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第一部:始動編
28・俺、辺境伯領の会議を見学する
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イーヒン辺境伯がいろいろ教えてくれるのは、会議の後ということになった。
俺たちは客分という扱いで、会議の見学を許されるそうだ。
せっかくなので見ていこうではないか。
「それにしても……どうしてオクノを信じたのかしら」
会議を待つ俺たちの中で、ラムハがそんな疑問を口にした。
「いくら何でも、突然やってきた素性も分からない人間を信頼しすぎじゃない?」
「それもそうだ」
俺は大いに納得する。
だって俺自身、俺が目の前にやってきて「あなたの仲間を守ったすごいやつでござる」なんて言われても絶対信用しないもんな。
「簡単なことだ」
辺境伯がこれを聞いていたようで、説明してくれた。
「殿下が良からぬ輩に騙され、尖兵にされてしまっているなら、自然とその目の輝きで分かる。それは自分のものではない考えを吹き込まれてしまった証だからだ。だが、今、殿下の曇りなき目の輝きを見て、私はお前が信頼に足る人物だと判断したまでだ。殿下は殿下のままで帰ってきた。それをよしとする者が、悪人であるわけがない」
けっして善人とは言ってないあたりがミソだが、いちおう信じてくれたみたいだ。
なるほどなあ、人を見る目に自信があるんだな。
すごい人物だ。
どこかのジョイップ伯爵とは大違いだな!
「俺のことを話題にされると、少々気恥ずかしいな。やめてくれ」
イクサが恥ずかしがったので、話題はここで終了なのだ。
しばらくすると、辺境伯領の外から騎士爵たちがやって来た。
騎士ばかりでなく、近隣の男爵とかもいるらしい。
「ずいぶん早い到着だなあ」
俺が感想を言うと、辺境伯が説明してくれた。
「貴君らが、会議が行われる日に偶然訪れただけのことだよ。さあ、始まるぞ。今後の辺境についてを決する重要な会議だ」
やって来た貴族たちは、辺境伯にイクサを紹介されると、皆一様に驚いた。
腐っても、廃嫡されても第一王子。
この中の誰かがイクサを旗頭にして、新しい国の建国を宣言したっていいのだ。
ちなみに、そういう立場なので、イクサは何度も暗殺されかけたそうだ。
だが辺境伯から剣を学び、しかもめちゃくちゃな才能があったイクサは、自らの手で暗殺者を全部撃破したんだとか。
で、ここにいては辺境伯領の人々に迷惑がかかるから諸国漫遊の旅に出たと。
主人公みたいなやつだな!
そして辺境を守る貴族たちが揃い、会議が始まった。
議題は、辺境に現れて森や作物を食い荒らす六欲天について。
すでに、そいつが六欲天であることは確定してるみたいだった。
巨大なダンゴムシのような姿をした、貪欲なる六欲天、ダグダムド。
やっぱり、邪神メイオーを裏切り、英雄コールとともに戦ったやつなんだが、六欲天は基本的にでかいモンスターなので性質が邪悪らしい。
「これまで活動していなかったダグダムドが動き出したのは、どういうことだ?」
「被害が増えると、余計な仕事が発生する。予算を考えてもどうにかあれをよそへ追いやる他ない」
「餌で釣って領外へ出すか?」
「いっそ帝国に押し付けては」
そんな話題が盛り上がった。
実にせこい。
予算とか言ってる。
「ダグダムドは大きな被害をもたらすモンスターだ。もはや看過してはおれんだろう。我々で討伐隊を結成し、戦うべきだと考える」
辺境伯が意見をした。
すると、他の貴族たちは一様にため息をつく。
「お言葉ですが辺境伯。六欲天とことを構えるなど、この百年以上の間なかったことですよ。どれだけの被害が出るとお思いか」
「予算とて限られているのです。領民から税を絞りすぎても、彼らが干上がってしまう。国からも規定額以上の金は出ない」
「戦うのは現実的ではありませんよ。今は、英雄コールの時代とは違うのです。それに六欲天は、巨大な害獣のようなものでしょう」
「うーむ」
袋叩きになった辺境伯は、不満げな顔をして押し黙った。
青筋が浮かんでる。
キレそう。
で、ここでイクサが口を開いた。
