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第一部:始動編
33・俺、勉強の日々を送る
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せっかくなので、その面倒なトノス王子に会ってみようということになった。
主に俺の、「イクサが大変そうだし、ちょっといることにしようぜ」というのと、
ルリアの、「おもしろそう! こつにくのあらそい!!」というクソ不謹慎な理由からだ。
その後、ルリアはラムハに大変なお説教を食らって真っ白になっていた。
懲りない人である。
トノス王子は、今日明日に来るというわけではなく、半月くらいしないと到着しないのだとか。
六欲天が出現した跡を検分して、何か意見を言う仕事らしい。
で、俺たちもそれまでは暇なので、休養を取ることになった。
今までちょっと生き急ぎすぎていたからな……!
特に俺。
クラスメイトどもと転移してから、そこから脱走して女子たちを助け、一緒に鍛えつつ人さらいのところに行って六欲天を倒し、その足でフロンティアに行って解放し、そこから取って返して辺境伯領に来て六欲天と信頼関係を結んで名誉騎士になった。
これ、多分、一ヶ月ちょっとのできごとなのでいくら何でもイベントを詰め込みすぎだ。
よく生きてたな俺は。
「オクノ、長く滞在することにしたのかね。いいだろう。では、君には私の軍略と陣形を可能な限り教えるとしよう」
滞在の許可をもらいにいったら、辺境伯がとても張り切った。
「俺はよく分からんよそ者なんですけどいいんです?」
「君はイクサ殿下とともに歩んでくれている。彼は戦乱の中でしか生きられない男だ。彼の時代が来ることは世界の不幸だが、今のように仮初めでも平和な世の中は彼の不幸だ。そして、我が娘アリシアはそんな不器用な男を愛している」
「ははあ。確かにあいつは戦いがないとしおれますねえ」
「そう言うことだ。そして戦いに絶対はない。いつか、イクサ殿下も敗れ、死ぬかも知れん。そうなる可能性を少しでも減らせるなら、そのためにできることは何でもするのだよ。彼は私にとっての息子でもある。そして、じきに本当の息子になるだろう」
「結婚しますもんねえ。あー、俺もそういう関係になって大手を振ってエッチなことがしたい……!!」
「ははは。君の場合はなかなか難しかろうな。私が見るに、オクノ。君は運命に愛されている。多くの苦難が君を遅い、それを君は鼻歌混じりに突き抜けていくだろう。かの英雄コールのように。そんな予感がしているのだよ。さあ、そうとなれば話は早い。私の執務の空き時間にでも執務室に来たまえ。教えることは山ほどある」
「なるほど、俺だけで?」
「君の仲間の女性たちを連れてきてもいいが。殿下には少々難しいだろうね」
ふむ、と俺は唸った。
そんな難しいことを話すのか。
確かに賢さ2では厳しいもんな。
「だけど辺境伯。イクサのやつ、賢さが2から3に上がったんだけど」
俺の言葉を聞いて、辺境伯の動きがピタリと止まった。
次の瞬間、ものすごい形相でこっちを見つめてくる。
「ほ……本当かね!? 殿下の賢さが上がった……!? 生まれてからこのかた、2からずっと上がらなかったという殿下の賢さが……!!」
「1.5倍に上がった」
「何ということだ。殿下の賢さは王国のどんな学者が教えても上がらず、神に祈っても上がらなかった。呪いであるとも言われ、それが故に廃太子となったというのに……! オクノ、その話はしばらく、内密に頼む」
「……賢さが上がるとそんなにまずいの?」
「まずいなんてものではない。殿下の賢さが人並みまで上がるようになれば、充分に王としての要件を満たすのだ。殿下の弱点は賢さだけなのだ……」
「確かに、イケメンだしアホほど強いし、決断力もあるもんな」
「この事が明らかになれば、イクサ殿下の首を狙って国中から刺客が差し向けられる。あるいは、殿下を担いでトノス王子の立場をひっくり返そうというものが必ず現れる……! 王国は乱れるぞ。セブト帝国が怪しい動きをしている時に、我らがユート王国は隙を見せるわけにはいかないのだ……! それに……」
「ああ。邪神メイオーも復活するもんな。イクサは強いので、俺も仲間にしておきたいです」
「うむ……。ということで秘密にしておいて欲しい」
「分かった……。思わず声に出して突っ込むところだったが、あの賢さアップは一国を揺るがす賢さアップだったんだな……」
ステータス表記、恐るべし。
というわけで、俺はトノス王子到着までの期間を勉強して過ごすことにした。
五割が座学、五割が実践である。
陣形を学び、必要かどうかわからないけど軍略を学び、兵法を学んだ。
「これ、一体何の意味が?」
「君もいつか、一軍を指揮することになるかも知れないだろう? 君や殿下ほどの力があれば、いつか一人で戦況を変えられるようになるかも知れない。だが、個人の手では守りきれず、こぼれ落ちる命はある。それを一人でも多く救うために軍略と兵法を学んでおいて損はないぞ」
「なるほど」
なんのための勉強だ、ときちんと伝えてくれるのはありがたいな。
モチベーションが違うぞ!
