ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。

あけちともあき

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私の最終決戦?編

第487話 始まったな……!伝説

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 一曲目はもちろんデビュー曲『きら星!』。
 飛び出した私とベルっちが歌い出すと、会場ですごい数のペンライトが揺れてる。

 楽しんでいって下さいねえ。
 いやあ、ここから見ると一つ一つが人間と言うより、VR空間のガヤにも見えてきてそこまで緊張しないですねえ……。


 ※


 きら星はづきの単独コンサートを同時視聴しながら、ダンジョンを攻略していた某国の配信者。
 数々の配信者を返り討ちにしてきた強力なダンジョンに挑んでいたのだが……。

 一曲目のきら星!が流れた瞬間、周辺に存在していたモンスタが『ウグワーッ!?』と叫んで同心円状に消滅していく。
 消滅はダンジョンにまで及び、難関ダンジョンはあっという間に半壊。

 ボスデーモンは著しく弱体化しており、その配信者に簡単に討ち取られている。

『馬鹿な……! この、この歌声は……! まるで、我ら魔王様に与する存在だけを滅ぼす恐るべき魔法の……!! ウグワーッ!!』

 この配信者は優しかったので、言葉の途中では攻撃しなかった。


 ※


 世界各地で、同時視聴での攻略は行われていた。
 きら星はづきがこういう視聴スタイルを推奨していたからだ。

 だから、同接数稼ぎも兼ねて、同時視聴しながらのダンジョン配信をしていた者は多い。
 その全てが、単独コンサート同時視聴が放ったとんでもないパワーを実感した。

 彼らの同接数では到底敵わないようなダンジョンが、あっという間に崩壊していく。
 強大なモンスターが悲鳴を上げながら逃げ惑い、消滅し、ボスデーモンに至っては泡沫配信者に倒されるほどまで弱体化する。

 これは桁違いの力を持った、ダンジョン特攻のデバフだった。
 コンサートとともに行われたダンジョン攻略は、その全てが一曲目の終わる前に終了している。

 これによって、全世界で数千というダンジョンが一挙に消滅。
 業界関係者に衝撃を与えた。


 ※


『マロン様、一大事ですぞ……!! いや、緊急事態です!!』

『見てる。見てるよジーヤ。いやあ、あの娘やったねえ……やってくれたねえ……! なるほどねえ』

『己が受けた同接数による信仰の力を、同時視聴を通して各配信者に流し込む……! なるほど、生半なダンジョンでは抗えぬはずです! これによって、我らが発生させたダンジョンの七割が壊滅致しました! たった……たった四分半でです!』

