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第三部:覚醒編
101・日向マキ航海記3・遭遇、変身ヒーロー
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サンクニージュ大陸の海は、どうやら幽霊船がたくさん出るみたいです!
近くの漁村で依頼を受けた私達は、今日も幽霊船と戦います。
一隻一隻ならそこまで怖い相手じゃないんだけど……。
スケルトンやゾンビをパンチで倒すことに、慣れてきてしまった自分が恐ろしい。
「この船もお宝を運んでるんじゃねえか! 儲かって儲かって仕方ないな!」
オルカさんが満面の笑みで船倉から出てきます。
彼と、あとに続くグルムルさんは両手いっぱいに宝物を抱きかかえていました。
そう、幽霊船退治、儲かるんです!
普通の船が、何者かによって幽霊船にされてしまうみたい。
だから、船が積んでいたものはそのまま。
宝石や高価な金属工芸品は腐らないから、こうしてオクタマ戦団の収入になります。
あまりにもどんどん収入が入るので、イーサワさんが暇になってしまい、毎日釣りをして暮らしているくらいです。
そうしたら昨日、フタマタ副長がやって来てイーサワさんを連れて行きました。
どうやら、多摩川くんたちのところでイーサワさんの力が必要みたい。
「僕の力がまだ必要なんですねえ。これで夕飯調達係をしなくて済みますよ!」
喜び勇み、イーサワさんはバギーで走り去って行きました。
あの人、異世界人なのにバギーの運転完璧にマスターしてます。
このところ暇だったので、しょっちゅう乗り回してたからかな。
「ねえ、マキ。これなんかどうかな? うーん、ちょっとジャラジャラし過ぎかあ」
ロマさんが私の前で、手に入れた装飾品を身に着けて見せます。
彼女、映画に出てくる役者さんみたいなきれいな人なので、こういうの似合うんだよなあ。
「あんまり宝石のこと分かんないけど、いいと思いますよ。きれいです」
「そう? じゃあ、あたいがマキのものも見繕ってあげるね」
似合わないと思うんだけどなあ。
ということで、私達の船、ホリデー号は着々と財宝を蓄えつつあります。
こんなにお金を貯めて何に使うんだろう。
「ばっかお前、お宝はあればあるほどいいだろうが」
オルカさんが何を言ってるんだお前、みたいな顔をしてきますが、私に言わせればあなたの方が何を言っているんですか!?
使わなきゃ意味ないじゃない。
「宝石は呪力を含んでいる。これを触媒にして機械を動かす装置も、我の若い頃には存在していたぞ」
ジェーダイさんが宝石の一つをつまみながら言います。
「っていうことは、宝石はただお洒落のためだけのものじゃなかったんですか」
「宝石は元来、呪力の結晶だ。消費してこそ意味があるのだよ」
「かーっ、もったいねえ!」
ジェーダイさんの言葉に、オルカさんが顔をしかめました。
そっかあ、この世界の宝石は、呪力の電池みたいなものなんだ。
「我が眠っていたカプセルも、宝石によって稼働していたのだ。オルカよ。もしや、不思議な機械に接続された宝石まで外して持ってきてはいないだろうな」
「ぎくっ」
オルカさん、今、口で言いました。
「あれってまずかったのか」
隠さないあたり、正直で偉いと思います。
「まずいも何も。機動していたであるか? ピカピカ光っていたりとか」
「光ってたな」
「宝石を外したら?」
「光が消えたな。で、ばかでかいからそのまま放置した。今頃水の底だな」
なるほど……。
さっきまでいた幽霊船はすっかり崩れ、残骸があたりを漂っています。
木片がぷかぷかと流れてきました。
それに並んで、まだ形の残っているゾンビらしきものが一緒に流れて……。
「ゾンビがまだ消えずに残ってる……?」
ちょっと疑問を感じます。
えっと、幽霊船はアンデッドが全部セットになってるから、幽霊船長をやっつけると全部消えるはず。
幽霊船は消えて、ただの難破船になりました。
だからアンデッドは消えます。
でも、目の前のものは消えてません。
……ということは、あれは普通に生きている人なのでは……?
