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秋めく私の学園祭編

第297話 学園祭前夜伝説

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 バングラッド氏はすっかり学校を気に入ってしまったようで、学園祭までは毎日連れて行くことになった。
 その間、なんか私の部屋に居候してるんだよね。
 うーん、不思議な居候がいる私の部屋!

 父も母ももう慣れたもので、慌てない。

「ほう、うちの子の友人で? 今度イカルガでデビューを。ほほー」

『きら星はづきは大した人物だ。彼女を育て上げたお主も大したものであるな』

「いやいや、うちの子が凄いのは今に始まったことじゃないですが、僕なんかそこまで、ハハハ」

 なんか父とバングラッド氏が仲良くお喋りしながらお酒飲んでる!
 母と仲良くなっていたカナンさんとは違うパターンだなあ……。

 とりあえず、バングラッド氏は決まった住まいというものが無いらしいので、しばらくうちに置いておくことになった。
 サイズも自由自在だしね。

「リーダーは懐が深いのか、変なものを次々引き寄せるのかわからないわね。多分両方ね」

「ビクトリアも完全に私のことを理解したなあ……。あっ、カナンさんの配信があるって。一緒に見よ」

「了解! それじゃあホットチョコレートを淹れてきてあげるわね」

「ありがたい~」

 明日には学園祭という頃合い。
 きら星はづきすごろくは完成し、今からお客さんの反応が楽しみなのだ。

 入店の挨拶は「こんきら~!」で決まっており、大変気恥ずかしい。
 お前らの前でやる分には平気なのに、リアルでやるのは気後れするの、不思議な感情だな……。

『今日も配信を始めよう。精霊の愛子たちよ、待っていたか? 今宵も大いなる祝福が君たちに降り注がんことを願う。イカルガエンターテイメント所属、カナンだ』

『マネージャーのルンテでーす』

※『精霊の御名において!』『今夜も出た、姉妹コンビ!』『カナンちゃんルンテちゃんきゃわわ』

 親子なんだよなあ~。
 その辺りは、兄からの指示でぼかしてるみたい。
 一般受けするためにはそれが正しいと思う。

 カナンさん、ルンテさんコンビは、魔将ペルパラスの手勢と何度か交戦していて、何体かのダークエルフを倒している。
 なんか、旅ものの番組の後半でバトルがあるような構成よね。

 今日は海が見える町で民宿に泊まり、町の話を聞きながら海鮮を美味しく食べる展開みたいだった。
 既に動画で撮ってたものを見せて、これについてカナンさんとルンテさんが喋って、リスナーさんが反応するみたいな。

 ひとしきりこれで楽しくやった後、背景ががらりと変わる。
 どうやら、町に発生したダークエルフのダンジョンの入口に立っていたらしい。
 そこでこんな呑気な配信を?

「確実にリーダーのやり方を継承しているわよね」

「うん、私もそう思った。絶対やるもん」

 だけどこのやり方は割と正しくて、こうして旅の話と雑談でリスナーを集めて、あったまったところでダンジョン突撃。
 そうすると、溜まりに溜まった同接パワーをダンジョンにぶつけられるわけだ。

 快進撃するカナンさん。
 ルンテさんは撮影役。
 あくまでマネージャーだもんね。

 ついにダークエルフが出てきて、カナンさんと激闘を開始する。
 向こうも精霊魔法っていうのを使うのね。

 だけど、カナンさんの魔法の方が全然強い。
 同接パワー!

 魔法で一方的に押し切ったところで、最後は自分で突っ込んで行って棒で一閃!
 あの棒は観光地名物の木刀だそうです。

 これは聖地になりますわ。

 ダンジョンが解除され、後ろで現地の観光協会の人がワーッと盛り上がった。
 あっ、観光地のロゴが出た!
 協賛してたかー。

「上手いなー」

「大したものね……。私だとコミュ力が低いから無理かな……」

「ビクトリアは声優活動も初めて、別側から人気が高まってるじゃん」

「それはそうだけど、ああいう時代劇みたいな旅をするのにも憧れるのよね」

「そのうち余裕ができたらやるといいんじゃない?」

「そうね。まあ、暇は当分できなさそうだけど……」

 劇場版アニメのゲストキャラの声優として、仕事が決まっているビクトリアなのだ。
 忙しいねえ……!!

 私は私で、明日の学園祭で忙しいけど。

「もちろん、明日は私は行くわよ。サトナも連れて行くわ。連れて行けってうるさいから」

「野中さんが!?」

 野中さとなさん、数々のヒロイン役のみならず、最近は脇役でも名演技をしている実力派声優さんだ。
 あまり会う機会は多くないはずなんだけど、なぜかしょっちゅう接触しているような気がするから不思議なんだよな。

 一応、ツイスターゲーム以来になるのかな。
 楽しみー。

「サトナは、それらしくないように変装して行くから。まあ、多分バレると思うけど。ああ、私は配信者の姿で行くわね。そういう動画の収録だってごまかせるもの」

「楽しみに待ってる~」

「じゃあねじゃあね、リーダー。明日、どういう接客をするのか見せて欲しいわ! 私、気になる~」

「おっけーおっけー。こうやってジャージを着てね」

「バーチャライズじゃないジャージ、新鮮ね……」

「こんきら~! ようこそお前らー!」

「アウトアウトアウト! その『こんきらー』で一発で分かるわ!! いつものノリでやったらダメ! こなれすぎててワンアンドオンリーよ!」

 唯一無二過ぎると言われてしまった!
 な、なるほどー。
 慣れた言葉だからこそ、言い換えをしないといけないのか……。

「あっ、カンナちゃんからもザッコ来てる! 明日行きますって。きゃー!」

「リーダーが盛り上がってる! あ、でもそういう普通の女子高生っぽい演技がいいかも。ここは声優である私が色々コーチングしてあげるわね……」

「はっ、よろしくお願いしますビクトリアコーチ!」

 こうして、学園祭前夜は更けていくのだった。
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