ピコーン!と技を閃く無双の旅!〜クラス転移したけど、システム的に俺だけハブられてます〜

あけちともあき

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第四部:送還編

117・俺、戦神メイオーの再来と言われる

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「おらおらおらあっ!!」

 ミッタクと名乗った女が、斧を振り回す。
 こいつをブロッキングで受ける俺だが、ハッとする。

「お前、これ技だろう! つまり、技を使えるくらい強いわけだな! 見知らぬツワモノがまだまだいるものだなあ」

「何を感心しながらうちの斧を腕でガードしてるんだよ! お前、化け物かっ!」

「ミッタクよ。いかに斧と言えども打点をずらせば、相手の体を傷つけることができないのだ。そう、腕で防ぐ必要すらない。こうだ! ブロッキング!」

 俺は彼女の攻撃を胸板で受け止めた。
 バシーンッという小気味良い音がする。
 よく、鍛え抜かれた胸板に水平チョップを浴びせることがあるだろ?
 あの音だ。

「なんで斧でこんな音が!?」

 ミッタクの攻撃を防いだが、彼女が弱いわけではない。
 むしろ独自の技を使える時点で、このバイキング女はジェーダイやオルカに匹敵する実力はあるだろう。
 純粋な実力だけなら、うちの女性陣よりも上かも知れん。

「いや、お前さんは強いよ。だが俺のほうが強いだけだ。ツアーッ!」

 俺はビッグブーツを放った。

「うおおっ!」

 ミッタクがこれを斧で受け止める。
 そのまま後ろへと突き離された。

「ええい、お前らも登ってきな! とんでもない強者がいるよ! うちだけじゃ分が悪い!」

「姉御が分が悪い!?」

「そんなん本物の化け物じゃねえか!」

「姉御も大概化け物ですけどね!」

「わっはっは違いねえ!」

「お前らあとでぶっ殺すからね!!」

 ミッタクが青筋浮かべて叫ぶ。

 バイキング、みんな仲良さそうだなあ。
 ちなみに、船に彼らが上がってくる前に、ホリデー号がちょいちょいっと水中衝角で触って回っている。
 この繊細なコントロールはグルムルによるものだ。

「うわーっ!? 船が掬い上げられるー!!」

「この船、近づけねえ!!」

「矢を射てー!!」

「矢が光の壁で跳ね返された!!」

「なんだよこの船化け物じゃねえかよー」

 バイキングから泣き言が聞こえ始めたぞ。

『フッフッフ、ソレデハ私ガ設計シタ船ノ真価ヲオ見セシマショウ!! フオオー! めいんますと接続! だみあんえんじんふる回転!!』

 後ろの方でダミアンGが面白いことを始めた。
 えっ、メインマスト、中身が中空に?
 そして頭のハッチと股の下のハッチを開けたダミアンが、メインマストの真上に合体する。

 あいつ、上下のフタを開けると筒なのな……。

『だみあん砲発射!』

 その瞬間、ホリデー号が揺れた。
 ダミアンGを通して発射された、恐らくは呪力の弾丸が、バイキング達の船が集まるところに落ちていく。

 凄まじい水しぶきが上がった。

「まさか帆船なのに艦砲射撃ができるとはな……! 古代文明凄いぜ……」

 ゲームで言えば、戦闘中に敵に自動的に援護攻撃してくれるような状況だと言えよう。
 これで、バイキングは総崩れになった。
 攻撃が通じない、頼みの親玉は押されてる、相手からは意味のわからない遠距離攻撃が飛んでくる。

 こんな訳のわからない相手と戦いたいとは思わないだろう。

「ああっ、お前ら逃げるなー!! うちを置いていくのかーっ!?」

「姉御、命あってのものだねです!!」

「叔父貴に報告しますんでーっ!!」

「お達者でーっ!!」

 これはひどい。
 ミッタク、敵地に置き去りにされてしまった。

「あ、ありえねーっ!!」

 憤慨するミッタク。
 そして俺に向き直る。

「こうなりゃ、お前を倒してうちは脱出する!!」

「おっ、やる気だな。後ろに逃げるんじゃなくて前に突破しようっての、俺は大好きだぞ」

 ミッタクと俺、身構えながら甲板の上で向かい合い、じりじりと回る。
 仕掛けたのはミッタクだ。

「おらあっ!!」

 彼女の肉体が宙を舞った。
 くるくる回りながら、破壊の竜巻となったミッタクが俺に突撃してくる。
 旋風斬とでも言うべき技だな!

