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先輩! 私の新人フォロー編

第150話 ネカフェ堪能伝説……えっ、仕事?

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 ネカフェに入った。
 受付でやりとりする時、なんとなく気恥ずかしい。

 私はこれが苦手でヒトカラなんかもできないのだ……。
 ネカフェはギリギリ行けるけど、あまり必要性を感じなくてほとんど行ってないなあ。

「はい、じゃあはづきちゃんはあっちの部屋。みこはこっちね」

「おうよぉー任せろぉー」

 はるのみこさんが頼もしく答えて部屋に入っていった。
 個室ネカフェ!
 天井が空いてないので、音漏れが全然少ないらしい。

 つまり……個室の中で配信ができる!

「ということで、お前らこんきらー」

※『こんきらー!』『いきなり配信が始まったぞ』『おや……閉鎖空間……?』『はづきっちの脱出ゲームが始まるんだな』

「不正解! ネカフェです」

※『ネカフェかあ……』『はづきっちイメージ的によく行ってそう』

「ほぼ行かないんですよね。家かダンジョンの二択です」

※『意外や意外』『ダンジョン行かない時はご飯食べに行ってるか引きこもりだよね』『カラオケとか行けばいいのに』

「ヒトカラは無理ー。一人牛丼とか一人焼肉はできるけど……」

※『基準が分からんw』

 ちょっとやり取りをした後、私は今回の配信の内容を説明した。

「嫉妬勢を呼び寄せるためにですねー。私が捨て垢でツブヤキックスしてですねー、協力してくれる配信者さんのところに引用の嫉妬ツブヤキをします。見事釣れるかどうかですねー」

※『捨て垢荒らしコメントを実況しながらやるの新鮮過ぎだろw』『相手も知っててやるのかw』たこやき『ライブ配信したら気付かれるのでは? あ、でもそれもアリか』

「そうそう。アリアリ。じゃあ捨て垢の名前を決めます。えーと……【真実を語る】で」

※『wwww』『香ばしいww』『解像度w』

「プロフィールは……【壁打ち用。思ったことをツブヤキます。業者は即ブロ。無断転載禁止です。】……かなあ」

※『本当に解像度高いなあ……』『はづきちゃんクソリプしてきた相手のプロフィール観察趣味でしょ』

「ギクッ」

※『いい趣味をしてるw』

 そ、そんなことはない……。
 こうしてスタートした捨て垢。
 とりあえず、配信者を辛口レビューする系のアワチューバーをフォロー。

 そして風街さんとはるのみこさんの捨て垢と相互フォロー。
 よし、作戦行ってみよう。

 今回協力してくれるのは、ライブダンジョンの海王星アクアさん。
 海賊船の船長をモチーフにした人で、一回一緒にダンジョンを冒険したことがある。
 懐かしいなあダンジョンハザード……。
 もう半年近く経つんだなあ……。

 彼女の日常ツブヤキに、うざ絡みする。
 引用ツブヤキでやるのがミソ。
 こうすると、なんかマウント取ってるみたいになるのと、昔のテレビに向かってぼやいてる人みたいに当事者感が薄れるんだって。

「ええと……。そういう媚びた感じの仕草とか最高に嫌。以前の◯◯とかのケースみたいにやらかすんじゃない? 今まで見てたけど幻滅した。もうファンやめるわ……っと」

※『リアルなのやめろw』『どこでそういうの学んでくるのw』

「実は私のアンチのツブヤキを収集してて……。最近アンチの人がどんどん消えていくから、消える前にスクショしてクソリプ同士を戦わせる遊びをしてるんです」

※『強いw』『鋼の精神w』『アンチ蠱毒じゃんw』『絶対はづきちゃんにアンチ活動したらダメだな……』もんじゃ『アンチが消えていくというのは、もしかすると嫉妬勢に取り込まれているのかも知れないな。そのうちアンチコメントが大挙してやってくるかも知れない。気をつけて』

「はーい、気をつけます。あっ、お前ら、リプが付きました。外野からクソリプしててお前の自己紹介じゃん……と。なかなか強烈なパンチですねー。ええと、ここで顔真っ赤にして返信をします。もちろん引用です」

