ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。

あけちともあき

文字の大きさ
上 下
267 / 517
ハッピーバースデーな私と激動の世の中編

第267話 もみじちゃんのコラボパン伝説

しおりを挟む
 もみじちゃんが、パンメーカーとコラボしてパンを出しているのは有名な話。
 私もちょこちょこコンビニで買ったりもするけど、やはり彼女の実家で作っているコラボパンがダントツで美味しい。
 値段も三倍くらいするけど。

「メーカーは流通させるのと日持ちさせないとだから、色々制限ありますしねー。でも凄く美味しく作ってくれてますよ。うちで作ってるのはコスト度外視だからで、でもお陰でお店に置いたら一時間以内に完売しますしー」

「めちゃくちゃ売れてた!!」

 その日のパンを一個もらった私は、もりもり食べるのだ。
 鹿の頭の形をしたパンで、中には味付けひき肉が入ってる。
 味わいはスパイシー。

 ご飯にするためのパンだ!
 主食であり、主菜も中に入ってる……。

「美味しい~」

「でしょでしょ。ということで、今日はメーカーさんにお邪魔して、はづき先輩にはコラボ会議とか試作に参加してもらおうという企画です」

「な、なんだってー!」

※『ここまでが茶番か……』『もみじちゃんは実家もパン屋さんなんだな』『あれだけパン愛を語ってるんだからパン屋で当たり前だろうな……』

 なんかもう、もみじちゃんは実家バレしているという噂があるらしいけど、彼女のファンたちは大変民度が高いのだ。
 常にパンを食べてお腹が膨れているからかも知れない。

 聖地巡礼の総本山ということで、パンを買ってる人もいるのかも。

「じゃあ、メーカーさんが用意したバスに乗ってですね」

「ほいほい」

 マイクロバスで、工場まで運ばれていくのだ。
 本日は、明け方くらいの時間帯。

 パン工場は一晩中動いてるけど、この時間は工場が一時メンテナンスをしたり、社員の人が出勤してくる時間帯なのだ。
 工場に到着したら、ちょうどいい時間だった。

「ようこそ、きら星はづきさん! 私がこの工場長です!」

「あっあっ、どうもどうも」

 私はペコペコしながら握手した。
 恰幅のいいおじさんだ。
 フレンドリーな感じだけど、陽の者の気配を纏っている……!!

※『はづきっち、陽の者が本当に苦手なんだな……』『もみちゃんは割とグイグイ行くから凄く新鮮』

 ほうほう、もみじちゃんは、みんなからもみちゃんと呼ばれているのか。
 愛称があるのはいいぞー。

 なお、はぎゅうちゃんは「はぐっさん」ぼたんちゃんは「お嬢」ビクトリアは「トリシア」とか「ビッキー」である。
 ファティマさんは早々に「ママ」って呼ばれてるけどね。

「今日は会議から、実際にコラボパンを作ってみるところまでやってみましょう!」

「はーい!」

「う、うっす」

※『はづきっちが塩水を掛けられた菜っ葉のようだw』『大人しすぎるw』

 そりゃあ、私も人見知りはしますからね……。
 ダンジョン関連じゃないとこんなもんですよ私は!

 だが、いざ会議が始まるとテンションが上がってきた。

 なにっ、パンの中にソーセージの輪切りを連続で並べて、ピザソースを!?
 歯ごたえが想像できる……。
 プチプチとしたソーセージの食感をずっと味わえる上に、パンは平たくて食べやすい……。

 いいじゃないかいいじゃないか。

「どうですか先輩? これ、うちが出した企画のパンでですねえ。小さい子も食べやすいように薄くて千切れるプチプチソーセージパンで」

「いいですねえ~。例えば表側はもみじちゃんの可愛いデザインにして裏側に格子っぽく跡をつけて焼いて、表から見て楽しい千切りやすい工夫もしてある、みたいだと捗りますねえ」

