396 / 517
年度末私のイベントもりもり編
第397話 はづき、配信者勧誘伝説
しおりを挟む
「それで、お名前をお伺いしても?」
「ああ。わらわはスファトリーじゃ。その配信者とやらをやってみようと思った。いや、思っておる」
「なるほどー」
これだけ存在感がある新人さんなら将来有望かも知れない。
私は確信した。
ということで、先輩がコーヒーフロートを奢ってあげましょう。
冬にあったかい店内で食べるコーヒーフロートが絶品なんだよね。
「な、なんじゃこれは……!?」
「おや、ご存知ないのですか?」
私は目を光らせた。
「うう、その文句、どうも背筋がゾッとするのう。わらわたちにとって死亡フラグみを感じる響きじゃ」
「そうなんです? とにかくこれを飲んでですね、今後のお話を」
今や、冒険配信者は何人いても足りない時代。
地の大魔将が攻めてくるからね。
覚悟が決まってない人達は、みんな辞めてしまった。
やる気がある人がたくさん欲しい~。
そういう話をしたら、スファトリーさんがふんふんと頷いた。
「なるほどなるほど。ゴボウアースに満ちる人間たちは、地の大魔将を恐れているのだなあ……。こっちもこの世界の人間の異常な底力を恐れているのだが」
「何か言いました?」
「いや、なんでもないぞ」
そっかー。
しかし、いつきてもこの店のフロートは美味しいなあ。
私がニコニコしながらコーヒーフロートを平らげたら、スファトリーさんもちょうと飲み切るところだった。
「ふむ、不思議な味がする。栄養を摂取するだけなら不必要な味よな。だが、豊かな文明の味わいがする」
彼女は唇についたクリームをぺろりと舐め取った。
不思議な表現をする人だなあ。
「ゴボウアースってさっき言ってたけど、スファトリーさんは異世界から来た人?」
「な、なにっ!? なぜそれを……!!」
「ゴボウアースって言う言葉、異世界の人しか使わないんで」
「あっ、なるほど……」
納得されたらしい。
つまりこの人、異世界人だね。
「スファトリーさんはどうして配信者になろうとしたんです? 私はですねー、ついカッとなって」
「なるほど、そんなアバウトな理由でなる者がおるんじゃなあ……。それがあれほどの存在感を示す……。ゴボウアース、恐ろしい世界よな……。お祖父様の懸念は正しかった」
「ははあ、そのおじいさんが大事な人なんですね」
「うむ。我らが一族の要じゃ。わらわたちは一族でゴボウアースに渡ってきた。己の世界の住環境を再現しようとしたが、度々の妨害に遭い上手く行かぬ。なぜかと思っておったが、それも納得じゃなあ……。そなたのような存在がゴロゴロいるのでは」
スファトリーさんが天を仰ぐ。
そしてすぐに私に向き直った。
「なので、わらわはゴボウアースの配信者なるものを知りたくなった。いや、知りたいと思って配信者になるのじゃ! ……どうすればなれる?」
「そうですねえ……。Aフォンがあればやれると思うけど、これってその、正式のはあんまり数がないので」
非公式のAフォンなら、引退したり、ダンジョンで行方不明になった配信者さんのが回収されてるから、それなりに本数はあると思う。
アバターは自力でやれる人みたいだし、スファトリーさんは非公式Aフォンで大丈夫だろう。
「いきなりやるんじゃなくて、他の配信者さんの配信をしばらく見て研究するのがいいですよー」
「おお、なるほど! 忠告ありがたい」
素直な人だなあ。
一見すると、エルフでもないしドワーフでもないし、獣人っぽくもないし。
なんかこう、ラノベとかアニメで見る魔族っぽいけど。
人の話をきちんと聞く人に悪い人はいないのだ!
私はその場で迷宮省に連絡して、非公式Aフォンを一つ手配した。
私たちがコーヒーショップから出てくる頃には、迷宮省のドローンが届けにやって来ている。
「はい、これ! なんか私の頼みだから特別に一つお渡ししますだって。持つべきものは迷宮省だよねえ……」
「ふむ? よく分からぬが、そなたが尽力してくれたのだな。感謝する。どれどれ……? ほうほう、こやつはゴボウアースの技術で作られた使い魔かや。ではあまりこちらから干渉するのは良くなかろう」
この人やっぱり、魔法についても色々知っているんだな。
どういう配信をするんだろう。
楽しみではある!
とりあえず、この世界での居場所は一族のところしかないというので、私は直接スファトリーさんのおじいさんと言う人に電話をした。
「あっあっ、き、きら星はづきと申します。実はお孫さんが配信者デビューしたいそうですし、才能があるので……」
『配信者……? ふむ、あれが考えた末の決断であろう。わしはそれを支持する。ゴボウアースの者か。言葉からも強い力を感じる。そなたが助力してくれるならば心配はるまい。孫には、多くのものを見聞きし、知識を深め、一族の糧として持ち帰ってほしいと伝えてくれ』
「あっはい。どうもどうもー」
許可をもらった。
物わかりのいい人だなあー。
スファトリーさんが自慢げだ。
「お祖父様はとても懐の深いお方じゃ! 一族の誇りよ!」
「おじいちゃんっ子だった! じゃあですね、なんかスファトリーさんとは運命的なものを感じるので、こっちでの居場所はウォンさん経由でホテル暮らしをですね……」
私は、都内のホテル暮らしをしている、怠惰のウォンさんに連絡を取った。
ウォンさんはめんどくさそうだったけど、すぐに一室をキープしてくれる。
「何から何までありがたい。そなたが偏見なくわらわを迎え入れてくれたこと、ありがたく思うぞ。必ずや、この恩に報いよう……! 我ら一族は様々な縁をつなぎ、異なる種が交わって紡がれてきた。異世界の民とこうして交流できたことはやはり縁なのであろう……」
「縁、いいですねー……。私もなんかそういうのに助けられてきた気がしますー。じゃ、じゃあザッコのアドレスを送るんで……あ、ザッコっていうのはですね」
「ふんふん」
結局その後、都心のホテルまで彼女を送ることになり、ウォンさんに夕食をデリバリーしてもらってごちそうになってしまったのだった!
中華でした!
「ああ。わらわはスファトリーじゃ。その配信者とやらをやってみようと思った。いや、思っておる」
「なるほどー」
これだけ存在感がある新人さんなら将来有望かも知れない。
私は確信した。
ということで、先輩がコーヒーフロートを奢ってあげましょう。
冬にあったかい店内で食べるコーヒーフロートが絶品なんだよね。
「な、なんじゃこれは……!?」
「おや、ご存知ないのですか?」
私は目を光らせた。
「うう、その文句、どうも背筋がゾッとするのう。わらわたちにとって死亡フラグみを感じる響きじゃ」
「そうなんです? とにかくこれを飲んでですね、今後のお話を」
今や、冒険配信者は何人いても足りない時代。
地の大魔将が攻めてくるからね。
覚悟が決まってない人達は、みんな辞めてしまった。
やる気がある人がたくさん欲しい~。
そういう話をしたら、スファトリーさんがふんふんと頷いた。
「なるほどなるほど。ゴボウアースに満ちる人間たちは、地の大魔将を恐れているのだなあ……。こっちもこの世界の人間の異常な底力を恐れているのだが」
「何か言いました?」
「いや、なんでもないぞ」
そっかー。
しかし、いつきてもこの店のフロートは美味しいなあ。
私がニコニコしながらコーヒーフロートを平らげたら、スファトリーさんもちょうと飲み切るところだった。
「ふむ、不思議な味がする。栄養を摂取するだけなら不必要な味よな。だが、豊かな文明の味わいがする」
彼女は唇についたクリームをぺろりと舐め取った。
不思議な表現をする人だなあ。
「ゴボウアースってさっき言ってたけど、スファトリーさんは異世界から来た人?」
「な、なにっ!? なぜそれを……!!」
「ゴボウアースって言う言葉、異世界の人しか使わないんで」
「あっ、なるほど……」
納得されたらしい。
つまりこの人、異世界人だね。
「スファトリーさんはどうして配信者になろうとしたんです? 私はですねー、ついカッとなって」
「なるほど、そんなアバウトな理由でなる者がおるんじゃなあ……。それがあれほどの存在感を示す……。ゴボウアース、恐ろしい世界よな……。お祖父様の懸念は正しかった」
「ははあ、そのおじいさんが大事な人なんですね」
「うむ。我らが一族の要じゃ。わらわたちは一族でゴボウアースに渡ってきた。己の世界の住環境を再現しようとしたが、度々の妨害に遭い上手く行かぬ。なぜかと思っておったが、それも納得じゃなあ……。そなたのような存在がゴロゴロいるのでは」
スファトリーさんが天を仰ぐ。
そしてすぐに私に向き直った。
「なので、わらわはゴボウアースの配信者なるものを知りたくなった。いや、知りたいと思って配信者になるのじゃ! ……どうすればなれる?」
「そうですねえ……。Aフォンがあればやれると思うけど、これってその、正式のはあんまり数がないので」
非公式のAフォンなら、引退したり、ダンジョンで行方不明になった配信者さんのが回収されてるから、それなりに本数はあると思う。
アバターは自力でやれる人みたいだし、スファトリーさんは非公式Aフォンで大丈夫だろう。
「いきなりやるんじゃなくて、他の配信者さんの配信をしばらく見て研究するのがいいですよー」
「おお、なるほど! 忠告ありがたい」
素直な人だなあ。
一見すると、エルフでもないしドワーフでもないし、獣人っぽくもないし。
なんかこう、ラノベとかアニメで見る魔族っぽいけど。
人の話をきちんと聞く人に悪い人はいないのだ!
私はその場で迷宮省に連絡して、非公式Aフォンを一つ手配した。
私たちがコーヒーショップから出てくる頃には、迷宮省のドローンが届けにやって来ている。
「はい、これ! なんか私の頼みだから特別に一つお渡ししますだって。持つべきものは迷宮省だよねえ……」
「ふむ? よく分からぬが、そなたが尽力してくれたのだな。感謝する。どれどれ……? ほうほう、こやつはゴボウアースの技術で作られた使い魔かや。ではあまりこちらから干渉するのは良くなかろう」
この人やっぱり、魔法についても色々知っているんだな。
どういう配信をするんだろう。
楽しみではある!
とりあえず、この世界での居場所は一族のところしかないというので、私は直接スファトリーさんのおじいさんと言う人に電話をした。
「あっあっ、き、きら星はづきと申します。実はお孫さんが配信者デビューしたいそうですし、才能があるので……」
『配信者……? ふむ、あれが考えた末の決断であろう。わしはそれを支持する。ゴボウアースの者か。言葉からも強い力を感じる。そなたが助力してくれるならば心配はるまい。孫には、多くのものを見聞きし、知識を深め、一族の糧として持ち帰ってほしいと伝えてくれ』
「あっはい。どうもどうもー」
許可をもらった。
物わかりのいい人だなあー。
スファトリーさんが自慢げだ。
「お祖父様はとても懐の深いお方じゃ! 一族の誇りよ!」
「おじいちゃんっ子だった! じゃあですね、なんかスファトリーさんとは運命的なものを感じるので、こっちでの居場所はウォンさん経由でホテル暮らしをですね……」
私は、都内のホテル暮らしをしている、怠惰のウォンさんに連絡を取った。
ウォンさんはめんどくさそうだったけど、すぐに一室をキープしてくれる。
「何から何までありがたい。そなたが偏見なくわらわを迎え入れてくれたこと、ありがたく思うぞ。必ずや、この恩に報いよう……! 我ら一族は様々な縁をつなぎ、異なる種が交わって紡がれてきた。異世界の民とこうして交流できたことはやはり縁なのであろう……」
「縁、いいですねー……。私もなんかそういうのに助けられてきた気がしますー。じゃ、じゃあザッコのアドレスを送るんで……あ、ザッコっていうのはですね」
「ふんふん」
結局その後、都心のホテルまで彼女を送ることになり、ウォンさんに夕食をデリバリーしてもらってごちそうになってしまったのだった!
中華でした!
71
お気に入りに追加
245
あなたにおすすめの小説
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
強制的にダンジョンに閉じ込められ配信を始めた俺、吸血鬼に進化するがエロい衝動を抑えきれない
ぐうのすけ
ファンタジー
朝起きると美人予言者が俺を訪ねて来る。
「どうも、予言者です。あなたがダンジョンで配信をしないと日本人の半分近くが死にます。さあ、行きましょう」
そして俺は黒服マッチョに両脇を抱えられて黒塗りの車に乗せられ、日本に1つしかないダンジョンに移動する。
『ダンジョン配信の義務さえ果たせばハーレムをお約束します』
『ダンジョン配信の義務さえ果たせば一生お金の心配はいりません』
「いや、それより自由をください!!」
俺は進化して力を手に入れるが、その力にはトラップがあった。
「吸血鬼、だと!バンパイア=エロだと相場は決まっている!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる