ピコーン!と技を閃く無双の旅!〜クラス転移したけど、システム的に俺だけハブられてます〜

あけちともあき

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第四部:送還編

128・俺、自分の能力を確認する

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「は? 男と女の関係になった? そんなもん知らんのじゃ。人間の乳繰り合いなぞありふれとるのじゃ。勝手にやっているのじゃ。そんなどうでもいいことよりも帰還計画なのじゃ!」

 ドヤ顔でルリアが宣言した話を、一蹴するシーマ。

「ガーン!! 人生の一大事なのにっ」

 おお、ルリアがショックで落ち込んだ。
 日向が慰めてくれているので、その間に俺はシーマと話し込むことにする。

「えっ、マジでやっちゃったの!? マジでー。ええ、多摩川が……?」

 明良川が俺を信じられないものでも見るかのような目を向けてくる。
 これは無視だ無視。

「良いかオクノ。お前をキョーダリアスに返す。これがわしの一番の目標じゃ!」

「ほう、俺をか。一番に俺を見捨てたじゃないか」

「そうじゃ。お前はイレギュラー。メイオー様復活のための手駒としては使い物にならん。その精神性と、クラスメイト達との仲の悪さゆえな。だが、同時にお前はカオスディーラーに対しての切り札でもあるのじゃ。いやむしろ、カオスディーラーを倒せる存在だからこそ、わしの計画に組み込めなかったのじゃ! 今になって思うときっとそうじゃ!」

「そうかそうか」

 シーマ、話し始めると長いな。

「そこでじゃ、オクノ。お前、既に使い魔を召喚しておるな」

「はい? 使い魔だと? そんなもん知らんが。俺は魔法使いと言うよりはどっちかというとレスラーなので」

「なんじゃレスラーって。いいか? 使い魔というのは、メイオー様からするわしら三神官のことじゃ。わしらはこの人間の姿が本来のものではない。もともとはモンスターとして召喚されておる。それが年月を経て、人に近い姿を取れるようになったのじゃ」

「へえ、そうなのか! シーマってもともと何だったんだ?」

「わしは魔法に長けたモンスター、ハルピュイアじゃったな。あの頃はアホじゃった」

 遠い目をしている。

「シン・コイーワはマーマンじゃな。もうひとりおってな、王国で五花を監視しておるのが、元キマイラのキー・ジョージじゃ」

「えっ、それってつまり、俺の使い魔ってのはあれか。フタマタか!!」

「そうなるのじゃ。使い魔は、召喚者の不得意とする分野を補助するような性質を持って生まれてくる。わしは頭脳。シン・コイーワは指揮、キー・ジョージは調停じゃ」

「つまりメイオーは、頭が悪くて人を指揮できなくて、他人と和が取れない……? なんだそれは」

「あのお方は単体で完結しておられるのじゃ。ぶっちゃけわしらは必要ないのじゃが、放っておくと世界を破壊してしまいかねぬ。わしらがお世話しないと……」

「大変だなあー。じゃあ、フタマタはなんだ? あ、あれか。あいつは俺の気遣いを担当している気がする」

「お前もなんじゃなあ……。団長が気遣いなくてどうするんじゃ」

 いかんいかん。
 なんかしみったれた話になってきたぞ。

「そのフタマタというオルトロスがお前の使い魔じゃ。というか、お前、序盤の序盤で使い魔呼び出すとかなんじゃあれ。お前の持つ幻術は幻を作り出すものではない。その場の現実を改変し、短時間の間現実を書き換えるものじゃ。お前は何度もあのオルトロスを呼び、そしてあれとの間に縁が生まれた。だからこそ、フタマタはお前の使い魔となったのじゃ」

 神様に固定化の魔法かけられて、出っぱなしになったもんな。
 その前に、呪力の形で俺の周りをうろうろしていたようだけど。

「使い魔は常に、主と繋がっておる。封印でもされぬ限りはな。つまり……お前はフタマタをいつでも呼ぶことができるということじゃ。あれが、どんなに離れていてもお前の場所へ辿り着いたじゃろう」

