ピコーン!と技を閃く無双の旅!〜クラス転移したけど、システム的に俺だけハブられてます〜

あけちともあき

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第三部:覚醒編

84・俺、サンクニージュ大陸に上陸する

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 サンクニージュ大陸!
 俺達がいた大陸は、そのままキョーダリアスと呼ばれている。
 創世神キョードウが降り立った地だからだとか。

 ってことで、サンクニージュ大陸に降り立つ俺達。
 ここは漁村だけど、キョーダリアス側とは随分違う。

 あっちはヨーロッパっぽい感じだったけど、こっちは何というかもう少し時代が進んだ世界みたいに見える。
 凄く昔のアメリカっぽい?

「オクタマ戦団の皆様、ありがとうございます! 海賊共が突然押し寄せてきて、危ないところだったのです」

 漁村の網元らしきおじさんと席を設けたので、団の代表としてお話をすることになった。
 向こうの人は、髭面のでかいおっさんだ。
 だが俺も大概でかくなってるので、上背だけならこっちのほうが上になっている。

「いやいや、多分あいつら、俺らが海賊王国を滅ぼしたのでその残党ですな。まあ俺らがやり残した仕事でもあるんですけど、今後は海賊は出てこなくなるかもなんでそこらへんを感謝してもらえるとうれしい」

「なんと!! では今回のことの一因にはあなたがたが?」

 網元の目にずるそうな光が宿った。
 おっ、交渉する気かな?
 イーサワが彼らから結構むしり取ったはずなので、それをちょっとでも取り返そうとしているのかも知れない。

「まあ、俺らが来なかったらあの変なロボで全滅だったでしょう? 俺らがやって来たから結果的にロボも全部やっつけたので、漁村は無事だったし良かったじゃないですか」

「そ、それはそうですが」

「俺らはこれから天空の大盆を大地に叩き落とす旅を続けるので、ここで補給とかしてもらえると助かるんですよね」

「天空の大盆を!? 大地に叩き落とす!?」

「群島遺跡は粉々にぶっ壊してきたんで」

「群島遺跡を!? 粉々にしてきた!?」

「だから、遺跡を根城にしてた海賊が散り散りになったわけで」

 圧倒的説得力に、網元が静かになった。
 俺を若いと見て、与し易いと考えたんだろう。
 ふはは、なんか無駄に修羅場をくぐったから、この辺に関しても俺は弱くないぞ。

 少なくとも力をちらつかせて交渉を有利に進めるというのは、イーサワから学んだ。
 この辺、綺麗事ばかりじゃないからなー。
 なにげにサンクニージュ大陸、最初からその洗礼を受けた気がする。力が支配する世界っぽいぞ。

