ピコーン!と技を閃く無双の旅!〜クラス転移したけど、システム的に俺だけハブられてます〜

あけちともあき

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第三部:覚醒編

109・俺、覚醒する黒曜の女神と見える

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「オクノ」

「なんだいラムハ」

 呼ばれて振り返る俺。
 ラムハはいつも通りの顔をしていた。

「その時が来ちゃったみたいね。……お願いできる?」

「そうかあ……フラグ回収だな」

 俺は右腕をぶんぶんと振り回した。
 そして、周囲の仲間達に呼びかける。

「みんなー。お疲れのところ悪いが、これが本番だ。あ、インペリアルガードの人達は、大盆から湧いてくるロボットを相手にしてもらっていい?」

 回りに指示を飛ばしつつ、ラムハの様子を見る。
 彼女が身につけた、宇宙を思わせる指輪。

 それが存在感をどんどん強めていっている。
 指輪サイズの小さなものなのに、既にこの場全てを飲み込むのではないかという大きさに感じる。

 出てきますねー。

 ここでラムハのステータスを確認。
 おっ、良かった。
 まだパーティメンバーだ。

 だけど、ステータスの数字は点滅を始めている。
 もうすぐ消えてしまいそうだ。
 それに……全てのマスクが外れていた。



名前:ラムハ/ハームラ
レベル:50/888
職業:記憶を失った女/黒曜の女神

力   :39/12576
身の守り:48/13699
素早さ :90/27580
賢さ  :220/49198
運の良さ: 3/111

HP251/666666
MP370/666666

闇の呪法35レベル
黒曜
✩杖
・スペルエンハンス・パワーエンハンス・アンチマジック
・スピードマジック
★闇の呪法
◯闇の炎◯闇の障壁◯闇の衝撃
◯闇の支配◯闇の呪縛◯闇の魔槍
◯闇の結界◯闇の雨
★黒曜
◯ルナティック◯ムーンレイド◯メテオストライク
◯ギャラクシー


「ほい、みんなラムハのステータスに注目。七勇者なんぞ比べ物にならないバトルが始まります」

「おい……。こいつはどういうことだ? いや、前々から怪しいステータスだとは思ってたんだがよ」

 いつもは豪胆なオルカが驚いている。
 いや、こいつ割としょっちゅう驚いてたな。

「そんなー! ラムハと戦うの!? やだよー!」

 ルリアが泣きそうだ。
 カリナが下唇を噛んで、何も言わない。

「参ったわね。ラムハのこと、お姉さん敵だって見れないから」

「そんな……こんなこと」

 アミラと日向も、気持ちを切り替えられていない。

 ここまでが常識人組な。

『アー、ヤッパリソウダッタンデスネー。ウン、ワカッテマシタ。ジャア、私ハコレデ……』

「待て!! 仲間が危機に陥っている今、助けなくて何が正義か!! お前も正義を担う者の端くれだろう!!」

『違ウンデスケドー!! ウオー! ハナセー! ハナセえすぷれいだー!! 二度モ死ヌノハイヤダー!』

「むっはっは! まさか本物の女神と相まみえる事ができようとは!! 我、現代まで生きてきた甲斐があるというものであるぞ!」

「あたい、こんなことになる気がしてたんだー。でもオクノはいつからこうなるって思ってたの?」

 漫才をするダミアンGとヒーロー。
 豪快に笑うジェーダイ。
 ロマが俺に質問してきたので、答えることにした。

「割と最初から。だって原因の一つが俺だもの。でもラムハいなかったらここまで来れなかったぞ」

「なるほどねえ……。了解了解。団長さんに従うさね」

「私も異存はありません」

 グルムルが頷く。

「僕は戦えないので、この隙に換金できそうなものを集めてきますよ。団長、あなたが勝つ方に、僕の命と全財産賭けてますからね」

 イーサワはいつもどおり。

「わんわん」

 フタマタは毅然と、ラムハを見つめる。
 このオルトロスは、躊躇なく戦いに身を投じるだろう。

 そして、イクサが黙ってラムハを見ていた。

「オクノ。奴を救えるのか?」

「救うしかないだろ」

「そうだな。救うか」

 ということで。
 我が団の方向性は決まった。

 まずは戦えるものだけで陣形を組み、ラムハに相対する。

「ありがとう、みんな。私はもう抑えられないわ。だから……後はお願い、みんな。……オクノ」

 次の瞬間である。

 ラムハを中心として闇が広がった。

 現れたのは、漆黒の中に星が煌めく、触手の塊。
 周囲に霧のように、宇宙のようなものをばらまきつつ、その中心で真っ白な肌に黒髪の女がいる。

 女はじっと俺達を見据えていた。

『私はハームラ。月を、月を、月を見よ。月が、月が、月がお前達を見る』

 女神ハームラ。
 狂気に陥った女神で、神々の王、キョードウによって封じられていた存在だ。
 で、封じられた姿こそがラムハだったわけだな。

 最初に彼女と出会った時、分からんうちに身に着けていた闇色の指輪を破壊した俺。
 この時に、こうなるだろうなというのは予測していた。

 今までも何度かその機会はあったのだが、とうとうやって来たというだけのことだ。

「女子チーム、覚悟を決めようか。大丈夫。助けるつもりだから」

「……うん! オクノくんがそう言うなら、そうなるよね!」

「絶対、助けます!」

「やるしか無いわね。私達、いつだってそうやって道を切り開いてきたもんね」

「クラスのみんなをぶっ飛ばすのは不思議と気にならなかったのに、ラムハさんだと気が引けるのが不思議……」

 おっ、日向そこはあれだぞ。
 人間には思い入れとかがあるからな!