そして陣形も学ぶ。
この間は、五人タイプの陣形を学んだ。
どうやらこれは、一番難易度が高いものだったらしい。
「その分、効果は極めて高い。最高位の呪法にも匹敵すると言われているくらいだ。六欲天を相手にするにはこれくらいせねばいけなかったのだよ。ああ、ステータスにはそれらの陣形しか無かっただろう? 実は、陣形は本来、使用するために入れ替えて使っていく。個人が記憶しておける陣形の数には四つまでという限りがあってね。もっとも、君はその限界が関係ないようだが」
「あ、でも最近、ステータスが伸びに伸びてて大変になって来てたので。その入れ替えの方法を教えてもらうとありがたいなーって」
「うむ、では、これはステータスのカテゴライズというものでだな。君ほどではないが、私のようにステータス表記が多くなってしまったものが適用するといい、一種の呪法だ。見てみたまえ」
辺境伯のステータスが展開される。
名前:イーヒン
レベル:55
職業:辺境伯
力 :142
身の守り:97
素早さ :125
賢さ :88
運の良さ:65
HP475
MP288
剣55レベル
光の呪法15レベル
☆剣
・飛翔斬・真空斬・裂空斬・竜破斬
・円月斬・十六夜
★呪法
・レイ・ブライトネス・ブライトヒール
・レイウォール
☆呪法剣
・シャイニングスラッシュ・流星剣・彗星剣
★陣形・陣形技 →
・青龍陣/ドラゴンファング
・白虎陣/タイガークロウ
・朱雀陣/フェニックスドライブ
・玄武陣/タートルクラッシュ
「この矢印に注目してくれたまえ」
「ふむふむ」
「これを、こう」
★陣形・陣形技 ←・→
・ライフシールド/なし
・クローズデルタ/デルタアタック
・オープンデルタ/デルタアタック
「あっ!! 陣形欄が横にスライドした!!」
「そう。これで技や陣形を使用する際の混乱を防げる。ちなみにここは、二人用と三人用の陣形だ」
奥深いな、陣形。そしてステータス。
俺はすっかり感心してしまった。
では、俺も武器ごとにステータスのカテゴライズをしておこうか……。
というように、日々新しい発見ばかり。
あっという間に毎日が過ぎる。
ラムハは砦の呪法使いたちと交友を深め、新しい呪法を身に着けたようだ。
アミラはやたらと俺の世話を焼きたがる。彼女の誘惑から逃れるために、自制心を働かせ続けるのはなかなかの苦行である。
カリナは騎士たちから可愛がられ、弓の他、短剣での組み討ちなども習っているらしい。
そしてルリア。
こいつが一番変化に富んだ暮らしを送っていた。
「とりゃー! スウィングー!」
「ウグワー!」
「ウグワー!」
「ウグワー!」
三人まとめて、騎士が麻痺して転がる。
「やったー!」
ぴょんぴょん跳ねながら、無邪気に喜ぶルリア。
「ルリアちゃんは才能がある」
「槍の技が凄い」
「無理なはずのところから技が来る」
騎士たちからの評判が高い……!
