ピコーン!と技を閃く無双の旅!〜クラス転移したけど、システム的に俺だけハブられてます〜

あけちともあき

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第二部:彷徨編

58・俺、銃を手に入れる

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 捕まえた海賊船からは、色々なものが見つかった。
 分かりやすく金貨だとか、宝石だとか、食料だとか。

「一隻襲って戻るところだったのかも知れませんね」

 イーサワが一つ一つ確認しながら言う。

「一応、持ち主が明らかなものはその都市国家に返すことになります。ただ、その際に一割をお礼としてもらえるんですよ。これだけあれば、馬鹿にならない額ですね」

「交番みたいだな」

 俺もガサガサと海賊のお宝をあさる。
 すると、明らかにこのファンタジーな世界に似つかわしくない物があった。

「ひえっ、銃だこれ」

 弾倉などがない、古めかしい感じの銃だ。
 俺はファンタジー小説やマンガやゲームや映画を履修してるので詳しいんだ。
 これは先から弾と火薬を込める、先込め式のフリントロックってやつなんだぞ。

「おや! いいものを見つけましたねオクノさん! それは遺跡でたまに発掘される銃という魔道具なんです」

「魔道具?」

「遺跡でそのように語られていました。かつて、呪法が栄える前は魔法というものがあったそうですね。遺跡はその魔法というものによって作られていて、そこから発掘される宝の数々も、魔法がかかったものが多いのです」

「なるほど、一応魔法があったのかこの世界」

 俺は感心した。
 魔法が滅びて、呪法に入れ替わったらしい。
 魔法は道具に封じ込めたり、大々的な儀式とともに行使する、大掛かりなもの。
 呪法は個人で完結する簡単なもの。

「遺跡から見つかる資料では、古代人は魔法の素質がある者の頭を紐みたいなもので繋いで、むりやり同期させて儀式をしたようですね」

「こわあ。ひどい時代だ」

「まったくです。で、銃はその時代の産物なんですが……素質が無いものには使えないんですよ。そもそも、素質がないと弾が装填されないので、ただの筒でしかありません」

「えっ? 先から弾を込めるのでは?」

「先から込める……? 何を言ってるんです?」

 おや?
 話が通じない。
 これ、フリントロック式の銃に見えて実は全然違うのか。

 そもそも素質とはなんぞや。
 俺は首を傾げながら、グリップを握り込んだ。
 すると、カチリと音がした。

「……おや?」

 銃口を覗き込む。
 あ、いかん!
 こういうのは覗いてはいけないんだったな。

「危ない危ない。ヒヤリハットだ」

 俺は笑いながら銃口を逸らした。
 その時、指が引き金に触れる。
 いや、思いっきり引き金を引いた。

 銃声が上がる。
 俺の髪を掠めて、弾丸が頭上目掛けてぶっ飛んでいった。
 甲板を貫通して、空に向かって行ったことであろう。

「危ねえーっ!!」

 俺はめちゃめちゃびっくりして、銃を放り出した。
 いや、今の俺なら一撃で死ぬことはないだろうなあと思うけど、あっちの世界で染み付いた常識ってものがあるじゃない。

 イーサワは目を見開いて、投げ出された銃を見る。
 そして俺を見る。
 また銃を見る。

「ほ、ほ、ほ」

「ほほほ?」

「本当に使える人がいるなんてーっ!? オクノさん! あなた、素質があるんですよ! 銃使いの素質が! 千人、いや万人に一人もいないと言われてたのに、まさかオクノさんが使えるなんて……!! ちょっともう一発撃って下さい!」

「えっ、いいの? おまわりさんに捕まったりしない? 銃刀法違反で」

「何を意味わからないこと言ってるんですか!」

「裂空斬!!」

 そんな事をしてたら、俺とイーサワの頭上を猛烈な勢いで斬撃が通り過ぎていった。
 甲板から放たれたイクサの攻撃だけど、あいつ、銃を攻撃だと勘違いして反撃したな!
 脊椎反射で攻撃しやがって、危ねえー!!