 てなわけで。

「戦闘開始! 今までで一番やばいバトルだと思うので、無理だと思ったら退くこと! 俺は限界まで閃きまくって戦う手段を探すわ」

 即座に、パーティを三つに分ける。

 日向、ヒーロー、ダミアン、ジェーダイ、ロマ。
 フタマタ、オルカ、グルムル、アミラ、カリナ。

 そして俺とイクサとルリア。

 俺以外の二つのパーティは、攻撃しつつも防御優先。

 俺達は、メイン攻撃要員だ。

『月を見て……。ルナティック』

 いきなり精神攻撃だ。

「ワイドカバー!」

 俺は仲間達全員をかばう。
 ルナティックとか言う精神攻撃は、全部俺に叩き込まれてきた。
 俺の中で、意味のわからない言葉とか衝動がぐるぐると蠢く。

 衝動が俺の意識を闇の中に引きずり込もうとする。
 なので、俺は意志の力でその衝動に向かって技を掛けるイメージをした。

「脳内……ブレーンバスター!!」

 闇の衝動を持ち上げ、叩きつける!
 闇の衝動消滅!
 よし、勝った!

「待たせたな」

「構わん」

 イクサがすぐ目の前で、放たれる闇の呪法を迎撃している。
 カウンター技の円月斬、魔法すら斬るのか。

 黒曜の女神ハームラ。
 一見してとんでもないステータスを持つ化け物だ。
 放つ呪法の威力も桁違い。

 一撃一撃が、戦場となっている天空の大盆を揺るがす。
 かつて、帝国で伯爵の屋敷を粉々にした俺のサンダーファイヤーパワーボムだが、これを上回る威力が通常の呪法に込められていると見ていいだろう。

 だが、ここからはちょっとゲーム的な展開だ。
 俺やイクサ、ルリアなどが持っているカウンター技や防御技。
 こいつは敵の技の威力に関わらず、それを相殺したりやり過ごす効果があるようだ。

 つまり、的確にこれを用いることができれば、致命的な一撃は喰らわずに済む。

 あくまでどれだけ長い間戦場に立っていられるか、という話でしかないが。

「クソっ! 全然銃が通らねえ! とんでもねえ硬さだぞこいつ!」

「うわーん! 触手を殴ったらヌルってした!」

 オルカと日向が悲鳴を上げる。

「しかも速いです!! 私の矢を叩き落としてくる……!」

 正攻法では、攻撃を当てること、通すことすらできない。
 まあ、普通に考えたら絶望的な相手だよな。

「なので、ここからはメタで行くぞ。伊達にパーティメンバーの技を把握してない」

 俺は最前線に躍り出ながら、同時に指揮を行う。

「ルリア! エイミング!」

「ほーい! エイミング!」

 ルリアの槍が走った。
 それは、迎撃しようと集まる触手を全てギリギリのところで掻い潜り、本体たる女神に的確に突き刺さる。
 呪法的な防御も、身の守りの驚異的な硬さも全て無視してだ。

『アッ……アアアアアアアアアッ!!』

 女神が初めて、ダメージを受けた。
 うーむ、やはりルリアのこいつは別格だな。
 回避と防御を無視する技だ。

 確率でしか発動しないが、天元突破したルリアの運の良さなら、100%……いや、1000%くらいで発動する。
 余録は威力のアップというところか。

『月を……月を……月を……!』

 触手がルリアに狙いを定めた。
 この隙に、アミラが回復を行う。

 ルリアへの攻撃は、俺が全てカバーして防いでいく。

「凄い火力だ。ブロッキングが無かったら厳しかったな」

「攻撃の手を削るぞ。オクノ、そのまま盾になっていろ。……月影の太刀!」

 俺の肩を蹴って飛び出したイクサが、触手を一本斬り飛ばす。
 イクサの技の冴えも異常な領域に達している。
 神の触手を斬るとか、おかしい。

 そして俺も負けてはいないのだ。

 ピコーン!
『ビッグブーツ』

「うおらっ!!」

 ビッグブーツとは……いわゆるプロレス流ヤクザキック!
 靴底で相手を蹴る技だ!
 その効果は……。

『アアアアアッ』

 女神が蹴られ、後方へと押しやられた。
 つまり、ノックバックだ。
 間合い調整技ってわけだな。

 さて、ここからどんどん技を閃かねば間に合わない。
 今までの敵とは次元が違うぞ。
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