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初夏な私の下準備編

第445話 飛行船ダンジョン伝説

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 6月突入!
 もう夏だあ。

 勇者パーティ計画は順調に進んでいるのではないでしょうか。
 それはそれとして、私の三曲目もなんか売れている。

 色々ノリマキさんに乗せられて、何曲か収録してしまったので……。
 アルバムができる話も来てるらしい。
 恐ろしい恐ろしい……。

 一曲で終わるはずではなかったのか。

 そんな、配信、教育、芸能活動に学校で大忙しの私なのだった。

『きら星はづきー』

 ザッコから声がする。
 私はちょうど、下校している最中。
 本日は中間テストだったので、学校が半日で終わったのだ!

「おやバングラッド氏」

 久々の三棋将。
 魔将から転向したイカルガの歌って踊れるリビングアーマー、バングラッド氏なのだ。

『今ニュースを見たか? 東京上空に差し掛かった巨大飛行船がダンジョン化したそうだぞ』

「な、なんですってー」

『久々にともに配信しようではないか。今すぐ近くにいるぞ』

「おお、話が早い……!」

 私はパタパタと物陰に駆け込むと、荷物をAフォンに押し込んでバーチャライズした。
 きら星はづき参上です。

 ツブヤキックスなどで、これから配信するよーという一言を流しておく。
 アワチューブとかネチョネチョ動画でも告知!
 告知を受け取る設定にしていると気付いてくれるからね。

「あれ!? はづきっちがいる」「ほんとだ! なんでいるんだろう」「あの、写真とってもいいですか」

「あっあっ、どうぞどうぞ……」

 バングラッド氏が見つけやすいよう、この場を動けない!
 ということで、写真を撮られまくったのだった。

 そのうち、空から飛行モードのバングラッド氏がやってくる。

『おーい』

「どうもー」

 挨拶もそこそこに、バングラッド氏がまた変形した。
 おお、ウイングモード!

 ベルっちと合体しての飛翔は速いけど、燃費が悪いのと安定感に欠けるんだよね。
 何もないところを短時間移動するにはいい。

 それに対して、バングラッド氏との合体モードは長時間配信に耐えられて、細やかな移動などができるのだ!
 あとは私の神経が自分だけに集中するので、色々やれる。

「うおー、がっしーん!」

 ジャンプした私の背中に、バングラッド・ウイングが装着された。
 ギャラリーからワーッと歓声が上がる。
 どうもどうも。

 手を振りながら、ぶいーんと飛んでいく私なのだ。

 本日の形態は体操服モード。
 一番動きやすくて涼しいやつだね。

『魔王があちこちで自ら活動しているようではないか。今回の件だが、犯行声明があったぞ』

「魔王が犯行声明!?」

『いや、正確には魔王にスカウトされた新たな魔将だな。奴は現地で一般人をスカウトし、納得づくで魔将にすることにしたようだ』

「凄く正規の手段!!」

『おそらくどこかに求人が乗ってるであろうな。段取りがきちんとされている。こうやって雇われて雇用契約を結んだ魔将は強いぞ。魔王の権能を分け与えられるからな』

「とても不思議な話をされている気がする……」

 つまり、新しく登場する魔将は魔王に雇用されてて、ちゃんと労働条件を了解してからお給料をもらって働いているというわけだ。
 で、今まで人間の弱さに漬け込んでデーモン化させていたのより、そっちのちゃんとした段取りが踏まれた方が強いという。

 謎だー。

「それが魔王の力なのかしらねえ」

『うむ、その通り! 奴めは、その世界に存在する正式な手段を経て侵略を行うと、より力を発揮するのだ』

「変わった人だ……」

 そうこう言っていたら、飛行船が見えてきた。
 大きいなー。
 銀色にピカピカ光ってて、浮遊部分のお腹には映像が映し出されている。

 あの風船状態のところの中にも構造物があるそうなんで、実際にかなり広大なダンジョンになっていそう。
 周囲をヘリが警戒態勢で飛び回ってたんだけど、私が連絡を入れたら散っていった。

 ヘリのなかの職員の人が、なんか私に敬礼みたいなのしてくる。
 私もシュバッと返す。

 プロっぽい。

「じゃあ配信始めますか。こんきらー!」

※『こんきら!』『実はずっとマイク入ってたぞ』『こんきらー!』『敬礼かっこいい』

「あひー、な、なんたること! 私は配信何年目だー!」

 凡ミス!!
 私とバングラッド氏のやり取りもちょっと聞かれてたようで、これはこれで有識者たちが盛り上がってるみたい。

※『草』『草』『最近パーフェクトはづきっちばかり見ていたから、昔みたいなはづきっちが見られて嬉しい!』『帰ってきたな、俺たちのはづきっちがよ……』

「まあ心を亡くすと書いて忙しいとも言いますので、最近のヤババなスケジュールがですね、平常心でいる余裕を失わせていたと申しましょうか、今日のところはまあまあフリーなんで余裕があるわけですねー。あ、飛行船の扉鍵が掛かってますね。こんきらー!」

※『流れるように喋ってると思ったら、いつの間にか扉まで到着してる!』『バングラッドウイングの安定感はやっぱ凄いな』『配信に集中しながら移動できるもんねw』『あっ、挨拶とともに扉を壊しやがった!』『きら星はづき、ダンジョンに強制的なエントリーだ!』

 まあまあ、私もちゃんと扉から入るという段取りをですね。
 壊れた扉は、豚さんを呼び出してノリとかで貼り付けておけばいいや。

「式神たち任せた」

『ぶいー!』

 飛行船内に到着。
 ここで、私から分離するバングラッド氏。

『ふむ、通常スペースであれば飛行の必要はあるまいな。ダンジョンの上層、本来ならば浮遊用の気体が満たされたスペースは再び翼が必要になろう』

「なるほどなるほど。ちょっと新機軸のダンジョンですねえ」

『見よ。見たところ、飛行船はゆっくりと東京上空を旋回している。だが、高度が次第に落ちていっているようだ。これが地上に到着した時、おそらく内包されたダンジョンがこの都市に降りかかるのであろう』

「そういう感じの儀式的なあれですかね?」

『であろうな。これもまた段取り。攻めてくるタイプのダンジョンだ』

「新しいなー」

※『考察が面白いのよ』『いや、洒落にならないんだけど、確かに全く新しい攻め方してくるな』もんじゃ『旋回しながら東京に落ち、ダンジョンをそこから広げていくタイプか。つまり、落下までの間に攻略しなければいけないわけだな……!』

 そういうことですね!
 ではでは、久々のダンジョン攻略を行ってみましょう。
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