ピコーン!と技を閃く無双の旅!〜クラス転移したけど、システム的に俺だけハブられてます〜

あけちともあき

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第三部:覚醒編

87・俺、ロボだコレと発する

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 音のした方に来た。
 そこは村の外れ辺りで、蔦を編んでつくったらしい柵が村と外を隔てていた。

 そして、猫人の子どもたちが何人もいる。

「こいつ、なんか鳴いたぞ!」

「なんだこれー!」

 子どもたちが棒を持って、樽のようなものをぺちぺち叩いているな。
 すると、樽が音を立てるのだ。

『ピガー』

「鳴いたー!」

「なんだこれー!」

 ルリアがスッと冷静な顔になった。

「オクノくん、あれ」

「うむ、ロボだコレ」

 明らかにそれは、俺達がここに来るまでに戦ってきたロボであった。
 天空の大盆からばらまかれた奴が、密林の中まで来ていたのだろうか?

 それにしては、樽のままだ。
 戦闘モードになってないな。

 パッと見は鉄色の樽。
 樽の上の方に鍋を伏せたような頭部があって、そこにスリットが走っている。
 スリットの奥は暗闇。

 ただ、『ピガー』と発する時だけスリットが光る。
 起動してはいるみたいだが。
 なんだろう?

「これこれ子どもたちよ、危ないよ」

 とりあえずロボは危険なので、俺は近づいて子どもたちに呼びかけた。

「あっ、人間だ!」

「人間が村に入ってきてる!」

「でっけー」

「横にいるの人間のメスかー?」

「オスじゃないの? おっぱいないもん」

「なんだとぉ……」

 あっ、ルリア、キレた!

「そこに直れー! あたしは発展途上なんだー! あと鎧着てるから目立たないの! あるからね! あるんだからね!!」

「うわー、人間が怒ったー!」

「へへーん! 人間が怒っても俺達をつかまえたりはウグワー!」

 ランダムに逃げ出した猫人の子どもたち。
 あのすばしっこさに普通はついていけないんだが、相手が悪い。

 偶然ジャンプしたら、着地先にルリアがいる。

「うりゃあ」

「うわー!」

 一人がルリアに捕まって、お尻をぺちぺち叩かれた。

「俺達についてくるだと!?」

「先回りされる!」

 子どもたちが逃げ去る先に、偶然ルリアがいて子どもをキャッチ、お尻をペチる。
 彼女の運の良さは桁違いだからな。
 適当に動くと、そこに逃げた子どもが飛び込んでくるのだ。

 結局、子どもたちは一人も逃げ切ることができず、全員ルリアにお尻をペチられた。

「まいった」

「姉ちゃんすげえ……」

「弟子になる」

「ふっふーん」

 ルリアが得意げだ。

「うーむ、ルリアが猫人の子どもたちのカリスマになってしまった」

 意外な展開に唸る俺。
 ちなみに、この状況が面白かったので近くにあった樽を椅子にして見物していた。

 おや?
 尻の下が温かいな。

『ピピー。頭部カラ、オシリヲドケテ下サイ。オナラヲサレタラ故障シマス』

 人聞きが悪いことを言う椅子だな。
 ……おっと、ロボだったなこいつ。
 俺は尻をどけた。

 すると、樽ロボが頭部のスリットを光らせる。

『頭部カラ呪法エネルギー供給ヲ確認。再起動シマス』

 むっ、立ち上がるか。
 俺は身構える。
 何かあったらブレーンバスターで投げるぞ。

 樽が展開し、マントのように広がる。
 そして、本体があらわになった。

 ドラム缶に細い手足がついてるロボだ。

 ……?
 思ってたのと違う。
 すごくコミカルだ。

 俺が戦ってたロボ、見た目はもっと虫っぽかったり、敵っぽくなかった?
 スリットの光も、なんかモノアイみたいだし。

 そしてドラム缶ロボの胸には、形式番号が刻まれていた。
 666とある。

『ピガー! メモリー破損! メモリー破損! 命令ヲ復元デキマセン! ココハダレ、ワタシハドコ!』

 なんか頭を真っ赤にしながら、プスンプスン煙を吐き出した。

「まあまあ落ち着け落ち着け。記憶喪失だな? よくあるよくある」

 俺は近づいて、ドラム缶の腹辺りをぺちぺちした。

『記憶喪失……ソウイウノモアルノデスネ。ヨクアル……安心感ヲ感ジル言葉デス』

 本当に落ち着いた。
 こいつもしかして、天空の大盆から出撃した時、落下時の頭の打ち所が悪くてメモリーがぶっ飛んだんじゃないのか。
 それを子どもたちが見つけて、棒で叩いて遊んでいたと。

