ピコーン!と技を閃く無双の旅!〜クラス転移したけど、システム的に俺だけハブられてます〜

あけちともあき

文字の大きさ
上 下
82 / 181
第二部:彷徨編

82・俺、ターミナルステーションに到着する

しおりを挟む
 潜水艦を物理的に退けた俺達。
 オルカ率いる海賊チームが探索したところ、潜水艦の中からはいくつかのアイテムが見つかったらしい。

 まずは、カプセルサイズの複雑な模様が刻まれたボール。

「これはカプセルシェルターであるな。これによってこの船の全員が休める施設を作り出せる」

 ジェーダイが説明してくれた。
 なるほど、つまり持ち運べる拠点みたいな感じか。

 次に、車。
 どう見ても車だ。
 自動車ね。オープンカーっぽくて、タイヤが大きい。

「これはバギーである。これによって地上を速く走れる。タイヤが大きく、内側に溝が刻まれているだろう? これによって水を掻いて水上を走ることもできる」

「なにそれ便利」

 うちの船の、ボート兼揚陸車両として使おう。
 
 そして、通信装置らしきもの。

「通信装置だ」

「まんまだな」

「しかもこれ一つでは意味がないぞ。親機があって、そこからの通信を受け取るためのものだ。これは呪力バッテリーが切れると使えなくなる」

 古代文明は現代世界に近い文明を持ってたっぽいな。
 いちいち説明が分かりやすい。

 俺が通信機をいじっていると、いきなりそいつが起動した。

『聞こえるか、伝野。こちらは五花だ。海上の封鎖は完了したか?』

「おっ、懐かしい声がする」

 俺が思わず喋ったら、通信機が押し黙った。
 そして、なんか凄く嫌そうな声で、

『多摩川くん……。どうして君がそれを持ってるんだ』

「うちのクラスメイトがいたのか。そいつはイクサが倒したぞ。なので潜水艦を家探ししたんだ」

『七勇者がまたも……!? 遺跡の力を引き出しきれていないのか……! いや、君たちが僕の思う以上に強くなっているようだ。君たちは危険だ。僕が作り上げる新たな世界の秩序のためには、あまりにも危険すぎる……!』

「なに言ってるんだお前」

 さっぱり分からん。

『くっ、言葉が通じない……! 君はそもそも僕の言葉を聞き流すから、扇動スキルも洗脳スキルも通用しないんだ! ……だが、今の僕達は君の手が届かない場所にいる。伝野くんは残念だったが、それもまた運命。僕達をこの場所へと送り届けるため、彼は犠牲になったのさ』

 なんか自分に酔ってる感じだな!
 そもそも、この場所ってどこだよ。

 すると、いつの間にか船の上に上がってきていたロマが、通信機に耳をくっつけた。
 うわ、ペタッとした!

 水気を拭いてくださいよもうー。

「風の音がすっごくするねえ。空の上なんじゃない?」

『な、なにっ。通信は終わりだ! さらばだ多摩川くん! そこで僕が作り上げる新たな世界の秩序を指を咥えて眺めているがいい!』

 唐突に通信が終わった。
 最後にめっちゃくちゃ焦ってたような。

「ロマ、風の音って?」

「海の上って遮るものが無いから、びゅうびゅう風が吹くのさ。だけど、これはもっと強い感じの風の音だねえ。高いところに行くほど風を遮るものってなくなるんだろ?」

「高いところ……」

「なるほど」

 ラムハとイーサワには合点が行ったようだった。

「えっ、二人とも心当たりが!?」

「天空の大盆よ。都市国家にやって来た時に話したでしょ」

「そう言えばそんな話を聞いたような」

 イーサワがラムハの言葉を補足する。

「大盆は常に空を飛び続けているわけではなく、どこかに舞い降りて一休みすると言われています。それがもしかすると、この海にあるのかもしれないですね。……というのは、さきほどのセンスイカンと七勇者、そして彼と連絡を取り合っていた、団長の宿敵の関係を結ぶとそういう結論が出てくるからです」

「なるほどなるほど。じゃあ、このまま潜水艦が来た方向に行ってみようか」

 そういう話になり、俺達はぐんぐんと船を進ませた。
 やがて、そこが見えてくる。
 海の上に突然出現した、ばかでかい銀色の地面である。

「なんだこれ」

「呪力を蓄える板である。魔法の儀式を行う上にこれを置き、さらに上に呪力を与えたい物を置く。そうして、その物は呪法の力を得ることになるのだ」

 ジェーダイの解説を聞いて、頭の中でこれだけ大きい板に乗るものを考える。
 ……つまりこれって、充電のためのターミナルみたいな?
 天空の大盆って、空飛ぶ巨大なお掃除ロボットなんだろうか。

