ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。

あけちともあき

文字の大きさ
上 下
261 / 517
真夏な私の遭遇編

第261話 彼女の晴れ舞台はアニメ!伝説

しおりを挟む
 こんな真夏の暑い盛りに日本へ遊びに来たビクトリアのパパとママだが、観光を堪能しているらしい。
 毎日、どこどこを見に行ったという写真がSNSで送られてくる。

「ママとパパにはね、ぜひ見て欲しいものがあるの」

 ほうほう、ぜひ見て欲しいものというと。
 そのために今、二人をこっちに呼んだんだろうし。

「私が声を当ててるアニメ! 明日放送するの!」

「な、なんだってー!」

 私は驚愕した。
 レギュラーではなくて、一話限りのゲストということだったけど……。

 イカルガエンターテイメントビルの三階にプロジェクターを設置し、ここを上映会場とした。
 ビクトリアのご両親をお招きし、暇な社員も集まってアニメを見る。

 日付が変わるくらいの深夜なのに、満員御礼みたいになってる。
 みんなお酒やジュースを片手に、放送が始まるとウワーッと盛り上がった。

『なにっ、配信者がアニメに!?』

 ウェスパース氏までやってきて、イクラとたらこと明太子のおにぎりを食べている。
 連日動画を見たりしているものだから、すっかり日本の文化に詳しくなってしまった。

『知り合いが出るとなると不思議な気分になるものだな』

「ドラゴンと私と同じ感想を抱くとは思わなかったなあ」

 なかなかレアな体験だと思うけど、今後はレアじゃなくなるくらい何回も体験しそうな気がする。

「リーダー! こっちこっち!」

 ビクトリアのお招きだ。
 私は最前列に来て、本日の主役の隣に座った。
 彼女の横にはご両親がいて、ビールを片手にワクワクドキドキしている。

 そして放送が始まった。
 冒険配信者とアイドルがテーマのアニメだね。
 割と今季評判が良かったはずだけど……まさかこれにビクトリアが関わっていたとは。

 海を超えてやって来たというゲストキャラクターが現れると、彼女の口からビクトリアの声がした。

 ウワーッ!!
 と沸き立つイカルガエンターテイメント。
 クラッカーが鳴り、写真のフラッシュが瞬く。

 こ、これは完全に応援上映だ!
 初見なのに応援上映してる!!

 ご両親も大いに盛り上がり、ビクトリアの本名をなんか叫んでる。
 ファンタスティックとか言ってるな。

 思った以上にビクトリアの出番は多く……というか、主役の子と同じくらいセリフがあった。
 30分は一瞬だった。

 強い力を持った海外の配信者の彼女は、主人公と認めあい、空港に巣食ったデーモンを一緒にやっつける。
 二人は再会を誓い合い、海外の配信者は去っていくのだった。
 そして後日。

 海外の配信者が自分のチャンネルで、主人公への感謝の思いを形にした歌を発表する。
 これが特殊エンディングとなり、流れるわけだが……。

 えっ!?
 ビクトリアが歌ってるの!?

「こっそり歌のレッスンもしていたの」

「なんということ」

 アニメのエンディングまでデビューしてしまうとは……。
 おお、キャストにビクトリアの名前が。
 そしてエンディングの歌手にビクトリアの名前が。

 オオーッとどよめくイカルガエンターテイメント一同。
 ビクトリアのご両親が立ち上がり、愛娘をハグした。
 なんか感動的な事になっている!!

 とりあえず拍手した。
 すると、みんなも拍手した。

 ワーッという歓声、またクラッカーが鳴る!
 どんだけ用意してたんだ。

「ちなみに今週末にこの曲が発売される。ビクトリアにはさらなるオファーが来ており、声優としての活動を広げていくつもりだ。これを機に、希望する配信者は芸能活動もやっていこうと考えている」

 兄がなんか発表した。
 イカルガエンターテイメントのより一層の躍進が発表されたことで、みんな大いに盛り上がり……。

 その日は男たちは一階、女たちは二階で寝たのだった。

 翌朝……。
 仕事が終わっている人たちは帰っていき、まだまだやることがある人はその日の仕事を開始する。

 ビクトリアのご両親は今日も日本観光らしい。
 エネルギッシュ~。

「ママ、パパ、私は今日は収録があるから……」

「オー! ジャパンのメジャーアーティストだものね」

「ファイトだマイリトルガール!」

 またハグをしている。
 情熱的~。

 その後、私にも挨拶してきたので、こっちもペコペコ頭を下げた。

 さてさて、ツブヤキックスで昨夜のアニメの感想を検索……。
 終わったあと眠くなったので、さっさと歯磨きして寝てしまったんだよね。

 目覚めたら会社だったからめちゃくちゃびっくりしたけど。

『ビクトリアの演技良かった!』『上手かったよねー』『ちょっと英語訛りなかった?』『アメリカ人だし』『歌良かった』『予約しました』

 歌の予約がもうスタートしてたのか!!
 世界的通販サイトのMiturinを見てみたら、今朝の段階だとビクトリアの歌が予約ランキング一位なのね。
 凄いことになっている。

「リーダーも歌を出さない? 絶対一位になれると思うわ」

「出さないー。私は、歌わない~!」

 それだけはやらないぞ、と固く誓う私なのだった。

 しかし、みんな凄いことになってるなあ。
 ビクトリアは芸能関係にどんどん進出してる。
 日本語ペラペラのアメリカ人だし、日本のオタク文化への造詣がめちゃくちゃ深いし。

 この間なんか、プラモデル配信者のチャンネルに出て色々解説してたもんね。
 マンガ、アニメ、ラノベ、プラモデル、フィギュア、コスプレ……このあたりが彼女の守備範囲。
 あとは歌ってみた動画、通称歌みたもビクトリアは割と出しているのだ。

 私が体を張って活動している間、ビクトリアは全く違う方面で活躍していた!

 とうとう登録者数が70万人を突破したらしく、これはなかなかとんでもない。
 さらに昨夜のアニメで、登録者が一晩で2万人増えたらしい。

 ビクトリア旋風が来るぞ……!

「あっ、朝から会社にはづき先輩がいる!!」

「もみじちゃんだ。おはようー」

 同い年の小さい後輩が、ペコっと頭を下げた。
 かなり髪が伸びて、髪型もおしゃれさんになって来た彼女。
 今度大規模パンメーカーからプロデュースしたパンが出る……。

 もみじちゃんの登録者数も50万人目前なので、こっちも凄い。

 二人とも、イカルガのナンバー2とナンバー3として大活躍なのだ。
 頼れるなあ……。

「じゃあ、私は帰ります」

「昨夜のアニメ、みんなで見てたんですね?」

「そうそう。盛り上がったよー。だから会社に泊まったけど、広いベッドでもう一眠りしたい……」

「あんまり寝るとまたお尻にお肉つきますよ」

「水に沈まなくなっちゃう」

 そんな軽口を叩き合い、私は会社を後にしたのだった。
 お昼寝して起きたら、もうすぐやってくるカナンさんとファティマさんのデビューイベントの準備、しなくちゃなあ。
しおりを挟む
感想 189

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...