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第二部:彷徨編
82・俺、ターミナルステーションに到着する
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潜水艦を物理的に退けた俺達。
オルカ率いる海賊チームが探索したところ、潜水艦の中からはいくつかのアイテムが見つかったらしい。
まずは、カプセルサイズの複雑な模様が刻まれたボール。
「これはカプセルシェルターであるな。これによってこの船の全員が休める施設を作り出せる」
ジェーダイが説明してくれた。
なるほど、つまり持ち運べる拠点みたいな感じか。
次に、車。
どう見ても車だ。
自動車ね。オープンカーっぽくて、タイヤが大きい。
「これはバギーである。これによって地上を速く走れる。タイヤが大きく、内側に溝が刻まれているだろう? これによって水を掻いて水上を走ることもできる」
「なにそれ便利」
うちの船の、ボート兼揚陸車両として使おう。
そして、通信装置らしきもの。
「通信装置だ」
「まんまだな」
「しかもこれ一つでは意味がないぞ。親機があって、そこからの通信を受け取るためのものだ。これは呪力バッテリーが切れると使えなくなる」
古代文明は現代世界に近い文明を持ってたっぽいな。
いちいち説明が分かりやすい。
俺が通信機をいじっていると、いきなりそいつが起動した。
『聞こえるか、伝野。こちらは五花だ。海上の封鎖は完了したか?』
「おっ、懐かしい声がする」
俺が思わず喋ったら、通信機が押し黙った。
そして、なんか凄く嫌そうな声で、
『多摩川くん……。どうして君がそれを持ってるんだ』
「うちのクラスメイトがいたのか。そいつはイクサが倒したぞ。なので潜水艦を家探ししたんだ」
『七勇者がまたも……!? 遺跡の力を引き出しきれていないのか……! いや、君たちが僕の思う以上に強くなっているようだ。君たちは危険だ。僕が作り上げる新たな世界の秩序のためには、あまりにも危険すぎる……!』
「なに言ってるんだお前」
さっぱり分からん。
『くっ、言葉が通じない……! 君はそもそも僕の言葉を聞き流すから、扇動スキルも洗脳スキルも通用しないんだ! ……だが、今の僕達は君の手が届かない場所にいる。伝野くんは残念だったが、それもまた運命。僕達をこの場所へと送り届けるため、彼は犠牲になったのさ』
なんか自分に酔ってる感じだな!
そもそも、この場所ってどこだよ。
すると、いつの間にか船の上に上がってきていたロマが、通信機に耳をくっつけた。
うわ、ペタッとした!
水気を拭いてくださいよもうー。
「風の音がすっごくするねえ。空の上なんじゃない?」
『な、なにっ。通信は終わりだ! さらばだ多摩川くん! そこで僕が作り上げる新たな世界の秩序を指を咥えて眺めているがいい!』
唐突に通信が終わった。
最後にめっちゃくちゃ焦ってたような。
「ロマ、風の音って?」
「海の上って遮るものが無いから、びゅうびゅう風が吹くのさ。だけど、これはもっと強い感じの風の音だねえ。高いところに行くほど風を遮るものってなくなるんだろ?」
「高いところ……」
「なるほど」
ラムハとイーサワには合点が行ったようだった。
「えっ、二人とも心当たりが!?」
「天空の大盆よ。都市国家にやって来た時に話したでしょ」
「そう言えばそんな話を聞いたような」
イーサワがラムハの言葉を補足する。
「大盆は常に空を飛び続けているわけではなく、どこかに舞い降りて一休みすると言われています。それがもしかすると、この海にあるのかもしれないですね。……というのは、さきほどのセンスイカンと七勇者、そして彼と連絡を取り合っていた、団長の宿敵の関係を結ぶとそういう結論が出てくるからです」
「なるほどなるほど。じゃあ、このまま潜水艦が来た方向に行ってみようか」
そういう話になり、俺達はぐんぐんと船を進ませた。
やがて、そこが見えてくる。
海の上に突然出現した、ばかでかい銀色の地面である。
「なんだこれ」
「呪力を蓄える板である。魔法の儀式を行う上にこれを置き、さらに上に呪力を与えたい物を置く。そうして、その物は呪法の力を得ることになるのだ」
ジェーダイの解説を聞いて、頭の中でこれだけ大きい板に乗るものを考える。
……つまりこれって、充電のためのターミナルみたいな?
