ピコーン!と技を閃く無双の旅!〜クラス転移したけど、システム的に俺だけハブられてます〜

あけちともあき

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第二部:彷徨編

79・俺、理想の地の結界を割る

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「あれ? あれあれー?」

 見張り台から日向の声が聞こえた。
 リザードマンと一緒に見張りを担当していたはずだけど。

「ねえ、なんで横行けって信号出してるの?」

「ギョ?」

 上の方で、リザードマンに質問しているようだ。
 なんだなんだ?

 そして俺から見ても、船が取舵で進む先を変えていくのが分かる。

「おーい、グルムル」

「なんでしょう」

 操舵手のグルムルに尋ねてみた。

「なんかいきなり船の方向が変わったんだけど」

「? そうですか?」

 グルムルも分かってない。
 見張り台のリザードマンも、自分が取舵を指示したのを理解してないようだ。

 回りを見たら、イクサもラムハもオルカもジェーダイも、フタマタもルリアもアミラもカリナもイーサワも分かってなかった。

 俺と日向だけが、状況がおかしいことに気付いている。

「これはなんか、認識をおかしくするやつだな」

 俺はピンとくる。
 こういうのはマンガとか小説で読んだ。

「オルカ、直進するように風を吹かせてくれ。グルムルは面舵も取舵もいらないからな」

「おう。なんかよく分からんが分かったぜ」

「承知しました」

 船乗りコンビに頼み、船員たちにも指示を出してもらう。
 我がホリデー号はまっすぐまっすぐ、突き進んでいくのだ。

 あるところから、オルカやグルムルたちの顔がちょっと不快そうになった。

「なあオクノ……。俺、ここからさっさと離れたくなって来たんだが」

「私も同感です」

「俺はなんともないや。おーい、日向はどう?」

「なんともなーい」

 ふむふむ。
 仲間たちはみんな、得も知れぬ気持ち悪さを感じているみたいだ。
 ってことは、これ、ここに人を近づけないための結界みたいな感じなんではないかな?

 この世界の人間には通じるが、俺達異世界から来た人間には通じないと。

 ならば、それがうちのクラスの七勇者を名乗る連中だったらどうだよ。
 そのままスーッと通過するんじゃね?

「おっしゃ、日向降りてこい。二人でこの結界をぶっ壊すぞ」

「ほっ……と! 結界?」

 マストの上の見張り台から、一跳びで俺の横まで着地してきた日向。
 レベルも上がり、なかなか人間離れしてきている。

「ああ。間違いなく、ここには人を近づけさせないための結界がある。他の人の目には見えないけど、俺達には見えるかもな」

 俺は舳先に立ってキョロキョロした。
 何か変なのが無いかなー。

 あった。
 露骨に、光の壁である。
 もろに結界って感じの壁だった。

 それは、ホリデー号の先に展開されている。
 割と広い範囲を覆っているようで、果てが見えない。

「多摩川くん、あれ?」

「多分そう。んじゃ、二人であれをぶっ壊すか」

「壊せるの……!?」

「古代遺跡だって腕ずくでぶっ壊したんだぞ。結界くらい余裕だろ」

「言われてみればそんな気がしてきた」

「マキがオクノくんに染められていくう」

 ルリアの声がしたが無視だ無視。
 光の壁が目に見えてきたところで、同時に行くぞ。
 技のチョイスのために、日向のステータスを確認だ。


名前:日向マキ
レベル:39
職業:体術使い

力   :96
身の守り:66
素早さ :114
賢さ  :29
運の良さ:25

HP303
MP31

体術22レベル
☆体術
・浴びせ蹴り・裏拳・三角蹴り
・空気投げ・爆砕鉄拳・鬼走り
・精神抵抗


 技が増えてる増えてる。
 ちまちまと継承していったからな。
 例によって、日向に継承した技は変異して、空手スタイルな技になるのだ。

「よし、日向、鬼走り行ってみよう」

「分かった! 鬼走り!」

 日向の体が残像を纏う。
 高速移動した彼女の体当たりが、光の壁に炸裂した。

 これが鬼走りかー。
 移動と攻撃を兼ねてていい感じだ。
 俺も続くぞ。

「フライングクロスチョップ!!」

 舳先から跳躍しながら、光の壁にぶち当たる。
 おっ、いい感じの感触があるぞ。
 ちょっとヒビが入ったか?

