ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。

あけちともあき

文字の大きさ
上 下
377 / 517
打ち上げ! 私のロケット編

第378話 船外活動シミュレーション伝説

しおりを挟む
 椅子の下に宇宙服が格納されているそうです。

「ほうほう、どれどれ……? 固いなあ」

 椅子がガッチリしてて、収納部分が出てこない。
 ベルっちはまた栄養補給のために帰っていったから、これは私が自力でなんとかするしかないなあ。

「あちょー!」

 気合を入れたら、バキッと音がして椅子が横に倒れた。

「あーっ、ごめんなさい! 儚い」

『あっ! 6トンの重さに耐えられる構造の椅子が!!』『片手で折られた!!』『ゴリラどころじゃないぞ!!』『横のボタンを押せば開いたのに!』

 皆さんシツレイなことを仰ってませんか!

 で、収納部分に収まっていたのはちっちゃいチップだった。
 Aフォンが寄ってきて、これをぺろりと取り込む。
 そしてぶるぶる動き出した。

 あっ、止まった。
 インストール終わったんだな。
 チップをペッと吐き出した。

 Aフォンの画面が光って、私のアバターが書き換わる。
 体にフィットした感じの宇宙服だ!

「ほえー、宇宙服ってもっともこもこした感じのイメージだったんですけど」

『体に完全にフィットしてしまえば問題ないのよ。アバターを使って3次元同士の間に別の次元を挟んでいるから、絶対零度みたいな寒さもシャットアウトするし』

 ケイトさんの説明が超未来SFなんだが?

「ひええすごい」

『あ、種子島センターの者です。こちらの宇宙服は理論上しか存在せず、モノとして作ることがまだ出来ていません。ですので、アバターを纏ってそれに効力を持たせられる有名配信者の方しか使えない状態になっております』

「なるほどー」

『つまりきら星はづきさん専用ということになります。他の方は宇宙に出られませんので』

「あひー!? 責任重大!」

『でははづきさん、ヘルメットを展開してください。酸素はバックパックから供給されます。こちらもアバター技術に頼った嘘の構造ですので、配信者の方しか使えませんね』

 なるほどなるほど。
 ヘルメットもそんなに大きくなくて、まんまるで全体が透明だった。
 髪が自動的にぎゅっとまとまって、後ろでお団子になる。
 シニヨンの髪型、かわいくていいね。

「なるほろー。じゃあ外に出ますね」

『あっあっ、判断が早いです! まだ宇宙服の操作方法を……』

 ポーンと外に出た私。
 そうしたら、水中にドブンと入ったような感覚に包まれた。
 おほー、これがエーテルですか。

 私は手を伸ばして、平泳ぎの要領ですいすいと泳ぐ。
 進む進む。

『エーテルの海を泳いでる……!? そ、そうか。真空と違い、エーテルは水のようなものとして認識できるのか! いや、だがこれも配信者だからできる行為の可能性が……。それにこれは本来のエーテルとは違う、仮想の状態で……』

 色々問題山積みみたいですね!
 でも、のんびり研究してるヒマがないと。
 火の大魔将が宇宙からやって来ようとしてるもんね。
 この間は眷属がバーチャル空間に襲ってきたし。

 あれはどうやら、エーテル空間で動けなくなった人工衛星を使い、魔将が入り込んできたということみたい。
 お陰で近頃、バーチャル空間では火の大魔将の眷属をよく見かけるようになった。

 配信者たちは大忙しなのだ!

