ピコーン!と技を閃く無双の旅!〜クラス転移したけど、システム的に俺だけハブられてます〜

あけちともあき

文字の大きさ
上 下
42 / 181
第一部:始動編

42・俺、戦場から撤退する

しおりを挟む
 シーマが爆発した隙である。

「撤収ー!!」

 俺は掛け声をあげた。
 思考より反射速度が勝るイクサがすぐさま反応し、ルリアとアミラの肩を叩いた後に高速で後退していく。
 我に返ったルリアとアミラも後退。

「ラムハ、乗ってく?」

 背中を指し示すと、彼女は笑って頷いた。

「今回もお願いね」

 ということで、ラムハをおぶって途中でカリナと日向を回収。
 一斉に戦場から退去する俺なのだ。
 この後、戦争がどうなるかは俺の知ったことではない。

 俺の仕事は呪法師シーマを倒すことだし、それは果たしたのだ。
 このまま戦場でぐずぐず残り、王国の兵士として活躍……なんてのは全然望んでないぞ。

 何分か走ると、戦場の外れにある繁みに到着した。
 ここで休憩。

「はい、みんなお疲れさまでしたー!」

「お疲れ様」

「おつかれー!」

「お疲れ様ね」

「お疲れさまです!」

「うむ」

「えっ、えっ、えっ!?」

 ラムハ、ルリア、アミラ、カリナ、イクサが応じて、日向が戸惑っている。

「あの、あのぉー、多摩川くん」

「なんですかね」

「私、普通にこれから王国に合流して私が保護されるんだと思ってたんだけど……」

「そうしたら王国にいいように使われそうじゃん。目的は果たしたから撤収。これ大事ね」

「そ……そういうものなの……?」

 状況がよくわかって無さそうな日向。
 よーし、説明してやるか。

「まずね、俺もそうだけどシーマに召喚された異世界の戦士は信用されてないっぽいの。むしろ敵?」

「敵……! 私たち、邪神メイオーと戦ったら元の世界に返してもらえるんじゃ……」

「そのシーマが邪神メイオーの神官だったでしょ。だからそれは嘘だね。戻す手段もあるかどうか分からない。まあ倒しちゃったけどね!」

「も、戻れない……!?」

 日向が泣きそうになる。

「あーっ、オクノくんが女の子泣かせてるー! いけないんだー!」

「なにいーっ。俺は嘘はつかないことにしてるのだ」

「その辺り、オクノさんはフェアですよね。ヒナタマキさんと言いましたか」

 俺に代わってカリナが説明してくれる。

「うん。あなたは……」

「わたしはカリナ。遊牧民で、オクノさんの妻です」

「違う」

「違うよ!」

「違うわよねえ」

 他の女子たちからすかさずツッコミが入ったぞ。

「う……。視線が痛い……。いいでしょう、今のところは妻候補です。いいですかヒナタマキさん。あなたがたが来た世界がどうかは分かりませんが、こちらはいつも戦争をしたり、モンスターの襲撃に怯えたりして暮らしているのです。どこに行っても戦いはなくなりません。だから、強い力を持っている人は常に頼られます。王国のような大きいところなら、あなたを利用しようとする者も出てくるでしょう。権力争いの道具にされることもあるでしょう。暗殺されるかも知れません」

「多摩川くんの妻……? 暗殺……?」

 日向、そこ二つをごっちゃにしちゃいけない。

「そんな面倒なことになると分かりきっている王国に、あなたは行きたいのですか? わたしはいやです。むしろ王国は滅ぼしたい。遊牧民のために」

 カリナの本音が出た。
 その辺り、日向は聞き流してから頭を抱える。

「ううーっ。どうしたらいいんだろう……。私、どうしよう……。クラスには戻れないよ。だってあそこ、五花くんがみんなをおかしくしちゃってるんだもの。もうみんなとも話が通じないし……」

「やはり!! 諸悪の根源はあいつだったかー」

 俺は納得した。
 こっちの世界に転移してきてから、いきなり処刑の裁判とかおかしいと思ったのだ。
 ああ、いや、もともとクラスの連中とは反りが合わなかったが。

「多摩川くん、五花くんとまた戦うの……? 同じクラスメイトなのに」

「そこは別にどうでもよくて、敵に回ったらまたぶっ飛ばす。今一番大事なのは、次はどこに行くかだな」

「えっ」

 日向が目を丸くした。

「クラスメイトと戦わなきゃいけないのかとか、どうやって元の世界に戻ろうとか、考えるのはいいけど悩んでるのは無駄だろ? だってここに答えはないじゃん。だったらとにかく動くしかないだろー。俺も元の世界に戻って、うちの親に元気でやってますって伝えなければならん……」

