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ドカ盛り! 私のアメリカ編

第126話 奈落にパラソルで降り立つ伝説

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 ダウンタウンに設置された監視カメラ。
 その幾つかはまだ生きていた。
 それらは色欲のマリリーヌによって支配され、生命を持つ一種のモンスターと化している。

 上空で轟音がした。
 監視カメラが一斉に頭上を向く。

 封鎖されていたはずの、地下鉄ダンジョンとの境界が吹っ飛んでいる。
 爆発物を使ったらしい。
 続いて飛び出してくるのは、真っ黒な車体。

 電車だ。
 それが翼を広げ、滑空を始める。

 ピットフォールに侵入者。
 一ヶ月ぶりの敵だ。
 ピットフォールに州軍が挑み、壊滅的打撃を受けてから誰も手出しをしなくなった。

 まだ、このピットフォールにやって来ようとするバカがいるとは。
 モンスターとしての自意識を持つカメラはそう判断していた。
 だが、どうも状況が違う。

 滑空する黒い電車から、こちらを覗き込んでいる顔がある。
 ピンクの髪をした、ぽやっとした感じの少女だ。

 カメラはなんとなく彼女をフォーカスし……。
 目が合った。

 その瞬間、マリリーヌに掛けられていた支配が不可視の力で吹き飛ばされる。
 そのカメラは、自らの役割を取り戻した。

 ネットと接続。
 撮影されている映像が、リアルタイムでアワチューブに流れ始める。




 なんか何かと目が合ったような。
 そう思いながら車両の中に戻った私。

「うわああああ凄いことになってる! リーダー、この中を降りるのかい!? ワオワオ!! 高いところからの着地はまさしくヒーローだ!!」

 カイワレ元気~。
 もうパラシュートみたいなの背負ってるけど、その重みでよろけてる。

「フフフ……スカートがまくれないように注意しないと……」

 ビクトリアも準備万端。

「この背負紐、小さくないか?」

 ムキムキのインフェルノにパラシュートの背負紐が食い込んでる!

 そして私はと言うと……。

「ええと、じゃあ私もパラシュートを背負って……」

 受け取ろうとした矢先に、電車にすっごい横殴りの衝撃が襲いかかった。

「あひー」

 吹っ飛ぶ私。
 電車の外にスポーンと飛び出る。

「リ、リーダー!!」

「大変! た、助けに……!」

「リーダーならなんとかしそうな気がする」

 三人が追いかけて、飛び出してくる。
 私は宙に放り出されながら、うーん、と考えた。

「有識者ー。お願いー」

※『はづきっちピンチじゃん!』『俺らがスパチャ投げるからいい感じの買え!』『うおおー、受け取れスパチャー!!』

 ぽんぽんとスーパーチャットが入ってくる。
 いい感じの?
 そう言われてもなあ……。

 私は落下しながら、インターネッツのお買い物サイトを巡回した。
 周りにはどんどんモンスターが群がってくるんだけど、私の周囲に出現するスパチャの表示に当たると『ウグワーッ!?』『ち、近づけんウグワーッ!!』と砕け散る。

「みんなの愛に守られてるー。ありがたいなあー」

 私はしみじみしながら、とあるお買い物サイトでいい感じのを見つけた。

「あ、これがいいんじゃない? パラシュートって落下傘でしょ。傘っていうんだから……」

 購入した商品が、スポンっとその場に現れる。 
 それは大きな、ピンク色のパラソル。

 私がそれを手にすると、落下速度がゆっくりになった。

 パラソルの骨がミシミシ言ってる。
 うわー、がんばれがんばれ!

※『奈落の上空からピンクのパラソルではづきっちが降りていくってマ!?』『絵になりすぎるw』『かわいい』『がんばえー!!』

 声援が集まってくる。
 すると……パラソルがピンク色に光りだした。
 一体何が起ころうとしてるんです……?

 次の瞬間……。
 ポーンッ!と軽快な音が響いて、パラソルがものすっごく大きなピンクの光を纏ったのだ。
 それも、傘型に広がっていくような光。

 つまり私は……凄く大きなパラソルを掴んで、ゆったりとピットフォールを降りていく感じになる。

 パラソルの範囲にいたモンスターやデーモンたちが、まとめて粉々になった。

『ウグワーッ!?』×たくさん

 さらに、パラソルからピンクの光が、雨になってピットフォールのダウンタウンに降り注ぐ。

※『メリー・ポピンズじゃんw!』『アメリカリスペクトとはやるなあ』

「な、なんですその作品!! 有識者~!」

 後から来たラストバスターズの三人も、パラソルの上に着地したらしい。
 私たち四人は、大変優雅にピットフォールへ到着するのだった。

 降りていくだけで周囲のモンスターがいなくなっていくんですけど。

 頭上の電車からは、軍人さんたちがめちゃくちゃ喜んでわーわー叫んでる。
 うおお、光が邪魔になって確認できない~。

 ……というところで、ピットフォールの底に到着です。
 寸前でパラソルが限界を迎えて、ポキっと折れた。
 落っこちてお尻を打つ私。

「あひー」

※『あひった!』『お尻お大事に!』おこのみ『衝撃吸収できるくらい立派だから大丈夫!』

 慰めになってなーい!
 なお。
 何故かまた、私の同接数がすっごいことになっていた。

 一体どこから流れ込んでくるんだろう……?
 私の視界の端で、建物に設置された監視カメラがジーッと音を立てた。

 あ、生きてるカメラあるんだ。
 私は手を振っておく。

 すると、カメラがなんか頷いたみたいに見えた。
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