「いけない!」
私の体が勝手に動きます。
あんまりおせっかいとかするタイプじゃなかったんですが、誰かに感化されてるのかも。
「マキ、手伝うさね!」
ロマも一緒に水に飛び込みました。
すると、水中で彼女の下半身が魚に変わります。
私はロマに手を引かれて、ぷかぷか浮かぶ人に向かっていきました。
浮かんでいるのは男の人。
まるで炎みたいな赤毛で、私がいた現代みたいな服を着てます。
「息は……してない……? えっと、まずいかも……!」
「マキ、人工呼吸!」
「えっ!?」
「オクノから教わったのさ。こういう時、人間は人工呼吸するものなんだろ? 見せて見せて!」
「ええー……。で、でもここはもったいぶってる場合じゃないし……。うう、わ、私のファーストキスー!」
ロマに呪法で足場をつくってもらいながら、その上に寝かせた彼の顎を上げます。
私も武道家のはしくれなので、救命方法をちょっとは学んでいるので。
ええと、こうしてから……。
思い切り息を吸ってから、彼の口に空気を送り込みました。
これはキスじゃないからノーカン。
ノーカン……!!
すると、一呼吸目で、彼の目がカッと開きました。
「きゃっ」
びっくりして離れる私です。
目覚めた彼はすぐに立ち上がり、なにもない方向を睨みつけます。
「くそっ、ダーク・ダイヤモンドめ! 最後の悪あがきをするとは……!」
どうやら、幻を見ているみたいです。
もしかして、ジェーダイさんが言ってた古代文明の時代の人……?
機械で眠ってたとジェーダイさんが言ってたから、眠る前に見た記憶でしょうか。
「許さんぞ、ダーク・ダイヤモンド! 人々の平和のため、俺は何度でもこの力を振るう! うおおおおっ!」
彼が叫ぶと、全身が輝き始めます。
何っ!?
何が起きようとしてるの!?
「装着っ!! エスプレイザー!!」
なんと、なんと……!
彼が変身してしまいました!
もう、何なのこの世界。
一見して、ネイビーカラーの体にフィットしたスーツ。
そこに、彼の髪の色と同じ、真っ赤なラインが幾つも走っています。
顔はヒーロー物みたいな仮面で覆われていました。
「なんだい、こりゃあ」
ロマさんも、びっくり半分、あきれ半分。
とっても気持ちがよくわかります。
そして彼はファイティングポーズを決めた後……。
ぐーっとお腹が鳴りました。
しおしおっとその場に崩れます。
変身も解けました。
「は、腹が……」
「ご飯にするね」
ちょっと親近感が湧いた私でした。
船に戻ると、ジェーダイさんが彼を見て頷きました。
「間違いなく、我がいた時代の人間であるな。キョードウ大陸とサンクニージュ大陸では少々文化が違うのである。我はこのように、人体そのものを強化した存在だ。サンクニージュでは、こうして己の呪力を動力源として纏うスーツを作り上げた。中でも、このスーツには見覚えがある」
「うまいうまい」
むしゃむしゃご飯を食べる、あの男の人です。
「貴様、エスプレイダーと言ったか。サンクニージュで暗躍した、秘密結社ダーク・ダイヤモンドを壊滅させた戦士が、その名だったような」
「何のことだ」
男の人、知らないことにしたみたいです。
これ、ヒーローが秘密を隠してるときみたいなあれです、きっと。
「あの」
私が前に出ると、彼がご飯を食べる手を止めました。
「ああ、君か。人工呼吸してくれたそうだな。助かった!」
あれ?