そう、ルリアは槍使いとして、辺境伯領の騎士たちを相手取り目覚ましい成長を遂げていたのだ……!
主に俺の、「イクサが大変そうだし、ちょっといることにしようぜ」というのと、
ルリアの、「おもしろそう! こつにくのあらそい!!」というクソ不謹慎な理由からだ。
その後、ルリアはラムハに大変なお説教を食らって真っ白になっていた。
懲りない人である。
トノス王子は、今日明日に来るというわけではなく、半月くらいしないと到着しないのだとか。
六欲天が出現した跡を検分して、何か意見を言う仕事らしい。
で、俺たちもそれまでは暇なので、休養を取ることになった。
今までちょっと生き急ぎすぎていたからな……!
特に俺。
クラスメイトどもと転移してから、そこから脱走して女子たちを助け、一緒に鍛えつつ人さらいのところに行って六欲天を倒し、その足でフロンティアに行って解放し、そこから取って返して辺境伯領に来て六欲天と信頼関係を結んで名誉騎士になった。
これ、多分、一ヶ月ちょっとのできごとなのでいくら何でもイベントを詰め込みすぎだ。
よく生きてたな俺は。
「オクノ、長く滞在することにしたのかね。いいだろう。では、君には私の軍略と陣形を可能な限り教えるとしよう」
滞在の許可をもらいにいったら、辺境伯がとても張り切った。
「俺はよく分からんよそ者なんですけどいいんです?」
「君はイクサ殿下とともに歩んでくれている。彼は戦乱の中でしか生きられない男だ。彼の時代が来ることは世界の不幸だが、今のように仮初めでも平和な世の中は彼の不幸だ。そして、我が娘アリシアはそんな不器用な男を愛している」
「ははあ。確かにあいつは戦いがないとしおれますねえ」
「そう言うことだ。そして戦いに絶対はない。いつか、イクサ殿下も敗れ、死ぬかも知れん。そうなる可能性を少しでも減らせるなら、そのためにできることは何でもするのだよ。彼は私にとっての息子でもある。そして、じきに本当の息子になるだろう」
「結婚しますもんねえ。あー、俺もそういう関係になって大手を振ってエッチなことがしたい……!!」
「ははは。君の場合はなかなか難しかろうな。私が見るに、オクノ。君は運命に愛されている。多くの苦難が君を遅い、それを君は鼻歌混じりに突き抜けていくだろう。かの英雄コールのように。そんな予感がしているのだよ。さあ、そうとなれば話は早い。私の執務の空き時間にでも執務室に来たまえ。教えることは山ほどある」
「なるほど、俺だけで?」
「君の仲間の女性たちを連れてきてもいいが。殿下には少々難しいだろうね」
ふむ、と俺は唸った。
そんな難しいことを話すのか。
確かに賢さ2では厳しいもんな。
「だけど辺境伯。イクサのやつ、賢さが2から3に上がったんだけど」
俺の言葉を聞いて、辺境伯の動きがピタリと止まった。
次の瞬間、ものすごい形相でこっちを見つめてくる。
「ほ……本当かね!? 殿下の賢さが上がった……!? 生まれてからこのかた、2からずっと上がらなかったという殿下の賢さが……!!」
「1.5倍に上がった」
「何ということだ。殿下の賢さは王国のどんな学者が教えても上がらず、神に祈っても上がらなかった。呪いであるとも言われ、それが故に廃太子となったというのに……! オクノ、その話はしばらく、内密に頼む」
「……賢さが上がるとそんなにまずいの?」
「まずいなんてものではない。殿下の賢さが人並みまで上がるようになれば、充分に王としての要件を満たすのだ。殿下の弱点は賢さだけなのだ……」
「確かに、イケメンだしアホほど強いし、決断力もあるもんな」
「この事が明らかになれば、イクサ殿下の首を狙って国中から刺客が差し向けられる。あるいは、殿下を担いでトノス王子の立場をひっくり返そうというものが必ず現れる……! 王国は乱れるぞ。セブト帝国が怪しい動きをしている時に、我らがユート王国は隙を見せるわけにはいかないのだ……! それに……」
「ああ。邪神メイオーも復活するもんな。イクサは強いので、俺も仲間にしておきたいです」
「うむ……。ということで秘密にしておいて欲しい」
「分かった……。思わず声に出して突っ込むところだったが、あの賢さアップは一国を揺るがす賢さアップだったんだな……」
ステータス表記、恐るべし。
というわけで、俺はトノス王子到着までの期間を勉強して過ごすことにした。
五割が座学、五割が実践である。
陣形を学び、必要かどうかわからないけど軍略を学び、兵法を学んだ。
「これ、一体何の意味が?」
「君もいつか、一軍を指揮することになるかも知れないだろう? 君や殿下ほどの力があれば、いつか一人で戦況を変えられるようになるかも知れない。だが、個人の手では守りきれず、こぼれ落ちる命はある。それを一人でも多く救うために軍略と兵法を学んでおいて損はないぞ」
「なるほど」
なんのための勉強だ、ときちんと伝えてくれるのはありがたいな。
モチベーションが違うぞ!