『はづきさん! 腰! 腰に飾りみたいなのがあるでしょう。それスラスターです。本来は圧縮空気を吹き出すタイプなんですが、容積が確保できないので呪文を内部に書き込んで、インパクトを後ろに打ち出して前進します』

「あっ、はいはい。このボタンを押すんです? どーれ」

 ポチっと押したら、バブンッと後ろに向かって衝撃が飛び出した。
 私がぐんっと前進。
 そのままゆるゆるとエーテルの中を進む。

『実際のエーテルがどうかはまだ確認しきれていないのですが、抵抗を多めに見積もっています。H2Oの80%ほどに』

「あー、水中よりも軽い感じですもんね。確かにそれくらい。でもこれだとあんま推進機として機能してない気がします。えっと、泳ぎのほうがまだマシみたいな? 真空ベースでデザインされてます?」

『あっ、それはあるかもですね……。宇宙でエーテルの素材を採取する方法が今のところ無いので……。各国が打ち上げてる回収用のロボットもことごとく眷属にやられているので』

 人類、地球に閉じ込められてるモードなんじゃん!
 それはそれで別にいいかなーと思うけど、気分はよろしくないよねえ。

『はー、グランマがミスター・タネガシマと対等に話してる……』

『ケイト、ゴゾンジナイノデスカ? 彼女はアバターを介した実践ダンジョン研究者の第一人者でもあるんだぞ! 彼女のオマエラの一人に研究者がいて、ミス・ハヅキに許可をもらいながら論文を幾つも発表している』

『あ、そう言えば……!! なんでグランマの名前があるんだろうって思ってたら』

 えっ、そんなことに!?
 持つべきものはリスナーだなあ。
 そう言えば、前にイカルガに直接そんなお願いが来てた気もする……。

 すいすいっと泳ぎ回った私。
 なるほど、悪くないんじゃないでしょうか。

 戻っていく私なのだった。
 さて、ロケットはここから逆噴射して、地球に戻っていく模様です。
 大気圏突入と言うとなんか燃え上がって大変そうなイメージがあるんですが……。

『今回は大気の壁をバウンドしてですね。こう、段階的に弾みながら落下していきます。こう表面積も広がるようになっていてですね』

「のんびり落下する感じですねー。ソユーズ方式かあ。了解です~」

『グランマが想像以上に詳しかった……』

 ケイトさんは何で衝撃を受けているのかしら!

 こうして私は、落下のシミュレーションも体験して、無事に戻ってきたのだった。

 私のロケットが着水した大西洋がいきなり発射場に切り替わった。
 このあたりはバーチャルならではですねえ。
 で、種子島さんも来てた。

「素晴らしいデータがとれました。ありがとうございますはづきさん。それから、今回のような訓練を何度かやって、宇宙飛行のための練習としてですね、徐々に慣れていっていただければいいなと。敵が襲ってこなければですが」

「おおー! 思ったより楽しかったのでまた期待してますー!」

 私は興奮しながら、種子島さんと両手で握手するのだった。
 いいね、宇宙!
しおりを挟む
感想 189

あなたにおすすめの小説

社畜の俺の部屋にダンジョンの入り口が現れた!? ダンジョン配信で稼ぐのでブラック企業は辞めさせていただきます

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

借金背負ったので死ぬ気でダンジョン行ったら人生変わった件 やけくそで潜った最凶の迷宮で瀕死の国民的美少女を救ってみた

羽黒 楓
ファンタジー
旧題:借金背負ったので兄妹で死のうと生還不可能の最難関ダンジョンに二人で潜ったら瀕死の人気美少女配信者を助けちゃったので連れて帰るしかない件 借金一億二千万円! もう駄目だ! 二人で心中しようと配信しながらSSS級ダンジョンに潜った俺たち兄妹。そしたらその下層階で国民的人気配信者の女の子が遭難していた! 助けてあげたらどんどんとスパチャが入ってくるじゃん! ってかもはや社会現象じゃん! 俺のスキルは【マネーインジェクション】! 預金残高を消費してパワーにし、それを自分や他人に注射してパワーアップさせる能力。ほらお前ら、この子を助けたければどんどんスパチャしまくれ! その金でパワーを女の子たちに注入注入! これだけ金あれば借金返せそう、もうこうなりゃ絶対に生還するぞ! 最難関ダンジョンだけど、絶対に生きて脱出するぞ! どんな手を使ってでも!

底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。 底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。 ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。 だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。 翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

処理中です...