 お蔭で、船の甲板から俺たちがいる船倉までが一直線につながった。
 大変風通しが良い。

「……なんだ、オクノか。敵が潜んでいるかと思った」

「確認しないで攻撃するなよー」

「確認して手遅れになるよりはましだ。お前なら死なないだろう」

「そりゃあそうだけどな」

 まあ、あの即断即決があるからイクサが頼りになるのではある。
 とりあえず、俺は銃を回収。
 甲板で試し打ちをすることにした。

「オクノ、それはもしかして、銃?」

「知っておるのかラムハ……!!」

 彼女、記憶喪失なのに何でも知ってるな。

「銃?」

「銃?」

「銃?」

「銃……!! 多摩川くん、大人しく出頭してね……!」

 ルリア、アミラ、カリナの素朴な反応の後に、明らかに怯えた日向の反応がくる。

「日向、ここはあれだ。警察がいないし法律がないので銃を撃ってもノーカンなんだ」

「ひいっ、無法の世界!」

 怯える日向。
 ちょっと最近、こいつの反応が面白くなってきた。

「はい、じゃあ皆さん、俺が試し撃ちしまーす」

 俺が宣言すると、船員たちもなんだなんだと、向こうの船から覗き込んできた。

「銃が使える人がいるのか?」

「おおー! あの傭兵団長、銃が使えるのか! すげえな!」

「こけおどしでは?」

 ふふふ、見てろよ見てろよー。
 俺は明後日の方向に銃を構えた。
 カチリ、と銃の中で音がする。
 多分装填されたかな?

 さあ、引き金を引こうかという瞬間だ。

「バカめーっ! 船を落として気を抜いていたのだろうが、この海獣使いのモーブ様とクラーケンが船底に隠れていたのよーっ! 船ごと貴様らをバラバラに」

「あっ」

 俺はびっくりして引き金を引いてしまった。

「ウグワーッ」

 モーブとか言うのが額に風穴を空けて死んだ。
 そしてその後に、でかいイカが浮上してくる。
 イカはモーブが死んでいることに気づき、一瞬止まった。

 そして、真っ赤に変色する。
 怒った!

 触手が俺に襲いかかる!
 やべえやべえ!

 ブロッキングしようとするが、銃を装備していると上手くできないようだ。
 あかん。
 射撃して触手を撃ち落とすか。

 その時、久々の音が鳴り響き、頭上に電球が灯る。

 ピコーン!
『反応射撃』

 銃がぶっ放され、イカの触手を撃ち落とす。
 そしてさらに

 ピコーン!
『集中連射』

 連続して銃声が鳴り響く。
 イカの胴体に無数に穴が空く。
 さらにさらに、

 ピコーン!
『曲射』

 慌てて水中に逃げようとするイカに向かい、銃弾は大きく曲がりながら追随する。
 そしてエンペラ(イカのひらひらしたところ)からイカの口まで、縦一直線に弾丸が貫いたのだった。

 イカは活動を止め、真っ白になる。
 倒すついでに活き締めをしてしまったらしい。

「これは今日はイカパーティだな……」

 俺がクールに呟くと、船から大歓声が上がった。
 こうして、海賊船とイカを曳航して、次なる都市国家に向かう俺たちなのだった。

 ここで、銃技を身に付けた俺のステータスを確認なのだ。


名前:多摩川 奥野

技P  :978/953
術P  :333/333
HP:1055/1055

アイテムボックス →
※カールの剣
※祭具・ローリィポーリィ
※戦士の銃

✩銃         →
・反応射撃・集中射撃・曲射

★幻の呪法
◯幻炎術◯幻獣術◯雷幻術
◯幻影魅了術◯幻氷術◯水幻術
★陣形・陣形技      →
・青龍陣/ドラゴンファング
・白虎陣/タイガークロウ
・朱雀陣/フェニックスドライブ
・玄武陣/タートルクラッシュ


 ははあー。戦士の銃ですかー。
 なんかそれっぽいアイテムだなあこれは。
 しかし、銃を使うと体術が上手く使えないようだ。
 これは多分、弓を使った時も同じ状況になるんだろう。
 飛び道具のスタイルと近接戦闘のスタイルは噛み合わないのかもしれない。

 あるいは、銃と剣を同時に使える戦い方みたいなのもあるんだろうか。
 要研究だな……!
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