ピコーン!と技を閃く無双の旅!〜クラス転移したけど、システム的に俺だけハブられてます〜

あけちともあき

文字の大きさ
上 下
145 / 181
第四部:送還編

145・日向マキ航海記5・実体を持った分身オクノ?

しおりを挟む
 多摩川くん達が先に出発しました。
 凄い速さで遠ざかっていきます。
 やっぱりあのバギーは速いなあ。

「マキ。俺達はどうするんだ? まだ休んでいていいのか?」

 フロントくんが尋ねてきました。
 日本から戻ってきて、私とフロントくんの間はちょっと縮まった気がします。

「ええとね、補給を終えたら出発だって。一応一日休んでからだから、明日の午前中にはこの港を出る感じかな」

「そうか。じゃあ、その間に買い物をしておきたい。俺の装備はさすがにくたびれてきたからな」

 フロントくんの武器、幽霊船から回収した剣だったから、そこまで品質のいいものじゃなかったみたい。
 度重なる戦いで、すっかりボロボロ。

「じゃあ、予算は私からイーサワさんに申請しておくね。多摩川くんのお父さんもいるから、話しやすくなったかも」

「ああ、助かる……! 俺は金勘定の事は全く分からなくて。それと、マキ」

「なぁに?」

 気がついたら、フロントくんがとっても近いです!
 息がかかるくらいの距離にいます。
 あー、やっぱり私、この人のこと好きだなあ。

「新しい武器を選ぶに当たって、君の意見を聞きたい。付き合ってくれないか?」

 付き合ってくれないか!?!?!?

 お、おおお、おおおおお、落ち着いて、マキ!!
 買い物に付き合ってって言われただけでしょ!

「う、うん!! もちろんいいよっ!!」

 私は自制心を総動員して答えました。

『オヤ、買イ物デスカ。ワタシモ行コウ』

 あっ、余計なのが。

「えいっ」

『ウワーッ!? 何ヲスルノデスまきサン! アーレェーッ!』

 よしよし、ついてこようとしたドラム缶ロボさんは、海に蹴落としておきました。

 リザードマンのみんなが集まってきて、網を用意しています。
 誰が先にダミアンさんを引っ張り上げられるか競争するみたいです。

 ……なんか、リザードマンのみなさんの中に、ナチュラルにゆずりとルリアちゃんがいるんだけど。

「体格的に、あたしとルリアでコンビね!!」

「いいよー! デュエルで戦った仲だ! ライバルが今度はコンビだねー!」

「人間の女二人なら、ちょうどいいハンデ」

「リザードマンのパワーを見せつける」

「何をう!!」

「友情パワー見せつけてやるからね!!」

 みんなが一斉に海に網を投下しました!
 案の定網が絡まって、ダミアンさんがぐるぐる巻きになっています。

『ピガー!! チョットチョット!! 一人ズツヤルデショー普通ー!! アッ、ソコ引ッ張ッチャラメェー』

 これは何気にダミアンさんのピンチです。
 私もフロントくんも、展開が気になってこの場に残っています。

「これはダミアンは駄目かもわからんな。必要な犠牲だった」

 基本的にフロントくん、ダミアンさんに当たりがきついので、即座に諦めてます。
 でも、ダミアンさんがいるとフロントくんがパワーアップするみたいなので、私は彼に退場してほしくないなあ。
 まあ、海に蹴落としたの私なんだけど。

 そうしたら、ホリデー号の船体横のハッチが開きました。
 そこから飛び出したのは……黒い多摩川くん!?

 彼は水に飛び込むと、

「ツァーッ! ダブルラリアット!!」

 水の中で、猛烈に回転を始めました。
 生まれる大渦。
 ダミアンさんが渦に巻き込まれ、浮上してきます!

『ナ、ナンダコレー!?』

「トマホークバスター!」

 今度は鳥みたいな姿勢になった多摩川くんが、ダミアンさんを下から突き上げました。

『ウグワーッ』

 ダミアンさんが水の中から飛び出します。
 そして、ボテ、カン、コロッと落ちて、はずみ、止まりました。

「お前は……」

 フロントくんが身構えます。

「オレか? オレは見ての通り、多摩川奥野の分身だ。ワース・ワッシャーのところで分身を回収し忘れただろう」

 よく分からないことを言います。
 だけど、ルリアちゃんがポンと手をたたきました。

「そう言えば! 幻のオクノくんに任せて密林を抜けたけど、その後幻のオクノくんが戻って来てないや!」

 どうやら心当たりがある話だったみたいです。
 そんなおかしなことがあるんでしょうか。

 あ、でも多摩川くんだからきっとあるんでしょう。

「お前がオクノだとは思えない。身に纏う、邪悪なオーラは隠しきれんぞ! それに、お前の使った技はオクノのそれとは大きく違う……!!」

「ほう……? オーラを見れるやつがいたのか」

 黒い多摩川くんが目を細めました。
 フロントくん、ちょっと無言になります。

「……オーラを見た的な、そういうフィーリング的な、なにかだ」

「フロントくん! 正直にもほどがあるよ!」

 私、思わず突っ込みました。
 見えてなかったんじゃん!