天空の大盆って、空飛ぶ巨大なお掃除ロボットなんだろうか。
「さて、どうする団長?」
オルカに問われて、俺は一瞬考えた。
この板の上に乗ってぴょんぴょん飛び跳ねてみたい。
「オクノくんが考えてること当ててあげようか。この上に飛び乗ってぴょんぴょん跳ねたいんでしょ」
「ルリア、まさか俺の心を読んで……!?」
「顔に出るんだもん!」
顔に出てたかー。
だけど、欲望任せに遊んでちゃいけないよな。
「えーと、確か呪力を補充するにはさらってきた人間を生贄にしなきゃいけないんだったよな」
俺が尋ねると、ジェーダイが頷いた。
「これだけ大きな物を起動させるためには、常に魔法の儀式を行わねばならぬ故にな。だからこそ、センスイカンは自律行動をし、人を集めていたのだ」
「なるほど。ではこいつをぶっ壊せばそういう被害がなくなるというわけか。エルボードローップ!!」
俺は船から一気に飛翔して、全力で肘を銀の板に叩きつけた。
その部分に大きな亀裂が入る。
「うおーっ! オクノ殿がノータイムで遺跡を破壊に行ったー!!」
「よし!! 裂空斬! 裂空斬! 裂空斬!!」
いいぞイクサ!
この板が何か悪しきものだと理解したんだな。
こうなれば、イクサは止まらない。
「よしみんな! この板をぶっ壊すぞ! ちょっとでかいから、数日がかりで壊していこう!」
「おー!」
掛け声が上がる。
かくして、オクタマ戦団総出での作業となった。
「てっきり、ここで決戦になると思ってたのに」
水平線に夕日が沈む。
それを眺めながら、ラムハがため息をついていた。
「なりませんでしたなあ」
「オクノはなにを他人事みたいに言ってるのよ。私のこれは、多分混沌の裁定者絡みだって思うの。だから、遺跡を巡るほど封印が解けていく。切っ掛けを作ったのはオクノだけど」
「あれはすまんことをした」
「いいのよ。責任とってくれるんでしょ。それで、この板を壊してしまったら後はどうするつもり?」
「えーと、海底にまだスリープ状態の潜水艦がいたんで、これを全部ぶっ壊してから、一旦都市国家に戻って補給して、また旅をする感じかなあ。例えば、北方の凍れる城とか。……北ってそっちに行くほど暑くなるんだろ? なんで北の城が凍ってるの」
「さあねえ……。群島よりもさらにさらに北に行かないといけないからね。もしかしたら、新しい大陸があったりするかも」
つまり、新たな冒険の舞台があるということか。
その辺りは都市国家で情報収集してもいいかも知れない。
あとはとりあえず、うちのクラスの連中が諸悪の根源みたいになって来ている感じがする。
あいつらの後を追いかけて、七勇者とか言うのをやっつけていきたいな。
「天空の大盆を追いかけるのってのはどうかな?」
「いいんじゃないかしら。あれは世界を巡っていると言われているから、遭遇するためには色々調べなくちゃいけないと思うけれど」
「調査調査、また調査だなあ」
「あてのない旅なんだもの。そういう時があったっていいんじゃない?」
気がつくと、ラムハが俺にもたれかかってきていた。
「ラムハさん、協定は?」
「これ以上のことはしないもの。ここまでは大丈夫」
なるほど……。ギリギリを攻めている。
こうして、なんか決戦の時はちょっと先送りされたみたいだった。
次なる目的地のことを考えつつ、俺はラムハにくっつかれてムラムラする気持ちを必死に抑えるのだった。
第二部:彷徨編 → 第三部:覚醒編
オルカ率いる海賊チームが探索したところ、潜水艦の中からはいくつかのアイテムが見つかったらしい。
まずは、カプセルサイズの複雑な模様が刻まれたボール。
「これはカプセルシェルターであるな。これによってこの船の全員が休める施設を作り出せる」
ジェーダイが説明してくれた。
なるほど、つまり持ち運べる拠点みたいな感じか。
次に、車。
どう見ても車だ。
自動車ね。オープンカーっぽくて、タイヤが大きい。
「これはバギーである。これによって地上を速く走れる。タイヤが大きく、内側に溝が刻まれているだろう? これによって水を掻いて水上を走ることもできる」
「なにそれ便利」
うちの船の、ボート兼揚陸車両として使おう。
そして、通信装置らしきもの。
「通信装置だ」
「まんまだな」
「しかもこれ一つでは意味がないぞ。親機があって、そこからの通信を受け取るためのものだ。これは呪力バッテリーが切れると使えなくなる」
古代文明は現代世界に近い文明を持ってたっぽいな。
いちいち説明が分かりやすい。
俺が通信機をいじっていると、いきなりそいつが起動した。
『聞こえるか、伝野。こちらは五花だ。海上の封鎖は完了したか?』
「おっ、懐かしい声がする」
俺が思わず喋ったら、通信機が押し黙った。
そして、なんか凄く嫌そうな声で、
『多摩川くん……。どうして君がそれを持ってるんだ』
「うちのクラスメイトがいたのか。そいつはイクサが倒したぞ。なので潜水艦を家探ししたんだ」
『七勇者がまたも……!? 遺跡の力を引き出しきれていないのか……! いや、君たちが僕の思う以上に強くなっているようだ。君たちは危険だ。僕が作り上げる新たな世界の秩序のためには、あまりにも危険すぎる……!』
「なに言ってるんだお前」
さっぱり分からん。
『くっ、言葉が通じない……! 君はそもそも僕の言葉を聞き流すから、扇動スキルも洗脳スキルも通用しないんだ! ……だが、今の僕達は君の手が届かない場所にいる。伝野くんは残念だったが、それもまた運命。僕達をこの場所へと送り届けるため、彼は犠牲になったのさ』
なんか自分に酔ってる感じだな!
そもそも、この場所ってどこだよ。
すると、いつの間にか船の上に上がってきていたロマが、通信機に耳をくっつけた。
うわ、ペタッとした!
水気を拭いてくださいよもうー。
「風の音がすっごくするねえ。空の上なんじゃない?」
『な、なにっ。通信は終わりだ! さらばだ多摩川くん! そこで僕が作り上げる新たな世界の秩序を指を咥えて眺めているがいい!』
唐突に通信が終わった。
最後にめっちゃくちゃ焦ってたような。
「ロマ、風の音って?」
「海の上って遮るものが無いから、びゅうびゅう風が吹くのさ。だけど、これはもっと強い感じの風の音だねえ。高いところに行くほど風を遮るものってなくなるんだろ?」
「高いところ……」
「なるほど」
ラムハとイーサワには合点が行ったようだった。
「えっ、二人とも心当たりが!?」
「天空の大盆よ。都市国家にやって来た時に話したでしょ」
「そう言えばそんな話を聞いたような」
イーサワがラムハの言葉を補足する。
「大盆は常に空を飛び続けているわけではなく、どこかに舞い降りて一休みすると言われています。それがもしかすると、この海にあるのかもしれないですね。……というのは、さきほどのセンスイカンと七勇者、そして彼と連絡を取り合っていた、団長の宿敵の関係を結ぶとそういう結論が出てくるからです」
「なるほどなるほど。じゃあ、このまま潜水艦が来た方向に行ってみようか」
そういう話になり、俺達はぐんぐんと船を進ませた。
やがて、そこが見えてくる。
海の上に突然出現した、ばかでかい銀色の地面である。
「なんだこれ」
「呪力を蓄える板である。魔法の儀式を行う上にこれを置き、さらに上に呪力を与えたい物を置く。そうして、その物は呪法の力を得ることになるのだ」
ジェーダイの解説を聞いて、頭の中でこれだけ大きい板に乗るものを考える。
……つまりこれって、充電のためのターミナルみたいな?
