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第一部:始動編
36・俺、戦争の気配を知る
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「結論から言うぞ。セブト帝国は戦争の準備をしている」
トノス王子の発言に、会議場がざわめいた。
みんなびっくりだ。
俺だってびっくりだ。
イクサすらびっくりしてる。
「私直属の間者を帝国に潜り込ませているのだが、最近帝国の動きが慌ただしくなってきているそうだ。帝国貴族の主流に属さぬ、他国との宥和派などを弾圧し、国内の不穏分子を一掃しようとしている。一つの方向にまとまった奴ら帝国が目指すのは、領土拡大だろう」
「なぜ領土拡大を目指すと?」
「フロンティアが失敗したからだ」
イーヒン辺境伯の質問に、王子はすぐに答えた。
「あの地の開拓が成っていれば、帝国とて危険で手間ひまのかかる戦争などしなかったろう。だが、開拓によってモンスタースタンピードが発生し、我が国と帝国が協力した開拓計画は頓挫した。だからこそ、奴らは侵略の尖兵として異世界の戦士たちを召喚したのだろう」
フロンティア、結構重要なポジションだったのか。
「あのー、でもさ」
俺が挙手して喋りだしたら、会議場がざわっとした。
みんな一斉に、「ちょ、おま、空気読め」という目で見てくる。
辺境伯や仲間たちはニコニコしている。
「なんだ」
トノス王子が俺を睨んだ。
「殿下。異世界戦士と袂を分かったオクノだからこそ、重要な意見が聞けるかも知れませんぞ」
イーヒンに言われて、トノスは考え直したようだ。
「それもそうか。よし、話せ」
基本ツンツンしてる奴だが、トノスは無能な王子ではないらしいな。
多分有能だぞ。
「あのさ、フロンティアはこの間俺たちが解放したのでもう安全なのだが」
一瞬、しーんと会場が静まり返る。
多分、何を言われたのかよく分かってないのではないか。
「ええとね、フロンティアのモンスタースタンピードの原因は怪物アリの女王だったわけ。そいつがモンスターを次々産み落としてたので、直接フロンティアまで行ってそいつをやっつけたんだ。街道のモンスターもかなり減ってるはずだから、開拓計画をまたやれるんじゃない?」
「そんな報告は受けていない……。が、そうか、誰もが諦めた土地だったからこそ、そこの変化に気付けなかったのか」
トノス王子が呻いた。
「あ、でもその場でうちのクラスメイトと、俺を召喚した呪法師に会ったよ。あいつらなら、多分帝国に報告してるんじゃない? そしたら戦争止まるでしょ」
「それは本当か? そしてお前を呼び出した呪法師だと……? 異世界から何かを召喚できるほどの呪法使いなど、数えるほどしかいないはずだが」
「なんか、“高みの”シーマとか呼ばれてる奴」
「呪法師シーマだと!?」
トノス王子が血相を変えた。
「それは、ユート王国が一級危険人物として手配している凶悪な呪法師だ! 邪神メイオー教団の幹部であるらしいことも発覚している……!」
「な、なんだってー!!」
俺はびっくりした。
「だって、シーマはあれだぞ。邪神メイオーと戦うために俺たちを呼び出したって……」
「そう言って帝国に取り入ったのだろう。いや、それどころか、帝国もメイオー対策など二の次で戦争のための戦力としてお前たちを呼び出したのかも知れない。全て、シーマの掌の中というわけだ」
色々話した結果、シーマは帝国にフロンティアのことを報告してないだろうという話になった。
メイオーは戦いの神なので、戦争を喜ぶんだと。
なるほどー。
戦争が起こって、それが供物になってメイオー復活が近づく。
その戦争の原因はフロンティアにモンスターが出てきたことで、強力なアリの女王がいて。
「……あれ? なんであいつら、フロンティアまで平気な顔してやって来れたんだ? 俺たちでも結構苦労したのに」
なんか、引っかかるところがあるぞ。
ちょっとまとめてみる。
戦いの神メイオーは戦争が起こると、復活が早まる。
戦争の原因は、フロンティアを開拓できなくなったこと。
フロンティアを開拓できなくなったのは、強大なアリの女王が現れたこと。
アリの女王は、クラスメイト連中やシーマを攻撃しなかったこと。
シーマはメイオー教団の幹部であること。
「おー。俺は分かってしまったかも知れない……。この戦争を引き起こしたのはシーマだな。あいつが裏で全部の糸を引いてるよ!」
俺の大胆な推理!
