ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。

あけちともあき

文字の大きさ
上 下
270 / 517
ハッピーバースデーな私と激動の世の中編

第270話 再会のインフェルノ伝説

しおりを挟む
 私のセンシティブコスプレな人も何人かいた。
 大喜びでパシャパシャ撮影させてもらいつつ、

「あ、あの、私、イカルガエンターテイメントのスタッフなんですけど、きら星はづきさんの配信でこの写真を使わせてもらっていいですか……」

「えーっ、本当ですか!? いいですよいいですよー!! はづきっちに紹介されちゃうの嬉しい~!」

 こんな感じのやり取りをして許可をもらった。
 その後、ツブヤキックスでアップしたら、向こうから「どええええええ!? はづきっちのツブヤキックスアカウントから直でさっきの写真が!? えっ!? じゃ、じゃあさっきの、本物のはづきっち!?」「はづきっちがはづきっちのコスプレして会場に紛れ込んでるぞ!!」

 うわーっ!
 どよめきが広がっている!

「やってしまったねえはづきちゃん……。さあ、素早く移動しよう」

「移動しよう移動しよう」

 私はぼたんちゃんを盾にしながら移動した。
 彼女は妙に嬉しそうに、私の手を握りながら誘導してくれる。

 いや、この建物の構造には私のほうが詳しいんですけどね……!
 でもまあ、彼女がくっついてたらはぐれないし、いいのではないか。

「それにしても、みんな不思議だよね」

「何が不思議?」

 ぼたんちゃんがしみじみ呟いたので、どういうことだろうと思ったら。

「みんなさ、明後日には魔将がやって来てこの辺りが戦場になるっていうことを知ってるんだよね? なのにみんなで遊びに来て、ワーッと楽しんでさ。他の国では大きい戦いがあるぞってなったら色々なイベントを中断して立ち向かうでしょ。なのに負けて無くなっちゃった国も多いって聞くし」

「うーん、なんかね、迷宮省から『極力イベントの中止をするな』っていう通達が出てるんだって。自粛したりすると、むしろそれはダンジョンの力になるんだそうで」

「そうなんだ……。それにしたって、みんなもこんな楽しそうに参加してて、本当に不思議……」

「楽しければオッケーじゃないでしょうか! ということで、インフェルノのとこ行こう行こう」

 私はぼたんちゃんをくっつけたまま移動した。
 リュックから、黒い不透明な超大型エコバッグを取り出す私。

「は、はづきちゃん、それは……」

「コミックイベントに来たら、本を買わなきゃでしょ……」

 ということで、インフェルノのブースに向かうまで、気になるところをぐるぐる回っていくのだ。

「あっ、読んでもいいですか」

「どうぞどうぞ」

「ははぁ、ほー、ふーん、おほー。じゃあ下さい」

「ありがとうございまーす、500円でーす」

 これを不思議そうに眺めているぼたんちゃん、サークルの人に会釈して一冊手に取り、パラパラ読む。
 そして、私が買ったのと同じのを一冊買った。

「不思議な文化……」

「でしょー。同人誌はいいよー。同好の士が作ってくれてるんだもん。愛120%だよね」

「そんなものなの……?」

 おっと、ここから先は猛烈な人混みだ。
 あちらは女子人気が凄まじい、銃剣乱舞とかスパイラルワンダーランド……通称スパステとか、ポートボールに青春を賭けた男子高校生たちの漫画とかの地域なのだ。

「ぼたんちゃん、あそこに踏み込んだら戻ってくれなくなるから私から離れないでね」

「ダンジョンの中でもはづきちゃんにそんなこと言われたこと無い! そこまでのものなの、コミベは……!」

 そこまでのものなのだ!
 行列は途中途中でスタッフさんが管理しているので、通過できる隙間が設けられている。
 ここを走らず、落ち着いて通り過ぎる……。

「はづきちゃんはああいうゲームとかしないの?」

「私はその、可愛い女子がでるゲームの方が好きなので……」

「あ、そっちは私と同じだ」

 なんかニコニコするぼたんちゃん。
 そうかそうかー。
 分かりあえて嬉しい。

 今回みたいなコンテンツは、受付さんが大好きなやつだもんね。

 ちょっと移動したら、BLコーナーに突入した。

「う、う、うわーっ」

 過激なBLの数々に、免疫のないぼたんちゃんが赤面している。
 私は冷静にブースを周り、

「これ、拝見していいですか」

「どうぞどうぞ」

「ほうほう、ふむ、へえ、おほー。じゃあ下さい。新刊既刊全部」

「ありがとうございます! セットで3000円です!」

「……はづきちゃん、こっちもいけるの……?」

「GLもBLもえっちなのも嗜みます……」

 父からもらったパソコンで英才教育を終えてるからね。
 そうやって広大なBLエリアを抜けるうちに、私のエコバッグはなかなかの重量になって来た。

 これは……家まで梱包して送るべきかも知れない。

 そしてついに本日のメインイベント!
 インフェルノのブースだ!

「はづきちゃん、なんかあそこの一角だけ異様な雰囲気なんだけど……」

「アメコミっぽいシャツとかコスプレの人が並んでるねえ。あそこはアメコミブース」

「そうなんだ……」

 ぼたんちゃんが警戒している!
 だけど全然怖くないよ。

「インフェルノ~!」

 私が手を振ったら、一番ムキムキな白人の男性がハッとした。
 そして、満面の笑顔で手を振り返す。

「リーダー! 久しぶりだな!」

 すかさずAフォンが翻訳してくれるぞ。

「インフェルノも元気だった? これ新刊? わー、本当に私が表紙になってる! うわーっ、インフェルノさすが上手い!」

「同人誌だからこそ俺が描けるが、普段はペンシラーが俺のラフを清書してるんだよ。俺は漫画家じゃなくてコミックライターだからな」

「なるほどねえ。じゃあ全部ちょうだい。配布用も入れて五部ずつ」

 私は一万円札を出してたくさん買った。

「あれっ? リーダーじゃない」

 そこに戻ってきたのは、なんとビクトリアだ。

「あれー? ビクトリアどうしたの?」

「今日はインフェルノのブースで売り子をしているのよ。そのついでに外に出てたくさん買ってこれるわ」

 ビクトリアにとってもお祭りみたいなものだもんね。
 それにインフェルノは、往復で何百万もかけて日本に来てるので、どれだけ本が売れても大赤字確定。
 これはもう、彼の趣味なのだ!

 私たちはここで、同窓会みたいな感じでお喋りを楽しんでしまった。
 懐かしいなあ、アメリカ遠征。

「ジャパンはこれから、トップクラスのジェネラルデーモンが来るそうじゃないか。なのにこうやってコミックイベントを大々的にやってるクレイジーさ、嫌いじゃないぜ」

「うんうん。楽しいことはやっぱ絶対にやりきんないとね!」

 全くだねえ、と同意し合う私とインフェルノとビクトリアなのだった。
 今度はカイワレも加えてみんなで同窓会したいなあ。
しおりを挟む
感想 189

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます

neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。 松本は新しい世界で会社員となり働くこととなる。 ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。 PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...