413 / 517
三年目私の、新たなスタート編
第414話 MV超恥ずかしく、あと黒幕現る伝説
しおりを挟む
発売されてめちゃくちゃ売れたらしい私の二曲目、ほんとにどこに行っても聞こえてくるんだけど。
それにちょっと画面があるようなお店だと、このために撮ったミュージックビデオが流れてる。
は、は、恥ずかしい~!! ベルっちとは言え私なのに代わりはないのだ!
一人であれば、あまりの恥ずかしさにその場を小走りで離れていたことだと思う。
だが!
今日はカンナちゃんと遊びに来ているのだ。
「どこもかしこも、はづきちゃん一色だねえ」
「いやあ、お恥ずかしい」
「全然恥ずかしくないよ! 凄い凄い! 私の友達だって、みんなはづきちゃんの歌聞いてるもん」
「あひー」
なんということでしょう!
私には逃げ場が無いのか!
一曲目で終わるはずだったのに、上手いこと乗せられて二曲目も出してしまったのだ。
その日は、どこに行っても私の歌が流れた。
ファミレスに行ったら、有線で流れるし。
映画を見に行ったら、上映前のCMで私のMVが流れた。
た、た、助けてぇー。
カンナちゃんとのデートは大変楽しかったけど、それはそれとして私の歌が!
あちこちで聞こえる私の歌が!
ノイズ!!
だけど、みんな楽しげに私の歌を聞いているし、流れる度に「この歌ってさ」「買った!」「ヘビロテしてる!」とか言っているのだ。
喜ばれているならまあいいか……。
しばらくすれば話題にも上がらなくなることでしょう。
早く風化せよ!
楽しい一日があっという間に過ぎ……。
駅でお別れということになった。
その途中、駅近くの大型ビジョンに私のMVが映っている。
ま、また……!
新曲は私を解放してくれないのだ!
『ふーん! あれがそうなんね! イケてんじゃん』
横で声がした。
なんか存在感がある声だなーと思ったら、そこにマフラーを巻いたオレンジの髪の女子がいたのだった。
どこのものだか分からない制服を着てる。
『お?』
目が合ってしまった。
目力~。
気まずい。私は愛想笑いを浮かべながらペコペコした。
「ど、どもぉ」
『……あんたの声、あれと似てね?』
ドキィッ!
初対面の女子で、顔にはなんかラメの入ったシールを貼ったりしてめちゃくちゃ盛ってて、ネイルもバシッと銀河色のやつをキメてる……。
ギャル!
陽キャ!!
それが私の声を見切った!?
なんて恐ろしい……!!
「い、いやいや、そんなことないですよー。全然似てませんよー」
『そぉ?』
彼女は首を傾げた。
サイドテールの髪が揺れる。
なんか良く分からない花の香りが流れてきた。
ひぃー、苦手だー!
私は震え上がった。
天敵みたいな人だあ。
『とにかくさ、あたし、あの歌キライじゃないんだよねー。もっといろいろ歌って欲しいかも。だってこの世界の人間の活力が増すじゃん。せっかくちょっと時間掛けたんだからさ、また元気になったら攻略しがいがあるって言うかー』
「あ、は、はい」
陽キャ語は難しすぎる~!!
それに、隣りにいるカンナちゃんをほったらかしだ!