「すまない」

 フロントくんが素直に謝りました。

「なんかさ、フロントってマキにだけ素直じゃない?」

「もしかしてーもしかしてー?」

「ゆずりもルリアちゃんも冷やかすのやめてー!」

 二人とも、私とお父さんの一件を知ってるから、やりづらいなあ。
 ゆずりのはルリアちゃんからの、誇張された又聞きだけど。

 フロントくんもちょっとバツの悪そうな顔をするので、二人でこの場を離れました。

 ふう、一安心。

「済まないな、マキ。迷惑をかけた」

「いいんだよ! その、私も別にイヤじゃないし。イヤじゃないっていうかむしろ、そのー」

 もごもご言ってたら、武器屋についちゃいました。
 武器屋っていうか、金物屋さん?

 剣や槍、斧や弓矢、木と金属を組み合わせた盾や、鎖を編み込んだ鎧が売っています。
 後は、すっごく高いけれども銃とか。

 ここでしばらくは、フロントくんの新しい武器を選びます。

 ええと、フロントくんは、イクサさんみたいな万能型じゃなくて、どっちかというと変身までの繋みたいな扱いで剣を使うから……。

「ちょっと刀身が細いけど、これが軽そうでいいんじゃないかな?」

「ああ、これはいいな」

 風を纏う戦士、エスプレイダーになるフロントくん。
 スピードが身上みたいなところがあります。

「予備用に何本か買っちゃおうよ。ねえ、振って見せて!」

「よし来た! うおおっ!」

 剣を振り回して、実戦みたいな動きをしてみせるフロントくん。
 むふふ、かっこいい。

「いいな。マキが選んでくれた剣は馴染む。主人、こいつをくれ」

 私だけじゃないよ。フロントくんも一緒に選んだからいいんだよー。

 金物屋のご主人が出てきて、揉み手しました。

「いやはや、奥様の見立ては確かですなあ。ご主人も幸せものだ」

「えっ、まっ」

「いや、俺達はっ」

 ひえー!
 勘違いされちゃったよー!

 ということで、私達は二人で赤くなりつつ買い物を終えたのでした。

 ……あれ?
 何かさっき、凄くとんでもないことが置きたんだけどスルーしちゃった気がする……。

 その後、黒い多摩川くんを加えた私達。
 都市国家を後にして王国に向かうのでした。

 空を飛ぶためにはダミアンさんが呪力を使う必要があるんだけど、今は電池役の多摩川くんがいないので、空を飛ぶのは最後の手段。

 黒い多摩川くんだと、アイテムボックスが無いから入れないんだそうです。

『ハハハ、マタマタ。コノ人おくのサンジャナイデショー。纏ッテル呪力ガ全然違ウッテ言ウカ人間ノソレジャナイッテ言ウカ』

「……えっ? なんかこう、馴染みがある呪力……? でも、私が知ってるわけじゃなくて……。少なくともオクノじゃないわ」

 首をかしげるラムハさん。
 アミラさんも同じみたいです。

「そうねえ、お姉さんもしっくりこないのよね」

「どれどれー?」

 ルリアちゃんが近づいていって、黒い多摩川くんにぺたぺた触ります。

「筋肉のつき方がちがーう。一晩中くっついてよく分かってるもんね」

「ルリアー!」

「この娘はー!!」

「ひー! ごめんなさーい!!」

 ルリアちゃんが、ラムハさんとアミラさんに甲板を追いかけ回されています。
 仲良しだなあ。

「奥野じゃないわねえ」

「ああ。奥野じゃない。奥野はマンガやゲームの技は使わないからな」

 多摩川くんのご両親も、多摩川くん本人じゃない認定。
 誰なんだろうなあ、この黒い多摩川くん。

「まあ気にするなよ。それより、シーマはいないのか? そうか、久しぶりだったんだがな。ま、このまま船に乗ってりゃ会えるだろ。これからどこに行くんだ?」

「ええとね、混沌の裁定者が、五花くんを操ってユート王国に戦争を仕掛けてるの。私達はそれを止めに行くんだけど」

「ほう!! カオスディーラーめ、依代がいるのか! ならば今度は直接叩けるな。いいねいいね。すぐ行こう!」

 やる気満々!
 ちょっと変わった多摩川くんだけど、五花くんを倒すモチベーションは高いみたい。
 よし、王都に向かいます!
しおりを挟む
感想 92

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

処理中です...