ピコーン!と技を閃く無双の旅!〜クラス転移したけど、システム的に俺だけハブられてます〜

あけちともあき

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第三部:覚醒編

83・幕間、やって来たオクタマ戦団

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 以前から海賊の襲撃に悩まされてきた、ザーフトの村。
 ついに海賊達は、村を占領するべく大挙してやって来た。

 一体何事だろうか。
 いつもならば恐ろしい海賊たち。
 だが、どうもやって来た彼らの船はあちこちがボロボロ。

 海賊達も疲れ切っているようだった。

「村を明け渡せ!!」

「それはできない!」

 漁で生計を立ててきた村だ。
 今までもやられるばかりではなかった。
 だから、彼らは漁船を使って立ち向かった。

 海賊達の士気は著しく低下しており、漁師たちにもどうにか相手をすることができた。
 だがしかし、海賊を相手に犠牲が出ないわけがない。

「ええい、なんて奴らだ。死にものぐるいで村を襲ってくる。まるで、後ろから恐ろしいものが追いかけてきているかのようだ!」

 近隣の村からも応援が駆けつけ、海賊たちに当たる。
 激しい戦いになった。

 その間、漁に出ることはできない。
 だが、海を海賊たちに牛耳られていてはやはり漁ができない。
 これは村々の存亡を賭けた戦いだった。

「だが……」

 村人の誰かが呟く。

「このままでは、海賊も我々も、共倒れになってしまう……!!」

 何かが起きれば。
 誰かが、この状況を覆すような誰かが来てくれれば。


 その時、戦場になった海の上を、巨大な影が横切っていった。

「天空の大盆……!」

 誰もが一時、戦う手を止めてそれを見上げる。
 世界の上空を巡っているという、伝説の遺跡だ。

 そして過ぎ去った場所に災いをもたらすという。

 単なる噂だと思われていた。
 だが、それは今この場で再現される。

 天空の大盆から、何かが降ってきた。
 それは、戦場のあちこちに着水する。

 一見して金属製の樽のようなそれは、すぐに手足を生やして動き始めた。

「ひ、ひゃあー! なんだこれは!」

「ば、ばけものめ!」

「剣が効かねえ!」

 樽からデタラメに手足が生えたような、金属製の怪物だ。
 それが、船を切り刻み、船乗りや海賊を海に放り込み、あるいは胴体から銃を取り出して乱射してくる。

 戦場が混沌の中に叩き込まれる。

 天空の大盆は、それを満足気に見下ろしているのか、しばしその場に留まっていた。
 だが、遺跡はある時、慌てたように動き出した。

 影は戦場の上から去り、死と混乱をばらまく樽の怪物だけが残された。
 そして。

「ヒャッハー! 戦だ戦だ!」

「なにっ! 飛翔斬!」

『ピガーッ!!』

 樽の怪物が一体、胴体を叩き切られて爆発した。

「いや、イクサのことじゃないんだ。呼んでないから。ステイ。イクサ、ステイ」

 一隻の船がやって来た。
 帆船とは思えぬ猛スピードである。

 あっという間に戦場に踊りこんだそれから、三人ずつ二組の男女が海の上へと躍り出る。
 彼らは水の上を、まるで大地であるかのように駆け回ると、樽の怪物と海賊を片っ端から倒し始めたのである。




 すっかり海になってしまった遺跡群島を抜けて、どんどんまっすぐ突き進んでいたら天空の大盆を見つけた。
 そうしたらあいつめ、慌てて逃げ出したのだ。
 船であんな高いところにたどり着けないと思うのだが、まるで俺達を警戒しているようだった。

 で、あの動きであの空飛ぶ遺跡には五花がいると確信できた。
 あんにゃろめ、大盆に蓄えられた呪力が尽きるまでは、空を自由自在に飛び回れるわけだな。
 だけど、呪力を充電するためのターミナルを一個ぶっ壊してやったのだ。

 あいつが次にどこに着地して、充電するかをチェックしないとな。
 全部ターミナルをぶっ壊せば落ちるだろ!