私にはちょっとフレンドリーです。
「ええと、古代文明の人なんですか?」
「記憶がないんだ」
絶対嘘です。
「名前もわかりませんか? 私は日向マキです」
「俺か。名前くらいは分かる。俺は石神。石神フロントだ!」
ということで……。
なんだか変な人が、仲間に加わりそうな予感なのです。
『ムムッ! ぴきーんト電撃ガ走ル私!!』
「どうしたダミアンG」
『イエ、過去ノ敵ガ復活シタヨウナ……気ノセイデショウガ。アノ人生身ダシ。首領時代ノぼでぃシカ見タコトナイハズダシ』
「ダミアンのライバルかあ。あれだろ? ポンコツロボなんだろ?」
『ぽんこつ!! ハハハ、ソウカモシレマセンネ! ッテ私モぽんこつノ範疇ニ!?』
「ハハハ」
『おくのサン! 私ハぽんこつデハアリマセーン!』
近くの漁村で依頼を受けた私達は、今日も幽霊船と戦います。
一隻一隻ならそこまで怖い相手じゃないんだけど……。
スケルトンやゾンビをパンチで倒すことに、慣れてきてしまった自分が恐ろしい。
「この船もお宝を運んでるんじゃねえか! 儲かって儲かって仕方ないな!」
オルカさんが満面の笑みで船倉から出てきます。
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そう、幽霊船退治、儲かるんです!
普通の船が、何者かによって幽霊船にされてしまうみたい。
だから、船が積んでいたものはそのまま。
宝石や高価な金属工芸品は腐らないから、こうしてオクタマ戦団の収入になります。
あまりにもどんどん収入が入るので、イーサワさんが暇になってしまい、毎日釣りをして暮らしているくらいです。
そうしたら昨日、フタマタ副長がやって来てイーサワさんを連れて行きました。
どうやら、多摩川くんたちのところでイーサワさんの力が必要みたい。
「僕の力がまだ必要なんですねえ。これで夕飯調達係をしなくて済みますよ!」
喜び勇み、イーサワさんはバギーで走り去って行きました。
あの人、異世界人なのにバギーの運転完璧にマスターしてます。
このところ暇だったので、しょっちゅう乗り回してたからかな。
「ねえ、マキ。これなんかどうかな? うーん、ちょっとジャラジャラし過ぎかあ」
ロマさんが私の前で、手に入れた装飾品を身に着けて見せます。
彼女、映画に出てくる役者さんみたいなきれいな人なので、こういうの似合うんだよなあ。
「あんまり宝石のこと分かんないけど、いいと思いますよ。きれいです」
「そう? じゃあ、あたいがマキのものも見繕ってあげるね」
似合わないと思うんだけどなあ。
ということで、私達の船、ホリデー号は着々と財宝を蓄えつつあります。
こんなにお金を貯めて何に使うんだろう。
「ばっかお前、お宝はあればあるほどいいだろうが」
オルカさんが何を言ってるんだお前、みたいな顔をしてきますが、私に言わせればあなたの方が何を言っているんですか!?
使わなきゃ意味ないじゃない。
「宝石は呪力を含んでいる。これを触媒にして機械を動かす装置も、我の若い頃には存在していたぞ」
ジェーダイさんが宝石の一つをつまみながら言います。
「っていうことは、宝石はただお洒落のためだけのものじゃなかったんですか」
「宝石は元来、呪力の結晶だ。消費してこそ意味があるのだよ」
「かーっ、もったいねえ!」
ジェーダイさんの言葉に、オルカさんが顔をしかめました。
そっかあ、この世界の宝石は、呪力の電池みたいなものなんだ。
「我が眠っていたカプセルも、宝石によって稼働していたのだ。オルカよ。もしや、不思議な機械に接続された宝石まで外して持ってきてはいないだろうな」
「ぎくっ」
オルカさん、今、口で言いました。
「あれってまずかったのか」
隠さないあたり、正直で偉いと思います。
「まずいも何も。機動していたであるか? ピカピカ光っていたりとか」
「光ってたな」
「宝石を外したら?」
「光が消えたな。で、ばかでかいからそのまま放置した。今頃水の底だな」
なるほど……。
さっきまでいた幽霊船はすっかり崩れ、残骸があたりを漂っています。
木片がぷかぷかと流れてきました。
それに並んで、まだ形の残っているゾンビらしきものが一緒に流れて……。
「ゾンビがまだ消えずに残ってる……?」
ちょっと疑問を感じます。
えっと、幽霊船はアンデッドが全部セットになってるから、幽霊船長をやっつけると全部消えるはず。
幽霊船は消えて、ただの難破船になりました。
だからアンデッドは消えます。
でも、目の前のものは消えてません。
……ということは、あれは普通に生きている人なのでは……?
