ピコーン!と技を閃く無双の旅!〜クラス転移したけど、システム的に俺だけハブられてます〜

あけちともあき

文字の大きさ
上 下
114 / 181
第三部:覚醒編

114・俺、旅立ちに必要なものを考える

しおりを挟む
 北へ行くんだから、防寒装備が必要だろう。
 何せ目標は凍れる城だからな。

 それっぽいのを新帝国で買い込み、アイテムボックスに放り込んでいく。

 あれっ、うちの船員のリザードマンってもしかして寒さに弱い?
 変温動物なんだろうか。
 彼らそう言えば、よくひなたぼっこしてるしな。

 疑問に思ったのでグルムルに聞いてみた。

「そういうことはありませんよ。我々リザードマンにも、熱い血は流れています」

「恒温動物だったか。ひなたぼっこするのは?」

「我々は日光浴で栄養を摂取しているのです」

「ビタミンDを補給してたのか……」

 納得した。
 とりあえず、体表に毛が無いので寒さは得意ではないそう。
 ということで、船員リザードマン達用の防寒具の調達は急務だ。

「イーサワ、これこれこういうものが欲しいのだが」

「防寒具ですね。僕が集めている情報によりますと、もっと北上した冷涼な地域でそれらが売られ始めるようです。場合によってはモンスターを狩り、毛皮を店に持ち込んで作ってもらう方がいいかも知れません。リザードマンの皆さんは体格が独特でしょう」

「確かに……!」

 イーサワとグルムルをブレインに迎え、北上計画が進んでいく。

 北方についての詳しい話は、皇帝から聞くなどした。

「かつて、サンクニージュ大陸の各地には混沌の裁定者の力を得た使徒が散らばっていてな。我が祖先はそれらを何代にも渡り、退治して回っていた。その時に、各地の気候については詳しい記録が残っている。その一つを貸し与えよう」

「ありがたい」

 混沌の使徒とかも昔いたわけだな。
 ファイナル皇帝が身につけている戦闘術は、そういう連中と渡り合うため、帝国の代々の皇帝が生み出してきたものということか。

 さて、帝国の記録を借りることができた。
 それは、北の地に遠征した時のものだ。

 北方には蛮族が住んでいるようだ。
 漁や狩りをして暮らしているのだが、実入りが少ないシーズンには海賊や山賊をするとか。
 バイキングみたいな連中だ。

 そいつらが毛皮加工に向いていて、北の凍れる城についても詳しいのだとか。
 ふむふむ。

 今からそちらに向かえば、北方はやや温暖な時期。
 それでも雪に覆われてはいるとか。

「オクノ、何をしてるの?」

「買い物計画をな……」

 ラムハがやって来たので、今やっていることの説明をしようとする。
 すると……。

「買い物!?」

「買い物ですって!?」

「買い物ですか!?」

 おっ、三人生えてきた。
 たちまち四人に張り付かれる俺である。

「おーい」

「オクノ、これは帝国が所有する北方の記録よね? ということは次の行き先は北方なんだから、モーフルの毛皮を手に入れるべきだわ。モーフルっていうのはサンクニージュ大陸北方に住む毛むくじゃらの人形生物で……」

「えっ、イエティみたいなのなの!? それの毛を使うの!?」

「モーフルの毛皮……あたし、着たことないなあ……」

「モーフル……すごく高価でね……。お姉さん、一度だけ見たことがあるんだけど、あのふわっふわ感凄かった……」

「着たいです(直球)」

「なるほど」

 俺は納得した。
 女子達にとっても、価値のある毛皮なんだな。
 これ、別に彼女達だけじゃなくてリザードマン軍団や、場合によってはダミアンとかにも着せるんだがな。

 え、高いの?

「……イーサワ、予算大丈夫?」

「余裕です。我が団の手持ちは、今や小国の国家予算以上の金額ですから」

「えっすごい」

「オルカさん達がせっせと稼ぎましたからね。幽霊船をダース単位で」

「ありがたいなあ。お陰でモーフルとか言うイエティの毛皮を山程買える」

「問題は解決したようですね。海賊王国という頭を押さえつける者達がいなくなれば、船長の実力はこれだけのものなのです」

 いつも冷静なグルムルがドヤ顔をしている気がする。

「どうです。どうです団長」

「ああ、オルカはさすがだな」

「でしょう」

 あっ、グルムルがムフーって鼻息を吹いた!
 こいつ、本当にオルカの事が好きなんだな。
 さすがはキャプテン・オルカの相方だ。

「それでこれからの進行について私から提案です」

「グルムルから提案とは珍しい」

「ええ。ホリデー号は今、改修の最中です。その際、我々リザードマンからの意見を取り入れてもらっています。それは、衝角の装備です」

「衝角!?」

「団長が以前、ホリデー号に装備した武器の数々がありますが、あれらは幽霊船との戦いにおいて役立ちました。これらをホリデー号に特化した形へと改造し、換装しているのです。そして次の北方への旅にもこれは適しているでしょう。バイキング船など一撃で轟沈させます。ちなみに水中にも衝角を装備しており、こちらは氷を砕くことにも使えます」

 グルムルが雄弁だ。
 今まで裏で、ホリデー号強化計画を進めていたのか。

 イーサワが満足気にうんうん頷いているので、この二人は結託していたようだ。

「ちょっと見せてもらっていい?」

「どうぞどうぞ」

「どうぞどうぞ」

 というわけで。



 俺、グルムル、イーサワ、そして厳正なる押し相撲対決で選ばれた女子を連れてバギーにてホリデー号へ。

 バギーの定員は四名。
 同行する女子は押し相撲で覇を競い合った。
 押し相撲なら、運が介在する要素は少ない。
 比較的小柄なルリアや、お子様のカリナでは分が悪いのだ。

「うわーっ! お肉の暴力ーっ!」

 アミラのお尻に弾き飛ばされるルリア。
 槍を持たなければ運がいいだけの村娘である。

「うわーっ! 胸の暴力ーっ!」

 ラムハの胸に押し込んだ力を吸収され、受け流されたカリナ。
 弓を持たなければちょっと背伸びしたお子さんである。

 かくして……。
 アミラvsラムハ。

 いい勝負になるかと思われた。 
 だが、俺はプロレスに関しては一家言あっても、押し相撲にはまるで素人だったのだ。

「重心が基本よ? お姉さん、実は山歩き以降、ずっと鍛えてたの」

「う、動かない!」

 ラムハの押し込みを涼しい顔で受け止めるアミラ。
 トータルのボディバランスでは、トップヘビーな傾向があるラムハよりも優れていたのだ……!
 かくして、体勢を崩されたラムハは成すすべなく尻もちをつく。

「そんな……私が歯が立たないなんて……」

 愕然とアミラを見上げるラムハ。
 アミラ、艷やかな笑みを浮かべる。

「たまには年上の貫禄をみせつけないと、ね?」

 ラムハの方が実質的には年上では?


 そんなわけで、俺の隣にはアミラが乗っていて。

「きゃー! スピードがはやーい! お姉さん怖いなあー」

「あーっ、アミラさんぎゅっと押し付けてくるのはいかがなものかーっ」

 俺達は一路、港町へとバギーを走らせるのであった。
 
しおりを挟む
感想 92

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

処理中です...