「六欲天は、邪神メイオーの復活を感知して動き出したんだ。力をつけるために森を食い、人を食い、メイオーに備えている。だが、食われる側は堪ったものじゃない」
イクサの意見に、貴族たちが驚く。
一人が汗を拭きながら意見を返した。
「それは六欲天に確認したわけではないでしょう、殿下。もしかしたら、ただの害獣かもしれない。しかし、あの害獣は人間に倒せるような代物ではないのですよ。我々は被害が最小限になるようにやり過ごすしか」
ここで選択肢が俺の目の前に出現した。
1・そのとおりだ。陽動作戦を買って出て、六欲天を国外に追い出す手伝いをしよう。
2・六欲天を人の手で倒す!? 「できらあ!」
「六欲天を人の手で倒す? できらあ!!」
俺は発言した。
「えっ」
貴族たちがかなりびっくりする。
俺が発言するとは思ってなかったんだろう。
「お、お前は何者だ! そういえばさっきからずーっと議場の隅っこにいたが」
「多摩川奥野です」
「部外者が口を出すな……」
「このオクノは、六欲天ウーボイドを倒した男だ」
イクサが補足したら、貴族たちは一斉に静まり返った。
「……え? なんて?」
「オクノが六欲天を倒した。この俺も手を貸したし、女たちも一緒だった。六欲天は倒すことができる」
イクサの言葉で、再びシーンとなる議場。
「で、でも」
「ほんとか嘘か分からないしー」
まだ女々しいこと言ってるぞ!!
さすがの俺も呆れてしまった。
これは辺境伯も同じだったらしい。
いや、むしろ……。
「もういい!! 腰抜けの名ばかり騎士に貴族どもめが!! へそ噛んで死ね!! 私は貴君らが小さく縮こまって領地の隅っこでお祈りしながら六欲天が去るのを待っている間に、この手でかの敵を討つ!!」
「おー! じゃあ俺もやるー!」
俺が宣言すると、辺境伯が議場の椅子を蹴り飛ばして駆け寄ってきた。
硬い握手を交わす俺たち。
「頼りにしているぞ、オクノ殿!!」
「イーヒン辺境伯。オクノには期待していいぞ」
横からイクサがフォローを入れてくれる。
……ということで。
辺境伯領にて、六欲天退治が次なる俺たちのやるべきことになったのだ。
俺たちは客分という扱いで、会議の見学を許されるそうだ。
せっかくなので見ていこうではないか。
「それにしても……どうしてオクノを信じたのかしら」
会議を待つ俺たちの中で、ラムハがそんな疑問を口にした。
「いくら何でも、突然やってきた素性も分からない人間を信頼しすぎじゃない?」
「それもそうだ」
俺は大いに納得する。
だって俺自身、俺が目の前にやってきて「あなたの仲間を守ったすごいやつでござる」なんて言われても絶対信用しないもんな。
「簡単なことだ」
辺境伯がこれを聞いていたようで、説明してくれた。
「殿下が良からぬ輩に騙され、尖兵にされてしまっているなら、自然とその目の輝きで分かる。それは自分のものではない考えを吹き込まれてしまった証だからだ。だが、今、殿下の曇りなき目の輝きを見て、私はお前が信頼に足る人物だと判断したまでだ。殿下は殿下のままで帰ってきた。それをよしとする者が、悪人であるわけがない」
けっして善人とは言ってないあたりがミソだが、いちおう信じてくれたみたいだ。
なるほどなあ、人を見る目に自信があるんだな。
すごい人物だ。
どこかのジョイップ伯爵とは大違いだな!
「俺のことを話題にされると、少々気恥ずかしいな。やめてくれ」
イクサが恥ずかしがったので、話題はここで終了なのだ。
しばらくすると、辺境伯領の外から騎士爵たちがやって来た。
騎士ばかりでなく、近隣の男爵とかもいるらしい。
「ずいぶん早い到着だなあ」
俺が感想を言うと、辺境伯が説明してくれた。
「貴君らが、会議が行われる日に偶然訪れただけのことだよ。さあ、始まるぞ。今後の辺境についてを決する重要な会議だ」
やって来た貴族たちは、辺境伯にイクサを紹介されると、皆一様に驚いた。
腐っても、廃嫡されても第一王子。
この中の誰かがイクサを旗頭にして、新しい国の建国を宣言したっていいのだ。
ちなみに、そういう立場なので、イクサは何度も暗殺されかけたそうだ。
だが辺境伯から剣を学び、しかもめちゃくちゃな才能があったイクサは、自らの手で暗殺者を全部撃破したんだとか。
で、ここにいては辺境伯領の人々に迷惑がかかるから諸国漫遊の旅に出たと。
主人公みたいなやつだな!