「いけない!」
私の体が勝手に動きます。
あんまりおせっかいとかするタイプじゃなかったんですが、誰かに感化されてるのかも。
「マキ、手伝うさね!」
ロマも一緒に水に飛び込みました。
すると、水中で彼女の下半身が魚に変わります。
私はロマに手を引かれて、ぷかぷか浮かぶ人に向かっていきました。
浮かんでいるのは男の人。
まるで炎みたいな赤毛で、私がいた現代みたいな服を着てます。
「息は……してない……? えっと、まずいかも……!」
「マキ、人工呼吸!」
「えっ!?」
「オクノから教わったのさ。こういう時、人間は人工呼吸するものなんだろ? 見せて見せて!」
「ええー……。で、でもここはもったいぶってる場合じゃないし……。うう、わ、私のファーストキスー!」
ロマに呪法で足場をつくってもらいながら、その上に寝かせた彼の顎を上げます。
私も武道家のはしくれなので、救命方法をちょっとは学んでいるので。
ええと、こうしてから……。
思い切り息を吸ってから、彼の口に空気を送り込みました。
これはキスじゃないからノーカン。
ノーカン……!!
すると、一呼吸目で、彼の目がカッと開きました。
「きゃっ」
びっくりして離れる私です。
目覚めた彼はすぐに立ち上がり、なにもない方向を睨みつけます。
「くそっ、ダーク・ダイヤモンドめ! 最後の悪あがきをするとは……!」
どうやら、幻を見ているみたいです。
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機械で眠ってたとジェーダイさんが言ってたから、眠る前に見た記憶でしょうか。
「許さんぞ、ダーク・ダイヤモンド! 人々の平和のため、俺は何度でもこの力を振るう! うおおおおっ!」
彼が叫ぶと、全身が輝き始めます。
何っ!?
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「装着っ!! エスプレイザー!!」
なんと、なんと……!
彼が変身してしまいました!
もう、何なのこの世界。
一見して、ネイビーカラーの体にフィットしたスーツ。
そこに、彼の髪の色と同じ、真っ赤なラインが幾つも走っています。
顔はヒーロー物みたいな仮面で覆われていました。
「なんだい、こりゃあ」
ロマさんも、びっくり半分、あきれ半分。
とっても気持ちがよくわかります。
そして彼はファイティングポーズを決めた後……。
ぐーっとお腹が鳴りました。
しおしおっとその場に崩れます。
変身も解けました。
「は、腹が……」
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ちょっと親近感が湧いた私でした。
船に戻ると、ジェーダイさんが彼を見て頷きました。
「間違いなく、我がいた時代の人間であるな。キョードウ大陸とサンクニージュ大陸では少々文化が違うのである。我はこのように、人体そのものを強化した存在だ。サンクニージュでは、こうして己の呪力を動力源として纏うスーツを作り上げた。中でも、このスーツには見覚えがある」
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「貴様、エスプレイダーと言ったか。サンクニージュで暗躍した、秘密結社ダーク・ダイヤモンドを壊滅させた戦士が、その名だったような」
「何のことだ」
男の人、知らないことにしたみたいです。
これ、ヒーローが秘密を隠してるときみたいなあれです、きっと。
「あの」
私が前に出ると、彼がご飯を食べる手を止めました。
「ああ、君か。人工呼吸してくれたそうだな。助かった!」
あれ?
私にはちょっとフレンドリーです。
「ええと、古代文明の人なんですか?」
「記憶がないんだ」
絶対嘘です。
「名前もわかりませんか? 私は日向マキです」
「俺か。名前くらいは分かる。俺は石神。石神フロントだ!」
ということで……。
なんだか変な人が、仲間に加わりそうな予感なのです。
『ムムッ! ぴきーんト電撃ガ走ル私!!』
「どうしたダミアンG」
『イエ、過去ノ敵ガ復活シタヨウナ……気ノセイデショウガ。アノ人生身ダシ。首領時代ノぼでぃシカ見タコトナイハズダシ』
「ダミアンのライバルかあ。あれだろ? ポンコツロボなんだろ?」
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