「い、行こうカンナちゃん! じゃ、じゃあ私はこれで~」
『はいはーい。あんたもなんか凄そうだし、うちと向き合ってマイペースでいられんの、その世界の勇者クラスでしょ。期待してっから。じゃね!』
ギャルの人が手を振っている。
私も引きつった笑顔で小さく手を振り返すのだった。
うわー、陽キャ恐ろしいー。
早く帰ろう、早く。
「……はっ。は、はづきちゃん? あれ? 私、今何をして……」
カンナちゃんが今、初めて我に返ったみたいな事を言った。
なんだなんだ。
しっかりしているカンナちゃんがぼーっとしているとは珍しい。
だけど、いつもしっかりしてるから、たまにぼーっとするのは必要だよねえ。
「なんか一瞬、時間が止まってたみたいな……。気のせいかなあ」
「カンナちゃんも疲れてるのかもねえ。ゆっくり休んでね」
「はづきちゃんほどハードワークではないから! はづきちゃんもね!」
ということで、私達はここでバイバイするのだった。
いやあ、デート楽しかったなあ。
※
『うん、視察終わり! たまーに覗きに来てたけどさ、この世界で三年? 経過したら、なんか活力マシマシになってるじゃん。いいよいいよ』
『マロングラーセ様! お一人で侵略世界へホイホイ行かれては困ります! 御身が降り立たれただけで世界のバランスは変わるのですから!』
『いいじゃーん。じいはさ、いちいちうっさいのよねえ』
そこだけ時間が止まったような場所。
駅前、巨大ビジョンを見上げる場所で、いわゆるギャルの姿をした彼女と、突如横に現れた黒いローブが会話をしている。
黒ローブの背丈は5mほど。
シルエットは細長く、ローブの合わせ目から縦に7つの頭が覗いている。
『協力者たちが全て打倒されたか離反した今、御身を守る者はこのじいをおいて他にないのですから! 全く、もっと側近を作って置いておけばよろしいものを』
『口うるさいのはじい一人で十分っしょ? そういう役目としてあたしが作ったんだから』
『ですがマロングラーセ様!』
『マロンでいいっつってるでしょ?』
『マロン様! 先ほども、御身の威圧に耐えるこの世界の戦士と単身でお話を……。危険ですぞ!』
『いいじゃんいいじゃん。あれさ、この世界の抗体だよ? この世界、今までは抗体弱いのに粘るなーと思ってたらさ、すっごいの出てきたよね。あんなのが幾つもいるのかも? 大魔将のおっさんたちもそういう抗体にやられた的な?』
『楽しんでいる場合ではありませんぞ! さあ帰りましょう、我らの世界へ! マロン様には日々こなすべき、魔王としてのお仕事があるのですから!』
『へいへい。うっさいなー、もう。いいじゃん。世界の全てはあたしの遊びなんだし』
それにちょっと画面があるようなお店だと、このために撮ったミュージックビデオが流れてる。
は、は、恥ずかしい~!! ベルっちとは言え私なのに代わりはないのだ!
一人であれば、あまりの恥ずかしさにその場を小走りで離れていたことだと思う。
だが!
今日はカンナちゃんと遊びに来ているのだ。
「どこもかしこも、はづきちゃん一色だねえ」
「いやあ、お恥ずかしい」
「全然恥ずかしくないよ! 凄い凄い! 私の友達だって、みんなはづきちゃんの歌聞いてるもん」
「あひー」
なんということでしょう!
私には逃げ場が無いのか!
一曲目で終わるはずだったのに、上手いこと乗せられて二曲目も出してしまったのだ。
その日は、どこに行っても私の歌が流れた。
ファミレスに行ったら、有線で流れるし。
映画を見に行ったら、上映前のCMで私のMVが流れた。
た、た、助けてぇー。
カンナちゃんとのデートは大変楽しかったけど、それはそれとして私の歌が!
あちこちで聞こえる私の歌が!
ノイズ!!
だけど、みんな楽しげに私の歌を聞いているし、流れる度に「この歌ってさ」「買った!」「ヘビロテしてる!」とか言っているのだ。
喜ばれているならまあいいか……。
しばらくすれば話題にも上がらなくなることでしょう。
早く風化せよ!
楽しい一日があっという間に過ぎ……。
駅でお別れということになった。
その途中、駅近くの大型ビジョンに私のMVが映っている。
ま、また……!
新曲は私を解放してくれないのだ!
『ふーん! あれがそうなんね! イケてんじゃん』
横で声がした。
なんか存在感がある声だなーと思ったら、そこにマフラーを巻いたオレンジの髪の女子がいたのだった。
どこのものだか分からない制服を着てる。
『お?』
目が合ってしまった。
目力~。
気まずい。私は愛想笑いを浮かべながらペコペコした。
「ど、どもぉ」
『……あんたの声、あれと似てね?』
ドキィッ!
