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第四部:送還編
124・俺、三神官の思惑を聞く
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凍れる城に入りつつ、シーマの話を聞くことにした。
西府アオイの体を利用している、この神官の周りには、イクサ、ミッタク、ヒーローの三人がいつでも武器を抜ける状態でいる。
「なんとも、警戒心が強いのじゃ。わしはこの内の一人にだって勝てぬのにな」
「まあほら。おたく、この世界に混乱をもたらした張本人のひとりじゃない。現地の人からは警戒されるよ」
「お主は警戒せんのか、オクノ? この体、仮にもお主のクラスメイトの一人じゃろう」
「俺はクラスでハブられていたのでな」
これを聞いて日向がバツの悪そうな顔をする。
明良川は「は? それって普通でしょ?」とか言ってきょとんとしているので、こいつは本当に性根から腐っている。
「そうじゃったな。五花めも、召喚されて早々にお主の処刑を提案したな。いや、あのバカ貴族めを焚き付け、処刑に持っていったのか。あの時から非凡な男だとは思っておったが……まさかカオスディーラーに近い特性を持っていたとは思わなんだ」
邪神メイオーの側についたかと思った五花だが、いつの間にか混沌の裁定者側になっていたようだ。
「三神官と混沌の裁定者は仲悪いの?」
「本来であれば不倶戴天の敵同士。じゃが、今は利用し、利用される関係よ。全てはメイオー様の復活のため故な」
それで、神官のシン・コイーワは群島の遺跡の上にいたし、シーマは五花とともに天空の大盆にいたわけか。
「じゃあ、俺達とも敵同士なのでは? 俺達はメイオーの敵でもあるが、混沌の裁定者もぶっ飛ばす予定なのだが」
「そう、それじゃよ! 既に、メイオー様復活は確実になっておる」
この言葉に、仲間達がどよめいた。
まあ、そりゃそうだよな。
この世界におけるパブリックエネミーである、邪神メイオー。
そいつが確実に復活するって言うんじゃな。
「そういきり立つな。放っておいても、人間どもは争う。必ず、時を経ればメイオー様は復活なされるのじゃ。じゃが、それでは時間がかかりすぎる。我ら三神官はそれを早めるために行動しておった。我らのうち、わしの本体を含めた二人は倒されたが、お陰でメイオー様の復活は早まったというわけじゃ。礼を言うぞ」
「そんな……。私達の戦いは……」
あっ、ラムハががっくり来てる。
「待て待てラムハ。戦いがあったから、俺達もとても強くなっただろ? 女神様だってぶっ飛ばしたんだから、メイオーだってぶっ飛ばせるぞ」
「それはどうかのう? ……とあの御方の神官であるわしは対抗意識を燃やしてしまうところじゃが……。今はそれどころではないぞ。わしらが何故、五花とともに行動していたかじゃ」
「そう、それ。 なんで? 最終的には敵になるんだろ?」
「五花武はカオスディーラーがこの世界に力を及ぼすための扉になっておる。つまり、あやつの動向さえ見ておけば、メイオー様の敵であるカオスディーラーの動きも把握できるということ。あとはあやつを利用し、世界に争いを起こすだけ」
「オクノくん! やっぱりこいつ悪いやつだよ! やっつけよう!」
ぷんすか怒りながら槍を振り回すルリア。
「ルリア、気持ちは分かる。こいつは明良川の千倍くらい悪いやつだからな」
「今なんであたしを基準に持ち出したの!?」
明良川の話は無視するぞ。
「で、今、五花は?」
「王国におる。最後の神官が、あれを監視しておるわ。我らの手では、カオスディーラーに手出しはできぬ。かと言って、五花武を殺せば、カオスディーラーはまた世界の裏側に潜り込み、その存在を掴むことができなくなるじゃろう」
「あー、五花、目立つもんなあ! なるほどなるほど、どこにあいつがいるのか分かりやすくしてたのか」
「そう、そういうことじゃ! 遺跡もまた、我ら神官の力では破壊できぬ。我らはいわば神の眷属じゃ。それ故に、他の神が手ずから作り上げた神殿などを破壊することができないのじゃ。シン・コイーワなどは諦めて、その遺跡を利用して海賊稼業に勤しんでおった。じゃが、そこに現れたのがお主よ、オクノ!」
「俺か」
「お主じゃ。遺跡をぶっ壊す大馬鹿者め。かの忌まわしき来訪者、コールをも超える破天荒ぶり。お主が群島の遺跡を破壊したのを見て、わしはピーンと来たのじゃ。五花武を囮にして、お主らを呼べば遺跡を破壊できるとな」
「ほうほう。つまり、俺達はお前の手のひらの中で踊っていたわけか」
「いや、まさかあんなに速攻で天空の大盆を落とした上に、月の女神をも張り倒して正気に戻し、そこな依代の娘を救うとは思ってもいなかったのじゃ……。なんなのお前達」
シーマが素になった。
「わし、さすがにもう無理。お前達は御せないので、こうして正面からお願いに来たよ」
「おっ、なかなか潔い」
「ほら、わしらってメイオー様が復活すれば最終的にいいわけじゃない? でもカオスディーラーが復活してると、メイオー様めちゃくちゃ怒るんじゃよ。それこそ、今度は世界を破壊しながらカオスディーラーと戦うかもしれぬ。さすがに世界が壊れると困る……。わしら神官も暮らすところがなくなる……」
悪役のこういう切実な声はなかなか珍しいな!
悪逆非道な敵にだって日常生活があり、暮らすための場所が必要というわけだな。
「よし、ではカオスディーラーを倒すまでは共闘してやろう」
「良かった! やはりお主は話が分かる男じゃのう! あそこでノリで処刑の提案に賛成して悪かったのう」
「ノリだったのかお前……。とりあえずデコピンな」
シーマの額をデコピンした。
「ウグワー!?」
吹っ飛んだ後、額を抑えてのたうち回るシーマ。
転げ回る様子が明良川に似ている。
「オクノ、本当にいいの?」
「混沌の裁定者も、メイオーも、三神官も、最終的に倒すのは変わらないだろ? なら今は仲間にして色々情報を聞いて、いざ決戦ってところで戦えばいいだろ。それに敵に回る予定の奴だって最初から分かってれば、そんなに心配しないだろ?」
「心配すると思うなあ……」
浮かぬ顔のラムハである。
「うむ、心配はいらぬぞ! 今のわしは弱い。この西府アオイと同じ程度の力しかないし、邪の呪法以外はほとんど使えなくなっておる。人が万人死ぬような戦を引き起こせれば力を取り戻せようが……それまで何十年下準備にかかると思っておる。その間にカオスディーラーがこの世界で力を振るい、メイオー様が復活し、邪神大決戦がこの世界で始まるぞ? 世界はぐちゃぐちゃのばらばらにされるぞ? わしはそんなのいやだ」
「正直でよろしい」
『おくのサンハチョット、異常ナクライ懐ガフカイデスゾ』
お前を仲間にするくらいだもんな、ダミアンG。
ちなみにこいつも、古代文明時代は悪の側だったんじゃないかと俺は睨んでるのだが、それはそれ。
今は愉快で便利なドラム缶ロボでしかない。
「みんながシーマのこと心配なら、こいつは俺の部屋に住まわせて俺が監視していようか」
「ダメよ」
「ダメ!」
「だーめ!」
「ダメです」
「真っ二つにしようぜ」
女子四名から否定の言葉が、ミッタクがわかりやすい解決方法を提案してきたがそれは却下だぞ。
「わし、さすがにここで殺されるのは悔しいんじゃが。ここで死んでも、メイオー様が復活するとわしらも強制的に復活するよ? そしてわしらはメイオー様に折檻されるので肉体的にも辛い。ここは一つ、オクノの顔を立ててじゃな」
「なんか生活で疲れたような顔してんな。俺はいいと思うぜ」
「うむ。こやつに敵意は感じられぬのである。イクサ殿も感じなかったのであろう?」
オルカとジェーダイの言葉に、イクサがうなずいた。
「ああ。こいつに敵意や戦意はない。あれは滲み出してくるものだ。意識して抑えられるものではない」
つまり、シーマは本当に俺達とやり合う気がないってことだ。
「わんわん」
「えっ、フタマタが監視する?」
「わんわん」
「なるほど、幻獣オルトロスは睡眠の必要がないのか。えっ、いつもは趣味で寝てる?」
ということで、シーマは副団長預かりとなった。
とっても呉越同舟感満載で、俺達は凍れる城の最深部へと向かうのだった。
ちなみに会話の途中でも襲撃は何度かあったのだが、遺跡のガーディアンっぽいのは仲間達が蹴散らしているぞ。
既に、遺跡のモンスターなどに遅れは取らないのだ。
西府アオイの体を利用している、この神官の周りには、イクサ、ミッタク、ヒーローの三人がいつでも武器を抜ける状態でいる。
「なんとも、警戒心が強いのじゃ。わしはこの内の一人にだって勝てぬのにな」
「まあほら。おたく、この世界に混乱をもたらした張本人のひとりじゃない。現地の人からは警戒されるよ」
「お主は警戒せんのか、オクノ? この体、仮にもお主のクラスメイトの一人じゃろう」
「俺はクラスでハブられていたのでな」
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明良川は「は? それって普通でしょ?」とか言ってきょとんとしているので、こいつは本当に性根から腐っている。
「そうじゃったな。五花めも、召喚されて早々にお主の処刑を提案したな。いや、あのバカ貴族めを焚き付け、処刑に持っていったのか。あの時から非凡な男だとは思っておったが……まさかカオスディーラーに近い特性を持っていたとは思わなんだ」
邪神メイオーの側についたかと思った五花だが、いつの間にか混沌の裁定者側になっていたようだ。
「三神官と混沌の裁定者は仲悪いの?」
「本来であれば不倶戴天の敵同士。じゃが、今は利用し、利用される関係よ。全てはメイオー様の復活のため故な」
それで、神官のシン・コイーワは群島の遺跡の上にいたし、シーマは五花とともに天空の大盆にいたわけか。
「じゃあ、俺達とも敵同士なのでは? 俺達はメイオーの敵でもあるが、混沌の裁定者もぶっ飛ばす予定なのだが」
「そう、それじゃよ! 既に、メイオー様復活は確実になっておる」
この言葉に、仲間達がどよめいた。
まあ、そりゃそうだよな。
この世界におけるパブリックエネミーである、邪神メイオー。
そいつが確実に復活するって言うんじゃな。
「そういきり立つな。放っておいても、人間どもは争う。必ず、時を経ればメイオー様は復活なされるのじゃ。じゃが、それでは時間がかかりすぎる。我ら三神官はそれを早めるために行動しておった。我らのうち、わしの本体を含めた二人は倒されたが、お陰でメイオー様の復活は早まったというわけじゃ。礼を言うぞ」
「そんな……。私達の戦いは……」
あっ、ラムハががっくり来てる。
「待て待てラムハ。戦いがあったから、俺達もとても強くなっただろ? 女神様だってぶっ飛ばしたんだから、メイオーだってぶっ飛ばせるぞ」
「それはどうかのう? ……とあの御方の神官であるわしは対抗意識を燃やしてしまうところじゃが……。今はそれどころではないぞ。わしらが何故、五花とともに行動していたかじゃ」
「そう、それ。 なんで? 最終的には敵になるんだろ?」
「五花武はカオスディーラーがこの世界に力を及ぼすための扉になっておる。つまり、あやつの動向さえ見ておけば、メイオー様の敵であるカオスディーラーの動きも把握できるということ。あとはあやつを利用し、世界に争いを起こすだけ」
「オクノくん! やっぱりこいつ悪いやつだよ! やっつけよう!」
ぷんすか怒りながら槍を振り回すルリア。
「ルリア、気持ちは分かる。こいつは明良川の千倍くらい悪いやつだからな」
「今なんであたしを基準に持ち出したの!?」
明良川の話は無視するぞ。
「で、今、五花は?」
「王国におる。最後の神官が、あれを監視しておるわ。我らの手では、カオスディーラーに手出しはできぬ。かと言って、五花武を殺せば、カオスディーラーはまた世界の裏側に潜り込み、その存在を掴むことができなくなるじゃろう」
「あー、五花、目立つもんなあ! なるほどなるほど、どこにあいつがいるのか分かりやすくしてたのか」
「そう、そういうことじゃ! 遺跡もまた、我ら神官の力では破壊できぬ。我らはいわば神の眷属じゃ。それ故に、他の神が手ずから作り上げた神殿などを破壊することができないのじゃ。シン・コイーワなどは諦めて、その遺跡を利用して海賊稼業に勤しんでおった。じゃが、そこに現れたのがお主よ、オクノ!」
