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打ち上げ! 私のロケット編
第378話 船外活動シミュレーション伝説
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椅子の下に宇宙服が格納されているそうです。
「ほうほう、どれどれ……? 固いなあ」
椅子がガッチリしてて、収納部分が出てこない。
ベルっちはまた栄養補給のために帰っていったから、これは私が自力でなんとかするしかないなあ。
「あちょー!」
気合を入れたら、バキッと音がして椅子が横に倒れた。
「あーっ、ごめんなさい! 儚い」
『あっ! 6トンの重さに耐えられる構造の椅子が!!』『片手で折られた!!』『ゴリラどころじゃないぞ!!』『横のボタンを押せば開いたのに!』
皆さんシツレイなことを仰ってませんか!
で、収納部分に収まっていたのはちっちゃいチップだった。
Aフォンが寄ってきて、これをぺろりと取り込む。
そしてぶるぶる動き出した。
あっ、止まった。
インストール終わったんだな。
チップをペッと吐き出した。
Aフォンの画面が光って、私のアバターが書き換わる。
体にフィットした感じの宇宙服だ!
「ほえー、宇宙服ってもっともこもこした感じのイメージだったんですけど」
『体に完全にフィットしてしまえば問題ないのよ。アバターを使って3次元同士の間に別の次元を挟んでいるから、絶対零度みたいな寒さもシャットアウトするし』
ケイトさんの説明が超未来SFなんだが?
「ひええすごい」
『あ、種子島センターの者です。こちらの宇宙服は理論上しか存在せず、モノとして作ることがまだ出来ていません。ですので、アバターを纏ってそれに効力を持たせられる有名配信者の方しか使えない状態になっております』
「なるほどー」
『つまりきら星はづきさん専用ということになります。他の方は宇宙に出られませんので』
「あひー!? 責任重大!」
『でははづきさん、ヘルメットを展開してください。酸素はバックパックから供給されます。こちらもアバター技術に頼った嘘の構造ですので、配信者の方しか使えませんね』
なるほどなるほど。
ヘルメットもそんなに大きくなくて、まんまるで全体が透明だった。
髪が自動的にぎゅっとまとまって、後ろでお団子になる。
シニヨンの髪型、かわいくていいね。
「なるほろー。じゃあ外に出ますね」
『あっあっ、判断が早いです! まだ宇宙服の操作方法を……』
ポーンと外に出た私。
そうしたら、水中にドブンと入ったような感覚に包まれた。
おほー、これがエーテルですか。
私は手を伸ばして、平泳ぎの要領ですいすいと泳ぐ。
進む進む。
『エーテルの海を泳いでる……!? そ、そうか。真空と違い、エーテルは水のようなものとして認識できるのか! いや、だがこれも配信者だからできる行為の可能性が……。それにこれは本来のエーテルとは違う、仮想の状態で……』
色々問題山積みみたいですね!
でも、のんびり研究してるヒマがないと。
火の大魔将が宇宙からやって来ようとしてるもんね。
この間は眷属がバーチャル空間に襲ってきたし。
あれはどうやら、エーテル空間で動けなくなった人工衛星を使い、魔将が入り込んできたということみたい。
お陰で近頃、バーチャル空間では火の大魔将の眷属をよく見かけるようになった。
配信者たちは大忙しなのだ!
『はづきさん! 腰! 腰に飾りみたいなのがあるでしょう。それスラスターです。本来は圧縮空気を吹き出すタイプなんですが、容積が確保できないので呪文を内部に書き込んで、インパクトを後ろに打ち出して前進します』
「あっ、はいはい。このボタンを押すんです? どーれ」
ポチっと押したら、バブンッと後ろに向かって衝撃が飛び出した。
私がぐんっと前進。
そのままゆるゆるとエーテルの中を進む。
『実際のエーテルがどうかはまだ確認しきれていないのですが、抵抗を多めに見積もっています。H2Oの80%ほどに』
「あー、水中よりも軽い感じですもんね。確かにそれくらい。でもこれだとあんま推進機として機能してない気がします。えっと、泳ぎのほうがまだマシみたいな? 真空ベースでデザインされてます?」
『あっ、それはあるかもですね……。宇宙でエーテルの素材を採取する方法が今のところ無いので……。各国が打ち上げてる回収用のロボットもことごとく眷属にやられているので』
人類、地球に閉じ込められてるモードなんじゃん!
