ピコーン!と技を閃く無双の旅!〜クラス転移したけど、システム的に俺だけハブられてます〜

あけちともあき

文字の大きさ
上 下
15 / 181
第一部:始動編

15・俺、ダンジョンをショートカットする

しおりを挟む
「潜ってみたらなんか地下室って感じなのな」

 俺は率先して、地下への道を歩いていた。
 すぐ後ろには、アミラがランタンを掲げながらついてくる。
 このパーティの中で、唯一手がふさがっていても問題ないメンバーだったからだ。

「イクサくんが加わるなら、お姉さんは回復魔法担当になるわね」

 イクサをもくん付けである。
 というか、アミラ、イクサよりも年下だよな?

「俺の両手が空くならばどうでもいい。許さんぞ、悪逆なる伯爵め。貴様こそが反逆者だ……!」

「こいつはこいつで、怒りに燃えてて話を聞いていない」

 俺と並んで、どんどん先へと急いでいくイクサである。 
 だが、明かりが届かないところまでやって来ると、立ち止まってアミラの到着を待つ。

「暗いと本気を出して戦えんからな」

「慎重なやつめ」

「俺は常に本気を出さねばならんのだ……!」

「その辺りは俺も同意だ。この先、何があるか分からんし、後ろにいる女子たちを死なせるのは夢見が悪いからな」

「ほう、貴様にも守るものがあるのか。そういう男は信用できる」

「なんだとぉ……」

 俺、男にそういうこと言われたの初めてだぞぉ……。
 何せ、ずっと変なやつだということでハブられて来たからな。

 ……そうか!
 イクサも変人だから、変人同士分かりあえるのか!