「オクノにも親がいたのね」

「ラムハが失敬なことを言ってくる……!」

 このやり取りを見て、ルリアとアミラとカリナが笑った。
 イクサは多分、よく分かってない。

 だが、日向はちょっとリラックスしたようだった。

「そっか……。そうだよね。一人で悩んでても仕方ないもんね。多摩川くん、元の世界では変な人だし気持ち悪いと思ってたけど、ちゃんとしてるんだなあ」

「今ひどいこと言わなかった?」

「お願い、多摩川くん。私も連れて行って。私、頼れるのがあなたしかいないし、一人だとうじうじ悩んじゃうし……」

「いいよ」

「えっ!? いいの!?」

「ただし、パーティは最大六人までだから、戦闘のたびにメンバーを入れ替えて戦わなきゃいけないな。この辺のパーティ構成も考えねば……!」

 新しい問題が生まれてしまった。
 七人いて、パーティは六人までで、陣形は五人まで。
 ええい、なんで微妙に足らないのだ。

「オクノ。パーティを戦闘時、二つに分けるのも手だ。言わば、俺たちは傭兵団のようなものになるな。団長はお前が務めるが、部隊はその都度部隊長を任命してそいつに任せればいい」

「イクサが頭のいいことを言う……!」

「辺境伯の受け売りだ。部隊を分けることは良くあるからな。それに、俺はお前のもとに、まだまだこの世界にいる強者たちが集まってきそうな気がしているんだ」

「それはイクサの感想?」

「俺の直感さ。善悪の判断はつかんが、だいたい外れたことはない」

 なるほど。
 これ以上にメンバーが増える……。
 確かにそうなると、傭兵団だな。

「それじゃあ、次に行くところだけど」

 俺が次なる議題を立ち上げようとしたら、戦場が騒がしくなって来た。
 みんな、シーマが倒された後の茫然自失状態から回復したらしい。
 どうも、戦争どころではなくなっているようだ。

「捜索隊が来るかも知れないな。みんな、移動再開! ええと、どこに行こう。詳しい人?」

「あちこち旅をして来たから知っているわ」

 ラムハが挙手した。

「はい、ラムハさん」

「では、オクノ団長から今後の方針を任されたので、私からこれからの行き先を話すわね。ここから北に向かってまっすぐ行くと、だんだん暑くなってくるの。気候も変わってくるわ。そして、大海アドバードが広がっている」

 海に向かうということか。
 というか、北に行くと暑くなるって……。

「この世界、南半球の世界なのね」

 日向がいいことを言った。
 そう、それ。
 俺たちは、ちょっと寒冷なところをぐるぐる巡って旅をしてたみたいだ。

「北は帝国も王国もなくなるわ。途中でカリナが暮らしていた遊牧民の土地もあるから、そこに寄るのも良いかも知れないわね。そうなったら、遊牧民に手出ししようとしている王国は敵になるかしら。そこから、狩りの女神キシアが支配するという大森林。大地の女神イシーマの神殿があるというイシーマ砂漠……。多分、シーマはこのイシーマから名前を取ったのね」

 ちょこちょこ豆知識が挟まれる。
 どこまで旅してたんだラムハ。

「アドバード海の向こうには、かつて海賊王が宝を隠したと言われる島々があるわ。そこは無数の島が連なっていて、海のフロンティアとも呼ばれているの。チャンスはあるけど危険な場所。六欲天の一柱も住んでいるわね。とりあえずの目的地は、この宝探しなんてどう?」

「宝探し! いいね!」

 次なる方針は決定だ。
 この世界には幾らでもイベントが待ち構えてそうだし、行く先々で面白いことがあるに違いない。
 ひとまずはあちこち寄り道しながら海を目指してみようか。
 最終目的は宝探し。
 それで行こう。

 かくして、戦場をかき回すだけかき回した俺たちは振り返ること無く、新たな旅路につくのだった。


 第一部:始動編  →  第二部:彷徨編



これにて第一部終了です。四日ほどお休みして第二部再開です。
しおりを挟む
感想 92

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

修学旅行に行くはずが異世界に着いた。〜三種のお買い物スキルで仲間と共に〜

長船凪
ファンタジー
修学旅行へ行く為に荷物を持って、バスの来る学校のグラウンドへ向かう途中、三人の高校生はコンビニに寄った。 コンビニから出た先は、見知らぬ場所、森の中だった。 ここから生き残る為、サバイバルと旅が始まる。 実際の所、そこは異世界だった。 勇者召喚の余波を受けて、異世界へ転移してしまった彼等は、お買い物スキルを得た。 奏が食品。コウタが金物。紗耶香が化粧品。という、三人種類の違うショップスキルを得た。 特殊なお買い物スキルを使い商品を仕入れ、料理を作り、現地の人達と交流し、商人や狩りなどをしながら、少しずつ、異世界に順応しつつ生きていく、三人の物語。 実は時間差クラス転移で、他のクラスメイトも勇者召喚により、異世界に転移していた。 主人公 高校2年     高遠 奏    呼び名 カナデっち。奏。 クラスメイトのギャル   水木 紗耶香  呼び名 サヤ。 紗耶香ちゃん。水木さん。  主人公の幼馴染      片桐 浩太   呼び名 コウタ コータ君 (なろうでも別名義で公開) タイトル微妙に変更しました。

処理中です...