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三年目私の、新たなスタート編

第407話 三年目始まる伝説

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 一瞬で春休みが通り過ぎ、三年目がやって来た。
 いやあ、ゆっくりできなかったなあ。
 私、高校入学から一回も長期休みでゆっくりできてないけどね!

「おはようございまあす」

 ふにゃふにゃとした気合の入ってない挨拶をして教室に入る。
 先に来ていたみんなが、なぜか妙に気合のこもった感じで「おはようー!!」「こんき……おはよう!」

 今なんか言いかけてなかった?
 気のせいか……。

 席についたら、スマホをポチポチして仕事のメールをチェック……。
 ほうほう、フィギュアとプラモのテストモデルができたと……。
 チェックに行かねば。

 新曲発売迫る、と。
 PVは撮ったから、あとはじっと待つだけだなあ。
 プレミア公開で盛り上げておかなくちゃ。

 自分の歌を流すの、気恥ずかしいなあ……!

 その後、なんかやってくるクラスメイトとお話をする。
 ついに彼女たちともあと一年の付き合いなんだよね。
 名残惜しい。

 まあまだまだ一年あるとも言えるんだけど。

 そして、きら星はづきもファイナルシーズンです!
 高校卒業と同時に配信もやめるからね。

 さらば、我が青春!
 あ、ちょっと早いか。

「師匠がアンニュイな顔してる」

「色々あるもんねえ」

「最近本物の弟子を取ってたし」

「スファちゃんかわいいよねー。わらわ系マスコット」

 おっ、クラスメイトにまでスファトリーさんのことが広まっている……!
 やっぱり彼女は前途有望だなあ。

 イノシカチョウの三人も後から登校してくる。
 彼女たち、駅で待ち合わせてから来るのでゆっくり気味なのだ。

 現地人のもみじちゃんが、電車通学の二人に合わせてるんだよね。

「あ、やっぱり先に来てた」

「師匠はいつもマイペースだからねえ」

「うんうん、そういうところもいいところだよね」

 三人とお喋りしたら、そろそろ担任がやってくる時間になり。
 そこから体育館で始業式ですよ。

「今年は一瞬で桜が散ってしまった。お花見をする暇がまったくなかった」

 校庭にて、すっかり葉桜化しつつある木々を眺めるのだ。
 毎年、加速度的に忙しくなってるからなあ。
 このまま続けていたらとんでもないことになるのではないか。

 でも、今年度で配信卒業だからね!
 あと一年、悔いのないように頑張っていこう!

 そんな風に内心で決意表明をしていたら、校長のお話も終わってしまった。
 あとは戻ってきて、初日の授業です。

 学校にいる間はメールの返信が少ないので、各社の方々はちょっと待ってくだされ……!!
 そして三年生初日終了!

 私は爆速で帰宅するのだった。

 自宅にて、分身!

「ベルっち、実働部隊よろしく!」

『おっけー。はづきは事務作業よろしく!』

 いえーい、と私同士でハイタッチなのだ。
 次々にメールに返信してスケジューリングし、やれることはBOOMを使ってオンライン会議しちゃう。

 その間に、現地に行かなきゃいけない案件は、ベルっちが空を飛びながらこなしていく。
 彼女はきら星はづきのままの姿だし、もう一般に姿が知れ渡ってるもんね。
 外を飛び回ってもOKなのだ!

 途中途中でコンビニに寄って、カロリーを補給しながら活動してたみたい。

「はづきは初日からとんでもない量の作業をしているな。よく学校と両立できるものだ……」

 カナンさんが呆れ半分、感心半分。
 いよいよ活動を再開した彼女は、各地の観光地とやり取りしながら、次の配信日を詰めているところなのだ。

 カナンさんが動くと経済効果が大きいから、あちこちの観光地も本気だよね。
 向こう半年間は、予定がびっちり詰まってるらしい。

「うおー」

 あっ、隣から声がした。
 深夜まで仕事をしてたビクトリアが今目覚めたらしい。

 声優やって配信者やって、今はラノベに手を出してるんでしょ。
 そりゃあ忙しい。

 イカルガエンタのメンバーは全員基本的に忙しいのだ!

 あ、イノシカチョウのみは学業優先してるけどね。
 だから、古参の部類なのに彼女たちは割と余裕があるという不思議なことになっている。

「あ、リーダー帰ってきてたんだ? おおお……寝すぎた……」

 フラフラと部屋から出てきたビクトリアが、大きく伸びをした。
 うんうん、激務の中、むしろ健康的になったように見える彼女だ。

 ゴスキャラを仕事用にしてる関係で、プライベートがなんかフランクな普通の女の子みたいになって来ているのだ!
 アメリカで出会った頃は、こうなりたいっていう理想を込めてゴスロリキャラやってたけど、今はそれが仕事になったから、普段の自分は新しいキャラでやってるみたい。

 さて、私の仕事はひとまずここまで。

 夕食までのちょっとした時間で、三人で最近どう?
 みたいな話をすることにした。

 下の階からお茶とお菓子を持ってきて、私の部屋に集まって近況報告などなど。

 同じ家で暮らしてる三人なのに、全員忙しくて全く接点を持てていないというね。

「この世界は、忙しい者はさらに忙しくなるんだな……。半年の間は好きな旅行ができない。いや、旅行そのものが好きだから、この仕事も好きなものと言えばそうなんだが……」

「カナンは外を飛び回るのだから大変だわ。私はまだ、うちに籠もっているし、外に出たとしても収録スタジオだけだから。ああ、大学も行かないと……」

 ビクトリアも学業両立型だけど、休学の必要があるか……? みたいな忙しさになりつつあるもんね!
 私は学業優先でいいと思う。

「私は二人に比べると、分身できるぶんだけ楽かなあ」

「リーダーは私たちの三倍の仕事を抱えてるじゃない」

「はづきはバイタリティが凄いからね」

 なんかそう言うふうに評価されている私なのだった。
 最近はダンジョンも、平常時の発生件数に戻ってきている。

 地の大魔将は完全に音沙汰がなくなり、モンスターがパワーアップするようなこともなく。
 嵐の前の静けさみたいな?
 いやいや、まるでフラグみたいじゃあないですか。 
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