それはそれで別にいいかなーと思うけど、気分はよろしくないよねえ。
『はー、グランマがミスター・タネガシマと対等に話してる……』
『ケイト、ゴゾンジナイノデスカ? 彼女はアバターを介した実践ダンジョン研究者の第一人者でもあるんだぞ! 彼女のオマエラの一人に研究者がいて、ミス・ハヅキに許可をもらいながら論文を幾つも発表している』
『あ、そう言えば……!! なんでグランマの名前があるんだろうって思ってたら』
えっ、そんなことに!?
持つべきものはリスナーだなあ。
そう言えば、前にイカルガに直接そんなお願いが来てた気もする……。
すいすいっと泳ぎ回った私。
なるほど、悪くないんじゃないでしょうか。
戻っていく私なのだった。
さて、ロケットはここから逆噴射して、地球に戻っていく模様です。
大気圏突入と言うとなんか燃え上がって大変そうなイメージがあるんですが……。
『今回は大気の壁をバウンドしてですね。こう、段階的に弾みながら落下していきます。こう表面積も広がるようになっていてですね』
「のんびり落下する感じですねー。ソユーズ方式かあ。了解です~」
『グランマが想像以上に詳しかった……』
ケイトさんは何で衝撃を受けているのかしら!
こうして私は、落下のシミュレーションも体験して、無事に戻ってきたのだった。
私のロケットが着水した大西洋がいきなり発射場に切り替わった。
このあたりはバーチャルならではですねえ。
で、種子島さんも来てた。
「素晴らしいデータがとれました。ありがとうございますはづきさん。それから、今回のような訓練を何度かやって、宇宙飛行のための練習としてですね、徐々に慣れていっていただければいいなと。敵が襲ってこなければですが」
「おおー! 思ったより楽しかったのでまた期待してますー!」
私は興奮しながら、種子島さんと両手で握手するのだった。
いいね、宇宙!
「ほうほう、どれどれ……? 固いなあ」
椅子がガッチリしてて、収納部分が出てこない。
ベルっちはまた栄養補給のために帰っていったから、これは私が自力でなんとかするしかないなあ。
「あちょー!」
気合を入れたら、バキッと音がして椅子が横に倒れた。
「あーっ、ごめんなさい! 儚い」
『あっ! 6トンの重さに耐えられる構造の椅子が!!』『片手で折られた!!』『ゴリラどころじゃないぞ!!』『横のボタンを押せば開いたのに!』
皆さんシツレイなことを仰ってませんか!
で、収納部分に収まっていたのはちっちゃいチップだった。
Aフォンが寄ってきて、これをぺろりと取り込む。
そしてぶるぶる動き出した。
あっ、止まった。
インストール終わったんだな。
チップをペッと吐き出した。
Aフォンの画面が光って、私のアバターが書き換わる。
体にフィットした感じの宇宙服だ!
「ほえー、宇宙服ってもっともこもこした感じのイメージだったんですけど」
『体に完全にフィットしてしまえば問題ないのよ。アバターを使って3次元同士の間に別の次元を挟んでいるから、絶対零度みたいな寒さもシャットアウトするし』
ケイトさんの説明が超未来SFなんだが?
「ひええすごい」
『あ、種子島センターの者です。こちらの宇宙服は理論上しか存在せず、モノとして作ることがまだ出来ていません。ですので、アバターを纏ってそれに効力を持たせられる有名配信者の方しか使えない状態になっております』
「なるほどー」
『つまりきら星はづきさん専用ということになります。他の方は宇宙に出られませんので』
「あひー!? 責任重大!」
『でははづきさん、ヘルメットを展開してください。酸素はバックパックから供給されます。こちらもアバター技術に頼った嘘の構造ですので、配信者の方しか使えませんね』
なるほどなるほど。
ヘルメットもそんなに大きくなくて、まんまるで全体が透明だった。
髪が自動的にぎゅっとまとまって、後ろでお団子になる。
シニヨンの髪型、かわいくていいね。
「なるほろー。じゃあ外に出ますね」
『あっあっ、判断が早いです! まだ宇宙服の操作方法を……』
ポーンと外に出た私。
そうしたら、水中にドブンと入ったような感覚に包まれた。
おほー、これがエーテルですか。
私は手を伸ばして、平泳ぎの要領ですいすいと泳ぐ。
進む進む。
『エーテルの海を泳いでる……!? そ、そうか。真空と違い、エーテルは水のようなものとして認識できるのか! いや、だがこれも配信者だからできる行為の可能性が……。それにこれは本来のエーテルとは違う、仮想の状態で……』
色々問題山積みみたいですね!
でも、のんびり研究してるヒマがないと。
火の大魔将が宇宙からやって来ようとしてるもんね。
この間は眷属がバーチャル空間に襲ってきたし。
あれはどうやら、エーテル空間で動けなくなった人工衛星を使い、魔将が入り込んできたということみたい。
お陰で近頃、バーチャル空間では火の大魔将の眷属をよく見かけるようになった。
配信者たちは大忙しなのだ!
『はづきさん! 腰! 腰に飾りみたいなのがあるでしょう。それスラスターです。本来は圧縮空気を吹き出すタイプなんですが、容積が確保できないので呪文を内部に書き込んで、インパクトを後ろに打ち出して前進します』
「あっ、はいはい。このボタンを押すんです? どーれ」
ポチっと押したら、バブンッと後ろに向かって衝撃が飛び出した。
私がぐんっと前進。
そのままゆるゆるとエーテルの中を進む。
『実際のエーテルがどうかはまだ確認しきれていないのですが、抵抗を多めに見積もっています。H2Oの80%ほどに』
「あー、水中よりも軽い感じですもんね。確かにそれくらい。でもこれだとあんま推進機として機能してない気がします。えっと、泳ぎのほうがまだマシみたいな? 真空ベースでデザインされてます?」
『あっ、それはあるかもですね……。宇宙でエーテルの素材を採取する方法が今のところ無いので……。各国が打ち上げてる回収用のロボットもことごとく眷属にやられているので』
人類、地球に閉じ込められてるモードなんじゃん!
それはそれで別にいいかなーと思うけど、気分はよろしくないよねえ。
『はー、グランマがミスター・タネガシマと対等に話してる……』
『ケイト、ゴゾンジナイノデスカ? 彼女はアバターを介した実践ダンジョン研究者の第一人者でもあるんだぞ! 彼女のオマエラの一人に研究者がいて、ミス・ハヅキに許可をもらいながら論文を幾つも発表している』
『あ、そう言えば……!! なんでグランマの名前があるんだろうって思ってたら』
えっ、そんなことに!?
持つべきものはリスナーだなあ。
そう言えば、前にイカルガに直接そんなお願いが来てた気もする……。
すいすいっと泳ぎ回った私。
なるほど、悪くないんじゃないでしょうか。
戻っていく私なのだった。
さて、ロケットはここから逆噴射して、地球に戻っていく模様です。
大気圏突入と言うとなんか燃え上がって大変そうなイメージがあるんですが……。
『今回は大気の壁をバウンドしてですね。こう、段階的に弾みながら落下していきます。こう表面積も広がるようになっていてですね』
「のんびり落下する感じですねー。ソユーズ方式かあ。了解です~」
『グランマが想像以上に詳しかった……』
ケイトさんは何で衝撃を受けているのかしら!
こうして私は、落下のシミュレーションも体験して、無事に戻ってきたのだった。
私のロケットが着水した大西洋がいきなり発射場に切り替わった。
このあたりはバーチャルならではですねえ。
で、種子島さんも来てた。
「素晴らしいデータがとれました。ありがとうございますはづきさん。それから、今回のような訓練を何度かやって、宇宙飛行のための練習としてですね、徐々に慣れていっていただければいいなと。敵が襲ってこなければですが」
「おおー! 思ったより楽しかったのでまた期待してますー!」
私は興奮しながら、種子島さんと両手で握手するのだった。
いいね、宇宙!
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