そして陣形も学ぶ。
この間は、五人タイプの陣形を学んだ。
どうやらこれは、一番難易度が高いものだったらしい。
「その分、効果は極めて高い。最高位の呪法にも匹敵すると言われているくらいだ。六欲天を相手にするにはこれくらいせねばいけなかったのだよ。ああ、ステータスにはそれらの陣形しか無かっただろう? 実は、陣形は本来、使用するために入れ替えて使っていく。個人が記憶しておける陣形の数には四つまでという限りがあってね。もっとも、君はその限界が関係ないようだが」
「あ、でも最近、ステータスが伸びに伸びてて大変になって来てたので。その入れ替えの方法を教えてもらうとありがたいなーって」
「うむ、では、これはステータスのカテゴライズというものでだな。君ほどではないが、私のようにステータス表記が多くなってしまったものが適用するといい、一種の呪法だ。見てみたまえ」
辺境伯のステータスが展開される。
名前:イーヒン
レベル:55
職業:辺境伯
力 :142
身の守り:97
素早さ :125
賢さ :88
運の良さ:65
HP475
MP288
剣55レベル
光の呪法15レベル
☆剣
・飛翔斬・真空斬・裂空斬・竜破斬
・円月斬・十六夜
★呪法
・レイ・ブライトネス・ブライトヒール
・レイウォール
☆呪法剣
・シャイニングスラッシュ・流星剣・彗星剣
★陣形・陣形技 →
・青龍陣/ドラゴンファング
・白虎陣/タイガークロウ
・朱雀陣/フェニックスドライブ
・玄武陣/タートルクラッシュ
「この矢印に注目してくれたまえ」
「ふむふむ」
「これを、こう」
★陣形・陣形技 ←・→
・ライフシールド/なし
・クローズデルタ/デルタアタック
・オープンデルタ/デルタアタック
「あっ!! 陣形欄が横にスライドした!!」
「そう。これで技や陣形を使用する際の混乱を防げる。ちなみにここは、二人用と三人用の陣形だ」
奥深いな、陣形。そしてステータス。
俺はすっかり感心してしまった。
では、俺も武器ごとにステータスのカテゴライズをしておこうか……。
というように、日々新しい発見ばかり。
あっという間に毎日が過ぎる。
ラムハは砦の呪法使いたちと交友を深め、新しい呪法を身に着けたようだ。
アミラはやたらと俺の世話を焼きたがる。彼女の誘惑から逃れるために、自制心を働かせ続けるのはなかなかの苦行である。
カリナは騎士たちから可愛がられ、弓の他、短剣での組み討ちなども習っているらしい。
そしてルリア。
こいつが一番変化に富んだ暮らしを送っていた。
「とりゃー! スウィングー!」
「ウグワー!」
「ウグワー!」
「ウグワー!」
三人まとめて、騎士が麻痺して転がる。
「やったー!」
ぴょんぴょん跳ねながら、無邪気に喜ぶルリア。
「ルリアちゃんは才能がある」
「槍の技が凄い」
「無理なはずのところから技が来る」
騎士たちからの評判が高い……!
そう、ルリアは槍使いとして、辺境伯領の騎士たちを相手取り目覚ましい成長を遂げていたのだ……!
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