ピコーン!と技を閃く無双の旅!〜クラス転移したけど、システム的に俺だけハブられてます〜

あけちともあき

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第二部:彷徨編

45・俺、丘巨人とやり合う

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「ほう、あれが丘巨人ヒルジャイアントちゃんですか」

 遊牧民たちを引き連れた、遠くからでもしっかりその姿が見える。
 四階建ての建物くらいの背丈をした巨人が、じっとこちらを見ている。

 ここはステップだ。
 身を隠すところなどないのだ。
 ってことで、向こうもこっちも丸見え。

 巨人は人というよりは、泥人形みたいな見た目だった。
 あちこちに苔や草が生えてて、ステップの地面がそのまま人の形に起き上がったような。

『もががががーっ!!』

 巨人が口を開くと、吠えてきた。
 なかなか声がでかい。
 口の中には歯とかあるのな。グロい。

「気づかれた。普段ならば、羊を囮にして逃げるところだ」

 遊牧民の代表が緊張した声で言う。

「戦わないのか」

「あの土でできた皮膚には、我々の弓が通じない」

「なるほどー」

 相性的な問題で、丘巨人とは戦えないということだ。
 そしてこういうモンスターが、森までの間にわんさかいると。

「よっしゃ、俺たちの出番だな。巨人もやる気みたいだし。じゃあパーティメンバーを選ぼう」

 俺は振り返り、仲間たちを見回した。

「はい! わたしがやります。弓でも戦えるってところを見せますよ!」

「カリナ気合入ってるねー。じゃあ、あとは……」

 俺の視線が、日向で止まった。
 彼女はうつむいて小さくなって、なるべく俺の目に映らないように努力しているようだ。
 お前、女子たちの中で一番ガタイがいいのにそんなんで隠れられるか。

「日向な」

「ひいえええ」

「ひいえええじゃねえよ、戦えるんだから戦おう!」

 俺は彼女の肩をぽんと叩いた。
 これ、元の世界だったらセクハラとか言われるな!

「じゃあ、ちょっと技を継承するから」

「継承……?」

「なるほど、それまでの間に俺が時間を稼げばいいのだな。別に倒してしまっても構わんのだろう?」

「あ、こら、おいイクサ! 勝手に出ていくな!?」

『もがーっ!!』

「よし来い巨人!」

「イクサさん支援します! 連ね射ち!」

「裂空斬!」

『もがががが』

 やべえ!
 丘巨人がめちゃめちゃ効いてそうなうめき声出してる!
 丘巨人が死んじゃう!!

「がんばって、がんばって二人とも!」

「君も応援するな日向! ええい、継承終わり! ……あれ?」

 俺から日向に技は継承された。
 体術使いだったから、俺の珠玉の技の数々を継承したのだが……。
 日向のステータス欄に移った瞬間、技が変化したのだ。
 
 俺の技はプロレス技ばかり。
 対して日向は空手家スタイルだったから、どうかと思ったら……。

名前:日向マキ
レベル:25
職業:体術使い

力   :54
身の守り:38
素早さ :72
賢さ  :22
運の良さ:18

HP243
MP25

体術14レベル
☆体術
・ドロップキック→浴びせ蹴り ・ラリアット→裏拳 ・シャイニングウィザード→三角蹴り
・フライングメイヤー→空気投げ
・精神抵抗

 あれあれあれ?
 これは一体どうしたことだ。

「わっ、私のステータスに技が!? なにこれ!?」

「なにこれなんて言ってる暇ないぞ! うおおー! 死ぬなよ丘巨人! 今俺たちが殺す!」

 俺は日向の手を引っ張ると、全力で丘巨人目掛けて突撃した。

「させん! もうすぐ倒せるのだ!」

「させん!じゃねえよ! イクサお前足止めとか言ってたくせにとどめを刺しそうになってるじゃんか!? よっしゃ、間に合った!! ドロップキック!」

 俺は疾走から跳躍に移る。
 稲妻の如きドロップキックが、巨人に突き刺さった。
 あっ、今何か新しい技が閃きそうだった。
 だが、巨人の強さ的にはまだ閃けないようだ。

『うぼあー』

 巨人はフラフラだ。

「よし、決めろ日向!」

「決めろって……!? 私、こんな大きいモンスターと戦ったことない……」

「いいからやるんだー! 細かいことは後で考えればいい!! やれやれー!」

「わ、分かったー……! もうヤケだ! こんのおおおーっ! 浴びせ蹴り!!」

 日向が跳躍して、足を高く振り上げた。
 そして、回転しながら蹴り足が叩き込まれる。
 明らかにドロップキックじゃない。

 効果は抜群だ。
 俺が継承させた技は、かなり威力が高くなる傾向があるからな。

『うぐわー』

 巨人は叫ぶと、そのままぼろぼろと崩れて土の山になってしまった。
 どうやら死んだらしい。
 本当に土でできてるのな。

「はあ、はあ……やった、やれた……」

 日向はもう汗だくだ。
 明らかに空手で鍛えた見た目なのに、なんで自己評価低いの。

「日向はもっと自信を持っていいのではないか」

「うん……。多摩川くんもいつも妙に自信たっぷりだったもんね」

「俺は常に俺の味方だからな……!」

「俺は俺の味方……。そういうのもあるのかあ……」

 日向が何やら噛みしめるように呟いている。

「おつかれー! やるじゃーん!」

 そこへ空気を読まないルリアが走ってきて、日向の背中をばしーんと叩いた。

「ひゃあーっ」

「まさかオクノくんと同じ体術使いだとはねー! ま、オクノくんって剣もいけるし斧も槍も鞭も杖も弓もいけるし呪法も使えるけどねー」

「ああ。お蔭でステータスがとんでもないことになる……」

 丘巨人の残骸の周りに、遊牧民たちが集まってきた。
 こわごわ、土くれをつついたり蹴ったり踏んだりしている。

「まさか倒してしまうとは……。しかしこれは、いい土だな。草原は少し豊かになるかも知れない。それにしても、奴らはどこから来たのだろう」

 遊牧民代表の言葉では、丘巨人を形作っている土はステップの土ではないらしい。
 この辺りの土はもっと痩せてて、ぼそぼそしている。
 丘巨人はしっとりしている。

「森とか、地下とか?」

「分からん」

 手がかりがないので、憶測にしかならないな。
 とりあえず、巨人は殴れば倒せることが判明した。
 このまま突き進むだけだ。

 あとは、日向を連携や陣形に組み込んでいく訓練をするだけだな。
 まだまだ丘巨人はいるらしいから、いい練習台になってくれそうだ。
 同じパターンの敵が多いのは助かる!

「イクサ、手加減をしろよ……? お前が全部やっつけちゃったら、日向のレベリングができないだろう」

「殺しすぎてはいけないのか!? オクノは難しいことを言う奴だな」

 奴のコントロールはしっかり取っておかねば……!
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