 ……と思ったら、天空の大盆が海に向かって何かをばらまき始めた。
 よくよく見ると、陸地が近いじゃないか。

 どうやら天空の大盆に注目し過ぎていたようだ。

「戦闘準備ー!」

 とひと声掛けたら、のんびりしていたうちのメンバーがぞろぞろ集ってきた。

「じゃあ、俺はこっちから海を走って戦闘に参加ね。日向、大盆がばらまいたあれ、何」

「なんかね、樽みたいなロボット? 足を出してシャカシャカ水の上を走る感じ」

「ほうほう……。じゃあ、ジェーダイ、船に残って防衛役」

「了解したのである!」

「カリナとオルカ、船で砲台役を頼んでいい?」

「分かりました! 任せてください!」

「まあ、楽勝だな」

「次は、俺と一緒に行くやつと、フタマタと一緒に行くやつ……。よし、じゃあ俺とルリアとイクサ、フタマタと日向とグルムルで遊撃! ラムハとロマとアミラで、海に落っこちてる奴らを回復して回る仕事ね」

 マリーナスタンスで三組作った。
 さあ、行動開始だ。
 いつも通り、イーサワは船の中で安全な場所に避難している。
 彼の戦場は交渉だからね。

「よし、じゃあ俺らは真っ向から行こう。海賊かシャカシャカしてる樽を見たら無差別にやっつけていいぞ!」

「ほーい! まっかせて!」

「よし! 飛翔斬!」

 速い!
 速いよイクサ!

 というわけで。
 せっかくなんで、俺はここで色々な技を使って確認作業を行うことにした。

 最近、仲間たちもそれぞれの武器に特化したオリジナル技を身に着けつつある。
 ということは、俺もそれぞれの武器ジャンルは仲間に任せ、どれかに特化していった方がいいのではないかと考えたわけだ。
 まあ体術は確定だけどな!

「無双三段!」

「月影の太刀!」

『無双の太刀』

 あっ、お前らいきなり最強の攻撃で連携しやがって!!

 海賊船が二隻まとめて真っ二つになった。
 おー。
 さすがはモンスター扱い。

 俺は手近な樽に向かって、

「ベアクラッシュ!」

 ピコーン!
『マルチウェイ』

 なんだこりゃ?
 いきなり俺の体が軽くなった。
 そして、握りしめたカールの剣とともに、樽の頭上へジャンプしている。

 切り下ろし!
 駆け抜けながら、横一文字の斬撃、そして反転しながらの袈裟懸け。
 連続攻撃だ。それも決まった型は無いっぽいな。

 サブミッションみたいな感じだ。
 切ろうと思っていた剣で、妙な技を閃いてしまった……。

 今度アベレッジと再会したら教えてやろう。

 ホリデー号も敵の攻撃に晒されているが、これはうちの守り神、ジェーダイが片っ端から攻撃を反射している。
 キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン!
 という音が聞こえてくるのだ。

 そうこうしている間に、樽はだいたいやっつけてしまった。
 これ、ロボットですなあ。
 樽みたいなボディの中に、いくつも武器を内蔵しているやつ。

 みんな、ロボットから供給される呪力で使用される武器のようだ。
 特徴的な装備はいくつか剥ぎ取り、アイテムボックスに放り込んでおいた。

 俺達が打ち漏らしたやつは、フタマタチームがきちんとやっつけたようだ。
 いい仕事をするわんこだ。

「あ……あなたがたは一体……?」

 水上に立つ俺達へ、漁師らしき人々がこわごわと声を掛けてくる。

「ああ、俺達の名はオクタマ戦団。傭兵団なんだが……」

 俺の後ろから、シャーっと水陸両用バギーが走ってきた。
 イーサワが運転している。

「詳しい商談は僕が担当します。僕はオクタマ戦団の主務、イーサワと言いまして、彼ら海賊を結果的に倒したわけですが、あなたがたの村に報酬を請求するわけではありません。少々、食料を提供していただければと思いましてね……」

 よし、任せた!!
 今から戦いが始まるメンバーもいるわけだ。

 さてはて……到着したのは、新しい大陸だ。

 異世界キョーダリアス、北の大陸サンクニージュ。
 天空の大盆を追いながら、この大陸で旅をしていくことになるのだ。
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