ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。

あけちともあき

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年越し私のまったり編

第365話 四人+1の振り袖伝説

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「私、新年の振り袖もうレンタルしてあるんだけど」

「はづきちゃん、今回のはリアルの方じゃなくて、バーチャル空間でやろうかなって」

「あー、あー、そういう」

 それなら自宅にいながらみんなと初詣できるね。
 ……私が初詣を終えているから、初ではない……?

「また先輩が変なこと考え始めた」

『どうでもいいことで引っかかるのよね、はづきも私も。でもどうでもいいんじゃない』

「ベルっちがそう言うなら……」

「師匠が自分の中だけで解決した。便利だなあ、もう一人の自分」

「はぎゅうちゃんも欲しい?」

「いやあ、あたしは遠慮しておきます……!! 絶対に同じ男を好きになって、殴り合いの喧嘩になるんで……」

 な、なるほど~!!
 もう一人の自分、私だからこそ平和的に片付いているのかも知れない。

「ちなみに、事後承諾でごめんだけど、人数分の振り袖アバターはもう発注してあります。私の自腹で!! みんなにプレゼント!!」

 ぼたんちゃんの宣言に、私たち三人(うち私二人を一人と数える)はうおおおーっと驚いた。

「当然、はづきちゃんは二人分。白とピンクのと、黒とピンクのブタさん振り袖を……」

「凄い」

『めちゃくちゃ高かったでしょ……!』

 アバター一個作るのに、百万単位で掛かるもんね。
 それを三人+αぶん!?

 この人、2ヶ月分の収入を全部つぎこんだな……!?

「ど、道楽の配信者~!」

 もみじちゃんがドン引きしていた。
 彼女の収益の大部分はパン屋さんに還元されてるもんね。

 はぎゅうちゃんはと言うと。

「あたしは全部貯金してるなあ」

 貯金額が凄いことになってそう。
 私のは全部母が管理、資産運用してる。
 なので、家が増築されたりしてるわけでして。

 そうかそうか、みんなお金の使い方は色々だなあ。
 ビクトリアは使う暇も無いくらい、勉強と仕事で忙しいし。
 ファティマさんはどうなんだろう? よく分からない。

 カナンさんは旅行に全部使いそう。
 そしてその旅が新たに経済を回していく……!

「ちなみに発注はいつものエメラクさんにお願いしました」

「エメラクさん、本当にイカルガエンタに一番深く関わっているイラストレーターになってしまった」

 私がしみじみ呟いたら、ぼたんちゃんがぼそっと、

「きら星はづきちゃんはイラストレーターとしてスレイヤーVさんに協力してるもんねー」

 なんて言ってきたのだ。
 こ、これはもしや、ぼたんちゃんも私に描いて欲しいという意味だったりするのだろうか!
 いや、絶対そうだなこれ。

「今度ツブヤキックスにファンイラスト上げておくね」

「ほんと!? ありがとうー!! 大好き!!」

 ちゅちゅちゅっとされそうだったので、私は後転して逃げた。
 今日のぼたんちゃんはかなり強力だぞ……!!

「二人とも、狭いところでバタバタしないでー! はひ~」

 あっ、もみじちゃんが巻き込まれてごろごろ転がった!
 一番小さいからなあ。

 ちなみに世間では、もみじちゃんこそ私の一番弟子みたいな扱いになってる。
 ダンジョン環境そのものを改変する、強大な現代魔法の使い手みたいな。

 私はそんなことしてないのに、なんで弟子……?

 私としては、はぎゅうちゃんこそ私のスタイルを受け継ぐ人だと思ってるんだけど。
 正面突破の力押しタイプだし。

 こうして初詣企画を詰めるというか、こういうことやりたいねーっていう話をして、私たちは満足したのだった。
 最後は私とベルっちで、ちゅっちゅを迫るぼたんちゃんをツープラトンのブレーンバスターもどきでベッドに沈めた。

「ああ~。ダブルはづきちゃんにハグしてもらえた……。いい人生だった……」

 昇天している!
 でも、どうにか立ち上がってお見送りに来た。

 ちょうどお店が終わり、ぼたんちゃんのお父さんも帰ってきたところ。

「みんな、帰り気をつけてね。また来てね」

 優しいいいお父さんだ~。
 そして、ベルっちが増えていることに気付いて首を傾げた。
 おっと、いけないいけない。

 私はサッとベルっちを自分に戻す。

「き、消えた!」

「ダディ、仕事で疲れてるのよ。気にしない気にしない。また来て、絶対! ばいばい、おやすみ!」

 ぼたんちゃんが力技で誤魔化してくれた。
 さあ帰ろう帰ろう。

 冬の夜は、空気が澄んでる感じがしますねえ。
 なんか不思議な匂いがした。

「雪の匂いだって聞いたことあるー」

 知っているのかもみじちゃん!

「うちのお母さんが雪が降るところの出身なので」

「なるほどー」

 じゃあ、もしかして年越しは雪の中ってこと?
 それはそれでロマンチックだなあ。電車止まるかもだけど。

 そういう意味では、オンラインでバーチャル初詣を企画したぼたんちゃんには先見の明があったと言えるのではないだろうか!
 なんか私たち三人に何も言わないで発注まで全部終わってたんだけど。

 これ、エメラクさんもノリノリで描いてすごい速度で納品してきたよねきっと。
 Aフォンに転送してもらった私の振り袖を見て、しみじみとそう思うのだった。

 うーん。
 こうして見ると、私とベルっちの見分けがあんまりつかなくない?

「衣装でキャラ分けしてるけど、もうちょっとこう、髪の色とかで調整した方がいい気がしてきた……。家に帰ってからいじってみようかな?」

「師匠がなんかまた変なことを考えてる」

「いつものことー」

 こうして電車に乗り込む私たちなのだった。
 明日からは冬休み。

 真っ昼間から配信するぞ。
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