だが、これにはトノス王子も辺境伯も、貴族たちも真面目な顔でうなずいた。
「邪神メイオー復活……! 全てそのためのお膳立てということか。辻褄があうな」
トノス王子が立ち上がる。
「戦争は避けられまい。帝国内部深く、邪神教団が食い込んでいるのだ。ならば、この戦いのさなかに呪法師シーマを暗殺するしかない」
そして、トノス王子の視線が俺とイクサに向けられた。
「お前たちは私の臣下ではない。故に命じることはできない」
イクサは公式にはいない扱いなんだと。
いる扱いになっちゃうと、こいつを担ぎ上げて次の王座を取らせようとする者が出てくるからだとか。
内部で争ってたら、帝国に負けちゃうもんな。
「だが、この困難な任務を達成できるのは、お前たちの他にいないだろう……! 頼む」
「よし」
あっ!
イクサが速攻で引き受けた!!
「イクサお前ー! 相談しないで引き受けるなよー」
「なにっ!! オクノ、お前は引き受けないつもりだったのか!」
「いや、引き受けるつもりだったけどさあ……ほら、駆け引きってものが……」
「ならいいではないか。結果は同じだ」
なんてことだ。
俺は、後ろで会議を見学していた女子たちを振り返った。
「ということになってしまったのですが、よろしい?」
「もちろん。メイオー復活の阻止は重要だわ」
ラムハが力強く答えてくれた。
「フロンティアを滅ぼしたのはシーマなんでしょ? お姉さん、そいつは許せないから」
アミラが燃えている。
「いいよ! いこう!」
何も考えていないルリア。
「構いません。どんどん話が大きくなって来ている気がしますが、ここ一連の事件の黒幕は放っておけませんからね」
一番理性的なカリナ。
うちのパーティは満場一致で、この任務を引き受けることにしたのだった。
トノス王子の発言に、会議場がざわめいた。
みんなびっくりだ。
俺だってびっくりだ。
イクサすらびっくりしてる。
「私直属の間者を帝国に潜り込ませているのだが、最近帝国の動きが慌ただしくなってきているそうだ。帝国貴族の主流に属さぬ、他国との宥和派などを弾圧し、国内の不穏分子を一掃しようとしている。一つの方向にまとまった奴ら帝国が目指すのは、領土拡大だろう」
「なぜ領土拡大を目指すと?」
「フロンティアが失敗したからだ」
イーヒン辺境伯の質問に、王子はすぐに答えた。
「あの地の開拓が成っていれば、帝国とて危険で手間ひまのかかる戦争などしなかったろう。だが、開拓によってモンスタースタンピードが発生し、我が国と帝国が協力した開拓計画は頓挫した。だからこそ、奴らは侵略の尖兵として異世界の戦士たちを召喚したのだろう」
フロンティア、結構重要なポジションだったのか。
「あのー、でもさ」
俺が挙手して喋りだしたら、会議場がざわっとした。
みんな一斉に、「ちょ、おま、空気読め」という目で見てくる。
辺境伯や仲間たちはニコニコしている。
「なんだ」
トノス王子が俺を睨んだ。
「殿下。異世界戦士と袂を分かったオクノだからこそ、重要な意見が聞けるかも知れませんぞ」
イーヒンに言われて、トノスは考え直したようだ。
「それもそうか。よし、話せ」
基本ツンツンしてる奴だが、トノスは無能な王子ではないらしいな。
多分有能だぞ。
「あのさ、フロンティアはこの間俺たちが解放したのでもう安全なのだが」
一瞬、しーんと会場が静まり返る。
多分、何を言われたのかよく分かってないのではないか。
「ええとね、フロンティアのモンスタースタンピードの原因は怪物アリの女王だったわけ。そいつがモンスターを次々産み落としてたので、直接フロンティアまで行ってそいつをやっつけたんだ。街道のモンスターもかなり減ってるはずだから、開拓計画をまたやれるんじゃない?」
「そんな報告は受けていない……。が、そうか、誰もが諦めた土地だったからこそ、そこの変化に気付けなかったのか」
