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先輩! 私の新人フォロー編

第152話 イベント開始!はづきっち映り込み伝説

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 デビューイベント、スタート!
 シカコ氏スカウトから二ヶ月弱、ビクトリアは一ヶ月半。
 凄い突貫作業だった……!

 だけど二人ともやる気に満ちてて、もりもりとレッスン成果をものにし、ついにこの日が……。

 あれ?
 私はレッスンも何も受けたことがないが……?

「はづきちゃん、まだ自分が普通の配信者だと思ってる……? 無自覚系の才能だわ……」

 現場までやって来ていた受付さんが感心している。
 そう、今回のイベントはイカルガエンターテイメント総出なのだ。

 普段はリモートで作業をしているたこやきまでやって来てる。

「おひさですー」

「あ、どもども」

 すっかり顔見知りになって、お互いペコペコ挨拶する。
 私が緊張しない兄以外の男性って、カイワレとインフェルノ以外だとたこやきくらいかなあ。

「たこやきさん、今日は何してるんですか」

「リアルタイムで画面の調整かな。万一のトラブルとかスパムとかを防ぐ作業。だから今回はコメントできないと思う」

「そですかー」

「そうなんだよー」

 という話をしてから、お互いにへらへら笑った。
 たこやきには頑張って欲しい。

 向こうでは、兄とマネさんが相談をしている。
 今回のイベントの進め方かな?

 そしてすぐ横で、もみじちゃんとビクトリアが台本の読み合わせをしていた。
 まあ台本って言ってもペラペラの紙四枚くらいなんだけど。

 進行について書かれていて、画面内の雑用は全て私。
 主役じゃないなんて楽ちんだなー。
 今日はのびのび作業するぞ。

 私は上機嫌で配置についた。

 今日のダンジョンは、小さな廃病院。
 個人経営だったんだけど、開業医だったおじいちゃんが亡くなってから廃墟になってたらしい。
 そこがダンジョン化したというんだけど……。

 院長のおじいちゃんは満足しながら大往生したんだそうで、怨霊はいなさそうなんだよね。
 後から住み着いたのかな?

「よし、では配信をスタートするぞ。準備につくんだ!」

 兄が宣言し、みんなワーッと持ち場に移動する。
 配信チャンネルはイカルガエンターテイメント公式。
 この間作ったら、もう登録者数が5万人くらいいるのだ。

 そして配信を待ってる人の数が2千人いる。
 多分多い……。

 Aフォンは廃病院ダンジョンをおどろおどろしく映し出している。
 雰囲気あるなあ。
 私は感心しながら気合を入れるためにチョコバーを食べた。
 包装紙をくるくるっと丸めてポケットに……。

 と思ったら、風がびゅっと吹いて包装紙を持って行ってしまう。

「あっあっ、あー」

 慌てて回収に走る私。
 そうしたらなんか、Aフォンカメラの前を小走りで横切ることになってしまった。

※『なんかいたw!!』『おいはづきっちいたぞwww』『ゴミを追いかけて走っていったなw』『なんだこれw』『いきなりすげえサービスをぶっ込んできたな……。こりゃあすげえ配信になるぞ』

 コメントが盛り上がり始める。
 そして同接数ももりもり増え始めた。

 兄がニヤリと笑う。

「計算外のことをして配信を盛り上げてくれる。計算通りだ」

「計算外なのに計算通り……!?」

 もみじちゃんが首を傾げていた。
 ビクトリアは笑っていて、二人ともすっかり緊張が抜けたみたいだった。

 こうして私が小走りで現れたことで配信はスタートし、二人が画面の前に現れた。
 自己紹介してる自己紹介してる。

※『噂のエプロンドレスの子!』『鹿野もみじちゃんかあ。かわいいかわいい』『ビクトリアがバージョンアップしてる!』『更に可愛くなってるなあ』『この二人の同時デビュー強すぎだろ』

 おお、盛り上がっている~。
 私は後方で腕組みしながらニコニコと見守った。

 そうしたらたこやきがカメラをいじって、そんな私を一瞬激写した。

※『おいはづきっちw!』『後方師匠面して腕組み待機してたぞw』『すげえ絵面だなあ……』

「こ、こらーたこやきー!!」

「ハハハ」

※『スタッフのガヤみたいに声が入ってくるw』『なんだこの配信w』

 配信の大体のノリがお分かりいただけたみたいだ。

 私の配信はいつも段取りなしの一発勝負。
 だけど誰もがそれで盛り上がれる配信をできるわけじゃない……。

 ということで、兄はこの台本を練り込んだのだ。

 仕組まれたおもしろ配信……!
 まあ、バラエティ配信とでも言うんでしょうか。
 私周りは全部アドリブだけど。

 もみじちゃんとビクトリアを追う形でカメラが移動していく。
 早速出現するモンスターと、対抗する二人。

 本日のもみじちゃんの武器は、バーチャルバゲット1と2と3。
 長いパンになるやつが武器、丸いパンになるやつが盾、惣菜パンになるやつが飛び道具。

「くらえーっ」

 パンだけに。
 あっ、バーチャル焼きそばパンから放たれた焼きそばが、出現したレッドキャップの群れを拘束している。

「フフフフフ! ウフフフフフフフ……!!」

 そこに笑いながら飛び込むビクトリア。
 持っているのは、ピカピカ光りながら回転する派手なチェンソーだ!
 これ、チェンソー風のおもしろアイテムで刃がついてない。
 電飾で光るチェーンがグリグリ回転するのが面白いんだけど……。

 配信者が使えば立派な武器になる。

『レ、レーッド!?』『キャーップ!!』

 レッドキャップが次々切り裂かれていった。
 焼きそばに絡まれて身動きできないところを一撃だ!

 やるなあ……。

「あっ、逃げた!」

 一匹逃げ出した。
 迂回しながらこっちにやってくる……。

「あちょっ」

 私はモンスターが飛び込んできたところを、ペチッとチョップで撃破した。
 カメラ、当たり前みたいにこれを激写してる。

『ウグワーッ!?』

※『最後にはづきっちが雑に処理した!』『素手だw!』『なるほど最強のケツモチが今回はついてるんだなw』『なんて安心できる配信なんだ』

 私は自分の思うようにフォローに回ったりしてるだけなんだけど、妙に盛り上がって行っている……。
 これも兄の狙いかあ。
 やるなあ……!

 私は思わず唸るのだった。
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