「イクサ、マイ・フレンド……!」

「なにっ」

 イクサが身構えたところで、アミラが到着した。

「さあさ、早く行きましょ、二人とも!」

 急かされ、先を急ぐ俺たちなのだった。




 さて、地下室とは言ったが、正確には地下迷宮かも知れない。
 二人並んでも余裕があるくらいの広さで、足元は四方は石で囲まれている。
 そして、進むほどに罠がある。


「オクノさん! 吊り天井です!! 降ってきます!」

「上昇ドロップキック!」

 空に向かって蹴り上げた俺は、落ちてくる天井を蹴り割った。
 罠の発動は、どうやらカリナが感知できるようだ。

「イクサさん! 今何か踏みました! 横合いに注意を! 槍衾です!!」

「ええと」

「イクサ、円月斬……えんげつざん、な」

「円月斬!!」

 イクサの斬撃が縦の円を描いた。
 突き出された槍衾がまとめて斬り飛ばされ、床に落ちる。

「そう、そうだ! この技だ。円月斬!」

「見たところ、カウンター技だな。対空、対突進性能が高そうだ。今後はそれ連発で、罠は発動させて踏み潰す方向で!」

「おう! 技を思い出させてくれて感謝するぞ、オクノ!」

 ということで。

「毒ガスです!!」

「円月斬!」

「スライムが降ってきます!」

「円月斬!」

「落とし穴です!」

「えんげつざ……」

「それじゃ無理だろフライングクロスチョーップ!!」

 イクサを弾き飛ばしながら回避する俺。
 基本はイクサの円月斬で罠を撃破する。
 円月斬で対応できないものは、俺が力づくで突破する。

 これでおおよそ、十を数える罠を突破した。

「完全に全ての罠を発動させて正面突破したわね……」

 ラムハが呆れている。
 それに対して、カリナが応じる。

「罠は私が全部分かるようです。この地下通路の中は単調な光景ですから、変化があるとすぐに察知できます。ただ、わたしは専門ではないので解除ができないから……」

「今みたいな、強引な突破しかないというわけね」

 納得するラムハ。
 ちなみに、後衛に対して発動する罠もあった。
 だが、こんなこともあろうかと後ろにはルリアを置いてあるのだ。

「ひゃーっ、転んだら頭の上に槍が突き出したよー!」

 とか、

「あれ? 今まで来た道が落とし穴になってる? あはは、なんとなく速歩きしてなかったら落ちてたー」

 とか。
 運の良さ炸裂!
 前衛に置いておいて万一死なれたら寝覚めが悪いが、後衛で俺たちが取りこぼした罠なら運の良さでいけるだろう。
 たぶん。

 罠を突破した先は、地下通路ではなくなっていた。
 そこは、自然の洞窟だ。
 伯爵の屋敷の下には、天然の迷宮が広がっていたのだなあ。


「気をつけて。ここからはモンスターの気配がする」

 カリナが弓を構えた。
 ラムハも黒曜石の杖を携え、いつでも呪法を使える体勢だ。

「二人とも、先行をお願い。ここからは罠は仕掛けられていないと思うのだけれど……」

 真剣そのものなラムハの言葉を聴きながら、俺は考えた。
 そもそも、あんな罠だらけの通路、伯爵はどうやって通過した?

 何か通過できるための手段があるというならば分かるんだけど、あれって通路全体に効果を及ぼすような罠ばかりだったし……。
 伯爵、よほど運動神経が良くなければこんな通路使えないだろ。

「イクサ、威力が一番でかい技はどれ?」

「うむ、読めない技の中に、どれか強力な一撃を浴びせるものがあった……気がする」

「よーし、じゃあ、イチバチかだ。連携で壁をぶち抜くぞ!」

 俺はイクサに合図をした。

「その技はな、十六夜……いざよいって読むんだ」

「よし……!! 行くぞ、十六夜いざよい!!」

 イクサが剣を振りかぶる。
 そして過剰とも言えるほどの力を込めて、振り下ろす。
 衝撃波が巻き起こった。

 イクサの斬撃が壁に突き刺さる。
 そして、剣が伴った衝撃波が壁を粉砕する。
 そこに、光る線が俺に向かって繋がる。

「連携で行くぞぉ! おらあっ、ドロップキックッ!!」

 対面の壁を蹴り、勢いをつけてからのステップ。
 壁面寸前でジャンプした俺は、両足の裏を崩壊しかけた壁目掛けて叩き込む。

 連携は、勇者の力を持った豊田の盾をもぶち抜いた。
 俺の予想が正しければ……。

 まるで、壁に一切の強度がないかのように、そこは粉々になった。
 俺のドロップキックが突き抜けて、壁の向こうへ到達する。

 やっぱりだ。
 連携は、相手の防御力を無視してダメージを与えることができるんだ。

「通路がある!!」

 ルリアが叫んだ。
 彼女が指差す先には、確かに下っていく通路がある。
 階段になっているから、明らかに人工的に作られているな。

「伯爵はこいつを使ったな? よーし、ここから俺たちはショートカットに入るぞ!」

 俺は宣言した。
 洞窟の中を、モンスターと戦いながら伯爵を追っていたのでは逃げられてしまうかも知れない。
 だが、この道を使えれば、伯爵を追うことだけに集中できる。

「ええ、もちろん賛成。隊列はどうするの?」

 ラムハからの質問。

「一応同じで。罠があるかも知れないし、何より俺とイクサのツートップなら、何が来ても大体対応できる」

「分かったわ。じゃあ、ルリアは今まで通りのしんがりね」

「ええーっ! あたしまた最後なのー!?」

 ルリアがぶうぶう不満を述べたが、この状況で前に出す気は無いぞ!
 イクサと全然レベル違うんだから。

「決まったか」

 イクサはすでに、ショートカットを駆け抜けていく体勢だ。
 この道は、今までの地下通路とは違う。
 魔法の明かりなのか、ぼんやりと通路全体が明るくなっているのだ。

「よし、行っていいぞ!」

「では行く」

 宣言と同時に、イクサが駆け出した。
 猛烈な速度だ。
 あいつ、さっき初めて会ったときも屋内の梁を跳び回って俺と戦ってたからな。めちゃめちゃ身軽なんだろう。

「じゃあみんな、足を踏み外さないくらいのペースでついてきてくれ! 俺も行くので!」

 というわけで、俺もイクサを追って突っ走るのだ。
 ジョイップ伯爵、待ってろよ!
しおりを挟む
感想 92

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

処理中です...