「つまりヒャッハー理論が成立する?」

 俺が考え込みながら戻ってくると、船は宴会状態だった。
 桟橋の脇で酒や食べ物を広げて、車座になったみんながワイワイと騒いでいる。

 リザードマン31人衆は大変目立つようで、注目されてしまっていた。

「やあ、団長! どうでしたか。力をちらつかせて来られましたか!」

 イーサワが元気に手を振ってきたので、

「うん、やっぱり力は正義だねー」

 と返しておく。
 途中で、女子たちが甘いものをたっぷり買って戻ってきた。
 彼女達は、この辺りの地図を手に入れるはずだったのだが。

「見て見て! お砂糖たっぷりのケーキ! 貴重なお砂糖がこの大陸ならたくさんとれるんだって!!」

 ルリア大興奮。
 既にほっぺたにクリームがついているので、つまみ食いしながらやって来たに違いない。

「もぐもぐもぐもぐ、もぐもぐ」

「カリナは食べ終わってから喋ろうな」

 口いっぱいにケーキを詰め込んだカリナが、こくんと頷いた。
 なるほど、サンクニージュのケーキはかなり本格的みたいだ。

 見たところ、バターケーキっぽい。
 生クリームもたっぷり乗っているが、回りに塗るというよりは真上にドカッと乗せる感じで、視覚的にもパンチが効いている。

「本当、仕方ないわねえ。甘いものとなると目がないんだから。でもたまにはいいんじゃない? あら美味しい」

 ラムハもニコニコしながらケーキを食べている。

「お姉さん、太っちゃいそう……!! みんな、これ食べ終わったら運動しないと……」

「アミラさん、私で良ければ組手をお教えしますよ。自分の身は自分で守らないと……。あ、でもこのケーキ、絶対脂肪がついちゃうやつ……。空手では抗えない……」

「へえー、人間のケーキ? 面白いんじゃない? あたいは遠慮しとく。人魚は陸の物が苦手だからねー」

 ロマのみ、甘味は口にしないようだ。
 ともあれ、メインの目的は地図!

 女子チームに買ってきてもらった地図を広げる。

「こりゃあ、大陸の南半分くらいまでの地図だな」

 ジョッキ片手に、オルカが地図を指差す。

「この辺りから北に向けて乾燥地帯が続くようだが、東は森があるな。サンクニージュでは、王国や帝国よりも小さく、都市国家よりは大きな単位で国が形成されているらしいぞ。それぞれの国で、呪法を重んじていたり、古代遺跡から発掘される技術を駆使していたり、あるいは魔族なんて呼ばれる連中がこさえた国まであるらしいな。キョーダリアスと比べれば、混沌としてやがるぜ」

 それだけ言って、ジョッキの中身を飲み干した。

「団長、俺は船と行動をともにするぜ。あんたはどうする」

「団を二つに分けるってことか? なるほど、その手が……」

 俺は腕組みする。
 ホリデー号を西か東で大回りさせて、それと一緒に陸も北上していくと。
 目指すのは北にある凍れる城で、そのついでに天空の大盆を見かけたらそいつを追っかける。

 つまりは、二つの遺跡を追うことが目的というわけだ。

「じゃあとりあえず、オルカ率いる海チームで北上しつつ沿岸の仕事をこなす。俺率いる陸チームで天空の大盆を追う。これでどう?」

「異論はねえぜ」

「我もない」

「私もありません」

「よし」

「わんわん」

「僕もそれで構いませんよ。では、僕は船側に残りましょう。ちょくちょくホリデー号と団長が合流して、情報を共有するというのでどうでしょう?」

「おーし、イーサワの提案で行こう」

 そういうことになったのだった。
 後は問題になるのはチーム分けだな。

「海側は?」

「おう。俺率いるオクタマ海戦団だが」

 海鮮みたいな響きだな。

「俺、グルムル、ジェーダイ、ロマ、イーサワ、それから……イクサは戦力的に欲しいんだが、俺じゃこいつを御しきれる自信がねえ」

「うん。イクサを上手く操作できるのは、この世界で俺とイーヒン辺境伯の二人だけだろうな」

 ってことで、イクサはこっち残留。
 当たり前みたいな顔をして、ラムハ、ルリア、アミラ、カリナが俺の側にいるのでこれも確定。
 なーんだ。
 いつものメンツではないか。

「わんわん」

「なにっ、フタマタ、お前、船に行くの……?」

「わんわん」

「あ、そっか、犬小屋あるもんな……」

 ちょっと寂しい。

「わんわん」

 だが、ここでフタマタからの提案である。
 彼は俺のにおいや気配が分かるらしい。
 ということで、フタマタが俺と船との連絡役を務めるということになったのだ。

「さて、宙に浮いた日向だがどうするかね……。戦力的にどっちでもいけるので選択したまい」

「ええっ、私!?」

 日向が驚く。
 きっと彼女の目の前には、こんな選択肢が提示されていることだろう。

1・オクノたちと一緒に陸のルートを行く
2・オルカたちと一緒に海のルートを行く

「ええと、それじゃあ、2で……」

「本当に選択肢が見えてたのか……」

 そう言えば日向も、異世界転移してきた仲間だった。
 なんか俺と同じような要素があるのかも知れない。

 さて、それでは明日からのオクタマ戦団は、二つに分かれてサンクニージュ大陸を縦断していくぞ。
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