トノス王子が呻いた。
「あ、でもその場でうちのクラスメイトと、俺を召喚した呪法師に会ったよ。あいつらなら、多分帝国に報告してるんじゃない? そしたら戦争止まるでしょ」
「それは本当か? そしてお前を呼び出した呪法師だと……? 異世界から何かを召喚できるほどの呪法使いなど、数えるほどしかいないはずだが」
「なんか、“高みの”シーマとか呼ばれてる奴」
「呪法師シーマだと!?」
トノス王子が血相を変えた。
「それは、ユート王国が一級危険人物として手配している凶悪な呪法師だ! 邪神メイオー教団の幹部であるらしいことも発覚している……!」
「な、なんだってー!!」
俺はびっくりした。
「だって、シーマはあれだぞ。邪神メイオーと戦うために俺たちを呼び出したって……」
「そう言って帝国に取り入ったのだろう。いや、それどころか、帝国もメイオー対策など二の次で戦争のための戦力としてお前たちを呼び出したのかも知れない。全て、シーマの掌の中というわけだ」
色々話した結果、シーマは帝国にフロンティアのことを報告してないだろうという話になった。
メイオーは戦いの神なので、戦争を喜ぶんだと。
なるほどー。
戦争が起こって、それが供物になってメイオー復活が近づく。
その戦争の原因はフロンティアにモンスターが出てきたことで、強力なアリの女王がいて。
「……あれ? なんであいつら、フロンティアまで平気な顔してやって来れたんだ? 俺たちでも結構苦労したのに」
なんか、引っかかるところがあるぞ。
ちょっとまとめてみる。
戦いの神メイオーは戦争が起こると、復活が早まる。
戦争の原因は、フロンティアを開拓できなくなったこと。
フロンティアを開拓できなくなったのは、強大なアリの女王が現れたこと。
アリの女王は、クラスメイト連中やシーマを攻撃しなかったこと。
シーマはメイオー教団の幹部であること。
「おー。俺は分かってしまったかも知れない……。この戦争を引き起こしたのはシーマだな。あいつが裏で全部の糸を引いてるよ!」
俺の大胆な推理!
だが、これにはトノス王子も辺境伯も、貴族たちも真面目な顔でうなずいた。
「邪神メイオー復活……! 全てそのためのお膳立てということか。辻褄があうな」
トノス王子が立ち上がる。
「戦争は避けられまい。帝国内部深く、邪神教団が食い込んでいるのだ。ならば、この戦いのさなかに呪法師シーマを暗殺するしかない」
そして、トノス王子の視線が俺とイクサに向けられた。
「お前たちは私の臣下ではない。故に命じることはできない」
イクサは公式にはいない扱いなんだと。
いる扱いになっちゃうと、こいつを担ぎ上げて次の王座を取らせようとする者が出てくるからだとか。
内部で争ってたら、帝国に負けちゃうもんな。
「だが、この困難な任務を達成できるのは、お前たちの他にいないだろう……! 頼む」
「よし」
あっ!
イクサが速攻で引き受けた!!
「イクサお前ー! 相談しないで引き受けるなよー」
「なにっ!! オクノ、お前は引き受けないつもりだったのか!」
「いや、引き受けるつもりだったけどさあ……ほら、駆け引きってものが……」
「ならいいではないか。結果は同じだ」
なんてことだ。
俺は、後ろで会議を見学していた女子たちを振り返った。
「ということになってしまったのですが、よろしい?」
「もちろん。メイオー復活の阻止は重要だわ」
ラムハが力強く答えてくれた。
「フロンティアを滅ぼしたのはシーマなんでしょ? お姉さん、そいつは許せないから」
アミラが燃えている。
「いいよ! いこう!」
何も考えていないルリア。
「構いません。どんどん話が大きくなって来ている気がしますが、ここ一連の事件の黒幕は放っておけませんからね」
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