そして辺境を守る貴族たちが揃い、会議が始まった。
議題は、辺境に現れて森や作物を食い荒らす六欲天について。
すでに、そいつが六欲天であることは確定してるみたいだった。
巨大なダンゴムシのような姿をした、貪欲なる六欲天、ダグダムド。
やっぱり、邪神メイオーを裏切り、英雄コールとともに戦ったやつなんだが、六欲天は基本的にでかいモンスターなので性質が邪悪らしい。
「これまで活動していなかったダグダムドが動き出したのは、どういうことだ?」
「被害が増えると、余計な仕事が発生する。予算を考えてもどうにかあれをよそへ追いやる他ない」
「餌で釣って領外へ出すか?」
「いっそ帝国に押し付けては」
そんな話題が盛り上がった。
実にせこい。
予算とか言ってる。
「ダグダムドは大きな被害をもたらすモンスターだ。もはや看過してはおれんだろう。我々で討伐隊を結成し、戦うべきだと考える」
辺境伯が意見をした。
すると、他の貴族たちは一様にため息をつく。
「お言葉ですが辺境伯。六欲天とことを構えるなど、この百年以上の間なかったことですよ。どれだけの被害が出るとお思いか」
「予算とて限られているのです。領民から税を絞りすぎても、彼らが干上がってしまう。国からも規定額以上の金は出ない」
「戦うのは現実的ではありませんよ。今は、英雄コールの時代とは違うのです。それに六欲天は、巨大な害獣のようなものでしょう」
「うーむ」
袋叩きになった辺境伯は、不満げな顔をして押し黙った。
青筋が浮かんでる。
キレそう。
で、ここでイクサが口を開いた。
「六欲天は、邪神メイオーの復活を感知して動き出したんだ。力をつけるために森を食い、人を食い、メイオーに備えている。だが、食われる側は堪ったものじゃない」
イクサの意見に、貴族たちが驚く。
一人が汗を拭きながら意見を返した。
「それは六欲天に確認したわけではないでしょう、殿下。もしかしたら、ただの害獣かもしれない。しかし、あの害獣は人間に倒せるような代物ではないのですよ。我々は被害が最小限になるようにやり過ごすしか」
ここで選択肢が俺の目の前に出現した。
1・そのとおりだ。陽動作戦を買って出て、六欲天を国外に追い出す手伝いをしよう。
2・六欲天を人の手で倒す!? 「できらあ!」
「六欲天を人の手で倒す? できらあ!!」
俺は発言した。
「えっ」
貴族たちがかなりびっくりする。
俺が発言するとは思ってなかったんだろう。
「お、お前は何者だ! そういえばさっきからずーっと議場の隅っこにいたが」
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「このオクノは、六欲天ウーボイドを倒した男だ」
イクサが補足したら、貴族たちは一斉に静まり返った。
「……え? なんて?」
「オクノが六欲天を倒した。この俺も手を貸したし、女たちも一緒だった。六欲天は倒すことができる」
イクサの言葉で、再びシーンとなる議場。
「で、でも」
「ほんとか嘘か分からないしー」
まだ女々しいこと言ってるぞ!!
さすがの俺も呆れてしまった。
これは辺境伯も同じだったらしい。
いや、むしろ……。
「もういい!! 腰抜けの名ばかり騎士に貴族どもめが!! へそ噛んで死ね!! 私は貴君らが小さく縮こまって領地の隅っこでお祈りしながら六欲天が去るのを待っている間に、この手でかの敵を討つ!!」
「おー! じゃあ俺もやるー!」
俺が宣言すると、辺境伯が議場の椅子を蹴り飛ばして駆け寄ってきた。
硬い握手を交わす俺たち。
「頼りにしているぞ、オクノ殿!!」
「イーヒン辺境伯。オクノには期待していいぞ」
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