回転ほどしたら、混沌時空が埋め尽くされるんじゃないかというくらい命が吐き出されてきた。
 俺が振り回している混沌の裁定者は、既に五花の姿をしていなかなった。

 そいつは、スーツみたいなのを着た顔がもやもやとしてよく分からない男だ。

 俺達が最初にあったこいつの姿に戻ったのだ。

『す、全ての命が……! 一万年以上掛けて集めてきたというのに……!! また、また集め直さねば……! 僕が永遠に生きるために……!』

 自分のことしか考えていない奴だな……!?

「わははは! オクノ、そいつを投げてよこせ! 俺がとどめを刺す!!」

「どうぞ!」

 俺は奴をホールドする手を離した。
 吹っ飛んでいく混沌の裁定者。
 それを、空中でメイオーがキャッチした。

「さあ、死ぬがいい!! メイオー・インフェルノ!!」

 メイオーは混沌の裁定者を真横に放り投げると、その上に着地した。
 まるでサーフボードのように混沌の裁定者を乗りこなし……!

「世界と世界の裂け目に叩きつけてやるわ! 命が一つだけになったお前は、この衝撃に耐えられまい!」

『ヤ、ヤメロー! ヤメロー!』

 のたうち回ろうとする混沌の裁定者。
 だが、メイオーは完璧なボディバランスでそれを許さない。
 そして、世界の裂け目に、サーフボードにした混沌の裁定者を叩きつけた。

『ウグワーッ!!』

 世界に響き渡る絶叫。
 異界から神、混沌の裁定者の最後だった。

 濁った七色の光があちこちへと飛び散っていく。

「汚い花火だなあ」

 俺はしみじみと呟いたのだった。
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