「ブロッキング! いい技だ!」

 俺はこいつを受け止める。
 まだまだこんなもんじゃやられないぞ。

「本当に化け物だなお前! 打たれ強すぎるだろ! だったらこいつだ!」

 即座に回転を止めたミッタクは、斧を短く持ってから高速でそれを振り回した。
 斧の刃が光を放ち始める。

「撃魔斬!!」

 光がルーン文字みたいなのを描いたと思ったら、そいつが俺に炸裂した。

「うおっ、呪法技かよ!!」

 爆発が起こる。
 さすがの俺も、ちょっと後ろへ下がった。

 なるほど、このミッタクという女、強いな。
 ひたすら力で押してくるタイプだが、その押し方を何パターンも持っている戦士だ。
 イクサと同類だが、イクサは線、ミッタクは面で押してくるな。

 躱しにくい高範囲攻撃だ。
 だがその分、貫通力が低い。

「こいつも……ブロッキングだ!」

 俺は撃魔斬の光をくぐり抜けた。

「てめえっ!!」

「次は俺の番だ! 行くぞ!」

 ピコーン!
『喉輪落とし』

 おっ!
 早速技を閃いた。
 つまりピコーン!と来るレベルの強さってことだな。

「喉輪落としっ!!」

 俺は腕を突き出すと、ミッタクの喉を引っ掴んだ。

「ぐええっ!」

 俺と変わらないくらいの上背の彼女を、片手で勢いよく持ち上げ……!
 甲板めがけて叩きつける!

 衝撃に、ホリデー号が揺らいだ。
 だが、この程度ならば甲板はぶっ壊れない。

 機動性の効く、使い勝手がいい投げ技を覚えたな。
 いいぞいいぞ。

 ミッタクは一瞬、意識が飛んだようだった。
 大の字になって動かなくなる。

「ううっ……なんて技を隠し持ってやがる……」

「今のは隠し持ってたんじゃない。閃いたんだ。俺はピンチに近くなったり、強い相手と戦うと技を閃くんだよ」

「技を……閃くだあ? てめえ、戦神メイオー気取りかよ……! 戦いながら技を覚えて強くなるなんざ、まんまメイオー伝説のままじゃねえか」

 女バイキングはタフである。
 ぜいぜい言いながら、立ち上がってきた。
 だが、実に気になることを言う。

「えっ、メイオーって技を閃くの?」

「そんなことも知らねえのか? うちらバイキングは、戦いの神としてメイオーを信仰してる! メイオーに愛された戦士は、生涯の間に一つか二つの技を閃くんだよ! うちは天才だから、この年で三つも技を使える! だっていうのに、お前は! うちの技を生身で跳ね返すとか、人間の皮を被った化け物め!!」

「レスラーはタフだからな」

 俺は端的に説明してやった。
 しかし、そうだったのか。
 メイオーは俺と同じように、その場で技を閃いて強くなっていく神らしい。

 これは何かのフラグを感じるな。
 メイオーは過去に転生した俺だったりするんじゃないか、こういうパターンだと。

「あっ、戦いの最中にオクノくんが何か考えてる!」

「でも確かに気になるわね。メイオーとオクノの共通点……」

「オクノさんが邪神でもわたしは婿になってほしいです!」

「まあカリナ、抜け駆けはだめよ!」

 女子達がわいわい騒ぎ出したのでハッと我に返る俺だ。

「そう言えばミッタク。さっきからまるで俺のことを化け物だの怪物だの呼ばわりだが、そもそもおたくらが俺達に略奪行為を仕掛けてきたのでは?」

「バイキングはそういうもんだろうが!」

「確かに。では返り討ちにあう可能性も織り込んでるだろう。ってことで、フィニッシュを決めるぞ」

「くっ!!」

 ミッタクが身構えた。
 そこに、俺はじりじりと歩み寄る。

「なんだろう。絵的には女子ににじり寄る男子だから危ないんだけど」

 うるさいぞ日向。

「相手のバイキングも、オクノと同じくらいの体格さね。お似合いなのでは?」

 ロマの言葉を受けて、ラムハ、ルリア、アミラ、カリナが一様にギロッとミッタクを睨んだ。

「な、なんだお前ら!?」

 ミッタクが一瞬たじろいだ。
 その隙を俺は見逃さない。
 一瞬で懐に入り込むと、

「しまった!」

 叫ぶミッタクの足を取り、ドラゴンスクリューで転倒させる。
 そこから決めるのは……。

「甲板を傷つけないように決着をつけるぞ! サブミッション・アキレス腱固め!」

「うぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃーっ! 痛い痛い痛い痛い痛い!!」

 どんなに強靭な肉体があろうと、関節を鍛えることはできないのだ。
 ということで、堪らず斧を放り捨て、手足をバタバタさせて叫ぶミッタクに、俺は問う。

「ギブアップかな」

「な、なんだそれ」

「参ったってことだ」

「い、言わねえ」

 ぎゅっ。

「うぎゃーっ!! 参った! 参ったから!」

 俺は技を解き、立ち上がった。
 ふう、相手が女子だったから手加減してしまったぜ。

「オクノ、相手が女でも全く手加減しないで潰しに行くわよね。そこはさすがだわ」

 あれえ?
 自己評価とラムハさんからの評価が違うぞ。
 だが、これでひとまず戦闘は終了。

 バイキングのリーダーらしき女、ミッタクを囚えたのである。
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