「オクノくん、なんか樽とお話してる?」

「おー。ってか、ルリアは警戒心抱かないんだな」

「だってオクノくんとおしゃべりしてるんでしょ? 君と会話が通じる人に悪い人はいないもん。オクノくん、悪人と意思疎通できないからぶちのめすでしょ?」

「道理だ」

 俺は感心してしまった。
 ルリア、よく俺のことを観察してるなあ。
 さすが、一番付き合いが長い仲間だけある。

「で、ロボ。おたくはどうするの」

『ピピー。メモリエラー。行動目的アリマセン。ソシテ私ハ、オタクデハナイノデスガ、名前モ思イダセマセン。名前ガ無イトイウコトハ、自己認識エラーガ……。アーーーーーーゲシュタルト崩壊ーー』

「面白いやつだなあ」

 俺はこいつのことが好きになってしまった。

「よし、じゃあ俺がお前に名前をつけてやろう。形式番号666なの? 昔オーメンって映画があって、666って数字が出てきて、それにダミアンってのが出てきてたからお前ダミアンね」

『だみあん!! 私ハ、だみあん……!』

 ロボ……ダミアンはモノアイをピカピカ光らせると、金属製のホースみたいな腕を空に向けてちょっと仰け反った。
 天を仰いでるっぽい。
 感情表現豊かなロボだなあ。

「よし、ロボを名付けたところで、夜まで一眠りするかー」

「そだねえ。一緒に寝る? エッチな意味で」

「またラムハに捕まって折檻されるぞ」

「ひい、あれは勘弁……! どこかでラムハと決着をつけないと、あたしはオクノくんと大人の関係になれないよう……」

 会話しながら、俺達は寝床に向かった。
 後ろを、ガシャンガシャン言う音がついてくる。

「おや?」

『ドコニ出発スルノデス? 私モ行コウ』

「ダミアン……!」

 なんかよく分からないものが仲間になりたそうに俺を見てるぞ……!

「よし、ではお前も俺の仲間だ。ダミアン、マイフレンド!」

『ピピー、マスター登録シマス。名前ヲドウゾ』

「オクノだ」

『おくの、マイフレンド……!』

「マスターじゃねえのかよ! いきなり同格にされたぞ」

 だが、とりあえずダミアンと熱い抱擁を交わしておいた。
 パーティ登録してみる。

 どーれ、ダミアンのステータスは……。


ダミアン

攻撃力:50
防御力:50
HP:120
EN:50

装備:
マシンアーム


 おや?
 俺に負けず劣らず、意味のわからないステータスだぞ。
 レベルという概念がない。
 ロボだからかな?

 装備欄だけが目立つな。

 俺はふと思いついたことがあり、アイテムボックスを漁った。
 そこから、他のロボから取り上げた装備を出してくる。

「ダミアン、これ装備してみろ」

 それは、ジェーダイが使っていた光刃剣の量産型みたいなものだ。

『ピピー。モラエルモノハ、モライマス』

 ダミアンが量産型光刃剣を受け取った。
 すると、彼のステータスが変化するではないか。


ダミアン

攻撃力:100
防御力:75
HP:170
EN:65

装備:
マシンアーム
ビームサーベル(量)


 あー!
 こいつ、古代文明の装備を身につけることでステータスが成長するタイプなのか!
 よくよく見たら、樽の外縁部分がマントのように広がり、その内側には様々な武器をストックできるホルダーが用意されている。

 武器を増やして成長するロボ。
 なるほど、面白いやつが仲間になったぞ。
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