「日向、今度は連携で」

「意識してやれるかなあ……? 私が先導するの?」

「じゃあ俺からやる? 行くぞ。フライングクロスチョップ!」

「鬼走り!」

「月影の太刀!」

 さらっとイクサが混じってきたな!!

「よく分からんがお前たちが攻撃している方向に敵の気配を感じた」

 野性的勘!!
 だが、三連携はいい感じだ!

『フライング鬼の太刀』

 ギリギリ、トンチキな連携名だ……!
 そのうち、順番を工夫してかっこいい連携名が出てくるようにするのもいいな。

 俺達の攻撃を受けた結界は、光の表面にピキピキと亀裂を走らせると、やがてガラスが割れるような音を立てて砕け散ってしまった。

 それと同時に、不快そうだった団の仲間たちも我に返っていく。

「なんだ……? いきなり頭の中がスッキリと晴れたような……」

 オルカが不思議そうに周囲を見回した。

「そう言えば聞いたことがある」

「知っているのかジェーダイ!」

 古代人が何か詳しそうだったので、話を振ってみる。

「うむ。我も詳しいわけではないが、水面に特殊な装置を浮遊させ、そこから発生する光と振動を使い、周囲に人間を寄せ付けない仕掛けが存在したそうだ。それを人は波離空バリアと呼んだそうな」

 ほんまかいな。
 明らかに胡散臭いけど、でも古代人のジェーダイが言うから多分本当なのだ。
 バリアかあ。

 俺と日向とイクサがぶち破ったのは、バリアそのものというか、装置が発生させていた力場なんだろう。
 で、またバリアが出てくる気配がないから、装置は壊れてしまったようだ。

「我ら古代人の叡智と技術の結晶は、長らくこの地を隠蔽してきたのでしょうな。だが、団長と日向殿の野蛮力の前には刃が立たなかったようだ」

「野蛮力とはなんだ」

 ジェーダイに一応抗議しておいた。
 確かに、古代文明の産物に力で挑んで打ち勝っているが、あれだ。
 ちゃんと頭を使った上で腕力に訴えているんだぞ。

「野蛮力……ちょっとかっこいいかも?」

 日向、それは君が字面を想像できてないだけではないのか。

 そして今回、イクサは自分が知覚できていない対象にも、指示をしたり俺が攻撃したりすると追随して攻撃を仕掛けることが分かった。
 便利だ。

 古代文明による結界は、この世界の人間を遠ざけ、結界そのものを知覚させないようにしているはずなのに、それを攻撃できてしまうとは。
 自分の意識と技を切り離して使用できるんだな。

 つくづく天才というか、怪人というか。

 再びホリデー号は動き始めた。
 もう、この船を止めるものはいない。
 結界が隠していた先を目指して、ぐんぐんと突き進む。

 そろそろ、この先にあるものを隠したい何者かが現れるんじゃないだろうか。
 例えばこの奥に行ったであろう七勇者とか。
 俺が戦った潜水艦とか。

「接近中、何かくる!」

 見張りのリザードマンの声がした。

「どんなの!?」

「光ってる! いっぱい! 大きい!」

「光る?」

「いっぱい?」

「大きい?」

 首をかしげる女子たちを前に、俺は即断した。

「潜水艦の襲撃でーす! 迎え撃ちまーす! はい、有志は俺のところに集まること! 水中戦だよー!」

 水中戦用陣形、マリンスタンス5の威力を、潜水艦戦で試す時が来たぞ。
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