上 下
240 / 517
夏めく私の充電編

第240話 ビルから行けるよ地の底ダンジョン伝説

しおりを挟む
「さっそく博多ラーメンを食べたいのですが」

「はづきっち、それは仕事が終わった後の方が最高に美味しいぜ!」

「えっっっ!? 本当!?」

 新情報だな……。
 でも確かに疲れた体に本場のとんこつは効きそう。

「じゃあダンジョン行きましょうか」

 そういうことになった。

「なんだこの姉ちゃんは? おっそろしく強いのは分かるが覇気っちゅうもんが全くない」

 現場に行ったら、髪の毛ツンツンに尖らせてヒゲをドレッドに編んだサングラスにトゲトゲ肩パットのドワーフの人が八咫烏さんとなんかお喋りしている。
 彼はゴズモックという名前の人で、彼らドワーフ青年団のリーダーらしい。

 青年団!?
 なんか全員、人間で言えば十代から二十代らしいんだけど。

 ちなみにドワーフの寿命は百年くらいですって。

「はづきちゃんはマイペースだからね。だけど、こう見えてもこの国の配信者では最強と言っていいよ」

「ほおー。人は見かけに寄らな過ぎる……」

 ワイワイ言うドワーフを引き連れて、ダンジョンが発生したというビルへ。
 私は、チャラウェイさんとカナンさんとゴズモックさんを連れて潜ることにした。

「ウェイウェイ。地上のではみんなが配信を見てるからさ。ドワーフはああ見えて案外戦闘タイプじゃないんだ。どっちかというと手作業に特化してると言うかな」

「おう! わしのような武闘派はそこそこの数だな。みんな鍛冶や細工物がメインだ」

「見た目に反して繊細な作業を得意とする種族だということは聞いたことがあるな」

 三人の話を聞いて、ほえーとなる私なのだ。
 さあ、そんなところで配信を始めてみよう。

「お前ら、こんきらー! 本日は! 福岡県博多市からお送りしまーす! ……えっ、福岡市!? 博多じゃない? す、すみませえん」

※『こんきらー!』『こんきら!』『いきなり場所間違えてて草なんだ』『九州に出張とはなあ!』『とんこつラーメン食べた?』

「まだなんですー。仕事が終わってから食べるので、ちゃっちゃと片付けるぞ! おー!」

※『はづきっちが燃えている!!』『やる気だ!』『食べ物が掛かると本当に強い』

 私が軽妙にコメント欄と掛け合いを始めたので、ゴズモックさんがびっくりした。

「な、な、なんだ!? いきなり饒舌になったぞい!!」

「ウェイ! あれが配信者のサガってやつだなあ! あ、俺も配信始まってるぜ! ヌルっとな! ヒャッハー!」

 チャラウェイさんの方でも、ノリのいいコメントがどんどん流れていく。
 エルフドワーフの二人はちょっと戸惑ってる感じかな。
 二人とも配信している風景は見たことあるけど、自分たちがコラボメンバーになる……みたいなのは初だと思うし。

※『はづきっちの横にいるのエルフさんじゃん!』『かわいい』『高貴な感じがする~』

「ど、どうもありがとう」

 褒められたことにお礼を言うカナンさん、律儀なのだ。
 ゴズモックさんはすぐにチャラウェイさんのリスナーと馴染んで、みんなでヒャッハー!とか言ってる。
 若さ~。

 カナンさん、人間に換算するとうちの母よりちょっと年下くらいだから仕方ない気はする!
 大人の魅力で攻めていこうね。

 こうして私たちはビルに突入したんだけど……。
 なんとこのビル、中身がまるっきり空洞になっていた!