「確かに。船と俺の間を行き来してくれたな。あれはつまりそういう事だったのか」

 ってことは……。
 俺は呪法を使うイメージをする。
 むむ、この地球バージョンの俺の体では無理だな。

「ふんっ」

 俺はでかくなった。

「うわーっ、なんじゃー!?」

「力を開放するモードな。それっ、幻獣術! 出てこい、オルトロス……いやフタマタ!」

 俺の全身に呪力が集まってくる。
 うん?
 だが何か、引っ掛かりみたいなものを感じるな。

「シーマ。なんかこう……変な引っ掛かりみたいな感触があってな。うまく術が通らない……っていうのか?」

「ああ、それはじゃな。こちらとキョーダリアスは、時間の流れが違う。こちらが早かったり遅かったり、その関係はランダムで入れ替わるのじゃ。なので、現在のフタマタに届かせるには何度か挑戦する必要があるじゃろう。時間の齟齬をぶち壊す呪法でもあれば別じゃが」

「時間の齟齬をぶち壊す……。ああ、これか!」

 俺は時の呪法を表示させる。

「タイムブレイク!」

 俺の体から、新たな呪力が溢れ出した。
 おおっ!?
 何と言うか、この呪法を使う感覚は今までとぜんぜん違う。

 物凄い圧迫感が全身を襲ってくるぞ!

「時の呪法じゃと!? そんなもの、使いこなせるものか! 世界法則そのものと喧嘩するようなものじゃぞ!」

「世界が相手か! そいつはでかいな。だが、どんな凄いやつだろうが……今の俺なら、ボディスラムを一発決めるくらいはできる!」

 俺の呪力が、俺の形を取る。
 そして、俺を圧迫してくる世界に掴みかかった。

「うおおおっ!! いくぞオラァッ!!」

 裂帛の気合を込めて……世界を担ぎ上げる!

 その時、物理的なものではなく、恐らく呪力的な意味で全世界が揺れた。
 俺は担ぎ上げた世界を……ボディスラムで投げ捨てる!

 文字通り、世界、震撼!
 俺にかかっていた圧迫感が消えた。

「タイムブレイク!」

 俺は叫びながら、空に向かって袈裟懸けのチョップを叩き込んだ。
 そして、空が裂ける。
 時の流れが破壊される。

 裂けた空間の向こうで、フタマタと俺が確かに繋がった感覚があった。

「幻獣術! 来い、フタマタ!!」

「わおーん!!」

 咆哮が響き渡る。
 世界の壁を超え、二つ首のもふもふわんこ、フタマタが俺の前に顕現したのだ。

「わんわん! わふわふわふ!!」

 フタマタは俺に抱きつくと、二つの頭で俺を交互にペロペロした。

「おほー、大興奮だな! よしよしよし!」

「えっ、フタマタ来たの!?」

「フタマタちゃんが!?」

「いぬー!」

 女子達が集まってきて、フタマタをもふもふする。

 うーむ、この毛の手触り。
 これこれ、これだよ。

「それで、フタマタを呼んだがどうするんだ?」

「うむ! わしの理論が一つ実証されたわけじゃ。世界の壁を超えても使い魔は呼び出せる。つまり、わしらがキョーダリアスへと戻る手立てが間違いなくあるということじゃ」

「確信なかったのかよ」

「ほぼ成功しないはずじゃった。じゃが、そこに、カオスディーラの呪法に物理的に割り込んだ娘がいるじゃろう。そして時の呪法を、恐らくわしが知る限り始めて使いこなしたお前がいる。時の呪法は存在していたが、未だ誰も使いこなせなんだ。無理もない。世界そのものと対峙せねば使えぬ呪法など、本来はやくたたずじゃからのう」

 シーマがにやにやしている。
 西府アオイの顔でにやにやしているので、妙な感じである。

「ちなみに。今のわしは本体であったわしの一割も力を発揮できん。知恵しか貸せぬから、キョーダリアスに戻るためにはお前とこの娘たちが頼みの綱ぞ。この西府アオイという娘、本当に才能がないのう……」

 ぶつぶつ言ってる。

「よし、ひとまず今日は解散じゃ! それから、お前達ができることを教えるのじゃ! 監禁状態のわしがたっぷりある時間を使って、作戦を考える!」

「呪法を担当してくれるのはありがたいな。俺は体を使うことしかできんからな」

「世界を投げ飛ばす阿呆が何を抜かすか。お前の脳筋でわしら三神官の計画はぼろぼろじゃ! あと、お前が世界をぶん投げた余波があちこちに出ておるからな!」

 ということで、本日は解散なのである。
 収穫は、フタマタを召喚できたこと。

 とりあえず、俺にもできることを考えながら、町を散策でもするとしようか。

「あれえ……? なんであたしが呼ばれたわけ……!?」

 フタマタをもふもふしただけだった明良川が首を傾げていたのだった。
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