天空の大盆って、空飛ぶ巨大なお掃除ロボットなんだろうか。
「さて、どうする団長?」
オルカに問われて、俺は一瞬考えた。
この板の上に乗ってぴょんぴょん飛び跳ねてみたい。
「オクノくんが考えてること当ててあげようか。この上に飛び乗ってぴょんぴょん跳ねたいんでしょ」
「ルリア、まさか俺の心を読んで……!?」
「顔に出るんだもん!」
顔に出てたかー。
だけど、欲望任せに遊んでちゃいけないよな。
「えーと、確か呪力を補充するにはさらってきた人間を生贄にしなきゃいけないんだったよな」
俺が尋ねると、ジェーダイが頷いた。
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「なるほど。ではこいつをぶっ壊せばそういう被害がなくなるというわけか。エルボードローップ!!」
俺は船から一気に飛翔して、全力で肘を銀の板に叩きつけた。
その部分に大きな亀裂が入る。
「うおーっ! オクノ殿がノータイムで遺跡を破壊に行ったー!!」
「よし!! 裂空斬! 裂空斬! 裂空斬!!」
いいぞイクサ!
この板が何か悪しきものだと理解したんだな。
こうなれば、イクサは止まらない。
「よしみんな! この板をぶっ壊すぞ! ちょっとでかいから、数日がかりで壊していこう!」
「おー!」
掛け声が上がる。
かくして、オクタマ戦団総出での作業となった。
「てっきり、ここで決戦になると思ってたのに」
水平線に夕日が沈む。
それを眺めながら、ラムハがため息をついていた。
「なりませんでしたなあ」
「オクノはなにを他人事みたいに言ってるのよ。私のこれは、多分混沌の裁定者絡みだって思うの。だから、遺跡を巡るほど封印が解けていく。切っ掛けを作ったのはオクノだけど」
「あれはすまんことをした」
「いいのよ。責任とってくれるんでしょ。それで、この板を壊してしまったら後はどうするつもり?」
「えーと、海底にまだスリープ状態の潜水艦がいたんで、これを全部ぶっ壊してから、一旦都市国家に戻って補給して、また旅をする感じかなあ。例えば、北方の凍れる城とか。……北ってそっちに行くほど暑くなるんだろ? なんで北の城が凍ってるの」
「さあねえ……。群島よりもさらにさらに北に行かないといけないからね。もしかしたら、新しい大陸があったりするかも」
つまり、新たな冒険の舞台があるということか。
その辺りは都市国家で情報収集してもいいかも知れない。
あとはとりあえず、うちのクラスの連中が諸悪の根源みたいになって来ている感じがする。
あいつらの後を追いかけて、七勇者とか言うのをやっつけていきたいな。
「天空の大盆を追いかけるのってのはどうかな?」
「いいんじゃないかしら。あれは世界を巡っていると言われているから、遭遇するためには色々調べなくちゃいけないと思うけれど」
「調査調査、また調査だなあ」
「あてのない旅なんだもの。そういう時があったっていいんじゃない?」
気がつくと、ラムハが俺にもたれかかってきていた。
「ラムハさん、協定は?」
「これ以上のことはしないもの。ここまでは大丈夫」
なるほど……。ギリギリを攻めている。
こうして、なんか決戦の時はちょっと先送りされたみたいだった。
次なる目的地のことを考えつつ、俺はラムハにくっつかれてムラムラする気持ちを必死に抑えるのだった。
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