『ジーヤ、これ、ほっとくとうちらの眷属が全滅するわ。やっばい。本気で仕掛けてきた。まさか向こうからこんだけのことやってくるなんてねー。初めてだわー』

 魔王マロングラーセが立ち上がる。
 手にしていたスマホを握りつぶした。

 流れていた、コンサートの音楽が途切れる。

『もともとお邪魔して、観客ちゃんたちの恐怖を喰らおうと思ってたけど……もちょっとシリアスな感じで行かないといけないねこりゃ。流石に笑えねー。叩き潰すわ』

 マロングラーセの顔から笑みが消える。
 彼女の足元で、影が変貌していった。

 少女のシルエットから、もっとおぞましい名状しがたきシルエットへ……。

『ジーヤは配信者どもを片付けといて、まだ六人の復活間に合わないっしょ? あたしが貸しといてやっから。ほら』

『おお、力がみなぎりますぞ! このジーヤ、マロン様のお力を得た新たな完全体として人間どもを駆逐してご覧に入れましょうぞー!!』

 空間に穴が開き、二柱の強大な魔神はそこに身を投じた。
 向かうは日本、東京湾。

 果たして、マロン・グラーセは特設コンサート会場に到着し……。

『なっ!? ひ、引っ張られる……!!』

 ジーヤは謎の力によって、彼らが移動していた異空間から引きずり出された。
 そこはすっかり人気のなくなった、国際展示場付近。

 着地したジーヤは、周囲に立つ多くの人影に気付いた。

『配信者どもか……! 何をした……!!』

「これはねー、スパイスの魔法と、仙人さんたちの力を得てねー。ちょっと失敗するように運をいじった感じ!」

 コケティッシュな印象の少女がそう告げると、周りの配信者たちが戦闘態勢に入った。

「私達は勇者パーティとサポートメンバー! ここで止めるよ、大魔将ジーヤ!」

『はっ! 貴様ら雑魚が、完全体となったわしを止めるなど片腹痛……むむっ! き、聞こえてくる! あの女の歌声が!』

「そういうこと。癪だけど、今のタリサたちはとっても強いんだから」

「準備だゼルガー。僕らの力を示すときだぞ」

「無論!」

「シェリーの眷属も強化されてるみたい? はづきったらほんと便利ねー」

「そんじゃあサポートの皆さんもいってみよー!」

 一斉攻撃!
 これをジーヤは周囲に赤いバリアのような力場を展開して防ぐ。

『舐めるな、人族風情が! このわしは、マロン様に数千年付き従った大魔将ぞ!! さあ、報いを受けよ!!』

 ジーヤがお返しとばかりに放つ、赤い稲妻。
 それは周囲に降り注ぎ、不遜な配信者たちを打ち据える……はずだった。

 だが!
 稲妻が引き寄せられるように、全て一人の全身タイツの男に直撃する!

「アーウチ!」

 男はピューンと吹っ飛んでいった後、背負ったブースターパックですぐ戦場に戻って来る!

「ワオ! とんでもない攻撃だったね……!! 上手く避けなかったら黒焦げだったよ!」

 周囲に浮かび上がるコメント欄に、※『直撃だっただろ!』『カイワレ、アンビリーバボー!』『このモヤシはどうなってるんだ!』と流れていく。

『なんだ……!? なんだ、貴様は……!!』

 ここで初めて、ジーヤはこの男、キャプテン・カイワレを直視した。
 そこに見えたのは、穴だ。
 あらゆる力を、攻撃を吸い込む底なしの穴。

 なぜ、穴が人の形をして、ハイテンションで己の前に立っているのか。
 何もわからない。
 だが一つだけ言えるのは……。

『よーし、わらわも助けに来たのじゃ。地の一族の技を結集して立ち向かうのじゃ!』

「ヒャッハー! 配信者大集合だ! 行くぜ行くぜ行くぜ! ドワーフの皆さんもご一緒にぃー!!」

「攻撃は僕の雀牌で強化しますんで」

「うっし、空から行ける人はみんなで空からゴー!」

「セニョリータに勝利をもたらすぜ!」

「Vゴールだ兄弟!」

「はづき小姐のために、黄色いジャージで気合を入れてきたんだ」

 この世界の人間たちは、普通ではない。

『馬鹿どもめ……!! このわしが……! このわしが、お前らごときに……!!』

 ジーヤは巨大化していく。
 国際展示場ほどのとんでもない巨体が、そこに出現する。
 天に向け、ジーヤが高らかに咆哮した。

 咆哮は攻撃となり、周囲に吹き荒れる。
 配信者たちへのそれは、全身タイツの男が受け止めるが……。

 それ以外は周辺の建物を破壊していくのだ。

「それ以上は……今後のイベントのためにも許さん! ハァーッ! 唸れ、我が二丁拳銃!」

 連射が放たれ、ジーヤの巨体からすると目視も難しいほどの弾丸が……巨大な大魔将を弾き飛ばす。

『ウグワーッ!?』

「おっと! 今宵、コンビ復活かな? ツインバードの力を見せてやろうじゃないか……っと!」

 ジーヤの頭部に着地した、黒いコートの男が、そこにスポンジライフルを叩きつけた。
 ありえない衝撃が響き、ジーヤの巨体が大地に叩きつけられる。

『ウグワーッ!!』

 ずらりと揃う、配信者たち。
 最強のバフを受け、大魔将ジーヤの侵攻を阻む……いや、なんならこの場で消滅させる。
 そんな気迫に満ちている。

 二丁拳銃の男が、ぽつりと呟く。

「始まったな……! 頑張れ……!!」

 見つめる先は特設コンサート会場。
 そこで、最後の決戦が幕を開ける。
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