「さて、どうする団長?」

 オルカに問われて、俺は一瞬考えた。
 この板の上に乗ってぴょんぴょん飛び跳ねてみたい。

「オクノくんが考えてること当ててあげようか。この上に飛び乗ってぴょんぴょん跳ねたいんでしょ」

「ルリア、まさか俺の心を読んで……!?」

「顔に出るんだもん!」

 顔に出てたかー。
 だけど、欲望任せに遊んでちゃいけないよな。

「えーと、確か呪力を補充するにはさらってきた人間を生贄にしなきゃいけないんだったよな」

 俺が尋ねると、ジェーダイが頷いた。

「これだけ大きな物を起動させるためには、常に魔法の儀式を行わねばならぬ故にな。だからこそ、センスイカンは自律行動をし、人を集めていたのだ」

「なるほど。ではこいつをぶっ壊せばそういう被害がなくなるというわけか。エルボードローップ!!」

 俺は船から一気に飛翔して、全力で肘を銀の板に叩きつけた。
 その部分に大きな亀裂が入る。

「うおーっ! オクノ殿がノータイムで遺跡を破壊に行ったー!!」

「よし!! 裂空斬! 裂空斬! 裂空斬!!」

 いいぞイクサ!
 この板が何か悪しきものだと理解したんだな。
 こうなれば、イクサは止まらない。

「よしみんな! この板をぶっ壊すぞ! ちょっとでかいから、数日がかりで壊していこう!」

「おー!」

 掛け声が上がる。
 かくして、オクタマ戦団総出での作業となった。




「てっきり、ここで決戦になると思ってたのに」

 水平線に夕日が沈む。
 それを眺めながら、ラムハがため息をついていた。

「なりませんでしたなあ」

「オクノはなにを他人事みたいに言ってるのよ。私のこれは、多分混沌の裁定者絡みだって思うの。だから、遺跡を巡るほど封印が解けていく。切っ掛けを作ったのはオクノだけど」

「あれはすまんことをした」

「いいのよ。責任とってくれるんでしょ。それで、この板を壊してしまったら後はどうするつもり?」

「えーと、海底にまだスリープ状態の潜水艦がいたんで、これを全部ぶっ壊してから、一旦都市国家に戻って補給して、また旅をする感じかなあ。例えば、北方の凍れる城とか。……北ってそっちに行くほど暑くなるんだろ? なんで北の城が凍ってるの」

「さあねえ……。群島よりもさらにさらに北に行かないといけないからね。もしかしたら、新しい大陸があったりするかも」

 つまり、新たな冒険の舞台があるということか。
 その辺りは都市国家で情報収集してもいいかも知れない。

 あとはとりあえず、うちのクラスの連中が諸悪の根源みたいになって来ている感じがする。
 あいつらの後を追いかけて、七勇者とか言うのをやっつけていきたいな。

「天空の大盆を追いかけるのってのはどうかな?」

「いいんじゃないかしら。あれは世界を巡っていると言われているから、遭遇するためには色々調べなくちゃいけないと思うけれど」

「調査調査、また調査だなあ」

「あてのない旅なんだもの。そういう時があったっていいんじゃない?」

 気がつくと、ラムハが俺にもたれかかってきていた。

「ラムハさん、協定は?」

「これ以上のことはしないもの。ここまでは大丈夫」

 なるほど……。ギリギリを攻めている。
 こうして、なんか決戦の時はちょっと先送りされたみたいだった。

 次なる目的地のことを考えつつ、俺はラムハにくっつかれてムラムラする気持ちを必死に抑えるのだった。



 第二部:彷徨編 → 第三部:覚醒編
しおりを挟む
感想 92

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

修学旅行に行くはずが異世界に着いた。〜三種のお買い物スキルで仲間と共に〜

長船凪
ファンタジー
修学旅行へ行く為に荷物を持って、バスの来る学校のグラウンドへ向かう途中、三人の高校生はコンビニに寄った。 コンビニから出た先は、見知らぬ場所、森の中だった。 ここから生き残る為、サバイバルと旅が始まる。 実際の所、そこは異世界だった。 勇者召喚の余波を受けて、異世界へ転移してしまった彼等は、お買い物スキルを得た。 奏が食品。コウタが金物。紗耶香が化粧品。という、三人種類の違うショップスキルを得た。 特殊なお買い物スキルを使い商品を仕入れ、料理を作り、現地の人達と交流し、商人や狩りなどをしながら、少しずつ、異世界に順応しつつ生きていく、三人の物語。 実は時間差クラス転移で、他のクラスメイトも勇者召喚により、異世界に転移していた。 主人公 高校2年     高遠 奏    呼び名 カナデっち。奏。 クラスメイトのギャル   水木 紗耶香  呼び名 サヤ。 紗耶香ちゃん。水木さん。  主人公の幼馴染      片桐 浩太   呼び名 コウタ コータ君 (なろうでも別名義で公開) タイトル微妙に変更しました。

処理中です...