 そして地下に向かって続く坂道があって、ぽっかりと開いたダンジョンへの入り口が赤く輝いている。

「あひー、なんですこれ!?」

※『火山ダンジョン!?』『福岡の町中にこんなものがー!』『これは大変なことですぞ』

「ウェイ、そいつは俺が説明するぜ。魔将バルログが福岡市に拠点を作ってる。こいつ、本当は阿蘇山を狙ってて、あれを噴火させるつもりだったんだ。だから俺と八咫烏の二人で食い止めて、どうにか福岡県に追い込んだ。これから俺たちは、バルログを仕留めに行こうってわけだ!」

 わかりやすーい!
 つまり、ラーメンを食べるためにお腹を空かせる必要があり、バルログ退治がそれだと!
 なるほどー。

※『チャラウェイと八咫烏の二人掛かりで追い込んだってことは、めちゃくちゃ強いのかバルログ!』『大罪勢ほどではなくね?』もんじゃ『大罪勢は本体が脅威なのではなく、環境を異世界へとテラフォーミングみたいに変化させることが恐ろしいと言われている。恐らくあれは、異世界がこの世界を改造するために送り込んだ刺客とも言えるのだろう』『有識者~』

 詳しいなあもんじゃ!
 まあ彼は考察勢なので、これもあくまで考察なんだろうけど。
 確かに大罪勢は自分がいる周りを、自分の世界に改造してたなあ。

 だとすると私はどうなるのかな?
 私もやってたりするのかなー。

「バルログは強いと聞く。あらゆる炎を操り、自らも炎に転じて災厄を振りまく……。森に現れれば、一夜にしてそこは焼け野原になると言われているわ」

「カナンさんも詳しいなあ!」

「鉱山だと被害は全然少ないがのう!」

「ゴズモックさんは楽天的だなあ」

 坂道を下っていく。
 そうしたら、私たちを出迎えるみたいにモンスターが現れた。

 炎に包まれた骨みたいなので、やっぱり燃え上がる炎の翼がある。

「フレイムスケルトンだぞい! バルログの手下だ!」

「オッケー! 慣れた相手だ! 俺が行くぜえ!! ヒャッハー!!」

 チャラウェイさんがトマホークを放り投げながら、フレイムスケルトンに躍りかかる!
 なんかトマホークにロープがついてて、相手を切り裂きながら引き戻して、振り回したりもできるみたい。

 新しい武器だあ。
 私も負けてないぞ。

「じゃあですね、ここで新しく開発した、アンチ蠱毒式神を敵にぶつけてみます」

※『ダンジョンでアンチを使役する!?』『はづきっちが新たなスタイルに目覚めたぞ!』『趣味は良くないがw!』

 Aフォンが吐き出したアンチのデータを、ポーチから取り出したお符に閉じ込めて……。

「むにゃむにゃ、せつ!」

 ボフン、と音がして、お符に手足が生えた。
 式神だ。
 これが私目掛けて、『キラボシハヅキチョウシニノッテル!』とか言って踊りかかってきたので、私はデコピンでふっ飛ばした。

『ウグワーッ!』

 式神がフレイムスケルトンにぶつかる。

『ウグワーッ!』

 フレイムスケルトンもろとも、坂道をゴロゴロ転げ落ちていった。
 私はアンチ蠱毒式神を幾つか作りながら、フレイムスケルトンに投げつける。

『ウグワッ、ウグワッ、ウグワーッ!!』

 あっ、式神もろとも燃え尽きて消えてしまった。

「式神はちょっと威力弱いですねー」

※『そもそもはづきっちに逆らうし、攻撃方法も式神投擲だしw』『式神の必要性~~!!』

「アンチはあんま強くないからちょっと使い道が難しいですねえ」

※『煽りおるwwwww』『陰陽術を使うよりも本人が殴りかかったほうが遥かに強いからなw』『ゴー、はづきっち!!』

「いっきまーす!」

 私は坂道をトコトコ降りると、群がってきたフレイムスケルトンをポコポコ叩いて殲滅していく。
 向こうも炎をブオーっと吐いてくるので、これはゴボウで撃ち返した。

『ウグワーッ!!』

 ゴボウで打ち返すと、炎がピンク色になってフレイムスケルトンを焼き尽くすのね。

「炎を支配した!? これが、ゴボウアース最強の配信者の戦い方……」

※『いや、俺たちも知らんw』『はづきっちが次に何をするのか、いつもさっぱり分からんw』

 私もノリでやっているから、あんまり分かってないのだ。
 こうしてビル地下、火山ダンジョン攻略がスタートしたのだった。
しおりを挟む
感想 189

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

処理中です...