初対面の女子で、顔にはなんかラメの入ったシールを貼ったりしてめちゃくちゃ盛ってて、ネイルもバシッと銀河色のやつをキメてる……。
ギャル!
陽キャ!!
それが私の声を見切った!?
なんて恐ろしい……!!
「い、いやいや、そんなことないですよー。全然似てませんよー」
『そぉ?』
彼女は首を傾げた。
サイドテールの髪が揺れる。
なんか良く分からない花の香りが流れてきた。
ひぃー、苦手だー!
私は震え上がった。
天敵みたいな人だあ。
『とにかくさ、あたし、あの歌キライじゃないんだよねー。もっといろいろ歌って欲しいかも。だってこの世界の人間の活力が増すじゃん。せっかくちょっと時間掛けたんだからさ、また元気になったら攻略しがいがあるって言うかー』
「あ、は、はい」
陽キャ語は難しすぎる~!!
それに、隣りにいるカンナちゃんをほったらかしだ!
「い、行こうカンナちゃん! じゃ、じゃあ私はこれで~」
『はいはーい。あんたもなんか凄そうだし、うちと向き合ってマイペースでいられんの、その世界の勇者クラスでしょ。期待してっから。じゃね!』
ギャルの人が手を振っている。
私も引きつった笑顔で小さく手を振り返すのだった。
うわー、陽キャ恐ろしいー。
早く帰ろう、早く。
「……はっ。は、はづきちゃん? あれ? 私、今何をして……」
カンナちゃんが今、初めて我に返ったみたいな事を言った。
なんだなんだ。
しっかりしているカンナちゃんがぼーっとしているとは珍しい。
だけど、いつもしっかりしてるから、たまにぼーっとするのは必要だよねえ。
「なんか一瞬、時間が止まってたみたいな……。気のせいかなあ」
「カンナちゃんも疲れてるのかもねえ。ゆっくり休んでね」
「はづきちゃんほどハードワークではないから! はづきちゃんもね!」
ということで、私達はここでバイバイするのだった。
いやあ、デート楽しかったなあ。
※
『うん、視察終わり! たまーに覗きに来てたけどさ、この世界で三年? 経過したら、なんか活力マシマシになってるじゃん。いいよいいよ』
『マロングラーセ様! お一人で侵略世界へホイホイ行かれては困ります! 御身が降り立たれただけで世界のバランスは変わるのですから!』
『いいじゃーん。じいはさ、いちいちうっさいのよねえ』
そこだけ時間が止まったような場所。
駅前、巨大ビジョンを見上げる場所で、いわゆるギャルの姿をした彼女と、突如横に現れた黒いローブが会話をしている。
黒ローブの背丈は5mほど。
シルエットは細長く、ローブの合わせ目から縦に7つの頭が覗いている。
『協力者たちが全て打倒されたか離反した今、御身を守る者はこのじいをおいて他にないのですから! 全く、もっと側近を作って置いておけばよろしいものを』
『口うるさいのはじい一人で十分っしょ? そういう役目としてあたしが作ったんだから』
『ですがマロングラーセ様!』
『マロンでいいっつってるでしょ?』
『マロン様! 先ほども、御身の威圧に耐えるこの世界の戦士と単身でお話を……。危険ですぞ!』
『いいじゃんいいじゃん。あれさ、この世界の抗体だよ? この世界、今までは抗体弱いのに粘るなーと思ってたらさ、すっごいの出てきたよね。あんなのが幾つもいるのかも? 大魔将のおっさんたちもそういう抗体にやられた的な?』
『楽しんでいる場合ではありませんぞ! さあ帰りましょう、我らの世界へ! マロン様には日々こなすべき、魔王としてのお仕事があるのですから!』
『へいへい。うっさいなー、もう。いいじゃん。世界の全てはあたしの遊びなんだし』
56
お気に入りに追加
246
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる