ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。

あけちともあき

文字の大きさ
上 下
380 / 517
打ち上げ! 私のロケット編

第381話 冬休みラストのサイン会伝説

しおりを挟む
 サイン会をすることになっております!
 全国から厳正な抽選で選ばれた300人の人がイカルガエンタロビーに並び、私にサインされるというイベント。

「そう言えばなんでこんなことしてるの?」

「リスナーの顔を直接見ておくためでもあるし、お前に関する話題を途切れさせないためだ。人は飽きる生き物だからな。いつまでも同じことをやっていては、飽きてしまって肝心の決戦で同接が集まらないことにもなりかねない」

 なるほどー。
 兄は色々考えているみたいだ。
 それで、イカルガ公式できら星はづきサイン会参加希望者を募ったわけだ。

 掛かるのは旅費だけ。
 色紙でも体でも、公序良俗に反しない範囲ではどこにでもサインする!

 フフフフフ……。
 この日のためにサインを練習していたのだ。
 冬休み最終日だけど、最後の最後でこの大きめイベントはなかなかじゃないだろうか。

 どんな人が来るか楽しみー。
 もうね、人前でコンサートやってから、私は怖いものが無くなったよ。

 陽キャくらいしか怖くない。

「じゃあ一人目通しますねー。どうぞー」

「きゃーっ! はづきっち本物!! カワイー!! ね、ね、一緒に写ってもらっていいっすか? ピンスタにアップしていい? いえーい」

「あひー」

 て、天敵きたぁ~。
 私の引きつった笑顔と曲がったピースサインがピンスタにアップされてしまった。

 な、なんて恐ろしい相手を最初に連れてくるんだ……。
 兄がニコニコしている。

「油断大敵だぞ。慢心は最初に戒めておかねばな!」

「そりゃあそうだけどぉ」

 いくらなんでも不意打ち過ぎるぅ。
 陽キャの女性が差し出したのはスマホで、その背中に私のサインを書いた。
 彼女はキャーッと歓声を上げて飛び跳ねると、私の両手を取ってブンブン振った。

「もうずーっと応援してます! 毎朝仕事いくのたるいんですけど、はづきっちのアーカイブ見て気合い入れて、そんで仕事行くの! あたしの元気の源! 応援してまっす!!」

「あっ、はい、どうもありがとう!」

 陽キャだけど、私の大ファンでもあるんだな!
 ありがとうありがとう。

 しばらく握手してブンブン振って、それでお別れになった。
 濃い時間だったけど一分くらい。

 次の人が通された。
 あっ、ケンタウロス!!

「山梨から夜通し走ってきました!! 俺等の種族の宿敵だったスレイプニルをぶっ飛ばしたところ、痺れたっす……! あっ、サインは俺のこのスカーフに……」

 次はバードマン!

「空まで征服した上に、ドラゴンと友誼を結んだんですよね? すっげえー。サイン、アンクレットにもらっても?」

 エルフの人たちだ!

「うわーっ、本物のはづきちゃんだ!」

「戦士長がお世話になってます!」

「私達ー、配信者を応援する会社を立ち上げてー」

「みんなで応援してますから!」

 色紙に次々サインすることになった。
 みんなカナンさんの教え子らしい!
 世界は狭い~。

 こんな感じで、休みとお昼休憩を挟みつつ、午前九時から午後五時までやったよ!
 いやあ、大変な仕事でした。

 でも、私を応援してくれている人たちの顔が見えた気がする。

「お疲れ様です。はづきさんを応援する人たちから、幅広い層が選ばれるようにこっちでかなり厳正にチェックしたんですよ」

 ルンテさんがお砂糖たっぷりの紅茶を持ってきてくれる。
 美味しいー。

「それで、今回はベルっちさんNGでやったんですけど、それってやっぱり魔族に忌避感を持ってる亜人が多いからですね。いくらはづきさんとは言え、大罪の魔王ですし」

「なるほどー」

「それでどうでした? あ、このインタビューはカメラ回ってます。あとで編集して公式チャンネルにアップしますね」

「あひー! きら星はづきにプライベートなし!」

 まあ別にいいんですが。

 300人くらい、色々な人たちを相手にしてどうだったか、か……。

「馴染み深い陰の者から、私の苦手な陽キャまでタイプは色々いたし。あとはいろんな種族の人がいたよね。みんな日本に馴染んで、自分たちの生活をしてるんだなーって思った」

「はい。政府からは就業支援が常に行われてるんですけど、現地の方々も私達亜人を快く受け入れてくれてて。人間同士の人種の違いによる軋轢っていうのがあるんでしたっけ? 私達の場合、種族からして違うから文化も生態も違ってて。あまりにも違うから逆に気を使いやすいみたいな」

「あー、あるかも!」

 バードマンやケンタウロスやマーメイドの人なんか、移動手段とか普段の暮らしのスタイルからして人間と違うもんね!
 エルフは精霊を使って色々やるし、独自の社会形態を作ってるし。

 ハーフリングとドワーフの人達が一番社会に馴染んでるかも?
 配達系はちっちゃくてむちゃくちゃ機敏でタフなハーフリングが向いてるっぽいし、ドワーフの人達はパワフルで熱に強くてタフなんで現場でバリバリ活躍してる。

 確か国は、異種族の人達にこの国に馴染んでもらいつつ、配信者を応援してもらおうって考えてたよね。
 じゃあ、その作戦は今成功してるってことだ。

 だって300人のサイン相手のうち、100人が異種族だったもん。
 みんなスマホとかPCを持ってて、私の配信を追っかけてくれているのだ。
 ありがたいなあー。

 ルンテさんと話をしながらそんなことを考えた。

「今、日本全国に500万人超の異種族がいますけど、実はこの全員が配信者さんたちを応援してるんですよ」

「ひえーっ!? 全員が!?」

 びっくりな事実!

「私たち、ファールディアから来た者達にとって、魔王を倒すことは種族としての悲願です。そして今、魔王との戦いの最前線にいるこの国は、日常を守りながら戦い続ける希望そのものなんです。希望の先端に立つ人こそが……」

 そこまで言って、ルンテさんがニコニコした。
 カメラが私をじーっと映している。

 私、ちょっと反応に困って、お茶をガブガブ飲んだ。
 スタッフの人達がどっと笑う。

『はづき! なんか気の利いたこと言いなさい!』

 見かねたベルっちが飛び出してきて、私に突っ込みをいれるのだった。

「あひー! わ、私のくせになんて無茶を言うんだー!」

しおりを挟む
感想 189

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...