ピコーン!と技を閃く無双の旅!〜クラス転移したけど、システム的に俺だけハブられてます〜

あけちともあき

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第四部:送還編

119・俺、道案内を得る

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「わんわん!」

「ありがとうフタマタ」

 おっ、フタマタに乗ってラムハがやって来たぞ。
 フタマタは船とここを往復して女子達を運んでいるようだ。
 偉い。

 さて、では気を取り直してミッタクのパパに問い直してみよう。

「今、なんて?」

「ミッタクと子を作れ」

「ダメ」

 ノーウェイトでラムハが否定した。
 ミッタクパパは虚を衝かれ、「えっ」とか叫んで固まっている。

「だから、うちはそんなんならねえって言ってるだろ!! 下ろせー! うちを下ろせー!!」

 おお、お姫様抱っこ状態で大暴れするミッタク。
 仕方ないので、脇を抱えてストンと下ろしてやった。

「な、な、なんだよお前ー!! その下ろし方はー!! もっと乱暴に男にやるみたいに下ろせよー!!」

 雪国出身のバイキング娘ミッタクさん、体はでかいけど心は乙女のようだ。
 あと、ラムハに匹敵するくらい色白なので、顔が赤くなるとすぐ分かる。

「あなたが族長ね? いい? オクタマ戦団の団長、オクノには、もう相手がいるの。むしろその立場の争奪戦が行なわれている最中なの。横からさらうなんて許されるはずがないわ」

「む、むう、それはそちらの事情であろう。我々はこのように部族で固まっているのだ。新しい優れた血を取り入れることで、バイキングは強くなってきた。そこの男はバイキングを蹴散らし、ミッタクを負かしたというではないか。種が欲しい……!」

「親父は直接的過ぎるんだよだまれえ!」

 ミッタクが横から入ってきて、ミッタクパパを延髄斬りでなぎ倒した。

「うぐわー!」

 ミッタクパパ、倒れる。
 下が雪で助かったな。
 なんとも荒々しい親子の愛情表現だ。

「ところでミッタク。なかなかいい延髄斬りだな。俺はちょっと君に興味を持った……」

「オクノ! プロレスで女を見直すのやめて!」

 ラムハに強く小突かれてしまった。
 言われてみればそうかも知れない。

 ちなみに俺の後ろでは、やって来たルリア、カリナ、アミラ、ロマ、日向、明良川が、「雪だー」とか言ってきゃっきゃしている。
 おい、誰だ明良川下ろしたの。

「わんわん」

「えっ? リザードマンが船底に引っ込んだけど、一人だけ物欲しそうに船べりから雪を見てたから、かわいそうになって連れてきた? フタマタは優しいなあ」

「わふう」

 フタマタが笑うみたいな顔を作った。

 副団長フタマタの判断であれば支持しよう。

「ルリア、カリナ」

「ほーい」

「はーい」

「明良川をちゃんと見張ってること」

「まっかせて」

「任せてください」

 これでよし。

「いやいや、こんな異世界で、しかも明らかに逃げ出したらのたれ死にそうな雪国で逃げ出したりしないから……! あたしは死にたくないので!!」

「ゆずり、そういうところ慎重だもんね。でも大丈夫だよ。多摩川くん、割と懐が深いので」

「ううっ、あたしの命が多摩川に握られるとは……」

 日向は優しいから、明良川に色々ほだされそうだな。
 そこのところはルリアとカリナでカバーだろう。

「オクノくん、毛皮」

「オクノ、毛皮とやらを着るんだろう?」

 おっ、アミラとロマもやって来た。
 倒されたミッタクパパが起き上がらないので、話が進まない。
 多分この人が族長なんだろうが、延髄斬りが見事に決まったからな。

「アミラ、毛皮の話をするためにもこの人を回復させねばならない」

「はいはい。癒やしの水~」

 アミラがかざした手から、きらきら輝く雫が生まれた。
 それがミッタクパパに降り注ぐ。

 彼はくわっと目を見開いた。

「はっ、わ、わしは何を!? 今、死んだ妻が川の向こうで手を振っていたような」

「死にかけてたんじゃねえか! おい娘」

「そ、その場のノリだよ」

 バツが悪そうなミッタク。
 これを見守っていたバイキング達から、どっと笑いが起きた。

「こりゃあ参ったな!」

「死にかけた族長まで助けられたんじゃ、俺たちゃ勝てねえよ」

 ちなみに、退屈してたジェーダイとオルカは、バイキングの男達と装備を見せ合いっこしたりしていた。
 好みが近いおじさん達はすぐ仲良くなるのだ。

「なんだ、戦いにはならないのか。村全体にあった警戒心が薄れていく」

 イクサが仏頂面で言った。
 彼が言うなら間違いないだろう。
 バイキングとは敵対しなくて済むぞ。




「なるほど、北の凍れる城に」

 ミッタクパパが重々しい表情をした。
 真っ白い立派なあごひげを撫でる。
 ここはミッタク邸。
 丸太で作られた特大ログハウスで、大きな暖炉が温かい。

「遺跡を全部壊してまわってて、混沌の裁定者とかいう奴を引きずり出してね、こう、パワーボムでもかけようかと」

「そのパワーボムというのは分からんが、お主がわしの想像を絶する豪傑であることだけはよく分かった。あの、本当に神様と素手で戦ったの?」

「うん」

 俺の言葉に半信半疑っぽいミッタクパパ。
 それを、なんとミッタクが援護射撃してくれた。

「本当だよ親父。こいつ、戦いながら技を閃いたんだ。まるで戦いの中でどんどん強くなる戦神メイオーみたいだよ」

「なんと、戦神メイオーのような……!?」

 ミッタクパパが唸った。
 バイキングの村では、メイオーは邪神と戦神を分けて、後者の属性が信仰されていた。
 そして明確なメイオーについての言い伝えを聞く。

「混沌の裁定者……我らは、カオスディーラーと呼んでいるが、そやつが世界の壁を越えてキョーダリアスを手に入れにやって来た。メイオーはカオスディーラーと戦い、はじめは押されていたものの、徐々に技を閃いて優位に立ち、ついにはカオスディーラーを粉々にして世界の壁の向こうへ押しやったのだ。だが、この時点でメイオーの力は、創造神キョードウをも超えていた」

「なるほど。つまりキョードウは自分を超える力を持ったメイオーを恐れて封印したと」

「いや、普通に戦う喜びに目覚めたメイオー様が、『お前強いな。オレはワクワクしてきた』とか言って世界のあらゆるものに勝負を挑んで大変なことになったのだ」

「おっ、全面的にメイオーが悪いじゃねえか」

「ということで、異世界からコールという勇者が召喚された。彼はこの世界の人々とは異なるステータスをしていたという。何を隠そう、コールが最初に降り立った地が、このバイキングの集落だ。コールはバイキングの姫とともに世界を駆け抜け、仲間を集め、ついにはメイオーを討った。何しろ、コールの方がメイオーよりも弱かったので、メイオーは戦いの中で技を閃けずに負けたのだ」

「メタな勝ち方しやがったな」

 コールのステータスは固定式だったらしい。
 だが、当時世界中に魔石みたいなものがあって、それを摂取する度にHPとか力とか素早さが上がったとか。
 彼は六欲天を次々打ち負かして仲間にし、ついにメイオーを倒す。

「だが、それはそれとして戦いの神メイオーが世界を救ったことに変わりはない。わしらは、それ故にメイオーを信仰しておるのだ」

「なるほどー。よく分かった」

「お主らが遺跡を破壊し、カオスディーラーと戦おうというのは運命の導きだろう。案内役としてミッタクをつけよう。途中で手を出しても構わんぞ」

「親父てめえ!」

「ウグワー!」

 おっ、今度はミッタクパパがフェースクラッシャーで床に叩きつけられたぞ。
 今のはヤバい方の断末魔では?

「今度は私に任せて。ライトヒール!」

 ラムハの手が光り輝いた。
 ミッタクパパが動き出す。

「また川向うで妻が手を振っておった……。絶対冥界だ。あいつ、わしが来るのを手ぐすね引いて待ってる」

 愛情が重い。

「でも一応、ミッタクが結婚しそうだよって伝えてきたら、かなりテンション上がってた」

「三途の川が見える状況でそんな詳細な会話ができるのか……!!」

 この世界の冥界にも興味が出てきたぞ。
 そう言えば、俺達がぶっ飛ばしたクラスメイト達、みんな冥界に行ったりしてるのかね?

「さて、じゃあ決まりだな」

 ミッタクが立ち上がった。

「凍れる城に行くぞ。村で毛皮も売ってるから、揃えていけよ」

「毛皮……!!」

 ラムハの目がきらきら輝いたのだった。
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