※『冷静w』『こんな平坦な抑揚で顔真っ赤言うの初めて聞いたw』

「えーと、私はいつも真面目に生きてるのに、こんな風に好きなことばかりやってチヤホヤされてるやつがいるのが間違ってる……と。なんかスラスラとツブヤケちゃう……。私は嫉妬勢の才能があるかも……」

※『ほんとにねw』『アンチで蠱毒やってる人は違うわ』『蓄積されたデータがあるんだな』

 しばらく、リスナーたちと盛り上がりながらアンチっぽい活動を続けた。
 本気で怒ってくれている人、ゴメン!
 これは囮捜査みたいなやつなのだ。

 ザッコから、はるのみこさんがキャッキャッと笑う声が聞こえてくる。『はづきちゃん天才だにぇ! みこも負けてらんないなー!!』
 私のアンチっぷりに大受けしているみたいだ。

 風街さんは文章から人柄の良さがにじみ出てしまっていて、反応はいまいちみたい。

『頼みの綱ははづきちゃんだけね。頑張って……! いい感じで引用ツブヤキついてるし』

「あ、はい、頑張ります!」

※『アンチ活動頑張ってとかw』『恐ろしくシュールな光景だ……』

 私もそう思う……。
 ザッコには途中からアクアさんも加わり、私のアンチっぷりを大変褒めてくださった。

『いやー、キャプテンもよくアンチつくんだけど、たしかにこんな感じ。はづきちゃんリアル過ぎるー』

「思わぬ才能が開花してしまいました……。あ、なんかDM来ました」

※『喧嘩か喧嘩か』『晒されるぞ』

「怖いなー怖いなー」

※『棒読みで草』『一切恐怖を感じてないだろw』

 それはまあ、ツブヤキックスの上でのやり取りですし。
 実際に行動に移すくらいエネルギーがある人なら、ぐちぐち言わずに動いていると思うし。

 DMをオープンしたら……。

『あなたのそのエネルギーを現実に活かしたいと思いませんか? あなたの嫉妬をサポートします。(添付短縮URL)』

 とか書いてあった。
 うわーっ、大当たり!

※『キター!!』『嫉妬勢じゃんw』『これがデーモンからの勧誘か……。初めて見たw』『まさか生配信されてるとは思わないよな』

「どうやって返信しよう……。じゃあこれはアンケートを使いますね。えーと」

※『俺たちの総意ではづきっちがおもしろ回答をしてくれるぞw』


◎きっぱり断る「私は正義です! 嫉妬なんかしてません!!」
◎受け入れる「みんな私が正しいって分かってくれない! 力を貸してください!」

※『香ばしいなー』『いそう……』『リアルなのやめてw』

 しばらくみんなの投票を待つ。
 あっ、キッパリ断る優勢!

「じゃあ、断ってみますね」

※『釣りなのに断っていいの?』『むしろ嫉妬だって自覚して無い方がリアルじゃね?』『確かに』

 DMで断りの文句を書き込む。
 そうしたら、なんか向こうの勧誘してくる言葉が熱量を増した。

 あなたは正しいとか、有名人はわきまえるべきとか、色々と捨て垢の物言いを肯定するような内容になる。

「じゃあこの辺でグラッと行きますね」

※『冷静w』『まさか捨て垢の向こうに狩人がいるとは思うまい……』

 ちょっと揺れてる素振りを見せる。
 そうしたら、向こうから新しいアドレスが送られてきた。

 ここをクリックするということ?

 私は素早くこれをスクショして、風街さんとみこさんに共有した。

『お疲れ様、はづきさん! アドレスはクリックしないで、危険だから! これで任務完了よ。今、アドレス先は迷宮省全体で共有されたわ。調査チームが挑んでいると思う!』

「あ、はい、お疲れ様ですー!」

 なんか集中してたから、お腹が減ってしまった。

※『はづきっちが当たり前みたいな顔しながらポテトをオーダーしてるw』『あ、配信中にドリンクバー取りに行ったw』『自由だなあ……』

 仕事が終われば、後はフリーなのだ!
 私はお前らと雑談しながら、個室ネカフェを満喫することにしたのだった。
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