 おおーっとどよめく会議室。

「いいですな、とても具体的な消費者目線の意見だ! 取り入れて一つ作ってみましょう!」

 工場長が判断した。
 パンが食べられる!?
 おほー、こいつはワクワクしてきましたよ。

「はづき先輩、食べ物のことになると頭の回転がすごくなりますね!」

「出された食べ物を前にすると回転が止まるけど、食べ物を作るとなると早くなるね……」

※『今回のコラボ、もみちゃんのはづきっちリスペクトが見えていいねえ』『目がキラキラしてるもみちゃんは可愛い』『いつも可愛いけどな』

 もみじちゃんのリスナーさんたちは本当に民度が高いなあ。
 草を生やしてひたすらツッコミをいれてくるどこかのリスナーとは大違いだ。
 私の配信ちゃんねるは常に大草原だよ。

 さてさて、私たちも滅菌室で消毒し、帽子に白衣に手袋で工場に入ってきた。
 パン生地がこねられてますねえ。

 必要な分の生地が出てきたので、ここでベテランの人がソーセージをぱぱぱっと輪切りにし、並べてからピザソースをぱぱぱっと掛けて……。
 パン焼窯へドーン!
 もちろん、プレートは格子型に盛り上がっている。

 今回は発酵させないピタパンで行くのだ。

 しまらく待つと、大変美味しそうな香りが漂ってくる。
 じりじりしながら待つ。
 その間にパン工場を一通り見学した。

 全部美味しそう。
 こりゃあ美味しいパンが毎日コンビニやスーパーに並ぶわけですわ!!

「はづき先輩がお腹をすかせて殺気立ってる!」

※『そりゃあね』『本当に食べるの大好きな人なんだなあ』『もみちゃんになだめられながら戻っていくぞ』

 工場から出てさっきの部屋へ。
 お腹がぐうぐう言う。
 これは大変なことですよ、大変な。
 なにか食べなければ落ち着かない。

 私が深刻な顔をしていたら、とうとう出ました。
 焼き立ての試作パン!

「おほー! 待ってました!」

「あっ、はづき先輩、まだ焼き立てのあつあつで……!」

「あつ、あつ、ほふほふ、うま、うま」

「まあ、先輩が幸せそうならそれでOKです」

※『恋する乙女みたいな笑顔ではづきっちを見つめるもみちゃん』『スクショタイムだ!』『ダンジョンでは不思議なことをしてるけど、普段は誰よりも世話焼きで常識人だからね……』『はづきっち、今日はコラボしてくれてありがとう』

「? どういたしまして?」

 私はお腹をすかせて、焼き立て試作パンを食べただけだが?
 しかしこのパン美味しいなあ!
 お店に並ぶのが今から楽しみだし、もみじちゃんの家で出るスペシャル版があまりにも待ち遠し過ぎる。

「ご実家でパンを作るのはやはりもみじちゃんが……?」

「両親と三人でやろうと思います! みんなちょっとこだわりがあるんで、三種類のスペシャル版が出ると思いますよ」

「ひええええ全部買う」

 私は嬉しい悲鳴をあげるのだった。
 世の中にまた新たな美味しいものが生まれてしまった!
しおりを挟む
感想 189

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

社畜の俺の部屋にダンジョンの入り口が現れた!? ダンジョン配信で稼ぐのでブラック企業は辞めさせていただきます

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

借金背負ったので死ぬ気でダンジョン行ったら人生変わった件 やけくそで潜った最凶の迷宮で瀕死の国民的美少女を救ってみた

羽黒 楓
ファンタジー
旧題:借金背負ったので兄妹で死のうと生還不可能の最難関ダンジョンに二人で潜ったら瀕死の人気美少女配信者を助けちゃったので連れて帰るしかない件 借金一億二千万円! もう駄目だ! 二人で心中しようと配信しながらSSS級ダンジョンに潜った俺たち兄妹。そしたらその下層階で国民的人気配信者の女の子が遭難していた! 助けてあげたらどんどんとスパチャが入ってくるじゃん! ってかもはや社会現象じゃん! 俺のスキルは【マネーインジェクション】! 預金残高を消費してパワーにし、それを自分や他人に注射してパワーアップさせる能力。ほらお前ら、この子を助けたければどんどんスパチャしまくれ! その金でパワーを女の子たちに注入注入! これだけ金あれば借金返せそう、もうこうなりゃ絶対に生還するぞ! 最難関ダンジョンだけど、絶対に生きて脱出するぞ! どんな手を使ってでも!

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。 底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。 ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。 だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。 翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。

処理中です...