「俺か」
「お主じゃ。遺跡をぶっ壊す大馬鹿者め。かの忌まわしき来訪者、コールをも超える破天荒ぶり。お主が群島の遺跡を破壊したのを見て、わしはピーンと来たのじゃ。五花武を囮にして、お主らを呼べば遺跡を破壊できるとな」
「ほうほう。つまり、俺達はお前の手のひらの中で踊っていたわけか」
「いや、まさかあんなに速攻で天空の大盆を落とした上に、月の女神をも張り倒して正気に戻し、そこな依代の娘を救うとは思ってもいなかったのじゃ……。なんなのお前達」
シーマが素になった。
「わし、さすがにもう無理。お前達は御せないので、こうして正面からお願いに来たよ」
「おっ、なかなか潔い」
「ほら、わしらってメイオー様が復活すれば最終的にいいわけじゃない? でもカオスディーラーが復活してると、メイオー様めちゃくちゃ怒るんじゃよ。それこそ、今度は世界を破壊しながらカオスディーラーと戦うかもしれぬ。さすがに世界が壊れると困る……。わしら神官も暮らすところがなくなる……」
悪役のこういう切実な声はなかなか珍しいな!
悪逆非道な敵にだって日常生活があり、暮らすための場所が必要というわけだな。
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「良かった! やはりお主は話が分かる男じゃのう! あそこでノリで処刑の提案に賛成して悪かったのう」
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「ウグワー!?」
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「心配すると思うなあ……」
浮かぬ顔のラムハである。
「うむ、心配はいらぬぞ! 今のわしは弱い。この西府アオイと同じ程度の力しかないし、邪の呪法以外はほとんど使えなくなっておる。人が万人死ぬような戦を引き起こせれば力を取り戻せようが……それまで何十年下準備にかかると思っておる。その間にカオスディーラーがこの世界で力を振るい、メイオー様が復活し、邪神大決戦がこの世界で始まるぞ? 世界はぐちゃぐちゃのばらばらにされるぞ? わしはそんなのいやだ」
「正直でよろしい」
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今は愉快で便利なドラム缶ロボでしかない。
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「ダメよ」
「ダメ!」
「だーめ!」
「ダメです」
「真っ二つにしようぜ」
女子四名から否定の言葉が、ミッタクがわかりやすい解決方法を提案してきたがそれは却下だぞ。
「わし、さすがにここで殺されるのは悔しいんじゃが。ここで死んでも、メイオー様が復活するとわしらも強制的に復活するよ? そしてわしらはメイオー様に折檻されるので肉体的にも辛い。ここは一つ、オクノの顔を立ててじゃな」
「なんか生活で疲れたような顔してんな。俺はいいと思うぜ」
「うむ。こやつに敵意は感じられぬのである。イクサ殿も感じなかったのであろう?」
オルカとジェーダイの言葉に、イクサがうなずいた。
「ああ。こいつに敵意や戦意はない。あれは滲み出してくるものだ。意識して抑えられるものではない」
つまり、シーマは本当に俺達とやり合う気がないってことだ。
「わんわん」
「えっ、フタマタが監視する?」
「わんわん」
「なるほど、幻獣オルトロスは睡眠の必要がないのか。えっ、いつもは趣味で寝てる?」
ということで、シーマは副団長預かりとなった。
とっても呉越同舟感満載で、俺達は凍れる城の最深部へと向かうのだった。
ちなみに会話の途中でも襲撃は何度かあったのだが、遺跡のガーディアンっぽいのは仲間達が蹴散らしているぞ。
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